トピック
BEV・PHEVの違いは? 〇〇EVの種類と特徴を知ろう
2022年1月6日 08:20
〇〇EV=電気モーターで動くクルマ
EV(電気自動車)が話題になっています。「トヨタは30年までにBEV 350万台」「ソニーが自社でEVを」「EUではBEVを積極推進」など、'21年後半から多くの“EV”に関する話題が登場しています。
また、この先、電動車であればよいのか、電気自動車でなければならないのか等、さまざまな話が交錯しています。ただ「〇〇EV」と名の付くものが多く、EV、HEV、BEV、PHEV、FCVなど「それがなんなのかわからない」という人も多いのではないでしょうか?
いま、「なんとかEV」のように言われているものを羅列してみました。
EV 電気自動車
BEV (バッテリー式)電気自動車
HV ハイブリッド車
HEV ハイブリッド車
PHV プラグインハイブリッド車
PHEV プラグインハイブリッド車
FCV 水素自動車
FCEV 水素自動車
最初にこれらに共通して言えることは、基本的に電気のモーターを使って動かしているクルマで、水素自動車の一部を除けば走行用バッテリーを搭載していることになります。
そして、PHV→PHEV、FCV→FCEV、HV→HEVのように「E」の字を加え、電気モーターを使っていることを強調する言い方に変化しているのが最新の状況です。
電気モーターを使うメリットはたくさんありますが、電気モーターは同時に発電機にもなるため、減速時にエネルギー回収を行ない、加速時にそのエネルギーを使えば燃費改善に効果があるということになります。
次にそれぞれのクルマの仕組みをみていきます。
BEVは究極のシンプル系自動車。バッテリーに課題
まず、電気自動車と言われるBEVを見ていきます。EVと呼ばれることも多いですが、バッテリーの「B」を付けて、エネルギー源が充電式電池ということを明確にしたBEVという呼び名が広まってきています。広い意味での電動車と区別したい場合にはBEVと表記されることが多いようです。
具体的な車名では、日産「リーフ」に代表され、レクサス「UX300e」などがあり、過去にははじめての本格量産BEVである三菱の「i-MiEV」や、少量生産のBEVがありました。現在日本で購入可能なBEVは、国産車よりもテスラをはじめ輸入車のほうが種類が多い状態になっています。
BEVのメリットは、クルマの構造がシンプルなこと。要は電池の電気でモーターを動かして走り、減速時はモーターを発電機としてエネルギー回収を行なうだけです。
排出ガスがないのでそのためのマフラーや触媒などもありません。エンジンオイルもないので面倒で費用のかかるオイル交換も不要です。モーターの回転は幅広くトルクを出せるので通常はギアチェンジの仕組みはなく、加速時に息継ぎもありません。バックするときもモーターは逆回転ができるのでバックギアも必要ありません。また、エンジンのようにアイドリングの必要がなく、ゼロから力を出して回すことができるので、発進時のクラッチやトルクコンバーターも必要ありません。それらはつまり、走行を重ねることによる劣化部品や故障原因が少ないということになります。
特に冬場ではエンジンを温めるという必要もなく、冷えた状態でも通常どおり走り、寒い朝でも濃く臭い排ガスが出たり、高い回転数のアイドリング音でうるさかったりということもありません。
また、これはデメリットでもあるのですが、エンジンのような暖房熱源がないため冷暖房の動作が走行状態と関係なくなることです。冷暖房のためにエンジンをかけておく必要がなく、乗り込む前に冷暖房だけ動作させておくことも可能になります。
環境面においても、クルマが走行する周辺に排ガスやCO2排出はありません。排ガスやCO2の発生場所を発電所に置き換えただけとも言えますが、太陽光発電など再生可能エネルギーの利用や、発電所でまとめてCO2を排出すれば、CO2の処理技術の進化次第で個々のクルマから排出するよりも効率的にCO2削減ができる可能性もあります。
ここまでメリットばかりですが、最大の問題はバッテリーです。車両価格、充電時間、航続距離、劣化といった課題があります。
