■おかざき真里
近年は前向きでポジティブな作風に移行しつつあるが、初期作品は現実を受け入れられず逃避願望が色濃い、救いのない作品を多く描いていた。
岩井作品でいうと『undo』や『PICNIC』あたりが好きな人なら、きっと気に入る作家なのではないかと思うので、「バスルーム寓話」(飛鳥新社刊)「冬虫花草」(ラポート刊)という単行本をおすすめしたい。なお、彼女の絵には顕著な特徴があり、なぜか細かい草を一本一本丁寧に描き込んでいることが多い。他にも水滴や魚の鱗や紙テープや無数の手などをこれでもかと言わんばかりに描写したりするのだが、中でも多いのはやはり「草原」である。とにかく執拗に草を書き続けるのだ。
『リリイ……』も田園風景の果てしなく広がる若草色が印象にのこる映画だったが、私は思わずこの人の描く草原を思い出していた。絵(映像)のディテールにこだわる点で相通じるものがあると思う。
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