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小さくなってもやっぱり速かった!
日本の住宅環境にジャストフィットなメッシュWiFiシステム「Orbi Micro」

2018/07/11 清水理史

ネットギアからトライバンドメッシュWiFiシステムの新製品「Orbi Micro」が登場した。従来のOrbiを小型化した製品で、中継用の帯域が867Mbpsとなるものの、依然としてトライバンドの恩恵は健在。性能的にもサイズ的にも日本の住宅事情にジャストフィットなメッシュWiFiシステムだ。

ネットギアのOrbi Micro。トライバンドに対応したメッシュWiFiシステムとなる

メッシュはやっぱりトライバンド

Google Wifiの日本投入もあり、複数台のアクセスポイントを連携させるメッシュWiFiシステムが注目を集めるようになってきた。

メッシュのメリットは、何と言っても、その手軽さとカバーできるエリアの広さ。

複数台のアクセスポイントで構成されるものの、各アクセスポイントを連携させることができるため、セットアップが一度で済むうえ、各アクセスポイントが個別にエリアをカバーできるため、家中のどこでも無線LANを快適に使える環境を構築することができる。

しかしながら、同じメッシュシステムでも、その性能をよく見てみると、じつは製品ごとに大きな違いがあることに気が付く。

利用できる電波の帯域の数だ。

一般的なメッシュシステムは、利用できる電波の帯域が2.4GHz帯と5GHz帯の2つしかない、いわゆるデュアルバンドの製品となる。

メッシュの場合、家の中に点在する各アクセスポイント同士も無線で接続しなければならないが、デュアルバンドの場合、使える帯域が2つしかないため、多くの場合、中継用の帯域をクライアント接続用と共有しなければならない。

中継用の帯域は、いわば道路の合流車線だ。いろいろなトラフィックが集中する重要な帯域なのに、さらに余計なトラフィックを合流させなければならないとなれば、渋滞は深刻な問題となるのは明らかだ。

これに対して、ネットギアのOrbiは、メッシュWiFiシステムの黎明期から「トライバンド」という画期的な方式を採用し続けてきた。

トライバンドは、文字どおり、利用できる帯域が3つあることを指す。具体的には、2.4GHz×1、5GHz×2を利用可能となっており、2系統ある5GHz帯の1つ(W56の帯域側)を中継専用として確保する使用となっている。

これにより、クライアント接続用の2.4GHz+5GHzの2系統を確保しつつ、中継だけに占有できる5GHzを利用することで、無駄な渋滞を発生させない効率的なメッシュWiFiシステムを構築できるようになっている。

このデュアルバンドかトライバンドかという違いは、メッシュだけでなく、単体でアクセスポイントを運用する際や中継機を利用する際も非常に重要なポイントとなっており、無線LANの快適さに大きな影響を与える要因となっている。

現状、無線LAN製品を選ぶ場合、特にメッシュWiFiシステムや中継機を選ぶ場合は、「トライバンド」対応であるかどうかが、製品選びの重要なポイントというわけだ。

このサイズを待っていた!

このように、早い段階からトライバンド対応を果たしてきたOrbiだが、その実力が世界的に認められる一方で、その大きさがひとつの課題となっていた。

そんな中、新たに登場したのが、今回取り上げる「Orbi Micro」だ。文字どおり、Orbiを小型化した新製品で、従来モデル比でサイズが75%となった新モデルとなっている。

正面

側面

背面

75%というと、数値的には物足りない印象があるかもしれないが、実際に並べて見ると、大きさの違いは歴然で、かなりコンパクトになった印象がある。これなら、リビングなどに設置しておいても、あまり目立つことがなく、設置場所も占有しないだろう。

Orbi Micro(左)とOrbi(右)。サイズがかなり小さくなったことがわかる

Orbiは、もともと2台セットという、比較的狭い日本の住宅事情に合った製品であったが(3台セットでアクセスポイント同士の距離が近すぎで実力を発揮しきれない)、今回のOrbi Microでは、本体サイズも小さくすることで、日本の住宅環境にジャストフィットさせた感がある。

ちなみに、従来モデルのOrbi(RBK50)とOrbi Micro(RBK20)の機能的な違いは下の表のとおりとなる。

機能的には、ほぼ共通となるが、1点、注意が必要なのが中継用の通信速度だ。Orbi(RBK50)では、ルーターとサテライト間を最大1733Mbpsで接続可能だが、Orbi Micro(RBK20)では最大867Mbpsとなる。