この課題は多数のメリットを覆すようなデメリットになりかねない状況でしたが、トヨタは関連会社を通じて埋蔵リチウムの開発まで手掛けるようになるなど、バッテリーの確保や進化も進んでいます。充電時間は高電圧の充電システムの開発や普及もあって解決の方向に向かっているほか、航続距離の問題は大容量バッテリーの搭載以外に、単純にガソリン車の燃料補給を置き換えるのではなく、充電場所や充電タイミングの最適化で解決を図ろうとしています。
ハイブリッド車の仕組みはさまざま
エンジンと電気モーターのハイブリッド車と言っても方式は多数あり、クルマを動かす動力源として電気モーターを使う比率や仕組みはさまざまです。電気モーターで少しアシストするだけのクルマから、協調して動かすクルマ、そして、エンジン回転をすべて発電に費やしすべて電気で動かすタイプのクルマまであります。
共通する点は走行用バッテリーを搭載し、減速時はエネルギーを回収して蓄え、エネルギーを効率的に使い、結果として燃費を良くしていることです。
方式別では最も普及しているのはトヨタのTHS(THS II)という方式です。プリウスをはじめトヨタのハイブリッド車はほぼこの方式で、エンジンの回転とモーターの回転を状況に応じて連続的に混合して走行します。制御は非常に複雑で、アクセルペダルを踏んだからといってそのぶんだけエンジンやモーターが回るという単純なものではありません。
どちらがどのくらいの力を出すかの制御がまさにこのシステムの肝となり、走行状況やエンジンの温まり具合、充電具合などさまざまな状況から最適な状態を作り出せるようになっています。すでに1997年の市販開始から四半世紀近くたち、この間の進化もあって低燃費車のリーダー的存在であることは誰もが認めるところです。
次に日産が採用する「e-POWER」と2021年にダイハツが搭載開始した「e-SMART HYBRID」はシリーズハイブリッド方式です。エンジンは発電に徹し、走行はすべて電気モーターによるものです。バッテリー式電気自動車との共通性が高く、日産の場合は電気自動車に使う電気モーターをそのまま使っており、発電時にエンジン音はするものの走り自体はBEVのようなレスポンスが良く、アクセルペダルを緩めると減速するワンペダル運転を可能にするなど、BEVに近い走行を実現しています。
採用するクルマは日産は「ノート」や「セレナ」など、ダイハツは「ロッキー」でシリーズハイブリッド方式を選ぶことができます。
シリーズハイブリッド方式はトヨタのTHSに比べれば駆動メカニズムはシンプルで、エンジンも効率良い回転数だけ使うことができ、エンジンの搭載場所と駆動部分の配置も自由度が高くなるなどしていますが、肝心の燃費はトヨタのTHS方式には及んでいません。
ホンダの「フィット」などで選べる「e:HEV」や三菱の「アウトランダー」「エクリプスクロス」のPHEVに搭載するハイブリッドシステムは、通常はシリーズハイブリッド車のようにエンジンは発電だけ、電気モーターで走行しますが、高速巡航などのエンジンの回転を直接タイヤに伝えたほうが効率が良い場合だけエンジンの力で走行する方式です。ストップ&ゴーのある街乗りではシリーズハイブリッド車と同様、BEVのような走行が可能です。
このほか、電気モーターは使っていてもエンジンの回転を手助けするだけで電気モーターだけでは前に進まないハイブリッドがあり、一般的にはマイルドハイブリッドと呼ばれています。マイルドとはいえ、減速時のエネルギー回収や燃料消費の多い加速時のエンジンを助けるため燃費改善には効果があります。本格的なハイブリッド車よりも低コストで少ない部品追加で実現できるため、車両価格を含めた総コストや、より多く普及が見込めるため、地球全体のCO2削減という点で十分メリットがあると考えられています。
また、プラグインハイブリッド車は上記のハイブリッド車のシステムに加え、外部から電源をつないで走行用バッテリーに充電することができます。つまり「プラグイン」して充電し、電気での走行比率を高めたクルマです。BEVの良い点を継承しながら、ガソリンなどのエンジンを併用することで、充電ができない場合でもガソリンなどを給油することで航続距離を伸ばすことができます。
