法林岳之の非同期通信レポートMobile
第6回:CeBIT2000 レポート CeBITで見かけた携帯電話関連グッズ
CeBIT2000が開催されたヨーロッパは、世界で最も普及したGSM方式による携帯電話がサービスされている。日本と同じように、さまざまな携帯電話のグッズや文化が育ちつつある。CeBIT2000で見かけた携帯電話関連グッズを紹介しよう。
■ クルマ向けハンズフリーキット
CeBIT2000の開催地でもあるドイツは、日本と並ぶ自動車大国。速度無制限のアウトバーンや自動車事故に対する迅速な処理活動などは、ニュースや報道番組でもよく伝えられている。こうした背景もあってか、やはりドイツでも自動車運転中の携帯電話の処理をどうすべきかは、議論になっているようだ。
CeBIT2000の会場で各メーカーのブースを見ていて気づくのは、必ずと言っていいほど、クルマ向けのハンズフリーキットを展示するコーナーがあることだ。NOKIA、ERICSSON、BOSCHといったメーカーはもちろん、ハンズフリーキットを専門に扱うメーカーも数多く出展している。販売されている携帯電話の機種も豊富なため、自分の持つ携帯電話にどのキットが合うのかを尋ねている人も数多く見受けられた。こうしたハンズフリーキットに対する取り組み方は、日本のメーカーや事業者ももう少し見習うべきではないだろうか。
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NOKIAのハンズフリーキットの展示。ケーブル類が見えにくくなっており、見た目も非常にスマート |
BOSCH 310というモデルのハンズフリーキット。携帯電話本体を包み込むような構造になっている。スピーカーを内蔵しているため、ややゴツい印象 |
CeBIT2000ではいろいろなタイプのハンズフリーキットを見かけたが、やはり多いのはダッシュボードに固定するタイプだ。ただ、携帯電話本体の電源端子はケーブルで接続するのではなく、マウントキット本体に端子を備え、そこに携帯電話を固定するだけでハンズフリーかつ充電状態にできるものが見受けられた。カーナビなどがまだあまり普及していないヨーロッパと日本では、運転席回りの環境に違いはあるが、ワンタッチでハンズフリー/充電状態にできるのは便利だ。
そんな中、シンプルながらもなかなか便利そうに感じられたのがドイツのPVT(Prazision-Verbindungsteknik und Steuerungsbau GmbH)のMagic-K1というハンズフリーキットだ。Magic-K1は座席のヘッドレストの根元に固定するハンズフリーユニットで、マイクはユニット部から伸びているという構造。
ユニット部分にはスピーカーが内蔵されているため、通話中は頭部の後ろから声が聞こえてくる。マイクはフレキシブル構造のもので、不要なときは上なり、後ろなりに曲げておくことが可能だ。決して美しいスタイルとは言えないが、イヤホンマイクのように邪魔にならない上、比較的汎用性も高い。日本での発売を期待したい製品のひとつだ。
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「PVT Magic K-1」ヘッドレストの台の部分にスピーカーを内蔵したユニットを装備。左ハンドル用のため、着座時の右側にマイクがある |
Magic K-1のユニット部分の拡大図。背面に伸びているケーブルの先に携帯電話などを接続する |
■ ヨーロッパの携帯電話文化の一端
CeBIT2000の会場では、ドイツをはじめとするヨーロッパの人たちの携帯電話の使い方を見ることができた。日本同様、背広やジャケットのポケットに入れている人が多いのだが、通話に関しては予想以上にイヤホンマイクを利用する人が多い。しかも、日本でよく利用されている耳もとからマイクが伸びているタイプではなく、ケーブルの途中にマイクが仕込まれたタイプを利用している。お国柄の違いだろうか。
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「TIMES TELECOM Neck Hanger with Portable Handsfree」ネックストラップにイヤホンマイクを内蔵した製品。カラーバリエーションもかなり豊富。日本でも販売して欲しい |
昨年あたりから国内でもよく見かけるのが携帯電話のネックストラップ。首に下げて使うアレだ。電話がかかってきたときやかけるときには、本体をスッと持ち、通話が終われば、回線を切って手を放す。着信も見逃さないし、落下や水没の事故も避けることが可能だ。このネックストラップに、前述のイヤホンマイクを組み合わせたのが台湾のTIMES TELECOMの「Neck Hanger with Portable Handsfree」という製品。要するに、ネックストラップの中に、イヤホンマイクを仕込んで一体化させたものだ。
カラーバリエーションもかなり豊富で、イヤホンマイク部分はスケルトンというシロモノ。これは日本でも流行るかもしれない(もしかして、日本でもすでに売ってる?)。
一方、バッテリー系で面白いのがイスラエルのElectric Fuelが出品していた「ZincAir batteries」という製品。クルマのパーツのようなデザインも独特だが、これがなんと使い捨てのバッテリーだったりする。3~5回は充電して再利用ができるそうだ。NOKIAやMotorolaの各端末向けのものが数多くラインアップされており、容量も3300mAhと大きい。携帯電話本体のサイズが小さく、さまざまな規制がある日本では実現できないかもしれないが、オプションバッテリーの単品販売というのはなかなか面白いアプローチと言えるだろう。
また、製品というわけではないが、会場内を歩いていると、どこからともなく塗料の匂いが……。そう、携帯電話本体のペインティングサービスをやっているブースがあるのだ。このペインティングサービスをやっていたのはTALKLINEというドイツの携帯電話事業者。日本では通信機器の改造に当たるため、分解してのペイントやアンテナの交換は違法行為になるが、どうもこちらではそういう規制がないらしい。しかも、こうしたサービスを携帯電話事業者が自らやってしまうところが何とも面白い。
