あなたにピッタリなのは、どの「Nighthawk」?
ネットギアのプレミアムWiFiルーター4製品を比較する

2017/12/06 清水理史

ネットギアの無線LANルーター「Nighthawk」シリーズには、スペックの違いによっていくつかの製品がラインナップするため、実際に製品を購入する際にどれを選べば良いのかに悩むことがある。型番や見た目からは判断できない性能の違いに注目して、自分のタイプに合ったモデルを選択しよう。

大切なのは自分に合ったモデルを選ぶこと

「さて、どのモデルを買おうか――」。

無線LANルーターを購入しようと、店頭や通販サイトを訪れ、ズラリと並んださまざまなメーカーの、さまざまなモデルに頭を抱えてしまった人も少なくないのではないだろうか?

無線LANルーターの場合、メーカー選びも難しいが、それ以上に難しいのが、似たような名前で型番だけが少しずつ違う同一メーカー内でのモデルの選び方。

パッと見て判断できるのは、価格、そしてパッケージやキャッチコピーに踊る速度の表記だろう。

もちろん、値段も、速度も高ければ、基本的に高性能な製品であることに間違いはない。しかしながら、買う側にしてみれば、予算は限られているうえ、自分の用途には合わない過剰な性能も必要ない。

このため、スペック表をじっと見つめて、何が違うのか? どう違うのか? をじっくり検討する必要があるのだが、項目も多く、用語も難解でわかりにくいのが実情だ。

そこで、ここではネットギアのNighthawkシリーズから、「Nighthawk X10 R9000(以下R9000)」「Nighthawk X8 R8500(以下R8500)」「Nighthawk X6S R8000P(以下R8000P)」「Nighthawk X4S R7800(以下R7800)」の4製品をピックアップして、スペックの違いから、その用途や適したユーザーを紹介する。

ネットギアのNighthawkシリーズは、同社の無線LANルーターの中でもプレミアムシリーズとして位置付けられている高性能な製品で、業界初と言われるような画期的な機構を採用していたり、最新規格にいち早く対応することなどで知られる製品だ。

そのぶん、スペックも難解ではあるのだが、ポイントを押さえれば、似たような型番の中から、自分にピッタリの製品が浮かび上がってくるだろう。

「Nighthawk X10 R9000(右上)」「Nighthawk X8 R8500(左上)」「Nighthawk X6S R8000P(右下)」「Nighthawk X4S R7800(左下)」

スペックをヒートマップで見える化

実際、従来モデルと比較してみると、その性能の高さがよくわかる。

スペックを見比べるのが苦手・・・・・・。そんな人でも、以下のスペック表なら少しはわかりやすいのではないだろうか?

まずは、細かな部分は無視して、色に注目してほしい。この表は、Nighthawkシリーズ4製品の基本性能や無線性能を比較したものだが、それぞれの製品で優れている部分をオレンジで、劣っている部分をブルーで色分けしている。

よく企業などで、フロアの無線LANの電波強度を色分けしたヒートマップが使われるが、それと同じように、スペックを疑似ヒートマップ化したものと考えるといいだろう。

要するにオレンジが多ければ優れた部分が多い機種なので、ざっと見るだけでも、各モデルの違いがある程度判断できるはずだ。

こうして見ると、必ずしも上位モデルにオレンジ色が集中するわけではなく、それぞれのモデルにオレンジ色の「良いところ」が存在することに気が付く。

ここに注目していけば、自然と自分に合った製品を選ぶことができるはずだ。

■NighthawkシリーズSPEC比較
Nighthawk X4S R7800 Nighthawk X6S R8000P Nighthawk X8 R8500 Nighthawk X10 R9000
価格 実売価格 21,777円 29,800円 38,800円 57,801円
処理性能 CPU 1.7GHzデュアルコア 1.8GHzデュアルコア 1.4GHzデュアルコア 1.7GHzクアッドコア
  RAM 128MB 128MB 128MB 512MB
対応規格 IEEE802.11ac
  Wave2対応
  IEEE802.11ad
対応チャネル 2.4GHz 1-13ch
  W52(36/40/44/48)
  W53(52/56/60/64)
  W56(100/104/108/112/116/120/124/128/132/136/140)
対応バンド数   2 3 3 3
通信速度 2.4GHz 800Mbbps 750Mbps 1000Mbps 800Mbps
  5GHz-1 1733Mbps 1625Mbps 2166Mbps 1733Mbps
  5GHz-2 1625Mbps 2166Mbps 1733Mbps
  60GHz 4600Mbps
ストリーム数   4 3 4 4
変調方式(最大速度時)   256QAM 256QAM 1024QAM 256QAM
無線LAN機能 SmartConnect
  MU-MIMO
  ビームフォーミング
  アクセスポイントモード
  アクティブアンテナ
有線LAN WAN(1000Mbps) 1 1 1 1
  LAN(1000Mbps) 4 4 6 6
  LAN(10G SFP+) 1
  LAG
USB USB3.0 2 1 1 2
  USB2.0 1 1
eSATA   1

