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我らWi-Fi環境改善隊!【Vol.7】
自宅ネットワークはまだまだ進化する! メッシュWiFiを強化して家の“生活圏”を広げよう

2018/11/20 日沼諭史

この7台を活用して自宅のメッシュWiFi環境を強化してみる

前回の「我らWi-Fi環境改善隊!」から、どうやら1年半以上も経っていたようだ。当時はメッシュネットワークというものがまだ珍しく、コンシューマー向け製品としてもほぼ「Orbi」一択だったけれど、それ以降、ネットギアだけでなく各社の製品にもメッシュ(ネットワーク)化の波が押し寄せた。今や高品質Wi-Fiといえばメッシュ、と言えるくらいにスタンダードな機能になりつつあるように思う。

とりわけネットギアはこの1年半でメッシュWiFi対応のラインナップの充実が進んだ。言わずと知れた「Orbi」(実売3万3000円前後)と、小型化した「Orbi Micro」(実売2万4000円前後)に、メッシュ対応のWiFiエクステンダー「Nighthawk X6S EX8000」(実売2万4000円前後)が追加。既存製品の「Nighthawk X4 EX7300」(実売1万3000円前後)も、当初は単純なWi-Fiエクステンダーだったが、ファームウェア更新でいつの間にかメッシュ対応にアップグレードした。さらに11月29日に発売される新製品の「Nighthawk X6 EX7700」(実売2万円前後)もメッシュ対応のWiFiエクステンダーだ。

「Orbi Micro」

左から「Nighthawk X6 EX7700」「Nighthawk X6S EX8000」「Nighthawk X4 EX7300」

仕事柄いろいろなネットワーク製品を試して、自宅のメッシュWiFi化も一段落していた筆者だが、これらの製品を取り入れれば宅内ネットワークのさらなる進化を望めるかもしれない。今までネットギア製品をさんざん試しておきながら、実のところ、それを返却した後は結局元の他社製品に戻して使い続けるパターンがほとんどだったのだ。

その環境に不満はないこともなかったのだけれど、まあ仕方がないかと思い、忙しさを理由にサボり気味だった自宅ネットワーク環境のアップデート。最新のメッシュWiFi対応製品で、改めてやってみますか!

ということで、試してみるのは下記の3パターン。
1.既存ルーター(他社製)+メッシュWiFiエクステンダー
2.Orbi micro
3.Nighthawkルーター + メッシュWiFiエクステンダー

現在の自宅メッシュWiFi環境の弱点とは

みなさんの自宅のWi-Fiの調子はいかがだろうか。だいたい快適なんだけれど、不意にWebページの読み込みが遅くなったり、動画が再生途中でローディング状態になったり……みたいなことが起こっていないだろうか。

いまいち電波の具合がよくないこともある浴室。筆者のリラックス空間の1つなので、なんとかしたい

これは現在使っている他社製品の性能うんぬんより、その性能を活かせる使い方ができていないか、もしくは配置の仕方に問題があることも考えられる。だから、より高性能な製品に置き換えるだけで改善する部分もあるかもしれないし、ルーター(エクステンダー、サテライト)の配置そのものを考え直さないと目立った効果が表れないかもしれない。

とりあえず、メッシュWiFi化した状態ではなく、仮に親機ルーター1台だけだと筆者の自宅の電波状況がどうなっているのか、スマートフォンアプリ「Wi-Fiミレル」(Android / iOS )でチェックしてみた。緑が快適に通信できるエリア、黄色から赤にかけてが電波の弱いエリアとなる。ルーター1台だけだと1階はほぼ全滅状態だ。

既存の親機ルーター1台(他社製)のときの電波状況

でもってメッシュWiFi環境にした現在の自宅の電波状況は以下のような感じ。家族みんなが主に過ごすリビングのある2階にメインとサテライトのルーターを1台ずつ、1階にサテライト1台を配置している。

メッシュWiFi環境にした電波状況

これを見ると、特に1階のトイレ、浴室方面の電波が弱く、さらに画像でいうと右下、クローゼットあたりも厳しい。屋外は言わずもがな。2階は2台設置しているおかげでだいたいカバーできてはいるものの、キッチン付近がやや弱くなっていることがわかる。

2階左下隅に1台置いているのは一見すると非効率なようだが、これは主にテレビ背面に装着しているGoogle Chromecast UltraやAmazon Fire TV Stickのため。テレビ本体にWi-Fiの電波が遮られやすいのか、それらのデバイスの動作が安定しないことがあったので、テレビ裏側方向から電波が届くようにしている。ロフトは2階中央のルーターに近いことから、とりあえず問題なさそうだ。

