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法林岳之の非同期通信レポートMobile

第4回:CeBIT2000 速報レポート
プラスαの携帯電話端末たち


会場入口
ハノーバー・メッセのエントランス。市電側からアクセスすると、この入口を利用することになる

 2000年2月24日からドイツ・ハノーバーメッセで開催されているCeBIT2000。情報通信関連では世界最大のイベントとして知られており、世界中のメーカーがさまざまな新製品や新技術を公開している。今回は携帯電話関連に的を絞り、速報をお伝えする。

 速報をお伝えする前に、まずお断りしておくが、ヨーロッパは世界で最も普及しているGSMと呼ばれる方式の携帯電話が利用されている。そのため、ここで紹介する製品は必ずしも日本市場との関連はない。ただ、後述する次世代携帯電話のことを考慮すると、将来的にも無関係というわけでもない。そのことを踏まえた上で、レポートをご覧いただきたい。



■ 世界最大のCeBIT

 CeBITは世界最大の情報通信関連のイベントだ。そのため、出展者数も非常に多く、会場も猛烈に広い。幕張メッセの数倍は確実にあり、会場内の移動にはバスも運行されている。最近、日本でも流行しているキックボードで移動する人も見かける。筆者はここ数年、LasVegasで開催されているCOMDEX/Fallに毎年出かけているが、CeBITはそれをはるかに上回る規模の展示会と言えるだろう。

 CeBIT2000が開催されているハノーバー・メッセは、展示ホールが大小合わせて26ホールもあり、「Telecommunication」と題されたホールだけでも7つも存在する。そして、その内の1つにはNOKIA、Ericsson、Motorola、SIEMEMS、Panasonic、NECといった世界の名立たる携帯電話メーカーが立ち並んでいる。そのため、とてもすべてを紹介することはできないが、その中で目に付いたものをピックアップして紹介しよう。

■ CASIO G-SHOCKケータイにライバル現わる!?

 この2月に日本で発売された携帯電話の中で、ひときわ目を引くものと言えば、やはりDDI-セルラー/IDOのカシオ製「C303CA」だろう。C303CAは今までの携帯電話にはない対衝撃・耐水性能を実現しているのが特長だ。

 このC303CAの強力なライバルとなる携帯電話が世界の二大メーカーから出品されている。ERICSSON R310SとNOKIA 6250だ。ともに、C303CA同様、対衝撃・耐水性能を実現している。デモンストレーションも強烈で、ERICSSONではR310Sを床に落とし、NOKIAでは6250を水槽に落とすなど、両社とも手荒い(笑)。

NOKIA6250 NOKIA6250 NOKIA6250
NOKIA 6250。6210をベースに開発された対衝撃・耐水性能モデル NOKIA 6250の水没デモ。写真では見えないが、底面の端子はむき出しのまま

ERICSSON R310S ERICSSON R310S
ERICSSON R310S。アンテナ部分は柔らかいゴムのような素材を採用

ERICSSON R250S Pro
ERICSSON R250S Pro

 ERICSSON R310Sは本体を壊れないようにするため、携帯電話で破損が多いと言われるアンテナ部分を三角形のやや柔らかいプラスチック(ゴムかウレタン?)製のものにするなどの工夫をこらしている。これに対し、NOKIA 6250は同じ新製品の6210をベースに、ボディ回りにプロテクターを装備し、アンテナを本体に内蔵するなどの強化が図られている。ちなみに、前述の水没デモでは底面のコネクタ部分の金属端子がむき出しのままだったが、実際にその状態でも動作するように設計されている。C303CAが底面端子部分にキャップを採用していることを考えれば、NOKIA 6250の方が一枚上手とも言える。

 また、R310Sでも物足らないというユーザーのために、ERICSSONではR250S Proという製品もラインアップしている。こちらはボディがもうひと回り大きく、業務用の無線機のような印象を受ける。R310Sがアウトドア向けとするなら、こちらはヘビーデューティ向け。工事現場で働く人や天候に関係なく作業をしなければならない人に適した製品と言えるだろう。



■ 携帯電話のプラスαはなんだ?