PCやスマートフォンを接続するための帯域は、いずれの製品も2.4GHz帯が400Mbps、5GHz帯が867Mbpsなので共通となっている。このため、クライアント側のピーク性能はOrbiもOrbi Microも同じだが、Orbi(RBK50)は中継の帯域が広いことで、より多くの端末を接続したときでも、よりスムーズに通信を中継できるようになっている。

たくさんの端末をつなげる場合は従来のOrbi(RBK50)をオススメするが、一般的な家庭でPCやスマートフォン、テレビなどを無線接続する程度だれば、中継帯域が867MbpsのOrbi Microでも十分に対応できるだろう。

■既存製品との比較
Orbi RBK50 Orbi RBK20
価格 実売価格 32,670円 27,201円
対応規格 IEEE802.11 ac wave2/n/a/g/b ac wave2/n/a/g/b
対応チャネル 2.4GHz 1-13ch
W52(36/40/44/48) ○(867Mbps用) ○(867Mbps用)
W53(52/56/60/64) × ×
W56(100/104/108/112/116/120/124/128/132/136/140) ○(1733Mbps用) ○(中継用867Mbps)
対応バンド数 3 3
通信速度 2.4GHz 400Mbps 400Mbps
5GHz-1 867Mbps 867Mbps
5GHz-2 1733Mbps 867Mbps
ストリーム数 2/3 2
アンテナ数 内蔵 内蔵
変調方式(最大速度時) 256QAM 256QAM
有線LAN機能 1000Mbps×4 1000Mbps×2
USB2.0 1 ×
サイズ 170.3×78.9×225.8mm 142×61×176.6mm
重量 890.5g 476g

セットアップは簡単

前述したように、メッシュWiFiシステムは、セットアップの手軽さがひとつの特徴となっているが、Orbi Microもセットアップは非常に簡単だ。

セットアップは、PCを使わず、スマートフォンのみで可能となっており、iOSやAndroid向けに用意されている無料の「Orbi」アプリを使って実行できる。

アプリの起動後、本体に記載されていQRコードを読み込むことで、Orbi Microへの接続が可能となり、画面の指示に従って、ケーブルの接続や無線LANの設定などをしていくだけで利用可能となる。

QRコードで情報を読み取って簡単に初期設定できる

画面の指示に従って設定していくだけで、簡単にインターネット接続などの初期設定が可能

Orbiアプリは、初期設定だけでなく、設定後の状態確認や設定変更にも利用可能となっており、接続されている端末の一覧を表示したり、スマートフォンからの操作で他の端末を切断したり、ゲストWiFiを有効化して、接続情報を友人と共有することなども可能となっている。

また、ファームウェアのアップデートも実行可能だ。新しいファームウェアがリリースされていると、アプリに通知が表示され、そこからすぐにアップデートを実行することができる。

通信機器に限らず、ネットワークに接続する製品は、ファームウェアのアップデートによって脆弱性を修正したり、新機能を追加することができるが、従来はメーカーのWebページを自分でチェックする必要があり、ついつい忘れがちになることが多かった。

Orbi Microでは、アプリから手軽に、しかもルーターとサテライトのどちらもアップデートすることができるため、つねに最新の状態で使えるのも大きな魅力だ。

Orbiアプリを使って現在の状態を確認したり、各種設定を変更することが可能

接続端末の一覧を確認して、接続を一時的に停止させることなども可能

ファームウェアのアップデートもアプリから簡単に実行可能。ルーターとサテライトの両方をスマホから手軽にアップデートできる

小さくても速い!

では、実際の実力を見てみよう。

下のグラフは、木造三階建ての筆者宅において、1階にOrbi Microのルーターを設置し、2階と3階のそれぞれにサテライトを設置した状態で計測した各階のiPerfの速度だ。

※サーバー:Intel NUC(DC3217IYE),Windows Server 2012R2
※クライアント:Macbook Air Mid-2013 11インチ(866Mbps)

一般的な無線LANルーターの場合、1階で500~600Mbps、2階で150~250Mbps、3階で100Mbps前後、3階窓際で20~50Mbpsといったところになるが、途中で通信を中継してくれるOrbi Microでは、この速度が一気に引き上げられる。

