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ネットギアが本気でミドルレンジも獲りに来た!
簡単で、安くて、しかも速いMU-MIMO対応デュアルバンドWiFiルーター「R6350/R6850」

2018/03/09 清水理史

高品質な「Nighthawk」シリーズで知られるネットギアから、実売1万2800円前後とリーズナブルな価格設定の無線LANルーターが登場した。低価格ながらIEEE802.11ac Wave2の最新規格に対応することでMU-MIMOに対応し、ペアレンタルコントロールなどの機能も搭載した同製品を実際に試してみた。

「じゃない方」でも思想は同じ

他社に先駆けて搭載される最新技術や圧倒的なパフォーマンス――。

ネットギアと言えば、ハイエンド無線LANルーターの代名詞「Nighthawk」を思い浮かべる人が多いかもしれないが、そんなネットギアの無線LANルーターにも、じつはリーズナブルな価格設定のモデルが存在する。

今回、新たに登場した「R6350」「R6850」の両モデルがまさにそんな存在だ。同社は、2017年10月に「R6120(実売5980円)」というエントリーモデルを発売したが、今回の両モデルは、R6120から無線性能や有線LANの速度などアップしたミドルレンジに位置するモデルだ。1万円前後とリーズナブルな価格設定ながら、Nighthawkシリーズにも通じるところがあるデザインを採用し、Nighthawkシリーズにも搭載されている機能を多数搭載している。

Nighthawk「じゃない方」と言われるかもしれないが、その実力は決して侮ることができないもので、ネットギア製品ならではの高い品質とパフォーマンスを気軽に手に入れられるのが特徴だ。

1万円前後の無線LANルーターは、各メーカーが売れ筋製品をラインナップする主力市場だが、この分野でも高い存在感を示すことができそうな完成度の高い製品と言えそうだ。

ネットギアのミドルレンジWiFiルーター「R6850」

「R6350」(左)と「R6850」(右)。両者は無線スペックが異なる

3本アンテナのコンパクトデザイン

それでは、実際に製品を見ていくことにしよう。

デザインはR6350/R6850ともに、従来モデルのR6120の流れを汲むものとなっているが、サイズ的にはR6120から若干大きくなっており、サイズは幅235.51×奥行き150.76×高さ54.5mmとなっている。一回り大きくなった印象だが、通信機器としてはさほど大きくないサイズで、設置場所に困るようなことはなさそうだ。

アンテナは外付けで背面に3本搭載されているが、こちらもサイズがさほど大きくないため広げてもあまり邪魔にならない。最近の無線LANルーターは、アンテナレスか、巨大な外付けかという二極化する傾向があるが、本製品は本体とのバランスが取れたちょうどいいサイズと言える。

インターフェースは、背面に集中しており、WAN×1、LAN×4の有線LANポートはすべてが1Gbps対応となっている。前述したエントリー向けのR6120が100Mbps対応だったことを考えると、大きな進化と言えるだろう。

また、背面にはUSB2.0ポート×1も搭載されており、ここにUSB接続の外付けディスクなどを装着することで、アフィル共有も可能になる。Nighthawksシリーズ同様、ReadySHAREによる外出先からのファイルアクセスもサポートされており、いわゆるパーソナルクラウド的な使い方も可能だ。

正面

側面

背面

無線スペックは、利用可能なチャネルがW52のみとなるものの、IEEE802.11ac Wave2に対応している点が大きな特徴だ。1万円前後の無線LANルーターの中には、Wave2前の規格にしか対応しない製品もいくつか見られるが、本製品は最新規格であるWave2対応のチップを搭載している。

これにより、ミドルレンジ製品ながらMU-MIMOに対応。複数端末での同時通信(ダウンロード)に対応することが可能となっている。MU-MIMO非対応の無線LANルーターの場合、家庭内の複数端末からの接続を同時に処理することができないため、時分割で順番に通信が行われるが、MU-MIMOなら順番待ちをすることなく複数機器からの同時通信が可能になる。同じくMU-MIMOに対応したPCやスマートフォンが必要だが、家庭内に無線LANを利用する機器がたくさん存在する場合は、このメリットが活きてくるだろう。

なお、R6350とR6850は、利用できる機能は共通だが、無線のスペックだけに違いがある。2.4GHz帯はどちらも300Mbps対応(2ストリームのIEEE802.11n)だが、5GHz帯はR6350が4ストリームの最大1450Mbps対応(MCS8)、R6850が4ストリームの最大1733Mbps対応となる。ミドルレンジの製品で、4ストリームのIEEE802.11acに対応している点は大きなメリットだ。

■スペック比較
R6850 R6350 R6120
実売価格 12,800円前後(想定価格) 9,800円前後(想定価格) 5,980円
CPU 880MHz 880MHz 580MHz
メモリ 128MB 128MB 64MB
対応規格 IEEE802.11ac wave2/n/a/g/b IEEE802.11ac wave2/n/a/g/b IEEE802.11ac/n/a/g/b
2.4GHz速度 300Mbps 300Mbps 300Mbps
5GHz速度 1733Mbps 1450Mbps 867Mbps
5GHzチャネル W52 W52 W52/W53/W56
ビームフォーミング
MU-MIMO
エアタイムフェアネス
アンテナ 外付け×3 外付け×3 外付け×2
WAN 1000Mbps×1 1000Mbps×1 100Mbps×1
LAN 1000Mbps×4 1000Mbps×4 100Mbps×4
LAG
USB 2.0×1 2.0×1 2.0×1
eSATA
サイズ 235.51×150.76×54.5mm 235.51×150.76×54.5mm 185×136.5×46mm

