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「会社の無線LAN」現場はこんなことで困ってませんか?
多機能・高性能なのに中小にもやさしい法人向けAP「WAC505/WAC510」

2018/06/19 清水理史

「WAC505/WAC510」は、ネットギアが販売する法人向けのデュアルバンド ワイヤレスLAN アクセスポイントだ。複数台の管理などをする場合にも、コントローラーや専用ソフトも不要で、クラウドで、しかもスマートフォン向けの無料アプリ「Insight」で管理することができる魅力を持つ。もちろん、スタンドアロンでの使用も可能だ。法人での利用に必要な各種機能を備えながら、難しいことを考えずに、さっと導入、簡単に管理できる手軽さを兼ね備えている。今回はスタンドアロンで使用した際の実力を検証してみた。

ネットギアの法人向けアクセスポイント「WAC510(左)」と「WAC505(右)」

会社や学校ならではの無線LANの課題とは?

 一般的な家庭であれば、簡単で、そこそこ安く、電波が遠くまで届く製品を選べばいい。

しかし、会社や学校などの組織の現場となると、そう単純な話ではない。

たとえば、現状、こんな悩みを抱えている組織も多いのではないだろうか?

PCやスマートフォン、タブレットなどの利用を考えると、今や無線LANは無くてはならいインフラといえるが、実際に組織で運用するには、いろいろな部分で考慮しなければならない点が出てくる。

しかも、大企業であればまだしも、中小企業では、こうした導入や管理に慣れた専任の管理者がいないケースも多く、費用も潤沢にかけられるわけではない。

現状の無線LANが、いくら使いにくくても、セキュリティ上問題があっても、なかなか改善の一歩を踏み出せない現場が多いことだろう。

しかし、そんな状況もそろそろ改善に向かうことになりそうだ。ネットギアから、充実した管理機能と高い性能を備えながら、リーズナブルな価格で入手できる無線LANアクセスポイント「WAC505」と「WAC510」が発売されている。

WAC510の上面

背面

WAC505の上面

背面

ネットギアといえば、それまでエンタープライズ向けの高価な製品だったスイッチやNASなどの製品を、スモールビジネス市場や個人向け市場にも展開し始めたパイオニア的な存在のベンダーだ。リーズナブルな価格の製品にも、最先端の技術を惜しみなく投入することで知られており、今回の無線LANアクセスポイントも、これまで敷居が高かった法人向けアクセスポイントを、ぐっと身近な存在へと引き下げている。

力不足と分かっていても個人向け無線LANルーターを仕方なく使っていた組織や、エンタープライズレベルの過剰な機能を使いこなせずに手を焼いていた組織にとっては、同製の法人向けアクセスポイントが、無線LAN環境の悩みを解消するチャンスとなりそうだ。

法人向けならではの6つのポイントで製品をチェック

それでは、実際の製品をチェックしていこう。今回は、法人向けならでの6つの切り口で製品をチェックしていくことにする。

●ポイント1:容易なアクセスポイントの設定・管理

設定が簡単にできるかどうかは、法人向けに限らず、無線LAN製品ではとても重要なポイントだ。設置や初期設定、さらには運用開始後の設定変更などに、手間と時間がかかれば、管理の負担が膨大になってしまう。

エンタープライズ向けの無線LANアクセスポイントは、無線LANのアクセスポイント部分(電波の送受信を担う部分)と、その機能を制御するコントローラー部分が分離しているものが多く、コントローラーを購入する費用がかかったり、その設定や操作を学ぶ必要があり、非常に敷居が高い。

一方、WAC505/WAC510は、いわゆるスタンドアロンでの利用が可能になっており、WAC505もしくはWAC510を単体で購入するだけで、すぐに利用可能になっている。設定も家庭用の無線LANルーターと同様に、ブラウザーを使って設定ページを開くだけで可能となっており、「法人向け」ならではの敷居の高さがないのが特徴だ。

実際、設定は簡単で、PoEでネットワークに接続しつつ、電源をオンにした後、PCからブラウザーでアクセスして、管理用パスワードの作成や接続用SSIDやパスワードなど、画面の指示に従って簡単に初期設定ができるようになっている。

表記が英語となるものの、設定そのものは簡単なので、はじめてでも迷うことなく設定できるはずだ。

ブラウザーで設定可能。「PC Web-browser(Local)」を選択すると、スタンドアロンで設定や管理が可能

しかも、本製品はクラウドでの管理にも対応しており、2台までであれば無料で一元管理可能となっている。

オフィスなどの広い環境では、1台のアクセスポイントだけでは広いエリアをカバーしきれないため、複数台のアクセスポイントを設置することが多い。

また、詳しくは後述するが、1台のアクセスポイントに収容できる端末の台数が多くなると、安定した通信が難しくなるため、接続クライアントを分散させる意味でも複数台のアクセスポイントを設置するのが一般的だ。

