「Arlo Q」で自宅と職場が直結! 家族の心も直結!?
音声のやりとりも可能になったネットギアの新ネットワークカメラ
2016.4.28 日沼諭史
以前紹介したネットギアのネットワークカメラ「Arlo」は、家族の知られざる生態を明らかにし、思わずすぐに帰宅したくなる不思議な効果が生まれるアイテムだった。
その紹介の際にちょっと触れたのが、Arloではライブ映像を見ることはできても音声機能を備えていないこと。これが個人的にはArloの唯一「惜しいなあ」と思った部分でもあった。もちろん声が聞こえないおかげで「早く帰って家族が何を話していたのか聞きたい」気持ちになったのも事実ではあるのだけれど……。
ところが、それからわずか3カ月ほどで、なんと音声機能付きの「Arlo Q」がリリースされたのである。ユーザーニーズにズバッと的確に、素早く対応してくるあたり、ネットギアの勢いと本気度が見て取れる。今回のArlo Qはしかも、電池ではなくAC電源で動作するという。これは気になる!
何も気にせずガンガン使い倒せるArlo Q
4月中旬に発売を開始した「Arlo Q」は、ネットギアの新しい無線ネットワークカメラとして、リモートから映像だけでなく音声も確認できるようにした高機能版。だが、従来機種のArloの後継機というよりは、Arloシリーズのバリエーションのひとつと考えたほうがよさそうだ。
従来のArloは電池を4本内蔵し、一切のケーブルなしでWi-Fi通信で動作するのが特徴だった。防水仕様でもあるので、そのままどこにでも直置きしたり、ネジ穴を使ってカメラ用三脚に固定したりできる。さらには、本体内蔵のマグネットと付属の半球型アタッチメントを組み合わせて自由度高くアングルを調節しつつ、壁などに固定できるようにもなっていた。
ただ、充電式ではない電池で動作するため、電池が切れれば交換作業が必要になる。できれば設置後は可能な限りメンテナンスフリーにしたい監視用途のカメラとしては、この部分が弱点と言えるところだったと思う。フィルムカメラなどで使われることの多かったリチウム電池を使用するという特殊さについても気になるところかもしれない。
一方の新しいArlo Qは、付属のACアダプターによる外部電源で動作する。必然的に電源ケーブルの長さによって設置可能な範囲が決まってしまうわけだけれども、電源さえ確保できればあとはメンテナンスフリーで、電池の消耗を気にせずガンガン使えるのが利点。ということで、時には置き場所を変えながらフレキシブルに使いたい時はArloを、ある程度長期間、設置場所を固定して使い続けたい場合や、後述の音声機能を活かしたい場合にArlo Qを用いる、という使い分けになるだろう。
さらに高画質、広視野角に。ステーションなしで単独使用もOK
カメラとしての機能・性能を見ると、Arlo QはフルHD(1080p)動画の撮影に対応し、視野角は130度に拡大。HD(720p)画質で視野角110度だったArlo以上の高画質、広視野角を実現したことで、部屋のより広い範囲をカバーするとともに、細部まできれいな映像でチェックできるようになった。どちらもWi-Fiで通信を行うが、Arlo Qは5GHz帯にも対応したため、電波干渉の影響を極力受けることなく、より安定したライブ映像が得られるようにもなっている。
通信環境という意味では、専用のベースステーションが不要になり、既存のWi-Fiルーター経由で使えるようになったのも大きなポイントだ。Arloでは専用のベースステーションとセットで利用するか、もしくはベースステーションとしても動作するネットギアの無線LANルーター「Nighthawk R7000」が必要だったが、Arlo Qは他社製品の無線LANルーターを使っていても問題なく接続できる。
そして、注目は音声機能だろう。映像を受信するとともにArlo Q内蔵のマイクで設置場所付近の音声を拾うことができ、必要に応じて監視側(外出先)からの音声をArlo Q内蔵のスピーカーから出力できる。つまり、外出先から自宅にいる家族らと会話できてしまうのである。
これらの機能を活用することで、果たして筆者宅ではどんな使い方ができるだろうか。ひとまずArlo Qを2階のキッチンに置き、2台ある従来機種のArloは2階リビングと1階の玄関が見渡せる部屋に置いてみた。
設置の容易さ、自由度高まる。Arlo QとArloは適材適所で使い分け
