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出井伸之会長兼CEO(中) トク中暉久副社長兼CFO(左:注) 山本泉二SCN社長(右)
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ソニー(6758)は20日、子会社の業績に連動させた株式「トラッキング・ストック(TS)」の発行に向け、準備に着手すると発表した。TSはグループ経営の手法として米国では定着している資金調達法だが、実現すれば日本企業として初めてとなる。
ソニーは「2年前からTS株について研究してきたが、この度現行の商法下でも発行が可能と判断」(トク中暉久副社長兼CFO:注)した。実施に向けた定款変更を行うため、2001年1月25日に臨時の株主総会を開く予定。子会社でインターネット事業「So-net」を運営するソニーコミュニケーションネットワーク(SCN)をTSの第1号に想定している。総会の承認を得た後、速やかにTS株の発行・東証1部市場への上場を実現したい考えだ。東証の受け皿も必要となる。発行総数などの詳細は現時点では未定。
●発行主体はソニー
日本ではまだ商法上、TSの規定がないため同法で定める「種類株」の一種として発行することになる。発行主体はソニーで、株主はSCNがソニーに行う配当に連動した配当を受け取る権利や、ソニー本体への議決権を行使できる仕組みとする。TS発行の検討に当たっては、日本の現商法上の枠組みで発行するに際し、メリルリンチ証券東京支店のアドバイスを受けたという。
発行体がソニーということで、調達した資金はソニー本体に入り、子会社に配分される。ソニーは、今年1月に上場子会社3社を株式交換により、完全子会社化するなど「統合・分離型グループ経営」を推進しており、TSの導入もその一環となる。
同日都内で記者会見した出井伸之会長兼CEO(最高経営責任者)は、まずTSについて「経営者としてグループ戦略を構築するうえで、事業構造の選択肢が増えた」と強調した。そのうえで「中核事業をIPO(普通株の上場・公開)ではなく、自社の支配を維持しながら上場させていく仕組みは、SCNの事業価値が顕在化することでソニー本体の価値も上がるというものでメリットは大きい」と述べた。
●IPOとTSを使い分け
もともとの計画では、SCNはIPOを計画していたという。しかし、IPOの場合、ソニー本体との戦略と新規株主の意向が必ずしも一致しないケースも出るため、支配力を維持した資金調達の仕組みであるTSを採用することにした。
ただ、今後ソニーとして子会社のIPOを完全に放棄するわけではなく、コアビジネス(エレクトロニクス関連)に関連する事業はTSによって、コアビジネスとは離れる事業はIPOというように分けていく構えだ。
SCNは1995年11月の設立。ソニー(出資比率40%)などグループ3社が全株式を保有しており、資本金は4億8,000万円。149万人の会員を抱えており、2000年3月期の売上高は255億円。すでに単月で黒字化しており、累損も一掃。しかし、親会社のソニーに対しての配当は現在のところ行っていない。
(注:徳の心の上に一が入る)
■URL
・ソニー
http://www.sony.co.jp/
・SCN
http://www.so-net.ne.jp/
・メリルリンチ証券
http://www.mljs.co.jp/
(別井貴志)
2000/11/20
19:51
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