WiMAX 2+新料金プランの「ギガ放題」。その最大の魅力は「データ通信量月間上限ナシ×料金の安さ」だ。
WiMAX 2+のサービスインに際し、「契約後2年間」という「条件付きの月間上限ナシ」を提供していたUQ。2年後に一体どうなるのか、これまで明かされていなかったが、今回、既存プランにプラス680円程の「ギガ放題」プランで「未来永劫使い放題」が確約され、ノーリミットを強くアピールしている。
今回は、その詳細をUQコミュニケーションズの廣井功一氏(企画部門 事業企画部)に聞いてきた。
ギガ放題は「安い」のか
廣井氏はUQの中でWiMAX 2+の料金やサービスの全般を企画推進する立場にある。2009年のWiMAXサービスイン以来、ずっとノーリミットでやってきたUQであり、その魅力がいちばん支持されてきた、と廣井氏。それをWiMAX 2+でどうするかには、ずっと悩み続けてきたという。
話は一昨年、2013年秋、WiMAX 2+のサービスイン時にさかのぼる。WiMAX 2+化によって、速度が格段に速くなったのはいいものの、将来におけるトラフィック増を考慮すると、料金体系を見直す必要が出てきたという。実は「ノーリミット」の撤廃も含めて検討された。だが、「ノーリミット」こそがUQにとって一番大事なところ。新しいサービスが開始されたばかりというタイミングでそれがなくなってしまうのは厳しいのではないかとUQで話し合いがされた。その結果、WiMAX 2+サービスイン当初は、とにかくエリアが広がるまではノーリミットをきちんとやろうということで、料金プラン上では7GB制限を課した上で、契約後2年間はノーリミットを維持するというところからスタートした。それが「UQ Flat ツープラス」だ。
そして今、WiMAX 2+のエリアがほぼ全国に広がり、「ヤ倍速(220Mbps化)」の目処も立ったところで、今回の料金プラン見直しが行なわれた。ライバルともいえる通信キャリア系のサービスは、各社ともに新料金プランがスタート、実質的な従量制に移行していたが、実はこの流れに乗り、それでいて通信キャリアより安い料金を維持するプランのシナリオもあったという。
だが、やはり死守すべきは「月間上限ナシ、使い放題」というポリシーだった。このポリシーを最大限維持する前提で、設備投資や今後のトラフィックに見合ったギリギリの線を検討してきた結果、使い放題の新料金プラン「ギガ放題」は、既存の7GB制限のプランから月額680円程のアップにおさまった。周波数を連続50MHz持つ強みや、世界初の4×4 MIMO技術やCA技術による周波数利用効率アップ、一時的に大量の通信を行なった場合に他のユーザーの通信品質を確保するための規制(いわゆるヘビーユーザー規制)、UQならではのローコストオペレーションなどを組み合わせることで実現できた価格だ。
そもそも競合他社に比べても「安い」と廣井氏が胸を張るWiMAX 2+。その秘密は、廣井氏によれば、データ通信に特化したことでローコストオペレーションを実現できている点が大きいという。また、UQは会社自体も少人数で運営しているというコンパクトさもコスト抑制のカギとなっている。安さの秘密のひとつとしてこの点も大きい。
UQ Flat ツープラス ギガ放題 | UQ Flat ツープラス | A社(5GB) | A社(8GB) | B社 | C社 | |
---|---|---|---|---|---|---|
月間データ通信量 | 無制限 | 7GB | 5GB | 8GB | 7GB | 無制限 |
最大通信速度(下り) | 220Mbps | 220Mbps | 150Mbps | 150Mbps | 165Mbps | 3Mbps |
月額料金合計 | ¥4,380 | ¥3,696 | ¥6,400 | ¥8,100 | ¥3,696 | ¥2,760 |
「3日間3GB」の「良心」
「ギガ放題」を実現する上で避けて通れなかったのが、「ヘビーユーザー規制」だ。
「速い回線につながれば、たくさん使う」という傾向は高まる一方で、これはモバイルネットワーク全体のトレンドともいえる。廣井氏によれば、WiMAX 2+のサービスイン以降、ユーザーひとりあたりのトラフィック量は着実に増えているという。モバイルルーターのユーザーは特に通信量が多いそうで、月間7GB使うユーザーは普通に存在するとのことだ。
