「C4 LAN 2017 SPRING」で披露された驚異の自作マシンたち
2017年5月3日~5月5日の期間、東京・浅草橋にあるヒューリックホールで開催された「C4 LAN 2017 SPRING」。いわゆる「LANパーティ」というもので、自分のPCを持ち込んで(会場でのレンタルもある)ネットワークにつなぎ、対戦ゲームを遊ぶというイベントだ。参加者の中にはゲームとLANパーティの雰囲気を最大限に楽しむために作り込んだ自作PCを持ち込んでいる人も多く、周囲の目を引いていた。ここでは3名の参加者の自作PCをピックアップして、そのコンセプトやスペックを紹介するので、初めての自作の参考に、すでに所有しているPCの強化のヒントにしてほしい。
超小型の筐体にCore i5を組み込むハイスペックマシン
1台目は「hogehige」さんのマシン。まず目を引くのはその筐体サイズとクールなデザインだ。大きさは226(W)×196(D)×158(H)mmで、容量は7.0リットルしかない。しかしその一方で、CPUはIntelの「Core i5-6500」、ビデオカードにはGIGABYTEの「GeForce GTX 1070 Mini ITX」が搭載されているなど、ゲームマシンとしてかなり高いスペックを詰め込んでいる。ユーザーがPCを持ち込むLANパーティにぴったりの仕様だ。
キモになっているケースは英国Lazer3Dブランドの「LZ7」。hogehigeさんによれば、このケースは自分たちが欲しいケースを自らの手で設計しようという人が集まる海外のフォーラム「Small Form Factor Forum」にて生まれたものとのことだ。LZ7はファーストロットで30台くらいしか作られない。「本人が満足すれば終わりなので、商業じゃないんです。どちらかというと同人誌的なノリです」。筐体の価格は150ポンド(約2万円)程度とのことで、それほど高価ではないものの、このレアなケースを使ってマシンを作ろうというこだわりはそうとうなもの。
組み込むパーツも選び抜かれたものばかりだ。搭載するビデオカードはGeForce GTX 1070を採用するものとしてはもっともカード長が短い部類。一般的なサイズのGTX 1070カードではLZ7に入らない。またCPUクーラーも背の低いものしか入らないが、Thermaltakeのクーラー「Engine 27」に低発熱のIntel製CPUを組み合わせることで対応している。マザーボードはASUSTeKの「B150i PRO GAMING」。あまりにも筐体が小さいためHDDは入らず、Patriotの「M.2 SSD」、「Hellfire M.2 NVMe SSD」を使用している。こだわりはキーボードにも現われており、こちらも自作しているそうだ。
「4Kではなく、フルHDなので十分このカードで使えています」と語るhogehigeさん。自宅でもこのマシンを使っているとのことで、イベントに合わせて手軽に持ち出せる高性能な愛機の存在は非常に印象的だった。
hogehigeさんの自作歴は20年ほど。「フォーラムの中で、この部品が入った、このCPUファンが入ったなどとみんなで話しています」とパーツ構成を考える楽しさを語る。もうすぐLZ7の次のバージョンが出るらしいとのことなので、もし欲しいと思ったらSmall Form Factor Forumをチェックしてみよう。海外からの購入はハードルが高いと感じている方も、このマシンのパーツ構成を参考に、市販の小型ケースを組み合わせてみるとおもしろいだろう。
リアルタイム実況も楽勝!