 冒頭でも触れたように、ヨーロッパで採用されているGSM方式の携帯電話は世界で最も普及している。日本ほどではないが、CeBITの会場を歩いていても携帯電話を使っている人をよく見かける。これだけ携帯電話が普及し、携帯電話を肌身離さず持つようになると、携帯電話のプラスαの機能を求めるようになる。これは日本でもヨーロッパでも同じことだ。

ERICSSON R310
前述のR310SにMP3プレイヤーを装着。ネックストラップと組み合わせるとなかなかオシャレだ

 そこで登場してくるのがオーディオ系の機能を追加した携帯電話だ。ERICSSONは同社のGSM携帯電話に接続するタイプのMP3プレイヤーを出品している。日本で販売されている乾電池を使った汎用充電キットとほぼ同じ程度の大きさに収められており、MP3プレイヤーは携帯電話本体のバッテリーで動作する。

 これに対し、Samsungは携帯電話にMP3プレイヤーを内蔵した製品を出品している。こちらはリモコンも付属しており本格的だが、メモリ容量が32MBと少ないのが難点だ。SamsungはMP3プレイヤー内蔵モデルに続き、カラー液晶テレビの機能を搭載した「SCH-M220」も出品している。来場者も一瞬、「おっ、動画通信か?」と期待するのだが、カラー液晶テレビとわかると、少し落ち着きを取り戻し、画質などをチェックしていくのが印象的だ。カラー液晶テレビは数万円で購入できるが、携帯電話でも見られるようになれば、日本のプロ野球ファンなどにもウケるかもしれない。ちなみに、来年には韓国で販売が開始される予定だ。

SAMSUNG SAMSUNG
SamsungのMP3プレイヤー内蔵携帯電話。付属リモコンは液晶ディスプレイも装備した本格派 Samsungのカラー液晶TV内蔵携帯電話。一見、動画通信かと勘違いしてしまう。アンテナがテレビらしいかも

Telit Gm910
Telit Gm910。FMラジオを内蔵しているが、オプションで外部スピーカーも提供。デザインも独特のセンスが光る。日本でも売らないかな?

 また、MP3に対し、以前から製品がよく見かけられたのがFMラジオを搭載した携帯電話だ。日本でもPHSにFMラジオ搭載モデルが販売されていた。CeBITの会場でもいくつか同様の製品を見かけたのだが、最も目立っていたのはTelitの「Gm910」という製品だ。写真を見てもわかるように、その独特のデザインが目を引くが、オプションで同じコンセプトでデザインされた外部スピーカーまで用意されているところが強烈だ。どうせFMラジオを搭載するなら、やはりこれくらいは凝ってもらいたい(!?)。



■ GSM携帯のトピックはWAPとパケット通信

 CeBITの会場で各社の携帯電話を見ていて気づくのがWAP対応端末の多さだ。ほとんどのメーカーの主力モデルはすべてWAP対応となっており、WAP非対応端末はローエンドの一部のモデルに限られるほど増えている。また、端末の増加に合わせ、サーバー側のソフトウェアも増えてきている。NOKIAはWAPサーバーを発表し、オンライントレーディングのデモなどを公開していた。来場者の関心も非常に高い。

ソニー
ソニー CMD-Z5。コンパクトなボディが来場者の注目を集めていた

 こうした新しいWAP端末の中で注目を集めていたのがソニーの「CMD-Z5」だ。ソニーは国内でDDI-セルラー/IDO向けにWAP対応cdmaOne端末を発売しているが、GSMエリア向けにはまったく異なるタイプの製品を持ち込んでいる。旧NTTパーソナル時代にソニーが販売していたPHSとほとんど変わらないほどのコンパクトなボディで、フリップの内側にボタン類と液晶ディスプレイを配するレイアウトを採用している。CMD-Z5はWAPだけでなく、HTMLページも閲覧できるMicrosoftのMobileExpolorerを搭載しているのも特長のひとつだ。日本で考えれば、EZサービスとiモードの両方が見られるということになる(実際には実現しないだろうが)。

 一方、WAPと並んで対応製品が増えているのがGPRSだ。GPRSは言わば、GSM版PacketOne/DoPaのようなもので、パケット通信による常時接続を実現している。ハイエンドのモデルにはほぼ標準的に搭載されており、次世代携帯電話へ向けて、各社ともパケット通信のノウハウの蓄積に熱心なようだ。



■ 携帯電話とPDAの統合・連携もトレンド

 携帯電話の普及に伴い、国内ではPDAとの統合や連携が注目されているが、日本と並ぶ携帯電話の先進エリアであるヨーロッパでも同じことが起きている。

ERICSSON
ERICSSON PDA開発モデル。EPOC OSを採用。BluetoothやGPSも搭載したGSM携帯電話

 たとえば、ERICSSONが出品していたPDA端末もそのひとつだ。EPOC OSを採用したPDAで、メールなどをはじめとする通信機能とスケジューラなどのPDA機能を実現している。GSM携帯電話としての機能も持ち、BluetoothやGPS機能も搭載するという。今回出品されたものはプロトタイプでしかなく、サイズもかなり大きいが、同社がすでに発表しているBluetoothを利用したイヤホンマイクなどと組み合わせれば、企業などには受け入れられるのではないだろうか。

