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ガーミンで快眠。ビジネスパーソンに睡眠が重要なワケ
2023年6月7日 08:00
ガーミンジャパンは、GPSウォッチのフラッグシップモデル「fēnix 7 Pro」「epix Pro」の発表会を開催した。仕事にもアクティビティにも本気で取り組む“ビジネスアスリート”向けの製品で、オンでもオフでも活躍できるデザインや機能を盛り込んだ、同社のフラッグシップモデルと位置づけている。
製品は6月1日に発表済み。6日の発表会では担当者が従来モデルからの進化点を解説した。また第2部では、ビジネスパーソンのパフォーマンスに睡眠が重要という観点から、10万人の睡眠を改善したというスリープコーチの角谷リョウ氏が登壇、睡眠の質の改善について、ガーミンの睡眠計測や体の“エネルギー残量”を表示する「Body Battery」(ボディバッテリー)の機能などを絡めながら解説した。
進化した第5世代の心拍計搭載
「fēnix 7 Pro」「epix Pro」の内部の機能はほぼ共通。大きく違うのは「fēnix 7 Pro」はすべてソーラー発電対応で、液晶ディスプレイ(MIP液晶)であること、「epix Pro」はソーラー発電に対応せず、より綺麗なAMOLED(有機EL)ディスプレイを搭載すること。相対的に「epix Pro」はカジュアル寄りだが、どちらも多機能で本格的なアクティビティに対応するGPSウォッチになっている。
両シリーズに共通しているのは、光学式心拍センサーが第5世代に進化した点。グリーンライトセンサーは従来の4つから6つになり、激しいスポーツでもより高精度な計測が行なえるようになった。また上部側面に搭載されるLEDフラッシュライトも両シリーズの合計10機種すべてに搭載される。
このほかガーミンブランドのフラッグシップモデルとして、MILスペック準拠のタフネス仕様、GNSSマルチバンドで素早く高精度な衛星測位、60以上のマルチスポーツをサポートといった特徴を備える。
ユニーク機能として引き続き搭載しているのが、1日の身体のエネルギー残量を数値化するBody Battery(ボディバッテリー)。TVゲームでおなじみの「HP」のような概念で、心拍や睡眠、ストレス、活動量などを元に独自のアルゴリズムで算出し、5~100の数字で表示する。起床後など1日の始まりはBody Batteryの数値が高く、活動に伴って減少し、休息をとるタイミングを客観的な数値で可視化して表示する。
健康は「運動」より先に「睡眠」から
今回発表されている両シリーズは、ガーミンが“ビジネスアスリート”と呼ぶ、ビジネスとスポーツなどのアクティビティの両方を精力的にこなす人に向けた製品になっている。
そこで発表会の第2部では、ビジネスパーソンの仕事のパフォーマンスを向上させる睡眠・快眠に着目。さまざまな企業と連携し「10万人の睡眠を改善した」というスリープコーチの角谷リョウ氏が、一般的な考え方やガーミン製品が対応している睡眠計測やBody Batteryの数値を絡めて、睡眠の改善方法を解説した。
角谷氏がまず指摘したのは、一般的に言われる「食事、運動、睡眠の3つが大事」という考え方について。これには優先順位があるといい、まず睡眠、次に食事、その次が運動という。「忙しい人が睡眠不足のまま、食事もちゃんと取らずに、運動を始めることでパフォーマンスを上げようとするケースが多い」が、これは良くないという。
ビジネスパーソンが睡眠の質を改善すべき理由は多い。睡眠不足は病気にかかりやすくなるほか、判断能力は飲酒相当とされ重大なミスを起こしやすく、ドライバーなどは生死に関わる事故につながる。またチームリーダーが寝不足だとチームの雰囲気や士気が低下、契約などで相手先企業からのイメージダウンを招くという。慢性的な睡眠不足はうつ病とも関連があると科学的に示されており、これは角谷氏の会社の独自調査でも同様の結果が出ているとする。
