低価格ルーター+中継機ではなくメッシュへの乗換が効果的!
速くて、楽で、拡張もできる「Orbi Micro」で快適無線LAN生活
2018/07/23 清水理史
ネットギアの「Orbi Micro」は、複数台のアクセスポイントを連携して広いエリアをカバーするトライバンドメッシュWiFiシステムだ。今使っている無線LANルーターで電波が届かないところがある場合は、思い切ってメッシュWiFiへのステップアップする手もある。初期投資は必要だが、導入後の「速さ」も「楽さ」も段違いなうえ、さらなる拡張も思いのままとなる。
「遅い……」と感じたら無線LAN環境再検討のサイン
無線LANルーターを導入したものの、特定の部屋で「速度が遅い……」という現象に悩まされている人も少なくないのではないだろうか?
無線LANルーターには、入門用の低価格な製品から、高性能なハイエンド機まで、さまざまな機種があるが、低価格な製品の中には、パフォーマンスがあまり重視されていないものもあり、アクセスポイントを設置した場所から距離が離れたり、いくつもの壁を挟んで通信しなければならない状況では、思いどおりに速度が出ない製品もある。
スペック的には867Mbpsに対応しているのに、実効速度が一桁Mbpsという状況も珍しくないが、場合によっては数百Kbpsにまで落ち込み、つながりはするものの、まともに通信できないケースもある。
もちろん、Webページを見るといった用途なら、数Mbpsでも十分だが、たとえば動画コンテンツを見る場合に、十分な速度を確保できないと、画質が粗くなったり、映像や音声が途切れたりといった実害が発生する。
アプリのダウンロードやアップデートなどもやたらと時間がかかるうえ、写真の自動バックアップがいつまで経っても終わらないなど、「無線LANが遅い」というだけで、PCやスマートフォンの利用が制限されてしまう。
最近では、ゲーム機なども無線LANでのインターネット接続が必要だが、購入したゲームのダウンロードに一晩かかったり、対戦がまともにできなかったりするようでは、せっかくのリフレッシュタイムも台無しとなる。
クラウドサービスの普及で、今やインターネットは「つながればいい」という時代ではなくなりつつある。十分な速度で通信できる無線LAN環境をいかに構築するか? それが重要だ。
中継機よりもメッシュを
現状の無線LAN環境を改善する方法は、大きく分けて3つある。
ひとつは、無線LANルーターを買い換える方法。より高性能なモデルに交換することで、電波の届く範囲を広げたり、離れた場所でも通信速度を向上させることができる。
もうひとつは、中継機を追加する方法だ。バケツリレーのように途中で電波を中継する中継機を通信経路の途中に設置することで、無線LANの通信エリアを広げたり、離れた場所での通信速度を改善できる。
最後は、最近注目を集めているメッシュWiFiに切り替えることだ。メッシュWiFiは、複数台のアクセスポイントを使って、文字どおり、網目状に広く通信エリアをカバーできる無線LAN製品だ。ネットギアのOrbiシリーズなど、はじめから複数台の機器がセットになった製品を利用することで構築できる。
R6120 | Orbi RBK20 | ||
---|---|---|---|
価格 | 実売価格 | 4,480円 | 27,201円 |
対応規格 | IEEE802.11 | ac/n/a/g/b | ac wave2/n/a/g/b |
対応チャネル | 2.4GHz 1-13ch | ○ | ○ |
W52(36/40/44/48) | ○ | ○(867Mbps用) | |
W53(52/56/60/64) | ○ | × | |
W56(100/104/108/112/116/120/124/128/132/136/140) | ○ | ○(中継用867Mbps) | |
対応バンド数 | 2 | 3 | |
通信速度 | 2.4GHz | 300Mbps | 400Mbps |
5GHz-1 | 867Mbps | 867Mbps | |
5GHz-2 | - | 867Mbps | |
ストリーム数 | 2 | 2 | |
アンテナ数 | 外付け2 | 内蔵 | |
変調方式(最大速度時) | 256QAM | ||
有線LAN | 100Mbps×4 | 1000Mbps×2 | |
USB2.0 | 2.0×1 | × | |
サイズ | 185×136.5×46mm | 142×61×176.6mm | |
重量 | 249g | 476g |
R6120 | Orbi RBK20 | ||
---|---|---|---|
帯域制御 | Dynamic QoS | × | × |
メディア共有 | DLNA | × | × |
ファイル共有 | ReadySHARE | ○ | × |
FTPサーバー | × | × | |