一方で、ごく一部のユーザーが大きなトラフィックを占めているという点が、UQがサービス事業者として抱える悩みだ。さすがに1TB/月使ったユーザーは見たことがないというが、数百GB/月の人は存在するという。一時的にでも大量のトラフィックが発生すると、その最大値にあわせてネットワークを運用し、必要な設備投資を行なう必要があり、それは提供料金にも反映してしまう。
使い放題のコンセプトは絶対に捨てたくない。しかも、可能な限りリーズナブルな料金で提供したい。ならば、ごく一部のユーザーだけにガマンしてもらうしかない、と苦渋の決断をした。それが、「3日間で3GB以上の通信をすると、翌日から速度制限」という処置だ。
ただ、速度制限をするにしても、使い続ける気にもなれないお仕置き的制限をするのではなく、通常の使用に不便のない程度の速度にできないか、ということを考え続けているようだ。制限後の通信速度は明確にはしていないが、少なくとも現状は「YouTubeの標準画質を見るのに不便がない程度までしか落とさない」という実用ラインは確保されるという。可能性の話ではあるが、周波数の利用効率がさらにアップするなど、これからの技術革新によって制限が緩和されるということも考えられるという。
では、実際には、どのように制限されるのだろう。具体的には、直近3日間のトラフィックが3GBを超えると、超えた翌日から制限される。正確には、3日前の午前0時から3日目の午前0時までのトラフィックをカウントして、それが3GBを超えたことが検出されると、翌日に速度上限が引き下げられるという段取りになる。
もし3日間で3GBの通信をしても、現状ではYouTubeを見るのに支障が出るような速度制限はかけないとのこと。使いものにならない速度まで落とすというのではない。パケットを使いすぎたことへのお仕置きではなく、あくまでも公平を目指していくというUQの考え方がここでわかる。
WiMAX 2+は「桁違いの品質」を安く
今回の新料金プランスタートによって、WiMAX 2+の永年ノーリミットはひとまず担保されたといってもいいだろう。ただ、コスト的には多少上がってしまう点は否めない。それでも携帯電話事業各社と比べればかなり優位にたてると廣井氏はいう。確かに、220Mbpsの高速さと使用可能エリア、さらに固定回線的にも使え、複数のPCをつなぐインフラとしての用途も考えれば、WiMAX 2+の他に選択肢はありえないといってもいい。使い放題のための+680円程も、恩恵を考えれば納得できる範囲に収まっているのではなかろうか。
最近は格安SIMの話題も多く、速度を抑えて無制限の通信を実現したサービスも登場している。しかし廣井氏は目先の料金だけにとらわれてほしくないともいう。価格だけ見ればよく見えたとしても、月間データ通信量の上限があったり、制限後の速度が遅かったり、無制限でも使ってみたら思ったような速度が出ないといったこともよくある話だ。WiMAX 2+は、この世でもっとも速い部類に入るモバイルネットワークだ。大半のユーザーが速度を気にすることなく使えるはずと廣井氏。もし、ほかのキャリアでWiMAX 2+と同等の通信品質を実現しようとすると、1万円を軽く超えてしまうはずで、データ通信量と料金の安さまで考えると、WiMAX 2+は桁違いの品質だと自負しているそうだ。
根底にあるのは、大多数のユーザーが最大パフォーマンスを享受できることであり、そのうえで、少数派の大容量トラフィックを発生させるユーザーも大きな不便を被らないようにすること。そんなネットワークを1円でも安く提供するために、会社の中でコスト意識を高めることに奔走するのが廣井氏の属する部署の仕事のひとつでもある。もし、その努力が失われてしまえば、UQの価値は失われる。この規模感で何ができるか。廣井氏の頭の中には常にそのことがある。
廣井氏は、今回の料金プランや速度制限についても、「あくまでサービス提供者側の論理」であるとし、これからもユーザーの要望に耳を傾けていきたいと語った。
トレンドとしてデータトラフィックは増える一方だ。そんな中で、本当は何も気にすることなく、めいっぱいインターネットを使えるようにしたい。それがUQの考える定額制の在り方であり、同社の定額制の根底に流れる思想である。
(Reported by 山田祥平)
関連リンク
- UQ WiMAX ホーム - 超高速モバイルインターネットWiMAX2+
- http://www.uqwimax.jp/
- WiMAX 2+ 新サービス・新デバイス発表会
- http://www.uqwimax.jp/lp/220m/
- WiMAX 2+ 料金/サービス
- http://www.uqwimax.jp/