通信が不安定になりやすい場所も、おおよそこのヒートマップに合致する。1階のトイレと浴室で通信するときや、クローゼットに設置しているプリンターを使うときに問題が発生しやすい。先ほど述べたように、通信できるときはリビングのど真ん中で使うのと同じくらい快適なのに、タイミングによってはなぜか動画が途切れ途切れになったりすることもあるのだ。プリンターは印刷を実行してもデータを受信しなかったり、受信中のままいっこうに動かないこともままある。

通信先が最も近くのメッシュWi-Fiルーターに自動で切り替わっていないことも考えられるので、そうした観点からも改善が必要かもしれない。

将来に向けメッシュWiFi環境を強化するワケ

そんな家の隅々までWi-Fi電波をまんべんなく行き渡らせる必要があるのか、と疑問に感じる人もいるだろう。特にトイレや浴室なんて、通信できなくてもいいんじゃないか。プリンターももっと使いやすい場所に移動するか、本当に重要なら有線LANで接続すればいい、なんて思われそうだ。

いや、ごもっとも。たしかに今のところトイレや浴室ではスマホ画面を眺めるくらいしかしていないし、プリンターも移動しようと思えばできなくもない。ただ、少し将来のことを考えてみると、家の中をくまなく通信できるようにすることは家族にとってもわりと大切なことだったりする。

例えば、今後スマートホーム時代に向け続々IoTデバイスが登場してくることは間違いない。電子ロック、宅配ボックス、インターホン、その他カメラや各種センサーなど、宅内ネットワークに接続すべきものが増えていったとき、電波が弱いせいで動作が不安定になり使い物にならない……なんてことではまったく意味がないのだ。自宅の中心機能ではないそういうデバイスは、だいたいメインのルーターから離れたところにあるだろうし。

子どもたちが本格的にパソコンを使うことになる日も近づいてきた

それに、我が家の子どもたちがこれから成長していって、いずれパソコンやスマートフォンなどのデバイスを使い始めるようになったら、今のままでは使う場所が限定されてしまうことにもなりかねない。親としては目の届くリビングあたりにいてほしいものだが、現実にはそうも言っていられないだろう。子ども部屋をどこにするかを決めるのはまだ先のことだけれど、“つながりにくい”部屋を作るのは仕事柄、筆者のプライドとしても絶対に避けたいところ。

不安定で実質的に電波が届いていないのであれば、そこはデバイスを使える場所、設置できる場所ではないということだ。自宅なのに“生活圏”と“非生活圏”が存在することになる、とも言い換えられる。メッシュWiFi化で電波の届く範囲を広げるということは、その“生活圏”を広げることに他ならない。自宅なのだから、“生活圏”は常に100%にしておきたいではないか。

既存のルーターを流用できるメッシュWiFiエクステンダー「EX7700」「EX8000」「EX7300」

“生活圏100%”を目指すにあたり、まずは最小限の機材変更でどれくらい変わるのか、発表されたばかりの「Nighthawk X6 EX7700」から試してみたい。EX7700は、「トライバンド メッシュWiFiエクステンダー」とうたっている通り、最大866Mbpsの5GHz帯が2本、最大400Mbpsの2.4GHz帯が1本、計3本の帯域を使ってやりとりできるメッシュWiFi対応機だ。

「Nighthawk X6 EX7700」

親機となるルーターのメーカーは問わず、ネットギアや他社のルーターと連携してメッシュWiFiを構築できるのが特徴の1つ。親機とは通常5GHz帯の1本で通信し、ユーザーがもつデバイスとの通信ではもう1つの5GHz帯と2.4GHz帯をデバイスによって使い分けられるため、広い帯域幅によって通信の全体的な高速性・安定性を確保できる。

準備は本体背面にあるWPSボタンと、親機ルーターのWPSボタンを押すだけ。数分待つと連携、メッシュWiFi化が完了する

このEX7700を親機である既存の他社製Wi−Fiルーターと連携させ、その子機となっていたサテライトと置き換える形で使用してみた。純粋に子機だけを変えることで電波状況は改善するのだろうか。

セットアップは、親機ルーターとEX7700の互いのWPSボタンを押すだけ。あとは電波を広げたい場所とルーターとの中間地点にEX7700を設置すれば、メッシュWiFiの構築完了だ。2階リビングにある1台、1階中央にある1台をそれぞれEX7700にしてみた結果は以下の画像の通り。

子機にEX7700を使用したときの電波状況

2階については、ほぼ全体が緑色となり、平均的に高いレベルで電波が届くようになったことがわかる。むしろリビング左下隅に設置している箇所については過剰かもしれない。相対的にはキッチン周りがやや弱く見えてしまっているので、リビング隅の低下に目をつむってでもキッチン周りを強化したくなってくる。