※実売価格は2018年3月8日時点のAmazon.co.jpでの価格

■機能の違い
R6350/R6850 R6120
メディア共有 DLNA ×
ファイル共有 ReadySHARE
FTPサーバー ×
バックアップ TimeMachine対応 × ×
ReadySHARE Vault ×
セキュリティ ペアレンタルコントロール(無料)
ゲストアクセス
VPNサーバー OpenVPN ×

iPhoneも一発でつながる手軽さ

使い勝手に関しては、とにかく接続設定の手軽さが抜群にいいのが特徴だ。

特にiPhoneの接続が楽で、最新のiOSを搭載した端末であれば、カメラを使って本体に貼り付けられているQRコードを読み取るだけで、一発で無線LANの接続が完了する。

QRコードを使った接続設定というのは、他社でも使われているが、読み取ったQRコードからアプリをインストールしたり、暗証番号を入力するなど、読み取り後もいくつかの操作が必要になる。

これに対して、R6350/R6850に限らずネットギアの無線LANルーターのほとんどは、カメラでQRコードを接続することで、直接、無線LAN接続設定が完了する。おそらく、現状、もっともiPhoneを簡単に接続できる無線LANルーターと言える(AndroidもNEGEAR GenieをインストールすればQRコードで簡単に接続可能)。

iPhoneならカメラでQRコードを撮影するだけで接続可能

回線の接続設定も、「NETGEAR UP」アプリを使って簡単に実行できるうえ、接続中の端末を確認したり、速度チェックをしたり、友人が自宅を訪れてたときにゲスト用のWiFiを有効化してパスワードを教えたりできる。より詳細な設定が可能な「NETGEAR Genie」も利用可能だ。

NETGEAR UPで初期設定や簡単な設定が可能

高度な機能の利用にはNETGEAR Genieを利用する

また、こちらはAndroidまたはWindows用となるが、「Wi-Fi Analytics」というアプリを利用することで、無線LANの電波状態や速度、周囲の混雑状況などを手軽にチェックできる。

このほか、OpenDNSを利用したペアレンタルコントロールも利用可能となっている。年齢層を選んでWebページをフィルタリングしたり、フィルタリングが適用される時間を設定できるので、子どものインターネット利用を制限したい場合にも便利だ。

USB接続したストレージの共有も可能で、家庭内の簡単なファイル共有なら、本製品のみで事足りる。

実用的なアプリやサービスが充実しているのも、ネットギアの無線LANルーターの魅力だが、ミドルレンジ製品だからと言って、こうした既存の資産が省かれることなく、そのままそのまま使えるのはありがたいところだ。

無線スペックやCPUなどの処理能力はNighthawkシリーズに及ばないものの、使える機能などは、ほぼ共通となるため、お買い得感はかなり高い。

NETGEAR Wi-Fi Analyticsで電波状態を確認可能

OpenDNSを使ったペアレンタルコントールも利用可能

高度な設定はPCからブラウザーを使って実行することもできる

R6850のUSBポートにSSDを接続し、有線接続のPCからCrystalDiskMarkを実行した結果。USB2.0接続なのであまり速度は速くないが、家庭内でのファイル共有には十分

実力も侮れない

気になる実力だが、本当にミドルレンジの製品なのかと疑いたくなるほど高い。

以下は、木造三階建ての筆者宅にて1階にR6350/R6850を設置し、各フロアでiPerfによる速度テストを実行した結果だ。2ストリーム866Mbps対応のクライアントを使っているため、近距離での最大速度が600Mbps前後で頭打ちになっているが、長距離での速度が予想以上に高い。

特に3階の窓際は、一般的な製品であれば20Mbps前後で、性能が低い製品だと数百kbpsになってしまうこともある環境だが、R6350/R6850のいずれも100Mbps近い速度で通信できている。

実環境でのテストのため、周囲の状況や時間帯によって結果は変わるのだが、100Mbps近い速度はなかなか出るものではないので、非常に優秀な製品と言える。正直、もっと低い速度を予想していたので、良い意味で裏切られた印象だ。

※サーバー:Intel NUC(DC3217IYE),Windows Server 2012R2
※クライアント:Macbook Air Mid-2013 11インチ(866Mbps)

なかなかお買い得な製品

以上、ネットギアから登場したR6350/R6850を実際に使ってみたが、リーズナブルな価格ながらとても完成度の高い製品と言ってよさそうだ。

冒頭でも触れたようにネットギアの無線LANルーターはNighthawkシリーズのイメージが強く、品質や性能が良いことはわかっていても、値段が高く、なかなか購入の決断がしにくかったが、本製品はこうした品質や使いやすさを受け継ぎながら、リーズナブルな価格設定がなされている。

ミドルレンジ製品としては無線のスペックも実効速度も高いため、実用性も問題ない製品となっている。1万円前後で選ぶとすれば、かなり有力な選択肢のひとつと言っていいだろう。