『サイダーハウス・ルール』『ギルバート・グレイプ』『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』。いずれも本作を手がけたラッセ・ハルストレム監督作品である。このラインナップからもおわかりのように、愛、寛容、勇気などをテーマにした心温まる人間ドラマを得意としている人だ。これまでの作品で彼は心に傷を追った人々に優しい眼差を注いできた。どこか影を持った人物の感情描写がすこぶる上手い。そして、ジョアン・ハリスの同名ベストラー小説を原作とする本作でも、その力は十分発揮されている。 夫婦関係が上手くいかない人、親と断絶している人、偏見によって差別されている人。そんな彼らの感情を豊かに映し出すことができるのは、彼自身が人間を愛し敬っているからに違いない。そんなことを考えながらメイキング映像を観ていると、静かに、そして穏やかにスタッフ、キャストと交流している監督の姿に人情派という言葉が浮かんで重なった。「とても穏やかでヴィジョンを明確に持った人。安心してついていける」とあの大女優ジュディ・デンチは言う。ジョニー・デップは「役者やスタッフの気持ちも敏感に察してくれるから、リラックスできる」と話す。もちろん、主演のジュリエット・ビノシュもベタ褒めである。才能、そして確かな選択眼を持ち合わせた彼らに慕われるのは至難の業だろう。「キャストの誰もが第一候補だった」と監督は話しているが、夢のキャストを実現させたのも、一流の役者たちを納得させる才能と皆に慕われる人柄を兼ね備えた監督自身の力に他ならない。 ところでこの作品には、監督の愛妻で女優のレナ・オリンが出演している。どちらもハリウッドで活躍しているが、意外にも一緒に仕事をするのは初めてだそうだ。「彼女はやっぱりいい役者だね」としみじみ語る監督の表情には寸分のテレもない。また、本編の音声解説で妻が始めて登場するシーンに発するコメントがまたいい。なんと「僕の愛しい妻。早く会いたい」、である。録音した当時は仕事で離れ離れになっていたらしいのだが、撮影時を振り返り心から妻と過ごした時間を懐かしんでいる。まさにどこまでも“ごちそうさま”な作品であるとつくづく感じる瞬間であった。
■片面2層 ■画面サイズ:1.85:1(16:9 スクイーズ) ■収録時間:121分 ■音声仕様: 1,英語 5.1ch ドルビー・デジタル サラウンド 2,英語 5.1ch DTS サラウンド 3,日本語 5.1ch ドルビー・デジタル サラウンド 4,英語(解説音声) ステレオ