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ヤフー、ビッグデータから生活者の本音を分析する「DS.INSIGHT」
2019年10月31日 16:28
ヤフーは、展開するサービスから得られるビッグデータを活用し、企業や自治体向けに事業の支援や課題解決などに繋げるインサイトを提供するデータソリューションサービスを10月31日より開始した。
ヤフーでは、多くのユーザーに利用されている、検索やメディア、ECなどのサービスで蓄積されたユーザーデータを、統計的に分析したビッグデータとAI技術を用いて、サービス改善や業務の効率化を行なっているという。
例えばPayPayの場合、「PayPay」と一緒に検索されている第2キーワードの中で未対応の店舗かつ検索数の多い物を調査しているほか、地域別の特徴も分析し、地域ごとにニーズの多い場所から営業をかけていくといった戦略で、営業業務の効率化を図っているとした。
ヤフーのデータの強みは、アンケートなど従来の調査方法と比較して客観性があること、種類の多さ、リアルタイム性にあるという。また、異なるサービスを横断して分析することで、より大きなサービス改善を見込めることがわかったとしている。
ビッグデータ活用を社外に広げることで、従来からデータ利活用を行なっている企業はより多くのデータを活用でき、データ利活用ができていなかった小規模な企業・自治体はそれらを活かした商品開発や営業活動が可能になる。また、広告・販促以外の、企画開発、生産、物流にもデータを使った効率化が見込まれるとしている。
データソリューションサービスは、ヤフーのビッグデータをブラウザ上で調査・分析できる「DS.INSIGHT」と、企業・自治体の要望に応じ、DS.INSIGHTでは提供していないビッグデータも含めた分析結果を提供する「DS.ANALYSIS」の2種類で展開開始。プライバシー保護を第一とし、個人情報が含まれない統計データを提供することを強調した。
DS.INSIGHTの利用料金は月額で、スタータープラン(1ライセンス)が10万円、スタンダードプラン(10ライセンス)が50万円、プレミアムプラン(20ライセンス)が80万円。DS.ANALYSISの利用料金は、案件内容次第としている。
DS.INSIGHTでは、生活者の興味関心を可視化する「People」と、エリア特性や人流を可視化する「Place」の2種類を用意。
Peopleでは、調べたいキーワードを入力すると、「関連語」「時系列推移」「性年代などの属性分布」といった詳細情報を分析できる。
例えば「増税」のキーワードを調査した場合、全体的に女性の検索数が多いことから、家計を管理している女性が注目していることが考察できる。対象を50代男性のみに絞ると、多く検索されている第2キーワードは「タバコ」、20代女性だと「ディズニーチケット」であることがわかるとした。
地域性の分析では、「タピオカ」で調査してみると、全国的には「作り方」や「コンビニ」で検索されていることが多く、「人気店」のワードでの検索は首都圏のごく一部であることがわかったとしている。
また、キーワードの時系列推移を確認することで、企画や商材が潜在的なニーズ、トレンドと合致しているかがわかるという。例として「ハロウィン」を取り上げ、ユーザーがいつ意識し始めているのかを調査すると、9月頃から徐々に検索数が増えていることがわかるとした。同様のイベントとして「クリスマス」「バレンタイン」の検索数も含めて比較すると、近年では「ハロウィン」が一番注目されていることがわかったとしている。
Placeでは、ヤフーに蓄積された位置情報データなどを元に、指定したエリアにいる人々の属性・特徴や流出入人口の推移のほか、検索傾向などを元にした地域の人の興味関心、地域・スポット間の人流規模なども把握できる。
エリア特性や人流の情報も、性年代などの属性分布に加え、興味関心をひもづけて可視化できるため、ファッションや趣味趣向などの特定テーマで区切った層の分析も可能。街づくりやイベント運営、出店計画などを支援するツールとしての利用を想定している。
コンサルティングサービスのDS.ANALYSISは、ダッシュボードだけでは捉えきれない情報の調査・分析をヤフーが行ない、企業・自治体の要望に合わせて活用支援する。DS.INSIGHTで提供している検索ワードや位置情報のほか、知恵袋や天気などのデータも組み合わせて課題解決を目指すという。
実証実験での実例として、三越伊勢丹のスカート「arm in arm」が取り上げられた。三越伊勢丹では、子育て中の女性に関する悩みや消費者の意見を調査。「抱っこひもを付けているとポケットが使いにくい」「自転車に乗りにくい」といった悩みに応えた商品を開発し、過去一番売り上げたスカートと比較して初週の販売数が約2.6倍になったという。
ANAセールスとの旅客数予測にヤフーのデータを活用する実験では、ANA関連データと「地名+ホテル」のようなキーワードの検索数を使った予測を複数のモデルで検証。従来のANA独自のデータのみでの予測と比較し、予測精度が26%向上したという。
また東急不動産と、12月にオープン予定の東急プラザ渋谷のポップアップストア「111」の売り場づくりにヤフーのビッグデータを活用。従来、周辺の出店動向や過去の運営経験などから売り場を検討するが、ビッグデータに基づいて、トレンドを分析。「腕時計ブランドAが好きな人はスポーツブランドBも好きそうだ」といった併売分析を検索ビッグデータをベースに行ない、実際の売り場づくりに取り入れ、試験運用するとしている。
川邊健太郎社長は、「INSIGHTは社内ツールとして利用していた頃から、システムを社外にも広めることで、多くの人の助けになると考えていた」とし、最終的にはデータソリューションサービスをEコマース、FinTech、総合マーケティングソリューションに次ぐヤフーの4本目の柱となる事業として展開したいと述べた。