1階も宅内についてはほとんど隙がなくなったように見える。中央の1台を入れ替えるだけでここまで電波が強くなるのは予想以上だったが、こうなると欲をかきたくなってしまうのが人情というもの。やはり相対的に弱いトイレ、浴室周りと、クローゼットをもう少し改善したい。あわよくば屋外のガレージやクルマの中も強化できれば……。

2階リビング隅に置いたEX7700はちょっと強力すぎたか……

なお、EX7700より前に発売されている上位機種「Nighthawk X6S EX8000」も同じように使える。こちらも「トライバンド メッシュWiFiエクステンダー」で、EX7700との違いは主に親機ルーターとの間の通信を最大1733Mbpsでつなぎ、余裕のある帯域幅を実現していること。もちろん既存の同社製・他社製ルーターを親機としてメッシュWiFiを構築可能だ。

「Nighthawk X6S EX8000」

親機ルーターとEX8000との間の帯域幅が広いおかげで、例えばデバイス1台あたり833Mbpsで通信しても、ざっくりとした計算では、デバイス2台同時にフルスピードで処理できることになる。家族がそろって大容量データをダウンロードするなど集中的に通信するような場面でも、親機となるルーターの性能を最大限に活かしてネットを活用できるだろう。実売価格としてはEX7700より4000円ほど高いので、親機ルーターの性能とネットを利用する家族の人数を考えて選びたい。

「Nighthawk X4 EX7300」

もっと低予算でメッシュWiFi化したいなら、「Nighthawk X4 EX7300」もある。5GHz帯1733Mbps+2.4GHz帯450Mbpsのデュアルバンド構成なので、多数のデバイスから同時に通信するような場面でスループットが落ちる可能性はあるものの、電波の弱い場所をピンポイントで補いたいときなどに心強い味方となってくれるだろう。

1からネットワークを強化したいあなたに「Orbi Micro」

もし、現在古いルーターを使っていて根本的にネットワーク環境を見直すなら、親機とサテライトのセットで販売されているネットギアの元祖メッシュWiFiルーター「Orbi」と、その小型版の「Orbi Micro」も選択肢に入れたい。このOrbiシリーズ2機種は、性能としてはEX7700とEX8000の関係に近い。Orbiが親機とサテライト間を1733Mbpsの速度で通信するのに対し、Orbi Microでは866Mbpsとなっている。

「Orbi」と「Orbi Micro」

実売価格ではOrbi MicroがOrbiより約1万円安価。最大866Mbpsとはいえ、Webや動画視聴が中心の少人数の家庭ではOrbi Microでも十分な性能のはず。一方のOrbiは、複数人同時にオンラインゲームをする家庭や、広い家でよく大勢の友人を呼んでパーティする、というようなところで実力を発揮するだろう。

Orbi Microの親機を2階中央に設置

サテライトは1階中央に

そんなわけで、日本の一般的な例に漏れない小さな家の筆者宅では、今回Orbi Microを試してみた。親機を置いた2階は隅々までしっかり電波が行き届き、サテライトを設置した1階はさすがにクローゼットや屋外は届きにくくいものの、トイレ、浴室は通常使用もほぼ問題ないレベル。Orbi独自メッシュWiFiのポテンシャルの高さを感じさせる。

Orbi Micro使用時の電波状況

R7800+全メッシュWiFiエクステンダーで本気を出す

さて、ここまで既存の他社製親機ルーターにエクステンダーを組み合わせたパターンと、Orbi Microによる電波の届き具合を見てきたわけだけれど、親機ルーター自体もネットギア製にして、それにWiFiエクステンダーを組み合わせた場合も確かめてみたいと思う。

親機とした「Nighthawk R7800」(中央)と、メッシュWiFiエクステンダー4台

親機に使用したのは「Nighthawk X4S R7800」。すでに上位機種がいくつも登場していて、位置付けとしてはミドルレンジになってしまったものの、それでもIEEE 802.11ac Wave 2およびMU-MIMOに対応し、5GHz帯で最大1733Mbps、2.4GHz帯で最大800Mbpsを達成している、いまだ高性能を誇るゲーミングWiFiルーターだ。

2階中央に置いたR7800

デュアルコア1.7GHz CPUで処理性能も申し分なし。USB 3.0ポートとeSATAポートで拡張性の面でも優れている。にもかかわらず価格は1万8000円前後と、コストパフォーマンスに優れた1台だ。最初にこのR7800のみを2階中央に設置した場合、宅内の電波強度はどうなるだろうか。