ワンブランドで固めたパワーマシン
次は「E-1」さんのマシンをご紹介。筐体にもロゴが配置されているなど、パーツメーカーMSIへの愛にあふれた外装が特徴だ。「MSIのイベントに行ったときにステッカーをもらえたので、それを使っています」とE-1さん。ビデオカードはMSIの「GeForce GTX 1070」(オーバークロックモデル)、CPUは「ちょっと古い世代ですが」と断りながら「Core i7-4790Kです」とのこと。マザーボードももちろんMSI製で「Z97A GAMING 7」を使っている。
E-1さんが主にプレイしているのは「Counter-Strike: Global Offensive」。FPSが好きで、5年くらいプレイしている。訪ねたときはゲーム実況をしているところだった。「GeForce GTX 1070はビデオカードで動画エンコードができますので、プレイも配信も同じマシンで行っています」とE-1さん。「CPUにほとんど負荷がかからないので、配信しているときとしていないときのフレームレートの差は50程度です。以前使っていた『GeForce GTX 960』だとエンコードできなかったので、100位フレームレートが下がってしまって苦労しました。今のスペックに不満はないのですが、新しいゲームもどんどん出てくるので、2、3年以内にはCPUを含めて買えようかなと思っています」(E-1さん)。
ちなみにビデオカードは今回のイベントのために買い換えたそうだ。CPUやマザーボードは少し古いまま、ビデオカードを載せ換えて運用しているわけだ。こうしてアップグレードしながら使い続けられるのも自作PCのメリットの一つと言える。こうした運用をしたいときに意識しておきたいのはCPU。購入時になるべく高性能なものを選んでおくのが長く使い続ける秘訣と言える。E-1さんのCore i7-4790Kも当時のメインストリーム向けCPUの最上位モデルだ。このほかのスペックとしては、メモリは16GBで、ストレージはサムスンの250GB SSDとCrucialの500GB SSDに加えて、2TB×1、3TB×2のSeagete製HDDが搭載されていた。
E-1さんの自作歴は2年程度。最初はBTOで注文したマシンを使っていたのだが性能が落ちてきたため、まずは大きい筐体に変えて、マザーボードを付け換えて作ったのが始まりだと言う。E-1さんの回りもBTOから自作に入る人が多いのだそうだ。「プラモデルを作っていましたから、(その感覚で)説明書をぱっと見て作りました。それにWebサイトに作り方も載っていますから、パチパチパチとはめて。あまり苦労はしませんでした」とE-1さん。ただしドライバの導入には手こずったそう。ゲーミングデバイスには独自のドライバが必要なものが多く、組んで電源を入れても使えなかったりしたこともあったとか。
このマシンは自宅でいつも使っているものを持ってきた。「レンタルもありますが、それだといつも使っている配信ツールが(すぐには)使えないので……。電車で1時間くらいかかりましたが、キャリーカートに乗せて引っ張ってきました」と語るE-1さん。LANパーティでゲームをプレイし、実況し、こだわりの自作機をお披露目するために、決して小さくはないデスクトップPCの輸送さえもイベントとして楽しんでいる様子がうかがえた。
トラブルなんて目じゃない!
超巨大なCPUクーラーが印象的なゲーミングマシン
最後にご紹介するのは「Earthl1ght」さんのマシン。横置きになってしまっているが、それは輸送中にCPUファンが外れてしまったから……。なんとも微妙な状態での動作を余儀なくされていたが、それをものともせずにゲームを楽しんでいるEarthl1ghtさんの姿がLANパーティのカオスな楽しさを象徴しているのだ。ゲームはFPSを中心に楽しんでいるとのこと。この日は「PlayerUnknown's Battlegrounds」をプレイしていた。
組み上げたのは1年ほど前。使っているケースは、Corsairのものでかなり大きい。このケースのようなクリアサイドパネルタイプのケースが、ここ数年流行している。内部に組み込まれたド迫力のハイエンドパーツを見せるためだ。ゲーミングギアが多くの参加者の目に触れるLANパーティで、会場のテンションを上げるには格好の演出となるだろう。
Earthl1ghtさんのマシンに搭載されているCPUは「Core i7-6700K」で、多少オーバークロックもしているので、CPUクーラーのヒートシンクも巨大なのが特徴的だ。ユーザーの自己責任となるが、CPUを定格仕様以上の速度で動作させるオーバークロックの設定を行なうことで、さらに性能を伸ばすことができるのも自作PCのメリットの一つ。ビデオカードは「GeForce GTX 980」を使用。「性能には満足しています」とEarthl1ghtさん。マザーボードにはASUSTeKの「MAXIMUS VIII RANGER」を使っている。
自作歴は4、5年。子供の頃「バトルフィールド2」をプレイしていたそうだが、そのときにまったく動かず、自分でビデオカードを買って取り付けたのが始まり。「でも全然動かなくて、これじゃダメだと思い、お金をためてマシンを買おうと考えました。そこからですね。今のマシンは3台目です。自作マシンはトラブルに自分で対応できるのでいいですね」と語るEarthl1ghtさん。トラブルにぶつかり、それを克服するたびに自作スキルが高まり、より高い性能を持つパーツにどんどんチャレンジしたくなるのが自作PC。急速に高画質化、複雑化し、処理が重くなるPCゲームを、常に最高の環境で楽しむには最適のパートナーだろう。
<著者> 岩泉茂