2001年12月
『スナッチ』

『ターミネーター』

『グリンチ』

2001年11月
『キャスト・アウェイ』

『スター・ウォーズ エピソードI ファントム・メナス』

『ショコラ』

『ゴッドファーザー』

スタンド・バイ・ミー』
2001年10月
『明日に向かって撃て!』

『羊たちの沈黙』

『バトル・ロワイアル』

アンブレイカブル』
2001年9月
『アラビアのロレンス』

『初恋のきた道』

『ペイ・フォワード』

クリムゾン・リバー』
2001年8月
『コヨーテ・アグリー』

『リトル・ダンサー 』

『ザ・セル 特別プレミアム版』

『火垂るの墓 -ほたるのはか-』

『17歳のカルテ コレクターズ・エディション』

2001年7月
『ダイナソー』

『宮廷料理人ヴァテール』

『グリーン・デスティニー』

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』


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原題:『GIRL, INTERRUPTED COLLECTOR'S EDITION』
監督/脚色:ジェームズ・マンゴールド
製作:ダグラス・ウィック/キャシー・コンラッド
製作総指揮:キャロル・ボディ/ウィノナ・ライダー
脚色:リサ・ルーマー/アナ・ハミルトン・フェラン
原作:スザンナ・ケイセン
出演:ウィノナ・ライダー/アンジェリーナ・ジョリー/ウーピー・ゴールドバーグ ほか

発売メーカ名:(株)ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
定価:3,800円(税別)
■アカデミー女優、大競演

 今、ハリウッドで最も期待されている女優といえば、アンジェリーナ・ジョリーだろう。彼女を名実ともに、旬の女優に押し上げたのがこの作品、『17歳のカルテ』である。ジョリーはこの作品でアカデミー助演女優賞を受賞し話題を集めたが彼女のみならず、主演のウィノナ・ライダーの繊細な演技や脇を固めるウーピー・ゴールドバーグ、バネッサ・レッドグレーブらの存在感も素晴らしい。出演者の演技をじっくりと味わえるタイプの作品だ。

 主演のライダーを完全に食ったともいえる名演(怪演?)については、彼女がこの作品で獲た高い評価ゆえに広く知られるようになった。ジョリーはあくまで助演なのだが、その存在感は大きい。ライダー演じる臆病でおどおどしたスザンナに比べ、ジョリー演じる堂々と大胆な行動をやってのけるリサは刺激的な魅力を湛えている。どちらかと言えば、エキセントリックなリサの方が、俳優にぜひ演じてみたいと思わせるキャラクターだろう。だが、構想から6年間もこの作品に関わってきたライダーだからこそ、リサ役は自分のためのものではないと知っていたのだろう。演技の評価としてはジョリーに軍配が上がった形となったが、製作総指揮としての、そして映画界の先輩としてのライダーの姿勢にはかなりの評価が集まったはずだ。ところで、二人の演技についてはメイキング・ドキュメンタリーで監督が非常に感心した様子で話をしているので、一度ご覧になってみてはいかがだろう。

 本作にはジョリーだけでなく他にもアカデミーに愛された女優たちが出演している点も見逃せない。ライダーは受賞こそ逃しているものの、助演女優賞と主演女優賞の2度ノミネートを受けているし、ゴールドバーグは助演女優賞を受賞している。レッドグレーブは助演女優賞1回に、その他、主演、助演あわせて5回もノミネートされている常連だ。彼らの演技バトルを観ることがどれだけ価値のあることかということは、映画が好きな人ほどおわかりだろう。

■制作秘話

 アスピリンを1瓶とウォッカを1本飲み干し、意識不明となったスザンナ。周囲は自殺だと大騒ぎしたが、彼女には自殺するつもりなどなかった。だが、常に何かに不安を感じ、何かを捜し求めるスザンナは苛立ちを隠せない。途方に暮れた両親は専門家の助けを求め、専門家は彼女を境界性人格障害と診断。精神病院に入ることになったが、そこには様々な問題を抱える患者たちとの出会いがあった。