Arlo Qを設置してすぐに感じたのは、用途によってはArlo以上に設置性が高いこと。Arlo Qには直置き用の台座が付いており、まっすぐ立たせるだけでなく、無段階でカメラの角度を調整できるようにもなっている。従来のArloは水平なテーブルなどに直置きすると、まっすぐ正面しか捉えられないことになり、フレーミングの自由度は逆に低かった。そういう点から考えれば、Arloは付属の半球型アタッチメントで壁に取り付けるのが本筋で、直置きでは使い道が限られるアイテムでもあったわけだ。
だからといって壁などに取り付けるにしても、石膏ボード用アンカーやネジを使って壁に穴を開けることになるため、自宅が賃貸物件なら(新築の我が家も)できるだけ避けたいもの。Arlo Qも同様に壁に取り付けるためのアンカーとネジが付属しているが、直置きでも角度調整しやすい分、ライブカメラ本来の性能を活かせる家庭はArloよりも増えるのではないだろうか。
そんなわけで、我が家ではArlo Qをレンジフードの上に置き、下向きにして、間近にあるキッチンとダイニング、そして離れたリビングまでなんとなく見渡せるようなアングルにセット。これで、筆者がオフィスで仕事をしている間でも、夕方になれば妻と子どもが帰宅するのに気づけて、夕食に何をつくろうとしているのかが分かり、ついでにダイニングテーブルで食事を取る様子や、リビングでの出来事もある程度把握できるだろう。
リビングの反対側には従来機種のArloも設置しているので、子どもたちの遊ぶ姿をしっかり見たいときはライブ再生するカメラを手元のスマートフォンで切り替えればよい(複数のカメラ映像の同時再生もできる)。帰宅から夕食の様子、そこで交わされる妻と子の会話まで、オフィスにいながら全てが丸分かりになるはずなのである。
リモートの家族との会話で心がつながる、かも
そんなこんなで、オフィスでいつもどおりバリバリ仕事しまくっている(比喩)と、1階玄関内の動きをArloが検知してスマートフォンに通知があり、家族の帰宅に気づくことができた。ここまでは狙いどおりだ。が、Arlo Qのライブ再生もオンにすると、いきなりの猛烈な子どもの泣き声。2階のArlo Qのマイクは無指向性なうえに感度もなかなか高く、階下のわりと小さな物音もしっかり拾ってくれて、子どものギャン泣きは音割れするほどのボリュームだ。耳と心が痛い。
妻と子どもがArlo Qのある2階へ上がって来たところで声をかけてみる。スマートフォンを使って声をカメラ側に届けたいときは、アプリ画面上のマイクアイコンを押して通話モードに切り替え、少し待って準備処理が完了したところで大きな通話ボタンを押しながらスマートフォンのマイクに話しかける。専用サイト上での操作もほぼ同様で、トランシーバーのような使い勝手だ。こちら側から話しかける時はリモートの音声はオフになり、通話モードを終えて数秒経つとリモートの音声が再びフェードインする、という流れになる。
リモートの音声は映像と同期しているが、映像の遅延はだいたい5〜6秒程度あり、こちらから話しかけた音声も1秒程度遅れている。そのため、テレビ会議のような用途には向かないけれど、家族間の意思疎通に使うくらいであれば支障はない。コツとしては、往復の遅延を考慮して、こちらから話したいことは一度にまとめてしゃべってしまうこと。相手にも遅延があることをできるだけ意識してもらって、話し始めまで少し間を空けてもらうとよさそうだ。
階下の音もはっきり聞こえるほどのマイク性能だが、Arlo Qの間近の音が大きすぎる、ということはなく、会話にはちょうどよいボリューム。少し離れたリビングの小さな子どものつぶやき声も拾ってくれて、従来のArloの映像だけでは伝わってこなかったリアルな日常が感じ取れる。
ちなみにこの日、Arlo Qを通じて会話した内容は、子どもがなぜ泣いていたのか、晩ご飯のメニューの選択、帰るときに買ってきてほしいもの、など。さらに、リビングに置いていたArloが子どもに見つかり、いたずらされて倒れたカメラを元に戻してもらうための指示もできた。
そんなことならメッセージアプリのビデオ通話でもできるじゃないか、と思われるかもしれない。けれども、筆者としては部屋の全体を把握しながら会話でき、相手も両手をフリーにしたまま家事をこなしつつやりとりできるのが、Arlo Qを利用する場合の良い点だ。
何よりまだまだ思いどおりにならない幼い子どもの世話に精神をすり減らす妻に対して、帰宅直後に声をかけることができるとストレスを軽くしてあげられる……とまではいかないまでも、少しは気が紛れるのではないか。Arlo Qは自宅と職場を直結するのと同時に、夫婦の心も直結するアイテムなのかも、とか思ったりもするが、こんなこと妻の前で言えるわけがない。
連続録画機能で業務用監視カメラレベルに。家庭の決定的瞬間も逃さない!