価格とバンド数をチェック

それでは、もう少し詳細に違いを見ていこう。

まずは、価格だが、ここでオレンジになったのはR7800だ。R9000の半額以下、R8000Pとも8,000円も差がある。

2万円台前半と価格が安いR7800

では、この差は何が影響しているのか? というと、表を下に移動していくと見えてくるのが、対応バンドの数だ。他機種は2.4GHz+5GHz+5GHzのトライバンドに対応しているが、R7800は2.4GHz+5GHzのデュアルバンド対応となっており、この差が大きいことがわかる。

■価格とバンド数
Nighthawk X4S R7800 Nighthawk X6S R8000P Nighthawk X8 R8500 Nighthawk X10 R9000
価格 実売価格 21,777円 29,800円 38,800円 57,801円
対応バンド数   2 3 3 3
通信速度 2.4GHz 800Mbbps 750Mbps 1000Mbps 800Mbps
  5GHz-1 1733Mbps 1625Mbps 2166Mbps 1733Mbps
  5GHz-2 1625Mbps 2166Mbps 1733Mbps
  60GHz 4600Mbps

このバンド数は、例えるなら道路の車線の数だ。3車線と2車線なら、当然3車線のほうが渋滞は発生しにくい。つまり、接続する機器が多いのであればトライバンドを選ぶほうが有利だが、さほどでもないならデュアルバンドでも十分と判断できる。

また、中継機と組み合わせたときなども、この違いは影響する。トライバンドに対応した機種なら、2系統ある5GHz帯を、1系統はパソコンやスマートフォン、家電などをつなぐための帯域、2系統目は中継機との通信といったように分けて利用できる。

接続端末数が多かったり、中継機を併用したい場合は、R8000P、R8500P、R9000が有利で、そうでないならR7800で十分という判断ができる。

価格に注目したとき、もう1つ気になるのはハイエンドのR9000の価格だ。5万円オーバーとR7800の2倍もする。

IEEE802.11adや10Gに対応したハイエンド機R9000

10G SFP+に対応する

この理由は主に2つある。1つは処理能力が高い点だ。CPUは今回のシリーズで唯一クアッドコアとなっており、メモリも段違いの512MBも搭載している。

もう1つの理由は、IEEE802.11adに対応している点だ。いわゆるWiGigで知られるこの規格は60GHz帯を使って、最大4600Mbpsという非常に高速な通信ができる。伝送距離が短いうえ、対応子機が少ないため用途は限られるが、IEEE802.11adに対応した非常に貴重な製品となる。IEEE802.11adを使いたければ、R9000を選ぶことになるだろう。このほか、有線LANで10G(SFP+コネクタ)にも対応しており、ネットワークをトータルに高速化できる。

唯一の欠点は、5GHz帯で利用可能なチャネルがW52のみに限られることだ。実用上は何も困らないが、比較的空いているW53やW56の帯域を使えないのが若干のデメリットだ。

■R9000のアドバンテージ
Nighthawk X4S R7800 Nighthawk X6S R8000P Nighthawk X8 R8500 Nighthawk X10 R9000
価格 実売価格 21,777円 29,800円 38,800円 57,801円
処理性能 CPU 1.7GHzデュアルコア 1.8GHzデュアルコア 1.4GHzデュアルコア 1.7GHzクアッドコア
  RAM 128MB 128MB 128MB 512MB
  IEEE802.11ad
対応チャネル 2.4GHz 1-13ch
  W52(36/40/44/48)
  W53(52/56/60/64)
  W56(100/104/108/112/116/120/124/128/132/136/140)
通信速度 2.4GHz 800Mbbps 750Mbps 1000Mbps 800Mbps
  5GHz-1 1733Mbps 1625Mbps 2166Mbps 1733Mbps
  5GHz-2 1625Mbps 2166Mbps 1733Mbps
  60GHz 4600Mbps
有線LAN WAN(1000Mbps) 1 1 1 1
  LAN(1000Mbps) 4 4 6 6
  LAN(10G SFP+) 1