また6月は、環境的な要因で睡眠の質が下がりやすい時期。ひとつは気圧の低下で、6月は気圧低下の変化量の大きさが睡眠を妨げる要因になるという。これは湿度も同じで、平均は7~8月の湿度が高いものの、6月は変化量が大きく、身体が影響を受けやすい。さらに6月はエアコンの使用をためらう人が多く、結果として睡眠の質は低下しやすいのだという。
睡眠データ、重視すべきは「深い睡眠」の時間
角谷氏からは、「睡眠データを見てもよく分からない人が多い」として、ガーミンなどで計測する高精度で科学的根拠に基づいたデータについて、重視すべき順番やポイントが解説された。
ひとつめに重視すべきポイントは「深い睡眠」がどれぐらいか。1回の睡眠で「深い睡眠」が30分以下の場合、睡眠の質が低いとされ、注意が必要。若い人は2時間、それ以外の人は1時間半ぐらいあると十分とのこと。合計の睡眠時間よりも、まずは深い睡眠の時間を確保することが重要になっている。
2つめは覚醒の回数。1~2回は普通というが、回数が多い場合は環境をチェックすることで改善できるという。例えば遮光カーテンを使っていても、朝日で部屋を明るくしたいという理由で、遮光カーテンを少し開けて寝る人が多いとのこと。しかしこれは、夜の街の明かりが入る環境の場合、途中で覚醒する回数が増える原因になり、睡眠の質の低下を招くという。起床後に朝日を浴びるのは身体の健康に良いものの、遮光カーテンを使っているなら、寝ている間は閉めておくべきとしている。
3つめは「睡眠スコア」で100点中の80点ぐらいを目指すという点。スコアの考え方はアプリやプラットフォームにより算出基準が異なるため目安となるが、90点以上などを目指そうとすると睡眠時間が長くなり、ビジネスパーソンには難しいケースも多いとのこと。上記のように深い睡眠の時間を重視するなどの工夫で、睡眠の質は確保できるとしている。
Body Batteryは月間の推移でチェック
同氏からは計測したデータをどのように見るべきかも解説された。基本は1日単位でチェックし、つぎに1週間単位でみて曜日の傾向を把握する。例えば週末の夕食にお酒を飲むという習慣がある場合、金曜夜の睡眠は質が少し低下する(飲酒は深い睡眠が短くなる傾向がある)といった傾向が出てくるという。
3つめは、ガーミンで計測できるBody Batteryのような“エネルギー残量”の増減を28日単位(1カ月単位)で見て、平均の推移を確認すること。これが本質的な改善を図るポイントで、Body Batteryは起床後に80ぐらい、1日の仕事を終えた段階で20ぐらいが理想という。睡眠や食事、あるいは呼吸エクササイズなどで十分に回復させるのが重要で、Body Batteryの平均推移を高くすることでビジネスパーソンとして高いパフォーマンスにつながるとしている。
睡眠の質は「日中の活動」で決まる
では睡眠の質の低さが客観的に明らかになった場合、どのように改善できるのか。角谷氏は、睡眠関連の業界では一般的になっている「睡眠圧」を紹介する。これは身体が睡眠を求めるような適度な負荷を指しており「日中の活動が睡眠を作る」(角谷氏)というもの。
「寝られないと悩む人の8~9割は、日中に頭しか使っていない人。テレワークやフードデリバリーが発達しておかげで、1日1,000歩以下の人もいる。歩くのを1日2,000~4,000歩にするだけで睡眠は劇的に改善する。7,000歩も歩けば快眠できることは科学的にも判明している」(角谷氏)という。エグゼクティブを含め、ビジネスパーソンの中には、体力・筋力アップではなく、睡眠の質を上げるためにアクティビティをこなす人もいるのだとか。また3~5分などの短い時間でいいので、軽い筋トレをするだけでも睡眠の質が大きく改善するとしている。
一方で、極端な運動は大きな疲労が残り、睡眠の質を下げることが多いため「やりすぎると逆効果」とも指摘している。
なお、Body Batteryで表されるような数値は客観的であるものの、自身の感覚とは連動していない場合もある。「例えば喉が乾いた時、身体はすでに水分不足の状態というように、疲労感と(実際の)疲労は違う」(角谷氏)とのことで、感覚に頼りすぎず、客観的なデータを継続して記録することで、身体の疲労を数値で可視化でき、改善しやすいとしている。