ネットギアのもうひとつの無線LANルーター
「よきにはからって!」そんなわがままに応えてくれるネットギア「Orbi」の魅力
2017/12/20 清水理史
ネットギアの無線LANルーターと言えば? 真っ先に思い浮かべるのはプレミアムWiFiルーターの「Nighthawk」シリーズだが、もうひとつ、メッシュ技術を採用したユニークな製品があることを忘れてはならない。複数台の機器を連携させることで、家中に通信エリアを広げることができるだけでなく、「Circle with Disney」という非常に使いやすいペアレンタルコントロールまで手に入れた「Orbi」の魅力に迫ってみた。
手強い環境に
無線LANルーターの導入というのは、じつに悩ましいものだ。
建物の広さや構造などによって、どうしても電波が届きにくい場所が発生してしまうことがあるが、実際にどこがつながりにくくなるかは導入してみるまでわからない――。
もちろん、ネットギアのNighthawkシリーズのように、単体で広いエリアをカバーできる高性能な無線LANルーターも存在するうえ、それでも届かなければ中継機を使うという手もあるが、それでも設置してみないとわからないことに変わりはない。
最近の中継機は設定が簡単になっているが、それでも親機に接続する手間がかかったり、中継する電波をどうするかを決めたり、親機と中継機で異なる接続先(SSID)を使い分けたりと、いろいろな悩みも発生する。
専有面積の広いマンション、階数の多い戸建て、電波を通しにくい鉄筋コンクリート造の建物、部屋数が多く敷居となる壁やドアが多い環境、などなど。手強い環境では、どうやって無線LANを快適に設計するかが、とても悩ましい問題となりがちだ。
じつはおまかせで済むんです
このような悩みは、実際の環境では少なくないはずなのに、なぜか多くのメーカーが対策を打ち出していない状況だ。
話は単純だ。既存の技術では対策が難しいからにほかならない。
そんななか、既存の無線LANとは異なるアプローチで、通信エリアを拡大することができる製品に注目が集まっている。ネットギアから発売されている「Orbi」だ。
Orbiは、一口に説明すれば、複数台で通信エリアをカバーする無線LANシステムだ。
システムの中心となる「ルーター」と、その働きをカバーする「サテライト」で構成されており、ルーターとサテライトが連携することで、1台だけでではカバーできないエリアまで無線LANの電波を届けることができるようになっている。
一見、前述した中継機と同じ構成のように思えるかもしれないが、Orbiは、以下のように中継機にはないいくつもの特徴を備えており、とにかくカシコイのがメリットだ。
●はじめからペア
Orbiは、はじめからルーターとサテライトの2台がセットで販売されているため、中継機のように後から買い足す必要がない。しかも、ルーターとサテライトの接続設定は自動的に行われるうえ、インターネット接続設定も日本語化された使いやすいスマートフォン向けアプリから簡単にできるため、設定の手間なく、簡単に利用できる。
●接続先はいつでも1つ
中継機では、親機のSSIDと中継機のSSIDが違うため、自分がいる場所でどちらの電波状況がいいかをチェックして、自分でつなぎ分ける必要があったが、そんな面倒は一切不要。ルーターもサテライトも1つのシステムとして連携するため、どこにいても接続先のSSIDはひとつだけでOK。
ルーターとサテライトのどっちに接続すればいいのかもOrbiが勝手に判断してくれるうえ、万が一、移動した場合でも、サテライトの通信エリアに入ると即座に子機の接続が引き継がれる。従来の中継機では、子機まかせで切り替わるため、つなぎかえたほうがいいのに、なかなかつなぎ変わらないことがあった。
●難しいことを考えなくていい
無線LANでは、設定時に利用する電波の周波数を考慮することがとても大切。特に中継機を使う場合は、中継に使う電波の周波数とPCやスマートフォンなどをつなぐための周波数をうまく使い分ける必要がある。使える周波数帯が少ないと、たとえば同じ5GHz帯を中継とPCやスマートフォンの接続の両方に使ってしまうことで、速度が半減してしまう場合もある。
Orbiなら、そんな難しいことは一切考える必要なし。5GHz×2(1733Mbps+866Mbps)、2.4GHz×1(400Mbps)と3系統の周波数帯(トライバンド)を効率的に使って通信可能。高速な5GHz帯が2系統使えるので、中継に5GHzを使っても、干渉しない別の5GHz帯でPCやスマートフォンを接続できる。早い話、周波数帯なんて難しいことは考えなくていい。
●有線LANでも中継できる
しかも、最新ファームウェア(2.1.1.12)で「イーサネットバックホール」に対応し、ルーター・サテライト間の接続に有線LANを使うことも可能になった。障害物がある場合など、ルーターとサテライトの間の電波が届かない環境でも、有線LANを使ってルーターとサテライトの間の接続(バックホール)ができる。対応ファームが搭載されている場合は、有線LANケーブルでルーターとサテライトをつなぐだけで、自動的に構成できるので、セットアップも簡単。有線LANが届く範囲に設置する場合は、より安定したパフォーマンスを得ることが可能になっている。