Insightアプリの使い方や実際の複数台管理の方法については、あらためて次回以降に解説するが、複数台のアクセスポイントを同時に実行することもできるなど、手軽に管理できるようになっている。1台のみの小さな環境で使うもよし、数台のアクセスポイントを設置する中規模な環境で使うもよし、と柔軟に対応できるだろう。

●ポイント2:柔軟なレイアウトを可能にする設置性

柔軟という意味では、設置場所も柔軟に対応可能だ。オフィスや教室、店舗、工場など、企業によって無線LANを導入したい場所はさまざまとなる。このため、法人向け無線LAN製品では、設置場所を選ばず、柔軟なレイアウトに対応できる製品が必要とされる。

WAC505/WAC510は、いずれもPoE給電に対応しており、電源はイーサネットケーブル経由で供給される。このため、「GC510PP」のようなPoE(802.3af)対応のスイッチを利用することで、天井や壁など、イーサネットケーブルが届く範囲であれば、近くに電源コンセントが配置されていない環境でも容易に設置できる。

これは、物理的に設置場所を選ばないというメリットだけでなく、電波の届く範囲や収容するクライアントの台数などを考慮した設置場所の設計も柔軟にできるということでもある。安定性が求められる組織での無線LANでは、PoE対応かどうかは、安定性にもかかわる非常に重要なポイントだ。

もちろん、別売りの電源アダプタ(PAV12V)も利用できるため、電源を確保できる場所ではアダプタ経由での給電も可能となっている。

PoEでケーブル1本で設置可能なため柔軟なレイアウトを実現可能

●ポイント3:快適さが問われる同時利用台数

無線LANの快適さは、先に述べたエリア設計による部分も大きいが、アクセスポイント自体のキャパシティも大きな要因となりうる。

たとえば、家庭向けの無線LANルーターを企業で利用している場合、日中、利用者が増えてくると、次第に無線LANの速度が低下したり、安定してつながらなくなる場合がある。

これは、家庭向けの無線LANルーターが、数十台レベルの同時接続を考慮していないためだ。会社や学校などでは、数十人のユーザーが同時に、しかも複数台の機器を接続する可能性があるため、こうした大量の接続を処理するための性能が要求される。

最近では、家庭向けの無線LANルーターも利用環境の目安として、パッケージなどに接続台数や利用人数を明記している場合が多いが、国内メーカーのハイエンドモデルでも利用人数は5~6人、接続台数も15~18台程度となっているのが一般的だ。

これでは、小規模なオフィスであれば対応できるものの、40~50台規模のクライアントが存在する中規模なオフィスでは対応しきれない。

その点、今回の製品の場合は、1台での推奨台数は周波数ごとに20~30台となっている。それぞれの仕様上では、WAC505は最大80台(2.4GHz、5GHzで各40台)、WAC510は最大100台(2.4GHz、5GHzで各50台)となっており、非常に多くのクライアントを収容できるようになっている。

これなら、フロアを1台、もしくは2~3台でカバーすることも余裕で、オフィスに一度に多くの社員が集まるような時間帯や、学校など生徒が一斉にアクセスする可能性がある環境でも、安定した接続環境を提供することができる。

●ポイント4:状況を即座に把握できるモニタリング機能

セキュリティやパフォーマンスなど、導入後の運用管理を考えると、目に見えない電波をいかに可視化して管理できるようにするかは、法人向けの無線LAN製品ではとても重要なポイントとなる。

従来の法人向け無線LAN製品では、こうした接続クライアントのリストアップや現在の通信状況などのために専用の管理ソフトを利用する必要があったが、WAC505/WAC510では、本体の設定ページに各種モニタリング機能が搭載されており、手軽に今の状況を把握できるようになっている。

設定画面にアクセスした直後に表示されるダッシュボードでは、インターネットとの接続状況、現在の無線LANのチャネルや接続クライアント数、2.4/5GHzの周波数帯ごとの接続クライアント数、接続しているクライアントの一覧、時間帯ごとの接続台数やトラフィックの状況などを、わかりやすいグラフを交えて表示することができる。

このため、たとえば無線LANの接続が安定しないという声が利用者から上がったとしても、この画面を見るだけで、現在の混雑状況など、ある程度の状況を把握することができるようになっている。

