ニュース

「電波レンズ」窓ガラスで5Gミリ波を屋内へ。ドコモとAGC

メタサーフェスレンズ(透明化処理前)

NTTドコモとAGCは、ミリ波帯(28GHz帯)の電波を屋外から屋内に効率的に誘導する「メタサーフェスレンズ」のプロトタイプを開発した。窓ガラスに特殊なフィルムを貼り付け「電波レンズ化」することで、減衰しやすい屋外からのミリ波帯の電波を屋内で利用可能にする。

5G evolutionや6Gで利用される高い周波数帯の電波は、LTE、sub-6帯の電波比べて直進性が高く、減衰しやすい。そのため、屋外基地局アンテナから発信された電波は建物の窓ガラスに到達するまでに減衰し、さらに減衰した微弱な電波は広がることなく屋内に入り込むため、屋外基地局アンテナによる建物のエリア化は困難だった。

今回開発された28GHz帯向けメタサーフェスレンズは、メタサーフェス基板上の小さな素子に複数の形状を持たせ、適切に配置することで窓ガラスを通るミリ波を屋内の特定の場所(焦点)に集めることができる。

焦点制御機能を有したメタサーフェスレンズ(透明化処理前)

窓ガラス全面を通る微弱な電波を焦点に集めることで電力を高めることができるため、焦点位置にリピーターやリフレクター等のエリア改善ツールを置くことで、屋外の基地局アンテナによる建物内のエリア化が実現できる。フィルム形状のため、屋内側から窓ガラスに貼り付けて利用が可能。また、透明度が高く景観に影響を与えない。

透明化処理をしたメタサーフェスレンズ

LTEやsub-6帯等の他の周波数に影響を与えないように設計されており、他の帯域と並行してミリ波のエリア改善が行なえる。

2020年12月18日には、ドコモR&Dセンタで実証実験も実施。世界で初めて、窓ガラスを通るミリ波を屋内の特定の場所に集め、屋内での受信電力を向上させることに成功した。また、屋内で複数のリピーターやリフレクターを使うと、単焦点から2焦点へ切り替えられることも実証。将来的には端末の移動に追従することも視野に入れているという。

また、本来は電波を通さない遮熱ガラス(遮熱膜は電波を反射する)でも、AGCが開発した遮熱機能を持ったガラスとメタサーフェスレンズを組み合わせることで、ミリ波の受信能力を向上できることも実証した。