 この作品は1993年にスザンナ・ケイスンという女性が出版した回想録の映画化だ。 60年代末に、著者自らが体験した青春のつまずきやその時期に出会った特別な人々との忘れられない思い出をもとに記した小説で、アメリカでは大ベストセラーとなった。対人関係が不安定となる境界性人格障害と診断され、専門の施設に送られる主人公スザンナを演じたウィノナ・ライダーも、もともとこの小説の愛読者の一人だった。プロデューサーのダグラス・ウィックが映画化権を手にしたと聞くや否や、すぐにアプローチを行ったという。インタビューに答えるウィックによれば、映画化権を獲得した直後にたくさんの女優から出演を希望する連絡が入ったが、人一倍積極的で熱心だったのがライダーだったそうだ。彼女が原作に、そしてこの映画に寄せる想いは、メイキング・ドキュメンタリーのインタビューの中で明らかにされている。また、原作者のスザンナ・ケイスンもインタビューに応じており、ライダーへ寄せる厚い信頼について語っているのも見逃せない。映画に描かれた当時の不安げな様子は全くなく、明るくはきはきした魅力的な女性となったスザンナ・ケイスンの現在の姿に励まされる人も多いことだろう。

 さて、ライダーの映画制作にかける熱意は以前から有名だが、彼女の情熱、演技力にも増して説得力があったのはもしかすると外見かもしれない。メイキング・ドキュメンタリーでは、スザンナの17歳当時の写真が披露されているのだが、それがライダーにそっくりなのだ。やはり実話を映画化するにあたっては、本人と俳優が似ているかどうかは、大切な要素なのだろう。

■未公開シーン

 メイキングと並んでDVD特典映像の定番となっているのが未公開映像だ。一般公開時にはお目にかかれなかった秘蔵映像なのだから、映画ファンにとっては魅力的なコンテンツだ。中でも監督の音声解説は特に面白い。どうしてそのシーンがカットされたのかとか、この場面にはどんな想いが込められていたのかなどしみじみと語ってくれているので、同情したくなる場合もあるのだが。

 この作品を手がけたジェームズ・マンゴールド監督によると、『17歳のカルテ』は初め3時間を超えてしまったのだそうだ。だが、もっと大衆的な作品にするために、やむなく2時間にまで編集したと言う。アメリカでは、よほどの大作でもない限り、3時間に及ぶ作品は映画会社が製作を認めない。上映回数も少なくなるし客足も遠のくからである。今回、DVDに収録されている未公開映像は全部で 9シーン。中でも興味を惹かれるのが、原作の中で最も美しく印象的と言われる一節を映像化した場面にまつわる話。主人公スザンナが美術館でフェルメールの“ピアノを中断された少女”という絵画と出会う強烈な体験が再現されているのだ。この絵画は英題は“GIRL INTERRUPTED AT HER MUSIC”というのだが、まさに英語タイトル“GIRL, INTERRUPTED”に通じる重要なシーンになるはずであった。ところが、前後のシーンと調和しないこと、原作で描かれた最も美しいシーンをその美しさを損なわずに映像化できたか自信がなかったことを理由にこの場面をカットしたと監督自ら告白している。実話、そして大ベストセラーを映像化することは非常に難しいことだと言われているが、まさにそれを表すエピソードであろう。

 「こんないいシーン撮ったんだけど、泣く泣く切ったんだよね」という無念を晴らす方法はこれまで限られていた。作品が興行的に大ヒットした場合には“ディレクターズカット”の編集が許されるが、それができるのはほんの一握りの監督。だが今ではDVDの特典としてお蔵入りになりかけたシーンが珍重されている。どんな方法であるにしても、自分が精魂込めて撮影した幻のシーンが生きるというのは監督にとって嬉しいことだろう。雇われている以上、監督とてすべて自分の思い通りにはいかないもの。監督の談話からはそんな切なさも漂ってくる。それにしても、このシーンが入ると流れが途切れるとか、このシーンはそれほど必要ないとか、自分の作ったものを客観的に見られるあたりはさすがだ。誰か有名な監督が言っていた「独りよがりになるのが一番怖い」という言葉をふと思い出した。音声解説付き未公開映像によって監督という仕事について学べることは多い。監督を目指している人などにはもってこいなのかもしれない。



■片面2層
■画面サイズ:ビスタサイズ(16:9)
■収録時間:本編約127分
■音声仕様:
1,英語 5.1chサラウンド
2,英語 ドルビーサラウンド
2,日本語 5.1chサラウンド
 
■ 音声解説
■メイキング・ドキュメンタリー:「スザンナの世界」
■未公開シーン(音声解説付)
■ミュージック・スコア
■タレント・ファイル
■オリジナル劇場予告編集


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