なお、上記の表では、ハードウェアの違いを比較しているが、Nighthawkシリーズはソフトウェア的にはほぼ共通で、利用できる機能に大きな違いはない。たとえば、今回の4機種は、いずれも以下の表の機能を利用可能だ。

利用可能な機能(共通)
帯域制御 Dynamic QoS
メディア共有 DLNA
ファイル共有 ReadySHARE
  FTPサーバー
プリンタ共有 ReadySHAREプリント
バックアップ TimeMachine対応
  ReadySHARE Vault
セキュリティ ペアレンタルコントロール(無料)
  ゲストアクセス
  VPNサーバー

ソフトウェア的には各機種ほぼ共通で、使える機能もほぼ同じ。わかりやすい設定で使いやすいのも同じだ

価格が接近しているR8000PとR8500の違いは?

このように、価格面でメリットがあるR7800や、事実上IEEE802.11ad唯一の選択肢となるR9000は、用途がはっきりしている製品だが、価格が接近しているR8000PとR8500は何を選ぶ基準とすればいいのだろうか?

価格的にも性能的にも近い存在となるR8500(左)とR8000P(右)

ポイントとなるのは、ストリーム数だ。

先ほど、バンド数を道路の車線に例えたが、ストリーム数は、例えるなら道路で荷物(データ)を運ぶトラックの台数だ。

IEEE802.11acでは、MIMOと呼ばれる技術を使って、同一空間中に同一周波数の電波を使って複数の異なる通信を同時に実行する。ストリーム数はこの同時通信の数で、同じ道路を3台のトラックで荷物を運ぶのと、4台で運ぶことの違いとなる。

当然、4ストリームの方が速度は高くなる。データを電波に乗せるための変調方式もR8500は1024QAMと高度で、実は、今回の4機種の中でIEEE802.11acの速度がもっとも高い(逆にR8000Pは4種中もっとも低い)。

とは言え、このストリーム数は、接続する機器との関係もあるため、一概に高ければいいというものでもない。たとえば、現在、一般的に販売されているノートパソコンやスマートフォンは、ほとんどの機種が2ストリーム対応で、3ストリーム対応の機種はMacbook Proなど一部に限られる。

MIMOのストリームを複数機種で分割して同時通信に使えるMU-MIMOのことを考えれば、2+2で使える4ストリームのR8500が有利だが、MU-MIMOもパソコンやスマートフォン側が対応していないと使えない。

このため、現状では3ストリーム対応でも不利益らしい不利益はないことになる。むしろR8000PはCPUやメモリ性能が高く、処理能力に優れるため、3ストリーム以下のパソコンやスマートフォンを複数台接続したときの性能はR8000Pのほうが上と言える。

R8500は、電波特性に優れたアクティブアンテナ(アンテナ内に基盤を搭載しノイズ耐性が高い)を搭載しているうえ、LANポートも6つあるため甲乙付けがたいが、限られた端末の最高速度を重視するならR8500、多数の機器を無線LANで快適につなぐならR8000Pという選択になるだろう。

■R8000PとR8500の比較
Nighthawk X6S R8000P Nighthawk X8 R8500
価格 実売価格 29,800円 29,458円
処理性能 CPU 1.8GHzデュアルコア 1.4GHzデュアルコア
  RAM 128MB 128MB
通信速度 2.4GHz 750Mbps 1000Mbps
  5GHz-1 1625Mbps 2166Mbps
  5GHz-2 1625Mbps 2166Mbps
ストリーム数   3 4
変調方式(最大速度時)   256QAM 1024QAM
無線LAN機能 SmartConnect
  アクティブアンテナ
  LAN(1000Mbps) 4 6
  LAG

購入前に使い方を検討しよう

以上、ネットギアのプレミアムWiFiルーター4機種の違いを検証してみたが、こうして比べてみると、ある程度、用途も見えてくるのではないかと思う。

価格重視ならNighthawk X4S R7800、11adや10Gが必要ならNighthawk X10 R9000、比較的少ない台数でピーク速度を重視するならNighthawk X8 R8500、多くの機器を快適につなぎたいならNighthawk X6S R8000Pということになるだろう。

事前に自分の使い方や環境をよく検討し、そのタイプに合ったモデルを選ぶといいだろう。