プリンタ共有 | ReadySHAREプリント | ○ | × |
バックアップ | TimeMachine対応 | × | × |
ReadySHARE Vault | × | × | |
セキュリティ | ペアレンタルコントロール(無料) | ○ | ○(Circle with Disney) |
ゲストアクセス | ○ | ○ | |
VPNサーバー | × | ○ |
ひと昔前なら、中継機が有力な候補であったが、環境によっては、中継機の利用が適してないケースもある。
代表的なのは、大元の無線LANルーターの性能が低い場合だ。利用できる電波の周波数帯域が2つしかないデュアルバンドの無線LANルーターを使っている場合は、中継機を利用することで、通常のPCやスマートフォンの接続と中継で、この帯域を共有することになり、思ったほど高い速度が得られないことがある(後述するメッシュWiFiでもデュアルバンドにしか対応しない製品があるので要注意)。
中継機の利用は、無線LANの電波が届く範囲の拡張には効果的だが、通信速度が向上するかどうかは、ルーターや中継機の性能や設置場所などに依存するため、一概に効果的とは言えないわけだ。
一方、メッシュWiFiの場合、大元のルーターごと新しい機器に置き換えるため、こうした既存の機器の性能に起因するパフォーマンスの低下の心配がない。現状、低価格な無線LANルーターを使っている場合は、思い切ってメッシュWiFiにステップアップしたほうが速度面では有利だ。
実際、エントリークラスのルーター単体(ネットギアR6120)とネットギアのトライバンドメッシュWiFiシステム「Orbi Micro(RBK20)」のパフォーマンスを木造三階建ての筆者宅にて計測してみたのが以下のグラフだ。
R6120では、有線LANが100Mbpsということもあり、同一フロアでも80Mbps前後しか速度が出ないうえ、もっとも遠い3階窓際では、20Mbpsほどしか速度が実現できていない。
一方、Orbi Micro(1階にルーター、3階にサテライト設置)では、全体的に300Mbps前後まで速度が向上しており、3階窓際でも387Mbpsで通信できている。R6120の23.2Mbpsと比べると、じつに16倍ほどだ。
また、動画の再生も比べてみた。R6120も3階端で20Mbps以上を確保できているので、Youtubeなどの動画などであれば、問題なく楽しむことができる。
しかしながら、動画の画質が上がってくると話は別だ。NASに保存された4K画質の動画などは、ファイルを開くだけで十数秒かかり、ようやく再生が始まったかと思ったら、すぐに止まり、しばらくの間、再開されることがなかった。
一般的なビデオカメラで撮影したHD画質の動画の場合は、PC単体であれば問題なく再生できるが、ほかの機器との同時通信が問題だ。PCで動画を再生している最中に、スマートフォンで通信をWebの閲覧を開始すると動画がストップ、スマートフォンでページの読み込みが完了すると動画の再生が再開されるといったように、他の通信の影響をもろに受けてしまった。
Webの閲覧だけであれば、実効で20Mbpsも確保できていれば快適に使えるが、動画再生などを含め、いろいろな用途を、しかも複数のデバイスで同時に楽しみたい場合は、Orbi Microのような、家中どこでも数百Mbpsを確保できるような無線環境が必要だ。
Orbi Microでは、トライバンドの3つの帯域のうちの1つ(5GHz帯の867Mbps)を中継専用に使えるため、PCやスマートフォンとサテライトが5GHz帯の867Mbpsで高速に通信しつつ、同時に中継用の867Mbpsで通信を中継することができる。この恩恵は非常に大きいと言えるだろう。
もちろん、ひと口にメッシュWiFiと言っても、製品によってはデュアルバンドにしか対応していない製品もあるため、購入時には注意が必要だ。同様に中継機もデュアルバンドでは思ったほど速度が改善できない場合がある。ネットギアのOrbiシリーズのように、必ず中継専用の無線LAN帯域を備えたトライバンドの製品を選ぶようにしよう。
Orbi Microが「楽」なこれだけの理由
このように、無線LAN環境の快適化には、メッシュWiFi、しかもトライバンドメッシュWiFiの活用が近道となるが、そのメリットは速度だけに留まらない。導入後の「楽さ」や「拡張性の高さ」、「導入後の運用管理の簡単さ」についても、メッシュWiFiは大きなメリットを持っている。
先の例と同じく、ネットギアのトライバンドメッシュWiFiシステム「Orbi Micro(RBK20)」を例に、具体的なメリットについて見ていこう。
●設定が楽
Orbi Microは、複数台のアクセスポイント(ルーターとサテライト)で構成されるが、この設定がとても簡単だ。
中継機の場合、ルーターと中継機のそれぞれを個別に設定しなければならないが、Orbi Microでは、最初から設定済みで出荷されるため、家庭内に設置しで、電源を入れるだけで、すぐに連携させることができる。