 また、カシオはプレスカンファレンスにおいて、同社のPalm-size PCのCASSIOPEIAのGSM携帯電話内蔵モデル、Bluetooth対応モデルを公開している。いずれも開発中のモデルのため、GSM携帯電話内蔵モデルはCASSIOPEIAの背面にGSMモジュールを取り付けた強引な構成となっており、Bluetooth対応モデルもワイヤレスでのシンクロはまだ実現できていない。しかし、GSM携帯電話内蔵モデルはWAPブラウザも搭載しており、WAPコンテンツの閲覧も可能だ。Bluetooth対応モデルももう少し時間があれば、ワイヤレスでのシンクロもできるようになり、ボディも現行モデルよりも数mm厚い程度に収められるという。

CASIO CASIO CASIO
カシオ GSM携帯電話内蔵CASSIOPEIA。開発中モデルだが、すでに通話やWAPページの閲覧ができる

CASIO CASIO
カシオ GSM携帯電話内蔵CASSIOPEIA カシオ Bluetooth対応CASSIOPEIA。背面のCFスロットを利用した開発モデル。Bluetoothのユニットは製品化の際には本体に内蔵する

 一方、SIEMENSは「IC-35 Unifier」という製品を出品している。写真を見てもわかるように、いわゆるメール端末と同じタイプのデザインを採用しており、WAP対応ページの閲覧、携帯電話やPCとの連携などのを可能にしている。Smartcardにも対応し、ストレージメディアとしてMMCを採用するなど、拡張性や応用性を考慮した製品になっている。日本でもこういう製品が出てくれば、さらにWAPをはじめとする携帯電話向けコンテンツがさらに発展する可能性が高い。

 PDAとしてはヨーロッパでも高い人気を得ているPalmは、CeBITでカラー版Palmを発表したが、アメリカで販売しているPalm VIIに相当するモデルのヨーロッパ向け製品は発表されなかった。しかし、プレスカンファレンスの席上、年内にも何らかのアクションを起こす考えであることをコメントしている。現状で多くのメーカーが携帯電話との連携や統合を実現しているため、Palmシリーズも同じ方向に進まなければならないということだろう。日本市場向けも同様であることを期待したい。

SIEMENS Palm
SIEMENS IC35。PCや携帯電話との連携を考慮した端末。バッテリーを含んで163gとかなり軽量 Palm IIIc。話題のカラー版Palm。アメリカで販売されているPalmVIIのヨーロッパ向けモデルなどの発表は見送られた



■ 次世代携帯電話へ向けて

 IMT-2000と呼ばれる次世代携帯電話は、いよいよ今年4月から日本でトライアルが始まり、来春には正式にサービスが開始される。GSMエリアでの展開はもう少し先になるが、CeBITの会場ではすでに次世代携帯電話市場へ向けた争いが始まっている。

 モバイルセントラルの読者ならご存じのように、次世代携帯電話はNTTドコモやヨーロッパ勢が採用するW-CDMA、DDI-セルラー/IDO陣営とアメリカ勢が採用するcdma2000という2つの方式が存在する。この内、W-CDMAでは日本向けとヨーロッパ向けの製品はおよそ80%のハードウェアが共通化される。既存サービスとの互換性を保つために、若干の違いは出るが、基本的に日本メーカーはヨーロッパ市場に参入しやすくなると言われている。

 しかし、これは裏を返せば、ヨーロッパのERICSSONやNOKIA、SIEMENS、BOSCHといった世界的にもトップクラスのメーカーが日本に本格的に参入する可能性も高いことを意味する。つまり、ここで紹介した製品の内のいくつかは、将来的に形を変え、日本市場に登場する可能性も十分にあるというわけだ。ヨーロッパ勢のメーカーも日本市場には非常に注目しており、取材中、「iモードは便利か?」「cdmaOneはどうだ?」と逆に質問されることもあったほどだ。

 もちろん、ヨーロッパのメーカーも機能的に学ばなければならない点も多い。たとえば、こちらでは着信メロディがようやく単音で始まったレベルで、バイブレーション機能やマナーモードをセールスポイントに製品もあるくらいだ。競争の激しい日本市場で彼らが勝ち抜いていくためには、単に日本市場を意識するだけでなく、日本のユーザー動向を理解するための努力もかなり必要になるだろう。

 しかし、携帯電話の文化としてはアメリカよりも身近な点が多く、来年以降もぜひCeBITの取材をしてみたいと感じさせられる毎日だ。会期はまだ数日残っているが、取材を続け、帰国後にさらにいろいろな携帯電話や通信機器を紹介したい。

◎関連URL
CeBIT2000のホームページ(英文)
http://www4.cebit.de/index_e.html

法林岳之@ハノーバー)
(2000/2/28)



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