R7800単体での電波状況

2階は全体的に良好で、これまでやや電波が弱めだったキッチン奥(下側)までしっかりカバーしている。1階は既存のルーターとほとんど変わらない電波状況なので、ルーター1台で1階、2階、ロフトのすべてをまかなうのはそもそも厳しいことであるのは間違いない。

ただし、ここにメッシュWiFiエクステンダーを1台、2台追加したところで、これまでのロフトや1階の調査結果と変わるところはないだろう。なぜなら今回の測定内容は、測定場所に近いところにあるアクセスポイントか、最も電波強度の高いアクセスポイントを自然と参照する形になり、親機ルーターの電波が及びにくいエリアの測定結果はほとんど変わりようがないからだ。

なので、この際ありったけのメッシュWiFiエクステンダーを投入し、理想的な“生活圏100%”のWi-Fi環境を目指してみることにした。これまでの測定で、十分通信できるとはいえメッシュWiFi化してもまだちょっと弱い部分が明らかになっている。2階でいえばキッチン周り、1階ならトイレ、浴室、クローゼット、そして屋外だ。

使用するエクステンダーはEX7700が2台、EX8000が1台、EX7300が1台。親機ルーターのR7800と合わせると、トータル5台で我が家をメッシュWiFi化することになる。R7800の置き場所は2階中央から変わらないが、弱点をカバーする方向でセッティングするため、リビングに置いていたEX7700をキッチンそばに移すことにした。

EX7700をキッチンに

1階は3台構成。要となる1階中央には帯域幅の大きいEX8000を置く。洗面所にはEX7300を設置し、電波が届きにくかったトイレと浴室をカバー。もちろんクローゼットも弱点なので、玄関奥にもう1台のEX7700をセットする。

1階中央はR8000

トイレと浴室の間にある洗面所にはEX7300

玄関奥にEX7700

R7800+メッシュWiFiエクステンダー4台での電波状況

結果はご覧の通り、2階はキッチン周りも含め完璧に緑で覆い尽くすことができた。リビング左下隅から子機がなくなった影響でここだけ電波強度が大きく低下しているが、まったく問題のない実用範囲。実際にAmazon Fire TV Stickで動画を視聴してみたが、コマ落ちや動作のもたつきは一切なし。Play Station 4のゲームのアップデートファイル9.7GBも10分強でダウンロードし、オンライン対戦で目立つラグも感じられなかった。

キッチンでレシピサイトやレシピ動画を見るのがかなり快適に

Amazon Fire TV Stickの動画再生も問題なし

9.7GBのアップデートファイルは10分強でダウンロードした

1階の屋内も完全に緑だ。トイレやクローゼットがもはやリビングより(電波強度的に)快適な空間になっている。自宅の“生活圏100%”は見事達成できたと言ってもいいだろう。おまけに屋外のガレージやクルマの中まで強化され、ネットで調べ物しながらバイクや自転車のメンテナンスができるどころか、関係のない動画視聴までしそうな勢い。いつか家族に邪魔者扱いされ、クルマのなかで仕事せざるを得なくなった場合にも対応できる。対応したくないけど。

自宅前のクルマのなかで仕事するような状況にはなりたくないが、ネットをフル活用しながらの仕事も可能といえば可能

必要に応じて簡単に、低コストから実現できるメッシュWiFi化で将来も安心

自宅の庭まで完璧にカバーするのはやりすぎとしても、これほど簡単にメッシュWiFi化して電波の届く範囲を広げられるのはうれしい。今は親機ルーター1台のみだったり、2、3台程度のメッシュWiFi環境だったとしても、今後の我が家の子どもたちのように、パソコンやスマートフォンなどのデバイスを使う家族が増える際、もしくはスマートホームのデバイスが増える際にも、大きな追加コストなく、その使う場所に合わせて柔軟に電波を拡張していけるからだ。

なにより既存の他社製の親機ルーターでも、あっさりメッシュWiFi環境を構築できてしまうのは驚き。予算はあまりないけどメッシュWiFi環境を試してみたい、そこそこ整っている今のWi-Fi電波を強化したい、というときに、1万円と少しからの投資で、エクステンダーをポンと1台追加してメッシュWiFiを実現できるお手軽さは計り知れない。

予算があるならOrbi Microにするのもアリ。こちらも必要に応じて1台ずつ追加していくことが可能だ

自宅のWi-Fi環境を1から強化したいならOrbi Microも適している。実売3万円超の投資となるので、家族構成やネットの用途を考えてメッシュWiFiエクステンダーとどちらが良いか慎重に判断したいところ。家族や将来のためにメッシュWiFi化してみたいなあと悩んでいるあなた、ボーナス時期のこのタイミングが試すチャンスかも!?

選択肢が増えてきたメッシュWiFi対応機器。どれが自分にマッチするか悩むのも楽しい