中継機特有の設定や使い方に悩まされることもない。多くの中継機では、大元の無線LANルーターとは別に、中継機用に新しいSSIDを設定する必要があるうえ、つなぐときも今自分がいる場所から近い方のSSIDを選んで、自分で接続する必要がある。つまり、接続先をユーザーが使い分ける必要があるわけだ(製品によっては1つのSSIDで運用できるものもある)。
初期設定に手間取ったり、何度も設定をやり直したりと、慣れていないと中継機の設定に悩まされることがあるが、Orbi Microなら、こうした悩みから解放されるため、設定はじつに楽だ。
中継機 | Orbi micro(RBK20) | |
---|---|---|
費用 | 8,660円(R6120+EX6120) | 27,201円 |
中継専用帯域 | × | 中継専用867Mbps(W56) |
中継設定 | 自分で設定 | 設定済み |
接続先 | 使い分けが必要 | 自動的に判断 |
3台以上 | 計画や設定が必要 | 簡単接続、自動最適化 |
イーサネットバックホール | ×(※1) | ○ |
設定管理 | ルーターと中継機で別 | 一元管理可能 |
アップデート | 個別に実行 | 一括実行 |
(※1)APモードで独立したAPとして稼働させることは可能
●手軽に拡張できる
メッシュWiFiのOrbi Micro(ルーター/サテライト)は1台あたり100㎡をカバーできるため、広い住宅にも容易に対応できる。日本の一般的な住宅であれば2台で十分カバーできるが、サテライトをもう一台追加して3台構成にすることも可能だ。たとえば、1階が店舗、2階、3階が住居といったようなビルなどでも、1階、2階、3階のそれぞれにOrbi Microを設置することで、各フロアをカバーできる。
このように、3台以上のアクセスポイントで通信エリアをカバーしようとすると、接続設定も面倒だが、電波の周波数帯域やチャネルを使い分けるなどの複雑な設計が必要になる。うっかり、各フロアの中継や機器の接続に、同じ周波数帯やチャネルを使ってしまうと、干渉によって速度が低下する場合があるからだ。
中継機などでは、こうした設計を自分でやならければならないが、Orbi Microでは、そんな難しいことは一切考えなくていい。本体のボタンを押すだけで、既存のネットワークに新しいサテライトを追加できるうえ、ルーター、サテライトの各機器が、ほかの機器と自動的に調整しながら、最適な周波数帯域やチャネルを自動設定してくれるため、ユーザーは何も意識する必要がないのだ。
また、ルーターとサテライトの間の通信に有線LANを利用することもできる(イーサネットバックホール)。オフィスや店舗など、離れた場所でも有線LANが使える場合は、中継に有線LANを使うことで、より安定した通信が可能になる。
●設置後の運用管理も簡単
Orbi Microなら、設置後の設定変更や管理も簡単だ。
たとえば、ルーターと中継機の組み合わせの場合、無線LANに接続するときのパスワードを変更しようと思ったら、ルーターと中継機で、個別に設定しなければならない。
しかし、ルーターとサテライトがひとつのシステムとして連携するOrbi Microでは、こうした設定は一カ所で変更するだけでかまわない。ルーター側で設定を変更すれば、それが自動的にサテライトでも適用されるため、1回の設定ですべて完了することになる。
セキュリティ対策として欠かせないファームウェアのアップデートなども同様だ。ルーターと中継機では、別々のタイミングで、別々のサイトから、別々にダウンロードしたファイルを、別々の画面からアップデートしなければならないが、Orbi Microなら一カ所からルーターもサテライトもアップデートを実行できる。
中継機の場合、「台数が増える=管理の手間が増える」となるが、Orbi Microでは、2台だろうが、3台だろうが、台数が増えても管理の手間は増えないことになる。
速いのは当たり前! さらに簡単なメッシュWiFi「Orbi Micro」
以上、無線LANの速度を向上する方法として、トライバンドメッシュWiFiシステム「Orbi Micro」を紹介した。
中継機との組み合わせよりも、速度的にも有利なだけでなく、設定が楽で、拡張しやすく、導入後の管理も簡単と、いくつものメリットがあることがわかったはずだ。
今後、クラウドサービスへの依存度がますます高くなり、さらにIoT機器など無線LANに接続する機器が増えてくると、単につながるだけでなく、いかに高速で快適な無線LAN環境を用意するかが重要な課題となる。
今の無線LANルーターの速度に不満を感じている場合はもちろんだが、現状に不満がなくても、近い将来、不満を感じるようになる可能性はある。現状、無線LANルーター単体で運用している場合は、Orbi Microへの乗換を検討してみるといいだろう。