【05.02.28】
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水冷システムの威力を見よ!
安定した冷却性能と静音性を兼ね備えたハイエンド機
NEC VALUESTAR GタイプTX
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いくら高性能でも、うるさいパソコンにはがまんできない。そこで候補に挙がってくるのが、水冷システム搭載パソコンだ。そこで今回は、最高レベルの水冷システムを搭載し、安定した冷却性能と静音性の両方を実現した「NEC VALUESTAR G タイプTX」を使ってみた。NEC Direct限定モデルで店頭モデルと違ってBTOによるカスタマイズでオーダー時に好みの構成にできるし、拡張性も高い。さっそくVALUESTAR G タイプTXの実力をレポートしよう。
NECは現在デスクトップ向けにTX/TZ/SR/S/L/Cという6種類の製品ラインナップを投入しているが、この中でハイエンドのポジションを与えられているのがVALUESTAR TXである。このVALUESTAR TXの最大の特徴は何と言ってもCPUの冷却に水冷を採用していること。初めてこのシステムが採用されたのは、2003年5月に発表されたVALUESTAR TXとVALUESTAR FZの2モデルであるが、以来ハイエンド製品には常にこの水冷システムが採用されている。
水冷によるメリットは大きく2つ考えられる。まずは安定した冷却である。通常のCPUファンによる空冷では、外気温度やケース内部の冷却風の流れ方によって冷却能力が変わってくる。特に最近のCPUは非常に消費電力が大きいから発熱も半端ではない。これを安定して冷却しないとシステムの不安定さに直結してしまう。ここで水冷を用いることにより、安定した冷却性能が提供されるから、最終的にはシステムの安定稼動に繋がるというわけだ。加えて言えば、CPUからの熱を直接ケース外に排出するので、ケース内部の温度を低く保てるのも、副次的なメリットだろう。
もうひとつのメリットは、騒音の低さである。無理に空冷で強制的に風を送り込まなくても、ラジエータで効率的な排熱ができるから、ファンを高速に動作させる必要がない。これはそのまま、騒音の低さに繋がることになる。実際VALUESTAR TXでの騒音レベルは約30dB程度。この約30dBというのは、深夜の郊外とかささやき声といったレベルである。普通に使っている時には、耳では動作しているかどうかも判らない程度。最近はPCをTV代わりに使うケースが多いが、TV代わりにするにはこのくらい静かでないと、と思えるほどだ。
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【Photo01】高級感を感じさせる、光沢のある黒パネルはオーディオなどと組み合わせても違和感がない。
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のっけからちょっと力説してしまったが、その水冷システムを採用した、最新のVALUESTAR TXが、今回ご紹介する製品である。VALUESTAR TXは店頭販売されるモデル(VX980/BE・VX500/BD)の他に、NEC Directで購入できるモデルが用意されており、そちらはVALUESTAR G タイプTXと呼ばれている。店頭モデルとの違いは、BTOのシステムでオーダー時にカスタマイズが可能なことで、好みの構成を取ることが可能だ。今回試用したのは、VG34SV/Lというモデル名の製品となる。具体的な構成については後で説明するとして、まずは全体像を見てみたい。
外観はシルバーとブラックを基調とした、落ち着いたイメージである(Photo01)。ただ、電源を入れるとフロントパネルが青く光ることで存在感をアピールする(Photo02)。ちなみにフロントパネル下側は手前に開き、様々なインターフェースが顔を覗かせる(Photo03)。
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【Photo02】水冷を連想させる青いライトが特徴的
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【Photo03】2スロットのCardBusとMemoryStick/SDカード/xD-ピクチャーカード共用スロット、IEEE1394端子(いづれもBTOオプション)、USB2.0ポートが用意される。これで不足を感じるケースはまず無い筈だ。
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側面はシルバーを基調としたものだが(Photo04)、大きめのパンチングが目立つ。これは後で紹介するように、ここから内部の冷却用の吸気を行っているためだが、騒音はほとんど聞こえない。
背面のレイアウトは一種独特である(Photo05)。必要なインターフェースは全て揃っているが、拡張カードはライザーカードで装着するため、ビデオカードと向きが異なっている。ただこれは後でご紹介するが、むしろ装着はこの方が楽である。
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【Photo04】後ろに突き出している黒い部分がラジエータである。
