さあ、どっちを選ぶ2つの「ヤ倍速」
UQコミュニケーションズはWiMAX 2+を下り最大220Mbps化するために、電波を束ねるキャリア・アグリゲーション(CA)と、複数のアンテナで多重通信を行う4×4 MIMOという2種類のアプローチを用意した。この2つのテクノロジーがヤ倍速の正体だ。今シーズンは、それぞれの方法を個別に実現したモバイルルーター2機種が提供される。今回は、UQコミュニケーションズの前島勲氏(企画部門事業開発部長)を訪ね、この新ルーター2機種の概要について話を聞いてきた。さあ、どちらを選ぶか悩みに悩もう。
新発売される220Mbps対応ルーターには、「Speed Wi-Fi NEXT」 の称号が与えられる。新しく登場するルーターは2機種。ファーウェイ・ジャパン製の「Speed Wi-Fi NEXT W01」とNECプラットフォームズ製の「Speed Wi-Fi NEXT WX01」だ。前者はCAにより、後者は4×4 MIMOによって倍速の220Mbpsを果たす。
UQがCAサービスをスタートさせるのは、2月12日、栃木県真岡市周辺からだ。だから、誰よりも早く220Mbpsの恩恵を受けられるのは、栃木県在住でW01のCA技術パイロットモニターに参加するユーザ-となる。CA対応エリアは順次、全国に広がっていくが、しかし実際に一般ユーザーが220Mbpsを味わえるのは、WX01が対応する4×4 MIMOのほうが早い。
実は、4×4 MIMOはすでにほぼすべてのWiMAX 2+基地局が対応済みで、端末さえあればいつでも、WiMAX 2+対応エリアで220Mbpsの通信ができる状態になっているからだ。競合他社も現在、東名阪を中心に下り150Mbpsを超えるサービスを提供中だが、すでに47都道府県の主要都市部で対応が進むWiMAX 2+とWX01の組み合わせのほうが、高速対応エリアの面でも優位だ。
それならWX01が良いのかといえば、W01のほうはau 4G LTEに対応、より色々なエリアで使えるというメリットがある。どちらの端末を選ぶのがいいか。これは悩ましい。UQも罪作りだ。前島氏によれば、「W01はau 4G LTEにも対応で、使用可能エリアを重視するユーザーに。WX01はいち早く220Mbps対応するため、最先端のスペックを重視するユーザーに」とのことだ。こうした背景が前提にあることを頭においた上で、新しい2端末の特徴を見ていきたい。
両端末のスペック表はこちらCA対応でヤ倍速をかなえたW01
まずはCA対応の「W01」だ。
CA(キャリアアグリゲーション)は、WiMAX 2+通信を2つの周波数帯で併行して行うことで倍速化する方法だ。携帯電話事業各社のネットワークにおいて、LTE通信での採用が進んでいる方法でもある。
UQは、220Mbpsをいち早く提供することは同社のミッションのひとつだと考えてきたという。そのために、以前から4×4 MIMOの実用化に着手しており、ヤ倍速をそちらで先に実現しようとしていた(前島氏)。ところが、そうこうしているうちに、CAが各携帯電話事業者のネットワークで使われるようになり、世界的に実現しやすい技術になった。チップメーカーにとってもボリュームゾーンとなって、先行事業者端末への対応経験なども活かすことができるようになった。
W01はWiMAX 2+とau 4G LTEの2方式に対応する。WiMAXには対応しない点に注意が必要だが、この春には、屋外に関してはWiMAXとWiMAX 2+のエリアはほぼ同一になるため、問題になることは少ないだろう。それに、たとえWiMAX 2+が使えないエリアに入ってしまったとしても、人口カバー率99%を誇るau 4G LTEがある。WiMAX 2+とau 4G LTE、この2つのネットワークへの対応により、日本全国津々浦々、どこでもほぼ確実にインターネットが使える環境が手に入る。しかも、3月末までにWiMAX 2+に加入すれば 5月末までLTEオプションが無料となるキャンペーンも実施中なのもうれしい。
端末のスペックや使い勝手の面でも、モバイルルーターの最新トレンドを押さえている。WiMAX 2+での連続通信時間は約8時間(CA非適用時)と充分だが、スマートフォンとBluetooth接続することにより、スマートフォンアプリからのリモート起動(休止状態からの復帰)に対応。連続待受時間は約730時間なので、使うときだけリモート起動し、残りの時間はこまめに休止状態に移行しておけば、数日間にわたって充電なしでも運用できる。
また、クライアントとのWi-Fi通信は、下り220Mbpsの速度をフルに活かすIEEE802.11acに対応。電波干渉の少ない5GHz通信が、屋外でも利用できることもメリットだ(W52/W53チャンネルは屋内のみ)。
2.4インチのカラータッチパネルは直感的な操作が可能なほか、Android端末なら液晶に表示したQRコードを読み取ってSSIDとパスワードを自動設定することもできる。また、1000BASE-T対応の有線LANポートを搭載したクレードルも用意されており、家庭内での利用にも便利だ。
前島氏によれば、W01は女性を意識して開発されたという。たとえば、2.4インチのカラータッチパネルは、クレードルにおいて充電しているときに置き時計代わりにすることを前提にデザインされたともいう。ルーターとしてはかなり大型であるこの液晶スクリーンの表示は、さまざまなインテリアにマッチすることが考慮されているという。さらにカラバリはMARINEとWHITEで、特にMARINEの淡い青は、女性に好まれやすいはずだと前島氏はいう。
W01は総じて、普段使いでの使いやすさを重視した製品といえそうだ。au 4G LTE対応による使用可能エリアの広さもあり、万人におすすめできるモバイルルーターだ。