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「Electric Fuel ZincAir batteries」使い捨てタイプのバッテリー。3~5回の再充電が可能。見た目もなかなかカッコいい!? |
ドイツの携帯電話事業者「TALKLINE」のブースの傍らでは、携帯電話のケースのペイントサービスを実施。特に、女性に人気が高い。日本ではまず無理(笑) |
■ WAPへの取り組み
CeBIT2000を取材して、携帯電話関連で最も顕著に感じられたことは、WAP(Wireless Application Protocol)への取り組みだ。速報などでもお伝えしたように、大手メーカーの主要モデルがほとんどWAPに対応し、NOKIAもWAPサーバーをCeBIT2000に合わせてリリースしている。会場内のデモもWAP関連が非常に多く見受けられた。
端末がWAPに対応する一方、WAPを活かした周辺機器もいくつか登場している。なかでも会場内で注目を集めていたのがドイツのSIEMENSが出品していた「IC35 The Unifier」というPDAだ。
IC35は240×160のモノクロ液晶ディスプレイを搭載したキーボード付きPDAで、GSM携帯電話と連携することにより、WAPコンテンツの閲覧やSMS(Short Message Service)メールの送信などができる。PCとの連携もでき、本体を閉じた状態でセットできるクレイドルが添付されている。キーボードはQWERTY配列を採用しており、ESCやSHIFTなどのキーも省略されていない。ただ、キーストロークは浅く、キートップも小さい。日本のエクシーレに近いキータッチだ。IrDA準拠の赤外線通信ポートも備え、ストレージメディアにはMMCを採用している。2000年春からヨーロッパで販売をするそうだが、こうした日本のメール端末に近い商品がどのように受け入れられていくのかは非常に興味深い。
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「SIEMENS IC35 The Unifier」サイズ:108×86.5×20.5mm、191cc、163g(バッテリー込み)。シリアルポート/赤外線通信ポート(IrDA)搭載。MMC×2、Smartcardスロット×1を備える |
右側にあるのがクレイドル。ボディは写真を見てもわかるように、かなりコンパクト。来場者も一本指打法で捜査する人が多かった
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また、既存のPDAでWAPコンテンツを閲覧できる環境も整い始めている。たとえば、フィンランドのMTDS(Mobile Technology Dtacommunication MTD Oy.)がカシオブースで展示していた「WAP on Windows」がそうだ。第5回のレポートでCASSIOPEIAのGSM携帯電話内蔵モデルがWAPコンテンツを閲覧できると紹介したが、実はそこに使われているのが同社のWAP on Windowsなのだ。同社はカシオのブースなどで、現行のCASSIOPEIAにWAP on Windowsを組み込み、GSM携帯電話と組み合わせてデモンストレーションを行なっていた。
WAP on WindowsにはWAPブラウザの他、GSM携帯電話用ソフトウェアモデム、SMSソフトウェア、携帯電話の電話帳とPCのOutlookのデータをシンクロできるPhoneManagerなどが含まれている。同社の担当によれば、すでに日本の企業との交渉も行なっているそうで、近いうちに日本版WAP on Windowsが楽しめるかもしれないという。また、同社ではWindows CE上で動作するWAP on Windowsの他に、Windows 95/98上で動作するバージョンも用意している。できることなら、日本での発売も期待したい。
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「MTDS WAP on Windows」CASSIOPEIAにインストールし、GSM携帯電話と接続してWAPコンテンツが閲覧できる。日本市場への参入も検討中とか
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■ CeBIT2000ケータイよもやま話
最後に、CeBIT2000の会場で見つけた携帯電話関連のネタを2つほど紹介しよう。まず、こちらはドイツテレコムのブースで見つけた自動販売機。携帯電話でコーラが買えるというデモンストレーション。一瞬、「お、Bluetoothか?」などと勘違いしてしまいそうだが、実は携帯電話から自動販売機に接続された電話機を呼び出し、音声ガイダンスに従って操作をするというものだ。行列ができるほどのにぎわいだったが、日本人の感覚からすれば、ポケットから小銭を出した方が早いんじゃないの? という感じ(笑)。
一方、会場内のオープンスペースには、NOKIA SHOPが出展していた。NOKIAの携帯電話の他、アクセサリー類も販売している。ちなみに、ヨーロッパは携帯電話のブランド志向が非常に強く、どこの事業者の携帯電話にするのかを選ぶのではなく、どのメーカーの製品にするのかを最初に決めるそうだ。だからこそ、こうしたショップの出展も可能になるというわけだ。日本の展示会で「Panasonic SHOP」や「NEC SHOP」が出展する可能性……少ないだろうなぁ(笑)。
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ドイツテレコムのブースでは携帯電話でコーラが買えるデモを実施。Bluetoothではないので、念のため(笑)
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会場のオープンスペースにはNOKIA SHOPが出展し、アクセサリー類などを販売。会場のNOKIAブースにひけを取らないほど、毎日、人でごったがえしていた
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◎関連URL
CeBIT2000のホームページ(英文)
http://www4.cebit.de/index_e.html
(法林岳之)
(2000/3/8)
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