法林岳之の非同期通信レポートMobile
第5回:CeBIT2000レポート CeBITで見かけた世界の携帯電話 【後編】
国内では数多くのメーカーが携帯電話を各事業者向けに開発しているが、世界に目を向けると、まだ見ぬ強豪メーカーが数多く存在する。CeBIT2000ではGSM携帯電話を開発するメーカーの携帯電話を数多く見ることができた。後編では、こうした製品をいくつかピックアップして紹介しよう。
■ まだ見ぬ強豪メーカーの携帯電話
まず、フランスのALCATEL。ヨーロッパを代表する総合通信機器メーカーのひとつだ。残念ながら、日本向けに携帯電話は販売していないが、フランスらしいセンスのいいデザインの携帯電話が多い。今回のCeBIT2000ではOneTouchシリーズの新モデル「One Touch500」「One Touch700」シリーズなどを出品している。いずれのモデルもWAPに対応しており、最上位モデルのOne Touch700シリーズはBluetoothを搭載し、GPRSにも対応するという。出荷開始は年内を予定しているため、CeBIT2001では実機を触れるようになっているかもしれない。余談だが、同社はすでに中国語を表示可能な端末を開発しており、そのことを考慮すれば、日本市場向けに端末が登場する可能性も十分考えられるだろう。
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ALCATEL OneTouch 500 WAP対応端末。写真の他、カラフルなカラーバリエーションをラインアップ
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ALCATEL OneTouch 700 Bluetoothを搭載したWAP対応端末。2000年第4四半期に登場する予定
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同じフランス勢のSAGEMもなかなかデザイン性に優れた製品を出品している。たとえば、カラフルなボディの「MC920」もそのひとつだが、機構的に面白いのが「MC959」というモデル。写真を見てもわかるように、フリップ式の携帯なのだが、フリップを開くと本体を自立させることができる。現状ではコネクタ部が底面にあるため、モバイル向きではないが、コネクタの位置さえ変更すれば、なかなか便利なアイデアと言えないだろうか。また、SAGEMではこの他にも、液晶パネルのカバー部分が着せ替えられる「MC950」などを出品していた。
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SAGEM MC920 サイズ:116.5×45.5×18.5mm、117g。丸味を帯びたデザインを採用したカラフルな端末。日本でも女性向けにはウケるのでは?
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SAGEM MC950 サイズ:116.5×45.5×18.5mm、95g。液晶ディスプレイの回りの部分を交換できる着せ替えタイプの携帯電話
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SAGEM MC959 サイズ:116.5×45.5×18.5mm、95g。フリップ部分をスタンドとしても使えるのが特長。ハンズフリー通話時に便利。Palmシリーズとの接続キットも提供される
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次に、ドイツのSIEMENS。日本ではどちらかと言えば、半導体などで知られているが、実はネットワーク機器やPC、周辺機器など、幅広い分野の製品を手掛ける総合電器メーカーだ。日本で言えば、NECや富士通に相当するような企業と考えてもらえればわかりやすいだろうか。SIEMENSは地元ドイツでの開催ということもあり、携帯電話ではWAP対応の「C35i、M35i、S35i」の3つの新製品を出品していた。C35iはシンプルさとカラーバリエーション、M35iは絵文字によるメッセージ機能、S35iは軽量さがセールスポイントとなっている。もちろん、3機種ともWAP対応だ。
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SIEMENS C35i(左) サイズ:118×46×21mm、88cc、110g
SIEMENS M35i(中央) サイズ:118×47×22mm、99cc、125g
SIEMENS S35i(右) サイズ:118×46×21mm、89cc、99g
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ドイツ勢ではBOSCHも会場で目立っていた。BOSCHと言えば、自動車用品でおなじみだが、実は携帯電話などの通信機器も製造している。CeBIT2000では主に新製品の「1886」をデモンストレーションしていたが、これがなかなかドイツらしい質実剛健なデザインでカッコいい。その一方で若年層を狙った「GSM 509 DUAL」のようなスケルトンボディの携帯電話もラインアップしている。
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BOSCH 1886 サイズ:112×44×22mm、85cc、97g。ドイツらしいデザインを採用したWAP対応端末
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BOSCH GSM 509 DUAL サイズ:134×53×23mm。若年層を狙ったスケルトンボディの端末。着信メロディも可能
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続いて、GSMエリア内でも携帯電話先進国と言われるフィンランドのBENEFON。ここもデザイン性に優れた製品をラインアップしているが、なかでも「Benefon Q」はメタリックな感じがなかなかカッコいい。Benefon QはMicrosoftのMobile Explorerを搭載したWAP対応端末で、100×48ドット表示が可能な液晶ディスプレイを搭載する。もうひとつはGSM携帯電話にGPSを組み合わせたナビゲーション機能付き携帯電話「Benefon Esc!」だ。こちらは100×160ドット表示が可能な大画面液晶を搭載しているが、対衝撃・耐水性能も兼ね備えている。実用本位のアウトドアモデルといったところだろうか。