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【Photo05】上から順にサウンド入出力、USBポート、S/PDIF、シリアル/内蔵VGA、パラレル、IEEE1394、LAN、拡張VGAときて、一番下にPS/2キーボード&マウスが位置する。
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さて、次は内部構造だ。Photo05の右端にある2つのローレットスクリューを外すと、側面パネルが外れる(Photo06)。「水冷なのになぜファンが?」と思われるかもしれないが、これはファンを外すと判りやすい(Photo07)。CPU自体は水冷であるが、最近の消費電力の上昇が著しいチップセットやCPUへの電源供給回路など細かい製品までは水冷にしきれないので、これらは依然として空冷のままである。これを冷やすのがCPU脇の巨大なファンというわけだ。これらはCPUに比べるとそれほど発熱は多くないから、緩やかに風を当てる程度でも十分動作するため、大径ファンを低速でまわす程度で周辺回路やHDDも十分冷却できる。このため騒音は低く抑えられるというわけだ。
ちなみにCPUから熱を奪った冷却水は、背面に設けられたラジエータで冷却されて、再びウォータータンクに戻される(Photo08)仕組みになっている。このラジエータは電源部の排気(これも大径ファンを低速で回転している)を使って冷却される仕組みで、無駄にファンを増やさずに効果的に冷却することが可能になっている。
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【Photo06】横方向のフレームはライザーカードを保持するもの。単にライザーカードの保持だけでなく、フレーム全体の剛性を上げることにも役立っている。
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【Photo07】中央のX字型のものがCPU用のウォータークーラー。その上/右はCPUへの電源供給回路部、左はIntel 915G GMCH。その上の銅色のものがウォータータンク。
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【Photo08】ラジエータのカバーを取り外した写真。ラジエータは3段式のコアで、大きさを抑えながら十分な冷却能力を確保している。
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ところでライザーカードであるが、拡張カードの着脱はライザーカードを取り外さなくても可能である。正式な手順ではないが、ネジを外すとこのように拡張カード部をまとめて取り外しができる(Photo09)。これなら取り付け具合がはっきり判るから、慣れていない人でも安心である。ちなみにライザーカードの上に配されたIC(Photo10)は、フロントパネルのPCMCIAスロットなどを接続するためのものである。このあたりの配置の巧みさや便利さは、自作機ではなかなか手に入れられない類のものである。
またマザーボードのサウスブリッジの下側にはMini PCIスロットが用意されている(Photo11)。これは(今回は選択しなかったが)無線LANを選んだ場合に、無線LANカードを装着するためのものである。無線LANカードも、長時間利用すると発熱が馬鹿にならないものだが、この位置だと先の大径ファンからの風で適度に冷却されるため、連続運用も安心である。
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【Photo09】拡張カードを使う場合、正式な手順ではないが、この様に取り外してカードを装着してから、再び本体に戻すこともできる。
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【Photo10】16bit PCMCIA/32bit Cardbusの定番コントローラであるRICOH R5C842が搭載されている。
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【Photo11】基板とだいぶ離れた位置で装着されるのは、ICHのヒートシンクを避けるためと、冷却風が流れるようにするためだろう。
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ところで先に述べた通り、今回はNEC Directの直販モデルを試してみたので、構成がやや店頭販売のものと異なっている。まずCPUには3.4GHz駆動のPentium4
550J(Photo12)。メモリは512MBのPC2-4200メモリ(Photo13)が2枚の1GB構成となっている。キャプチャカードは省かれていたのでこれでTV視聴というわけには行かないが、とりあえず普通に使う分にはまず不足を感じない構成である。ビデオカードはATI
TechnologiesのRADEON X600 PRO(Photo14)が搭載されている。
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【Photo12】CPUが2つあるように見えるのはHyperThreading Technologyを搭載しているためで、物理的なプロセッサは1つだ。
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【Photo13】世界No.1のメモリメーカー、Samsung純正のDDR2メモリが搭載されていた。