水素自動車の新しい取り組み
次に水素自動車です。トヨタの「MIRAI」やホンダの「クラリティ FUEL CELL」がそうです。水素をエネルギー源として走行しますが、現在市販されている水素自動車はすべて水素から電気を発生させる燃料電池を搭載し、あとは電気モーターによってクルマを動かします。電気モーター以降のメカニズムはBEVと同じで、走行メカニズムのメリットも同じと言ってもよいでしょう。また、エネルギー回収用に、少しのバッテリーを搭載しているところはハイブリッド車と同じです。
水素自動車のメリットとしては環境対策と、少ない燃料充填時間で長い航続距離が見込めることです。燃料電池で電気に変換しても出るのは水だけ。有害な排出ガスはありません。BEVと同様、騒音と振動が少ない快適な移動空間を実現しやすくなります。
しかし、デメリットは水素の扱いが面倒で、水素スタンドをガソリンスタンドのようにあちこちに建てるのはかなり難しいという問題があります。しかも、セルフスタンドのようにはいかず、安全装備を付けたスタッフが水素充填作業をしなければならないということもあり、手軽に燃料補給とはいかない点が水素自動車の課題です。
また、水素自動車は燃料電池だけでなく、水素を直接燃やしてエンジンを回そうという取り組みもトヨタが2021年からレースの現場で進めています。電動車ではありませんが、水素を燃料とする従来のようなエンジンを搭載し、音も振動もエンジン車に近くなります。
ちなみに、トヨタが'21年5月の発表からFCVをFCEVと言い換えたのもの、水素自動車が水素を燃やすタイプと、燃料電池で電気に変換して電気モーターを回す「FCEV」を区別したかったのかもしれません。
クルマの電動化は進んでいる。あとは「BEV化がいつか」
ここまで紹介したBEVからHEV、FCEVまで、クルマの電動化という意味ではすべて含まれます。例えばトヨタのハイブリッド車に乗っていればクルマの電動化は済んでいるということになります。そういう意味で日本のクルマの電動化比率は意外に高いと言えるでしょう。
しかし、2021年の途中で、クルマの電動化を目指すということから、それを通り越して一気にBEVやFCEVに行く目標を掲げる国やメーカーが増えてきました。EUでは2035年までにHEV(ハイブリッド車)を含むエンジン搭載のクルマの販売が禁止される案が示されています。HEVでもダメということになれば、現在のエンジン技術を捨てるということになり、ガソリンスタンドも不要になってしまうということです。
目標年まで設定されていますが、それまでに充電環境はどうするのか、FCEVにするなら多額の費用がかかる水素スタンドはだれがどう整備するのかなど課題は山積みです。あくまで目標であって実現は不可能と考える人も多いですが、目標どおりでなくてもこの流れは進んでいくと思われます。
現在のクルマまで使用禁止とまではならないと思われるため、仮に2030年すぎにBEVとFCEVしか新車が手に入らない状況になったとしても、ガソリンスタンドがすぐになくなったりはしないでしょう。
しかし、ある時点でBEVの普及は加速度的に高まると予想する人もいます。現在のように規制によってBEV化を加速するのではなく、騒音と振動が少なく、排ガスの匂いもない快適な乗り物ということで高級車から積極的にBEVが選ばれるのではないかという予想です。
2021年12月のトヨタの発表では、高級車ブランドのレクサスでは2030年に中国、欧州、北米で100%、2035年には世界で100%BEVにするとしました。需要を確実に捉えていくトヨタがこの予定を立て、海外のプレミアムブランドもBEVのラインナップを充実させていることからも、これが現実と言えるでしょう。
ちなみに、これまでFCEVをかなり推していたトヨタですが、レクサスは100% BEVとしているのでレクサスでのFCEVの展開はないことになるかもしれません。