世界初・4×4 MIMOでヤ倍速をかなえたWX01
CAという方法が、すでにモバイルネットワークの増速化のための定番的方法になりつつあるのに対して、4×4 MIMOというのは難しいチャレンジでもある。
今回、UQが実現した4×4 MIMOは、4つのアンテナを送受信側に実装して220Mbpsを実現する。端末の処理能力は今まで以上に高いものが求められ、それに加えて省スペースのアンテナ開発など、端末を開発する上では大きなハードルがあった。だが、さまざまなベンダーとの協力の結果、その高いハードルを超え、世界初の商用化ネットワークへの対応という境地に達したのがWX01だ。とにかく技術的に最先端で、技術を攻めるUQというイメージもそこには重なる。
前島氏は、この端末のデザインに対して、従来製品の薄さを維持したままでスペックや機能を向上させることを目指したと語る。事実、前モデルにあたる、同じNECプラットフォームズ製のモバイルルーター「NAD11」にくらべて横幅はプラス1mm、厚さはプラス0.8mmという必要最小限のサイズアップにとどめつつ、バッテリ容量は2,100mAhから2,500mAhにアップしている。
バッテリ増加にともない、連続通信時間も、NAD11がWiMAX 2+(2×2 MIMO)で約7時間、WiMAXで約10.5時間だったのに対し、WX01はWiMAX 2+(2×2 MIMO)で約8時間40分、WiMAXで約11時間20分とアップしている(いずれもWi-Fi接続時)。ただし4×4 MIMO利用時は消費電力が多くなるため、約6時間40分(Wi-Fi接続時)となる。2×2 MIMOと4×4 MIMOはユーザーが任意で切替えることが可能なので、「速度優先」か「通信時間優先」か、状況に応じて選ぶことができる。
柔軟な運用という点では、Bluettothテザリングに対応したこともトピックのひとつだ。消費電力の少ないBluetoothテザリングは、少しでも長時間のバッテリ駆動が求められるモバイルルーターに適している。Bluetooth接続時は、クライアントとの通信速度が2Mpbs程度になるものの、WiMAX 2+(2×2 MIMO)での連続通信時間は約10時間20分にまで伸びる。W01同様、スマートフォンアプリからのリモート起動にも対応するので、休止状態にこまめに移行すればさらに長時間の利用も可能だ。総じて、ユーザーの使い方や状況に応じて柔軟な運用が可能な機種であり、こうした面からもWX01はW01にくらべ、よりハイエンドなユーザー向けといえそうだ。
WAN側通信 | LAN側通信 | 連続通信時間 | |
---|---|---|---|
速度を重視したいとき | WiMAX 2+(4×4 MIMO) | Wi-Fi | 約6時間40分 |
通信時間を重視したいとき | WiMAX 2+(2×2 MIMO) | Bluetooth | 約10時間20分 |
Wi-Fiは、W01同様、IEEE802.11acに対応。屋外での5GHz帯利用も可能となっている。1000BASE-Tポート搭載のクレードルも用意される。
デザイン的には「かわいらしさとかっこよさの両立」をテーマにしたと前島氏。実は、UQのモバイルルーターは、クレードルの装着率が一般的なスマートフォンなどとくらべても非常に高いという。つまり、ユーザーは、ルーターをただ充電するのではなく、充電しながらも通信のために使い続けているのだ。ということは必然的にいつもルーター本体が目につく場所にあるし、それを外に持ち出す以上、スタイルは重要な要素だ。
すでに書いたように、4×4 MIMOによるヤ倍速の実用化は、以前から計画されていた。本当はもっと早く出したかったと前島氏。ただ、2×2 MIMOにくらべ、演算回路の処理として4倍の負荷があることによる試行錯誤、また、アンテナの配置などで製品としてのサイズの兼ね合いをどうとるかなど、完成までの苦労はハンパではなかったという。
最終的な回路設計後、テストをしても220Mbpsが出ず、チップレベルの設計をやり直すなど、回路レベルのチューニングもたいへんだったらしい。やはり、世の中になかったものを新たに世に出すというのは大変だ。
ヤ倍速のその先は
「これで440Mbps実現のめどがたちました」
前島氏は最後にこう言った。CA対応のW01と4×4対応のWX01を完成させたことで、その先が見えてきたというのだ。個々の技術をかたちにしたことで、2つのハードルをUQは超えた。これから挑む440Mbpsの世界は、ゼロから作るよりもずっと簡単になったはずだと前島氏。
次の目標は、CAと4×4 MIMOという2つのテクノロジを組み合わせた次世代ルーターだ。ヤ倍速がヤ倍速になって440Mbpsだ。現時点でも1つのパッケージに収めようとすればできる段階まではきているという。だが、それをよりコンパクトなものにしなければならない。そこに待ち構えている試練は少なくない。でも、その世界は目前であり、前島氏の頭の中には、その次の1Gbpsの世界が見え隠れしている。ぼくらはまだ、その本当にヤ倍世界を知らないだけなのだ。
(Reported by 山田祥平)
関連リンク
- UQ WiMAX ホーム - 超高速モバイルインターネットWiMAX2+
- http://www.uqwimax.jp/
- WiMAX 2+ 新サービス・新デバイス発表会
- http://www.uqwimax.jp/lp/220m/
- Speed Wi-Fi NEXT W01 製品情報
- http://www.uqwimax.jp/lp/wimax2plus_product_w01/
- Speed Wi-Fi NEXT WX01 製品情報
- http://www.uqwimax.jp/lp/wimax2plus_product_wx01/