●増やせば広がる
Orbiの増設サテライトを追加購入すれば、3台以上のOrbiでより広いエリアをカバーすることができる。2台あれば、ほとんどの家庭で家中に電波を届けることができるが、それでも届かない場所がある広い環境などでは、Orbiの追加を検討しよう。もちろん、増設は簡単。ボタン設定で既存のネットワークに参加させるだけで利用できる。なお、Orbiルーター1台に対してOrbiサテライトが3台まで追加できるようになっている。
●柔軟に対応してくれる
Orbiは環境に合わせてルーターとサテライトの間の接続形態(トポロジー)を自動的に変更してくれる。
たとえば、ルーターを家の中心にあるリビングに設置し、ベランダに面した東側の部屋にサテライトを1台、さらに西側の部屋にもう1台サテライトを設定したとしよう。この場合、中心のルーターから放射状に広がるような形でOrbiが自動構成される。
一方、3階建ての戸建て住宅などでは、距離を稼ぐネットワーク形態となる。たとえば、1階にルーターを設置し、2階にサテライト、さらに3階にもう1台サテライトを設定したとしよう。この場合、一方向にエリアが数珠つなぎのように伸ばされていくメッシュ状に自動構成される。
本来であれば、場所にあった設置方法を自分で考え、その設置方法に適した接続形態に自分で設定する必要があるだが、Orbiなら、どんな環境に、どう設置されたとしても、自分で最適な接続形態を選んでくれるというわけだ。
要するに「よきにはからってくれる」ということになる。最近の無線LANルーターは、設置して、インターネットに接続し、PCやスマートフォンを接続する程度であれば、どの製品もさほど難しく感じることはない。
しかし、いざ、電波が届かない場所をカバーしようとしたり、少しでも通信速度を上げようとすると、途端に接続形態や周波数などの難しいことを考えなくてはならなくなってしまう。
こうした無線LANならではの「小難しさ」を感じさせない点こそが、これまでの無線LAN製品とOrbiの決定的に異なるポイントだ。
「Circle with Disney」のペアレンタルコントロール機能を搭載
また、セキュリティ機能も充実している。
家庭で利用する場合、子どもが時間を忘れてゲームや動画を使いすぎたり、うっかり悪質なサイトにアクセスしてしまうことが心配だが、本製品ではペアレンタルコントロール機能が搭載されているため、アダルトサイトなど特定のサイトへのアクセスを遮断することができるようになっている。
Orbiでは、ペアレンタルコントロール機能として、従来からOpenDNSのサービスを利用したものを提供してきたが、最新のファームウェア(2.1.1.12)で新たに「Circle with Disney」にも対応した。
日本では、まだ耳慣れないサービスだが、米国ではすでに提供が開始されているサービスとなっている。本来は専用のデバイス($99前後)を購入する必要があるが、Orbiそのものが専用デバイスの機能を提供することが可能となっており、前述した2.1.1.12のファームウェアにアップデートするだけで利用可能になっている。
従来のペアレンタルコントロール機能よりも、使い方が簡単で、しかも細かな制御ができるのが特徴で、主に、以下のような機能を利用できる。
ポーズ(ベーシック)
すべてのインターネット接続、または特定ユーザーや特定デバイスのインターネット接続を一時的に強制停止するフィルター(ベーシック)
5才以下、6-12才など、年齢ごとにカテゴライズされたコンテンツに従って、アクセスできるサイトやアプリを制限できるヒストリー(ベーシック)
ユーザーが利用したWebサイトの履歴を参照できるタイムリミット(プレミアム)
トータル利用時間、もしくはプラットフォーム(アプリやサイト)ごとに個別の利用時間を設定し、それ上限を超えたアクセスを禁止できるベッドタイム(プレミアム)
利用禁止時間を就寝時間として設定できるオフタイム(プレミアム)
勉強時間など、特定の時間帯の利用を禁止できるリワード(プレミアム)
一時的に利用を許可できるユーセージ(プレミアム)
利用時間や訪問履歴が多いサイトなどの利用状況を確認できる
月額550円のプレミアムプランを契約することで、アプリごとに利用時間を設定できたり、利用時間をベッドタイムやオフタイムなどの複数のスケジュールの組み合わせで柔軟に設定できるなど、非常に多機能なサービスとなっている。この機能が使えるようになったことで、Orbiを無線LANのためだけでなく、安心、安全のためにも活用できるようになったのは非常に大きなメリットだ。
電波が届かないとあきらめる前に
以上、ネットギアから発売されている新世代無線LANシステム「Orbi」の魅力を、一般的な無線LANと比べながら掘り下げてみた。とにかくおまかせで済むのがOrbiの最大の特徴で、現状、無線LANの遅さに困っていたり、電波が届きにくい場所がある場合は、試してみ価値のある製品と言える。
最新のファームウェアで、ホームネットワークの安全、安心も手軽に確保できるようになり、製品としの魅力も一段と増した印象だ。単に電波が届くだけでなく、無線LAN環境をトータルで快適にできる製品として、注目の一台と言えそうだ。