とにかく機能が豊富なネットギア製品。使いこなせば便利だろうけど、やり方がよくわからない……。この連載では、そんな機能を、毎回わかりやすく解説します。

最新ファームでより安全に、より便利に
ReadyNAS OS 6.2を試す

2015.02.02 清水理史

基本機能を強化

ReadyNAS向けの最新ファームウェア「ReadyNAS OS 6.2」が昨年末に公開された。NASの基本となる信頼性を向上させたほか、クラウド機能の強化により、さらに便利に使えるようになったのが特徴だ。

新ファームウェアの強化点は大きく以下の3点となる。

image 最新のファームウェア「ReadyNAS OS 6.2」(6.2.2)が利用可能となったReadyNAS

まずは、「5段階のファイル保護」だが、具体的には以下の5つの機能によってデータが保護されることになる。

  1. 自動RAID保護
  2. スナップショット
  3. アンチウイルス対策
  4. オフサイトレプリケーション
  5. Bit rot保護(コピーオンライト)

1は、主にハードウェア故障からの保護だ。ReadyNASのお家芸とも言える拡張機能を備えたX-RAIDなどにより、ストレージを構成するディスクが万が一故障してもデータを保護することができる。

2は、履歴機能を備えたデータのバックアップ機能だ。共有フォルダーでスナップショットを有効にしておくと、定期的に共有フォルダーにあるデータの更新情報を記録し、ファイルを任意の時点に復元することができる。

3は、PCでもお馴染みのウイルス対策機能だ。NASに導入しているケースはまだあまり多くないが、ReadyNASでは、無償のリアルタイムアンチウイルスソフトウェアが利用可能となっており、共有データへのウイルスの感染を手軽に防ぐことができる。

4は、複数台のReadyNASを利用したり、クラウド上のオンラインストレージなどを利用することで、ReadyNAS上のデータを別の場所に複製しておく機能だ。離れた拠点間などで複製しておけば、大規模な災害時でも大切なデータを保護できるだけでなく、継続して事業を継続することができる。

そして、これまでのReadyNASでも使用可能だった4つの機能に加えて、新たに追加されたのが5の「Bit rot保護」だ。

image Bit rot保護機能を新たに搭載

「Bit rot」は「ビット腐敗」と言った方がわかりやすいかもしれないが、データを構成するビット、つまりデジタル信号として記録された一部の信号が、何らかの理由によって読み取り不可能となり、データ全体が使えなくなってしまう状況を回避する機能だ。

NAS上のデータも、細かく分解していけばディスク上に記録された0と1の信号となる。データには一部の信号が失われても修復できるようにするために、通常は誤り訂正のデータが付加されているが、複数の信号が同時に失われてしまうと、これも役に立たない。

例えるなら、パズルのピースが必要以上に欠けることで、最終的な絵が判別できない状況だ。

Bit rotは、前述した4つの段階と違って、表に現れにくいエラーだ。ハードディスクの劣化などによって、特定のbitが書き込まれた部分だけ読み取り不可能になるだけなので、該当する部分に書き込まれたデータを読み取ろうとして、はじめてファイルが開けないなどのエラーが発覚する。

ディスクが故障するわけでもなく、ReadyNASが起動しなくなるわけでもなく、静かに、ひっそりとデータが失われてしまうわけだ。

従来のReadyNASでも、「スクラブ」を手動で実行することで、1ビット以内のエラーを誤り訂正によって修正することが可能だったが、ReadyNAS 6.2で追加された「Bit rot保護」は、自動的に実行する機能だ。

image 従来から搭載されている機能だが、他のNASにはあまり見られないスクラブも搭載

共有フォルダー単位に「Bit rot保護」を有効にした場合、データへのアクセス時に自動的にBit rotを検出し、修正可能なうちに、そのデータを読み取って別の場所へと書き込み直すことができる。

これにより、静かに進行するデータの“腐敗”を食い止め、信頼性を確保できるわけだ。世の中に、多機能なNASは多数存在するが、こういったデータの信頼性の部分まで、深くこだわったNASはあまりない。そんな貴重な存在の1つがReadyNASというわけだ。

データ同期やバックアップが便利に

PCやスマートフォンとのデータ同期やバックアップも簡単になった。

ReadyNAS上でReadyCLOUDのサービスを有効化後、同サービスを利用するためのアカウントを登録し、「ReadyCLOUD」アプリをダウンロード。再度サインイン後、同期するフォルダを選択すると、PC上の「ドキュメント」や「ピクチャ」、「ミュージック」などのフォルダが、自動的に自宅のReadyNASと同期されるようになる。

image ReadyCLOUDを有効化
image アプリをPCにインストールすることでフォルダーを同期可能

同期したデータは、ReadyNAS上の共有フォルダーとして、ReadyNAS CLOUDのアカウントでアクセスすることもできるが、「http://readycloud.netgear.com/」からブラウザでアクセスしたり、スマートフォン向けのアプリからもアクセスすることが可能になる。

スマートフォン向けの「ReadyCLOUD」アプリでは、写真の自動バックアップにも対応しており、有効化することでスマートフォンで撮影した写真を自動的にReadyNASにコピーすることもできる(モバイル回線で同期するかどうかは選択可能)。

これまでのReadyNASでは、同期のサービスとバックアップのサービス、リモートアクセスのサービスなど、各サービスを個別に利用する必要があったり、アプリにも統一感がなかったが、ReadyCLOUDの登場によって、使いやすく統一された印象だ。

image スマートフォンからもアクセス可能
image スマートフォンアプリでは写真の自動バックアップにも対応

ブラウザーからアクセスする際のデザインも使いやすいうえ、ファイルをほかの人に転送したり、共有するためのリンクの作成も手軽にできる。

個人的に魅力を感じたのは、メールで送信した共有リンクに相手がアクセスした際に、そのことをメールで知らせてくれる機能だ。

一般的なファイル転送サービスの場合、ファイルのURLを送信したはいいが、果たして相手が無事にファイルを入手したのかどうかがわからない場合が多い。法人向けのサービスなどでは、こういった通知機能が使える場合があるが、ReadyNASであれば、無料で通知を受け取ることができる。

ファイルのダウンロード数制限やパスワードを設定することも簡単にできるので、ビジネス向けの用途としては、かなりオススメできる機能だ。

image ブラウザーからNAS上のファイルにアクセス可能。デザインも良好でわかりやすい
image ファイル共有時に相手がリンクにアクセスしたかどうかをメールで受け取れる

このほか、ReadyCLOUDでは、ReadyNASの初期設定なども可能になっており、購入直後のReadyNASや初期化したReadyNASをセットアップする際は、ReadyCLOUDにアクセスしてウィザード形式で設定を進めていくだけと簡単になった。

サービスやアプリがかなり見直され、統一された世界観の元でシンプルに使えるようになったのは高く評価したいところだ。

image 初期セットアップもReadyCLOUDから実行可能

法人向けの機能が身近に

以上、新たに登場したReadyNAS OS 6.2の注目点を紹介したが、一見、地味なアップデートに見えるものの、内容的にはかなり大きな進歩だ。まさに高度な法人向けの機能を誰にでも使いやすいレベルに落とし込んだ印象で、高度な機能を知らず知らずのうちに使いこなせるようになっている。

もともと信頼性や機能性の面で高い評価を得ているReadyNASだが、今回のバージョンアプで、より広いユーザーに受け入れられる存在になったと言えそうだ。規模の大小を問わず、オススメできる製品と言えそうだ。

(Reported by 清水理史)

関連リンク

ReadyNAS 製品情報
http://www.netgear.jp/solutions/homesolutions/readynas/
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