2階にサテライトを設置した場合は、2階と3階の入り口付近で300Mbpsオーバー、3階窓際のもっとも遠いところでも100Mbpsオーバーと、各地点ともに一般的な無線LANルーターの2倍近くのスピードをたたき出すことに成功している。

圧巻は、3階にサテライトを設置した場合だ。こちらは、2階と3階入り口で速度の伸びが低下するものの、3階窓際でも300Mbpsという驚異的な速度を実現できている。

一般的な無線ルーターでは、20~50Mbpsで、性能の低いモデルでは、つながらないこともある場所が、一気に300Mbps越えになるのだから、驚きだ。

ここまでスピードが出れば、動画配信なども快適に視聴できるうえ、写真やビデオなどの大容量ファイルの転送も苦にならない印象だ。

筆者宅では、2階に設置してあるテレビで、nasneで録画したテレビ番組をネットワーク経由で視聴することがあるが(nasneは1階に設置)、テレビをデュアルバンドのメッシュWiFiや中継機経由で接続すると、動画が途中で途切れてしまうことがよくある。

しかしながら、Orbi Micro(もちろんOrbiも)では、同じ使い方をしても、動画が途切れることなく、スムーズに再生できる。これは明らかにトライバンドのメリットであり、Orbi Microの性能の高さを示している。

当初は、サイズが小さくなった反面、中継帯域が867Mbpsになった点を心配していたが、そんな心配は無駄だったようだ。

Circle With Disneyを利用可能

このように、小さくても高性能なOrbi Microだが、安心して使えるという点でも魅力的な製品となっている。

本製品には、ペアレンタルコントロール機能として「Circle with Disney」に対応しており、子どもが使うPCやスマートフォンでアクセスできるWebサイトのカテゴリや利用時間を制限したりすることができるようになっている。

同様の機能は、他社製の無線LANルーターにも搭載されているが、「Circle with Disney」が優れているのは、より実生活に合った柔軟な使い方ができる点だ。

たとえば、一般的な無線LANルーターでは、端末ごと、より具体的には端末のMACアドレスごとに利用時間などを制限するしくみとなっているが、Circle with Disneyではプロファイルを作成し、ユーザーごとに各種制限を設定できる。

これにより、PCとスマートフォン、ゲーム機など、特定のユーザーが複数の端末を利用している場合でも、一括で制限を設定できる。

ペアレンタルコントロール機能の「Circle with Disney」を利用可能

プロファイルで管理できるため、複数デバイスに対して一括で制限を設定できる

Webページへのアクセスだけでなくアプリの制限も可能

無料のベーシックプランでも、こうした機能に加え、アクセスできるWebページやアプリの制限、インターネット接続の一時停止、アクセス履歴の表示といった一般的な制限が可能だが、有料のPremiumプラン(月額550円)に加入することで、より細かな制御が可能になる。

たとえば、アプリごとの利用時間の統計を表示することで、子どもがどんなアプリにどれくらい時間を費やしているのかを確認したり、単純に曜日ごとに利用時間を制限するだけでなく、就寝時間や勉強時間、利用可能なトータル時間を組み合わせて、実生活に合ったスケジュールを作成したり、子どもがお手伝いなどをした場合に保護者の端末からの操作で「Rewards」として利用時間の延長をすることなどができる。

このほか、「Circle Go(月額550円)」を利用することで、家庭内(Orbiに接続しているとき)だけでなく、外出先でも同様のアクセス先制限や時間制限機能を利用できる。

唯一、残念なのは現状は英語のみという点だが、おそらく、現状、存在するペアレンタルコントロール機能の中では、もっとも機能が豊富で、もっとも実生活に即した使い方ができるサービスとなっており、極端な話、この機能だけを目当てにOrbi Microを購入しても損はないと言えるだろう。

有料のPremiumプランに加入すれば、さらに高度な管理が可能。特に柔軟なスケジュール機能やRewordの概念は秀逸

Orbi Microでホームネットワークが変わる

以上、ネットギアから新たに登場したOrbi Microを実際に使ってみたが、日本の住宅環境を考えると、このサイズはとても魅力的だ。

当初は性能的な心配もあったが、実際に使ってみると、トライバンドの恩恵をフルに発揮させることができるため、パフォーマンス的にも文句ナシの仕上がりとなっている。

Orbiアプリも使いやすく、Circle with Disneyによるペアレンタルコントロ-ルもワンランク上の完成度だ。現行の無線LAN製品の中でも、かなりオススメできる製品の1つと言っていいだろう。