また、周囲のアクセスポイントの利用チャネルなどを把握したり、トラブル解決に役立つ詳細なログも取得することが可能になっている。パケットキャプチャ機能も搭載されているため、不審な通信を監視したり、トラブルの原因を探るための手がかりを得ることなども可能だ。

外部のツールや別売りのソフトウェアなどに頼ることなく、状況を見える化できるのも本製品ならではの特徴といえるだろう。

ダッシュボードから動作状況を手軽にチェックできる

周囲のアクセスポイントのチャネル利用状況もチェック可能

●ポイント5:組織を守るセキュリティ

無線LANの利用に、もはやセキュリティは切り離すことができない要因だが、本製品では充実したセキュリティ機能も搭載されている。

法人向けの無線LAN環境では、一般的なSSIDとパスワードによる組み合わせの接続だけでなく、802.1Xを使ったユーザー認証が導入されることが多いが、本製品も外部のRADIUSサーバーを指定して、接続ユーザーをユーザー名とパスワードで認証することが可能となっている。

また、URLフィルタリング機能を内蔵しており、FacebookやTwitterなどのURLやキーワードを指定して業務に関係のないサイトへのアクセスを遮断することも可能だ。

このほか、MACアドレスによるアクセス制御にも対応しており、「Management」や「Guest」など複数のプロファイルごとにアクセスできるSSIDを制御したり、管理用のユーザーアカウントを追加して組織内の別のユーザーに管理権限を与えることもできる。

RADIUSサーバーを使った認証も可能

URLフィルタリングで業務に関係のないサイトへのアクセスも制限できる

●ポイント6:店舗での活用もできるネットワークを分割機能

最後は、ネットワークの分割機能だ。通常、企業には複数の部署があり、こうした部署ごとにネットワークを分割することで、トラフィックを分散させたり、アクセスできるサーバーなどを制限してセキュリティを確保する。

WAC505/510でも、こうしたネットワークの分割が可能となっており、接続先のSSIDを複数用意するだけでなく、各SSIDに対して個別のVLAN IDを設定することで、ネットワークを分割できるようになっている。

また、店舗の顧客や会社への来訪者向けのゲストネットワークの構成も可能となっている。Facebook Wi-Fiに対応しており、自社のページを登録して設定を有効にした状態で、ゲスト用のSSIDを作成し、キャプティブポータルでSocial Loginを選択すると、店舗を訪れた顧客や企業の来訪者は、Facebookアカウントでログインすることで、無線LANを利用することが可能になる。

ゲスト用に細かな設定も可能で、たとえば接続可能なスケジュールを営業時間のみに設定したり、接続可能な周波数帯を2.4GHzのみに制限したり、クライアント同士のアクセスを禁止したり、接続後の転送速度の上限を設けたりすることもできる。

実売1万5000円前後のリーズナブルな製品で、Facebook Wi-Fiも含めたここまで細かな設定ができるのは、大きな特徴といえる。社内だけでなく、ゲストにも無線LANを解放したいという場合に最適な製品だ。

SSIDごとにネットワークを個別に設定可能。VLANで分割したり、アクセス可能な時間を制限したり、Facebook Wi-Fiによる認証も可能

なお、ここまでWAC505/WAC510を並列でチェックしてきたが、両製品の違いは以下の表のようになっている。大きな違いは、WAC510はルーター(DHCP)としても動作させることが可能である点、接続台数が50台と多い点がなどが挙げられる。

スペックの比較

無線LAN環境が大幅に快適になる

以上、ネットギアから登場したWAC505/WAC510の特徴を法人向けの切り口で紹介したが、正直な感想としては、この価格の製品で、ここまでできるのかという印象だ。もっと高価な製品でも、本製品より使える機能が少ない場合もあるだけに、かなりコストパフォーマンスが高い製品といえる。

法人向け製品の場合、価格が安いと、性能や機能に疑いを持ちたくなる場合があるかもしれないが、むしろ今までの法人向け製品の価格が高すぎであり、本製品の登場によって、ようやく中小の現場でも無理なく導入できるようになってきたと見るのが妥当だ。これは、かつてネットギアのスイッチやNASが切り拓いてきた道と同じだ。

今回は深く触れなかったが、アプリを使ったクラウド管理がこの価格帯の製品でもできる点もかなり画期的だが、スタンドアロンでも十分に魅力的な製品といえる。自社の無線LAN環境の改善に取り組む場合は、真っ先に候補として考えたい製品だ。次回はInsightによる集中管理などを紹介しよう。