ところでArlo Qは、Arloの時と同じように「ベーシック」プランで無料のまま使い続けることもできれば、有償の「プレミア」プラン(月額1190円)や「エリート」プラン(月額1790円)を契約し、オプション機能を使えるようにすることもできる。より多くのカメラを同時に使い、より大容量のクラウドストレージで長期間の録画データを保管、閲覧できるようになるものだが、Arlo Qにはもう1つ特別なオプションプランも追加できる。それが「CVR(Continuous Video Recording)」プラン、すなわち長期間の連続録画機能だ。
CVRプランは、14日間連続(月額1190円)、もしくは30日間連続(月額2290円)でライブカメラの映像をクラウドストレージに録画し続ける機能だ。ユーザーが特に録画操作をしなくても、電源が入っている間は自動で録画され、過去の映像も自由に振り返ることができる。Arlo Qを業務用監視カメラレベルにまで引き上げる、と表現しても大げさではない機能だ。
例えば、店舗やオフィスにもWi-Fi環境と電源さえあれば容易に設置でき、万が一映像を再確認する必要がある場合は、スマートフォンアプリや専用サイトからすぐにチェックできる。フルHD画質なのでディティールを判別しなければならないシチュエーションでも役に立つはずだ。
自宅用途においても、業務用と同様に24時間宅内監視して、防犯や空き巣被害時の証拠映像として残すようなセキュリティを意識した活用方法はあるだろう。基本機能の動作検知や音声検知でも最大120秒間は映像を残すことができるけれど、長時間録画し続けられるわけではないし、動作や音声が小さかったときに検知できない可能性もゼロではないから、CVRの24時間常時録画のメリットは少なくない。
が、個人的にはこのCVR、Arlo Qを常日頃ほしいと願っていたホームビデオ常時撮影用カメラとして使えるなあと考えた次第。というのも、なんの前触れもなく見せる子どもの最高に面白くてかわいらしい仕草の瞬間を、手持ちのビデオカメラやスマートフォンのカメラで捉えるのは困難だからだ。撮影するからもう1回やって、とお願いしたところで言う通りにしてくれないのが常だし、再現してくれたとしてもやはり不自然さが残る。ライブ感というのはやっぱり重要だ。
Arlo QのCVRで常時撮影していれば、普段の生活の中で見られる子どもの様子を余すところなく、自然なままで確実に捉えられる。こういった用途で使う場合、Arlo Qはキッチンではなく、できるだけ子供の姿が大きく写るように、家族みんなが過ごす時間の長いリビング、あるいはダイニングテーブルに置いた方が良い。ことによっては、さっとArlo Qを手に取って、決定的瞬間をアップで撮影することもできるだろう。
とはいえ問題は、CVRで録画された動画を手元に保存しておく手段が今のところないこと。スクリーンショットを撮影して静止画でその瞬間のみ残すことはできるが、だいたいが設置場所からの引きの映像になるだろうから、動きが見られないと面白味が減ってしまう。というわけで、今後、任意の時間帯を切り取って保存する機能が追加されることを期待したいのだけれど、果たして……。
(日沼諭史)
関連リンク
- ネットワークカメラ Arlo
- https://www.arlo.com/jp/
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