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【Photo14】性能と発熱のバランスの良さが光るX600 PRO。
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このX600 PROはATI Technologiesの製品ラインナップではミドルレンジに位置する製品で、ハイエンド製品に比べるとやや性能は落ちるわけだが、これを選択した理由は一重に騒音対策である。ハイエンド製品の場合、しばしば洒落にならない騒音が発生する。ビデオカードも(CPU程ではないにせよ)発熱が多いので、こちらも冷却は重要なファクターであるが、折角水冷を初めとして様々な騒音低減対策(たとえばDVDスーパーマルチドライブは、メディアの種類に応じて回転数を自動調整することで回転音を最小にとどめられる。またケースの作りや前面パネルの作りは、内部の騒音を極力外に漏らさない様に工夫されている)が取られているのにビデオカードが轟音を立てていたら台無しになってしまう。また、ハイエンド製品は3Dゲームには欠くことができないが、逆にいえば3Dゲームをしない人にはほとんど無用の長物である。
X600 PROという選択は、このあたりのバランスに留意されている。Intel 915Gの内蔵グラフィック(GMA900)に比べると大幅に3D性能は上がっているが、ビデオカードの冷却ファンは騒音の少ない低速回転タイプで足りる程度に発熱が少ない。勿論絶対性能的にはハイエンド製品には及ばないわけだが、仮に騒音が増えてもいいからもっとハイエンドをということであれば、とりあえずビデオカードはIntel
915Gの内蔵グラフィックを選んでおき、後からより高速なグラフィックカードを自分で追加しても良いわけで、このあたりの自由度が高いのもBTOならではと言える。
ソフトウェアは「ミニマムソフトウェアパック」を選んだため、デスクトップもかなりすっきりしている(Photo15)し、インストールされているソフトウェアもそれほど多くない(Photo16)。勿論中には「一杯ソフトウェアが入っているほうが嬉しい」という方もおられるだろうが、そうした方は購入時に「標準ソフトウェアパック」を選べば、さらに多くのソフトウェアがプリインストールされた状態になる。このあたりを選べるのも嬉しい部分だ。ちなみに今回試用した機種の場合、HDDは160GBの他に400GBの増設HDDが追加してあり、NEC
Directのキャンペーン価格で219,765円(税込・送料別※価格は2月28日現在)という構成になっていた。
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[▲クリックすると拡大します] 【Photo15】店頭販売されているVALUESTAR TXの画面と見比べていただくと、あっさりしているのがわかる筈だ。
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[▲クリックすると拡大します] 【Photo16】一見多そうに見えるが、半分以上はWindows XPに標準で入ってくるものや、ハードウェアのドライバ関係である。
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ではこのVALUESTAR G タイプTXの性能はどんなものだろう?いくつかベンチマークを行って、ちょっとその実力を確認してみた。ただ、単純に1つの構成だけでベンチマークを掛けてもあまり面白くない。そこで、Intel
915Gの内蔵グラフィックを使った場合(GMA900と表記)、BTOで選べるX600 PROを使った場合(X600 PROと表記)、X700 PROを使った場合(X700 PROと表記)の3パターンを測定してみた。
価格的には一番安いのが内蔵グラフィックを使った場合で、X700 PROの市販価格は25,000円前後、X600 PROをNEC DirectのBTOで選択すると10,500円(※価格は2月28日現在)なので、その分合計金額が上乗せされる計算になる。騒音に関して言えば、X700
PROの低速回転ファンはほとんど気にならないレベルである。
[▲クリックすると拡大します]【グラフ1】
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まずは定番のSYSMark 2004の結果をグラフ1に示す。Webのブラウジングやメール、ワープロ/表計算といった「普通のPCの使い方」をエミュレートして、その際のPCの反応速度からスコアを見るというテストだ。結果を見ると、ビデオカードの違いがほとんど影響していないことが判る。通常このテストでは、内蔵グラフィックを使った場合には性能が下がることが多い。理由は内蔵グラフィックとCPUでメモリを共有する関係で、メモリ帯域が不足するためだ。ところが今回試用したVALUESTAR G タイプTXでは帯域4.2GB/secのDDR2メモリをデュアルチャネルで装備しており、合計の帯域は8.4GB/secに達する。CPUが必要とするのはこのうち6.4GB/secで、残った2GB/secの帯域が内蔵グラフィックに割り当てられるというわけだ。つまり、メモリ帯域が不足していないため、性能の低下がないというわけだ。3D以外の使い方をする場合、内蔵グラフィックのみで十分間に合うということがこのグラフで示されているわけだ。