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BENEFON ESC! サイズ:129×49×23mm、150g、138cc。GPSを組み合わせたナビゲーション機能付き携帯電話。大画面液晶にはカーナビのようなマップも表示可能
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BENEFON Q サイズ:100×46×18mm、89g、74cc。メタリックなデザインを採用した端末。Microsoft MobileExplorer搭載
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速報でも紹介したが、イタリアからはTelit Mobile Terminals S.p.A.が出展している。同社の製品はイタリアらしい明るい陽気なデザインが魅力だが、FMラジオを内蔵した「Gm910」では同じデザインの外部スピーカーをオプションで提供している。写真には出ていないが、ネックストラップとイヤホンを組み合わせたオプションも用意しており、使い勝手もなかなか良さそうだ。
また、電気製品ではヨーロッパで最も強いと言われるPHILIPSは、サッカーのEURO2000のスポンサーになったこともあり、同大会の記念モデルを出品していた。サッカーファンらしき来場者が熱心に見入っていたが、機能的にはあまり新しいものがなく、他社に比べるとやや寂しい印象は否めなかった。
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Telit Mobile Terminals S.p.A. Gm910 サイズ:125×55×21mm、100g。FMラジオ内蔵GSM携帯電話。オプションで外部スピーカーやヘッドホン内蔵ネックストラップも提供
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PHILIPS EURO2000モデル サッカーのEURO2000のスポンサーを記念したモデルを展示。さすがドイツだけに、サッカーファンの熱い視線が注がれていた
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ヨーロッパ勢以外では台湾のACER、韓国のSamsungが頑張っている。ACERはスケルトンボディの「D68」、全面液晶を採用した「P80」をラインアップしている。他のメーカーに比べれば、まだ地味な存在だが、流行りのポイントはしっかり押さえている。
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ACER D68 スケルトンボディを採用した普及モデル
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ACER P80 全面液晶ディスプレイを採用。WAPに対応し、PDA機能も搭載
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Samsungは昨年来、さまざまな話題性に富んだ製品を次々とリリースしており、今やアジアを代表する携帯電話メーカーに成長している。今回は腕時計型の「Watch Phone」、MP3プレーヤーを内蔵した「MP3 Phone」の実機を見ることができた。Watch Phoneは腕時計としてはやや大きめだが、十分実用になるレベルのボディサイズに収められている。MP3 Phoneは搭載メモリが32MBと少ないのが難点だが、MDプレーヤーなどと同じような専用リモコンが付いているあたりが便利そうだ。SamsungはcdmaOne方式に対応した面白い携帯電話を次々リリースしているので、ぜひとも日本市場への参入を期待したい。
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Samsung MP3 Phone サイズ:106×44×19.3mm、97g。専用リモコンも付属するMP3プレーヤー内蔵携帯電話
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Samsung Watch Phone 噂のCDMA方式の腕時計型携帯電話。アンテナ部はやや出っ張っているが十分実用になるサイズ。日本での発売を期待したい
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Samsung TV Phone 液晶カラーテレビを内蔵した携帯電話。アンテナ部分にテレビっぽさを感じさせる
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■ 世界の携帯電話は面白い!
国内ではあと1年ちょっとでW-CDMAのサービスが開始される予定だ。ヨーロッパでの展開はまだ数年先になるが、W-CDMAでは日本仕様とヨーロッパ仕様で80%近いパーツが共通化されるため、ローミング端末の開発や市場の相互参入がしやすくなると見られている。CeBIT2000にはここに紹介したもの以外にも非常に数多くの携帯電話が出品されていた。とてもすべては紹介しきれないが、ここで紹介したものはできるだけ各製品のページなどにリンクを張ってある。ぜひ各社のホームページで、どんな製品が出ているのか、どんなスペックなのかをご覧いただきたい。
GSM携帯電話はスペック的に見ると、日本国内で販売されている携帯電話に比べ、まだまだ劣っている。これは偽らざる感想だ。しかし、デザイン面や他の機器との融合などに目を向けると、GSM携帯電話に学ぶべき点は多い。特に、所有してうれしくなる、楽しくなるような個性的な携帯電話は、日本の消費者にも受け入れられるはずだ。次世代へ向けて、世界各国のメーカーの製品と日本製が競い合うような市場が形成されることを期待したい。
■会場でゲットしたグッズをプレゼント
最後に、お土産というほどのものでもないが、読者のみなさんに会場でゲットしてきたグッズをいくつかプレゼントしたい。詳しくはこのページ下をごらんください。
◎関連URL
CeBIT2000のホームページ(英文)
http://www4.cebit.de/index_e.html
(法林岳之)
(2000/3/6)
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