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[▲クリックすると拡大します]【グラフ2】
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次にもう少し細かく見てみよう。グラフ2はFutureMarkのPCMark2004の結果である。このテストはPCの性能をCPU/Memory/Graphics/HDDという4つの分野に分け、各々の性能を評価するとともに、Overallという形で総合性能も出してくれるものだ。結果を見てみると、大きく性能差があるのは当然ながらGraphicsの分野。SYSMarkと異なり、3Dのテストも項目に入っているため、ここでは大差がつくわけで、この部分がOverallにも多少反映されている。ただ、逆にいえばGraphics以外は全く性能差が見られず、数字自体もかなり優秀な部類に入る。つまりビデオカードの選択は純粋に3D性能にしか関係せず、通常に使う分には影響しないということだ。ちなみにGraphicsの結果を見ると、3D性能に関してX700 PROの性能に期待が持てる。
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[▲クリックすると拡大します]【グラフ3】
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ではその3D性能はどうか? ということで、まずは3D系の定番ベンチマークであるFutureMarkの3DMark03と3DMark05を実施してみた結果をグラフ3に示す。解像度は1024×768ピクセル、32bitカラーであるが、ここでのスコアの違いはさすがに圧倒的である。両テストの違いであるが、3DMark03は最新のDirectX 9に対応しつつもテスト項目はその前のDirectX 7/8レベルのものが多く含まれているのに対し、3DMark05は全面的にDirectX 9を使ったものになっており、結果としてビデオカードへの負荷が大きいものになっている。このテスト結果、一般には「スコアで3000を超えればまぁまぁ」という判断が可能だが、この線で行くとGMA900はどちらのテストでも失格。RADEON X600 PROとX700 PROでは順当な差が出ている。
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[▲クリックすると拡大します]【グラフ4】
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こうしたベンチマークでは良くわからないという声もあると思うので、いくつかのゲームベンチマークも一緒におこなってみた。Doom 3/Half-Life 2/Far Cryの3本で、何れもFPS(First Person Shooting:一人称形式のシューティングゲーム)のジャンルに含まれるものだ。これらは何れも製品版をインストールした上で、デモ画面を使って描画性能を測定してみた。こうしたテストでは、一般に
15fps未満:プレイに耐えない
15~30fps:なんとかプレイできるが、画面と操作が連動しきれない場合が多く、あまり好ましくない
30~60fps:たまに間に合わない事もあるが、大体は普通にプレイできる
60fps以上:スムーズに動作し、プレイも快適
と認識されている。これを念頭において結果を見てみると、GMA900ではほとんどのゲームが(動きはするものの)プレイには耐えないレベルであるが、X600 PROではまあまあ、X700 PROは大幅に性能が伸びており、プレイがかなり快適であろう。
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以上4つのグラフを通して簡単に性能をごらんいただいたが、VALUESTAR G タイプTXの場合3Dの性能をどこまで追い求めるか、でビデオカードの選択をするのが賢明だろう。「3D性能は要らない」というのであれば内蔵グラフィックのままで構わないし、その場合も3D性能以外は一切犠牲にならない。逆にもっと上の描画性能が欲しいというのであれば、ATIならX800/X850という製品ラインナップがあるし、nVIDIAならGeForce 6800シリーズがある。これらを装着すればより高い3D性能を得られることは間違いないだろう。ただ、上にも述べた通り、これらのビデオカードはしばしば騒音が大きい。せっかく静かなVALUESTAR G タイプTXのメリットをスポイルしかねないわけで、このあたりは判断が難しいところだ。逆にいえば、装着してもしなくても耳ではまるで違いが判らず、にもかかわらず3D性能大幅にを引き上げてくれるX700 PROという選択は良いバランスであることが再確認できた点で有意義なテストであったと言える。
トータルとしてみたときには、非常に良いパッケージであるというのが率直な意見である。なにより、Pentium
4をベースとしながらこの静かさは驚異的である。通常こうした静音化マシンは性能を犠牲にすることが多いが、テストで示した通り全く性能も犠牲になっていない。パッケージを考えればコスト的にもリーズナブルで、なにより細部の作りこみの細かさは自作機やホワイトボックスPCでは得られない類のものだ。ある程度長く使いたい、という人には強くお勧めしたい製品である。
Text by 大原 雄介
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