2001年12月
『スナッチ』

『ターミネーター』

『グリンチ』

2001年11月
『キャスト・アウェイ』

『スター・ウォーズ エピソードI ファントム・メナス』

『ショコラ』

『ゴッドファーザー』

スタンド・バイ・ミー』
2001年10月
『明日に向かって撃て!』

『羊たちの沈黙』

『バトル・ロワイアル』

アンブレイカブル』
2001年9月
『アラビアのロレンス』

『初恋のきた道』

『ペイ・フォワード』

クリムゾン・リバー』
2001年8月
『コヨーテ・アグリー』

『リトル・ダンサー 』

『ザ・セル 特別プレミアム版』

『火垂るの墓 -ほたるのはか-』

『17歳のカルテ コレクターズ・エディション』

2001年7月
『ダイナソー』

『宮廷料理人ヴァテール』

『グリーン・デスティニー』

『ダンサー・イン・ザ・ダーク』


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原題:『Vatel』
監督:ローランド・ジョフィ
製作:アラン・ゴールドマン/ローランド・ジョフィ
脚本:ジャンヌ・ラブリュヌ
英語脚色:トム・ストッパード
出演:ジェラール・ドパルデュー/ユマ・サーマン/ティム・ロス/ジュリアン・グラヴァー ほか

発売メーカ名:日本ヘラルド映画株式会社
定価:4,700円(税別)
蘇る! 華やかなりしルイ14王朝時代

 学生時代、世界史をとるか日本史をとるかという選択を迫られた時、迷わず日本史を選んだ。理由は横文字の固有名詞は覚えるのが難儀だということと、1世だの2世だのと同じ名前で数字違いの人がやたら多く出てきて混乱するからだ。結局、日本史を選んだおかけで世界の歴史に関してはめっぽう弱くなってしまったが、そんな筆者ですらはっきりと認識できる人物が何人かはいる。フランスのルイ14世もそのひとりだ。ルイ14世と言えば、フランス絶対王政最盛期の権力者で「太陽王」と呼ばれた人物。 建築、音楽、美術などの芸術を擁護し、フランスの文化をヨーロッパ全土に浸透させた人だ。フランス史上最も力を持った権力者として名を馳せ、ヴェルサイユ宮殿をきらびやかに改修し、その王朝は最も華やかだったとして知られている。ゆえに彼と彼の時代は、映画史上最も興味を持たれる題材のひとつであり、これまでも多くの名優たちがルイ14世を演じてきた。日本で言えば徳川家康、豊臣秀吉あたりだろうか。

 本作『宮廷料理人ヴァテール』の中で、ルイ14世自身が登場する場面はそれほど多くないが、彼の力がどれだけのものだったのかは、王を迎える3日間の騒動を目の当たりにすれば察するに余りある。贅をつくした料理の数々、そしてその料理に相応しい豪華な演出。大饗宴の裏に渦巻く陰謀や愛欲、数々の欲の先に繋がるのは、ブルボン王朝の隆盛に他ならないのである。

 ちなみにこの3日間の饗宴は実際に行われたものなのであるが、当時の宮廷生活を記した手紙によると、総費用は5万エキュだったとか。1661年のフランスの年間税収入の140分の1に相当し、それを1999年の日本の年間税収入から換算してみると約3兆5700億円に相当するらしい。あくまでも目安の数字でしかないが、どれほどの贅が尽くされたかはおおよその見当がつくというもの。その饗宴を再現するのに投じられた製作費はフランス映画史上最高の40億円とのことだが、ここまで非日常的な金額が飛び交うと果たして高いんだが安いんだか正直いってさっぱり判らなくなってくるというのが本音だ。確かに豪華な時代を映し出すべくセットもキャストもきらびやか。特に豪華絢爛な余興の数々は素晴らしく、実際に行われたものとどれだけ近いのかという疑問はさておき、かなり目を楽しませてくれる。中でも、王へのもてなしとして庭いっぱいに仕掛けられた原寸大“飛び出す絵本”風のセットが、CG氾濫のこの世の中、コテコテのアナログ感をもたらしなんとも新鮮である。

「君こそヴァテールだ」

 舞台はブルボン王朝華やかなりし1671年のフランス。老いた英雄コンデ大公の住むシャンティイ城へ、ルイ14世から3日間の訪問が告げられた。再起をかけ王の信頼を取り戻そうとするコンデ大公は、莫大な借金も覚悟の上で一世一代の大饗宴をもって国王をもてなそうとする。その饗宴を取り仕切るのは名料理人ヴァテール。王に供される贅沢な料理から、その料理にふさわしい完璧な演出に至るまで、すべての準備が彼の指揮によって進められてゆく。そしていよいよ3日間にわたる宴会の幕が開かれたその時、彼は思いもよらぬ運命に遭遇するのだった。

 ここで描かれるのはルイ14世をもてなす3日間の宴の様子とその舞台裏。だが宴会といっても、そこには食欲だけでなく、愛欲、支配欲、権力欲とあらゆる欲がまとわりついている。つまり社会の縮図なのである。それに気がつき始めると、実は、この『料理人ヴァテール』という映画製作自体がひとつの“宴”として見えてくるのである。もちろん宴会のすべてを取り仕切るヴァテールに相当するのは監督であるローランド・ジョフィ。多くのスタッフ、キャストに指示を与え、莫大な予算をやり繰りし、壮大な宴を完成させるために精根尽くす。まさにやってることはヴァテールと同じなのである。どうやらドパルデューも監督に言ったらしい。「君こそヴァテールだ」と。

 ひとつのイベントの裏側を映し出す映画の撮影現場が、映画と同じ世界を共有しているとはユニークだ。そうなれば、3日間の大饗宴の裏側を描いた映画の裏側だって覗いて見たいと思うのが人情だろう。それについては特典映像として収録されている監督、キャストインタビューに少なからず語られているので、ぜひそちらで興味を満たしていただきたい。

魅惑のキャスト

 このフランスの歴史劇を作るために各国から集められたキャストは豪華だ。本国はもとより、イギリス、アメリカからも演技派が集結している。彼らが、この作品への出演を決めた理由は「脚本の素晴らしさ」だと言う。DVDにはジェラール・ドパルデュー、ユマ・サーマン、ティム・ロスらのインタビュー映像が収録されているのだが、撮影現場で、まさに現在進行形の作品について語る彼らの表情はとても興味深い。俳優たちは映画の中と同じ衣装を身に着けて質問に答えているが、そのたたずまい、様子は作品に登場するキャラクターのそれとは全く違うのである。せっかくなので、役を演じている彼らの表情と素に戻った彼らの様子を見比べてみてはいかがだろうか。

 ところで、キャストの中で特に気になる人物がいる。ジェラール・ドパルデューだ。世界的に知名度も高くフランス国内でも実力を認められている素晴らしい俳優だが、彼は言わば美男子ではない。にもかかわらず美女との共演が相次ぐ。トリュフォーの『隣の女』ではファニー・アルダンと、ハリウッド進出第一作目となった『グリーン・カード』では、アンディ・マクダウェルと、そして今回はユマ・サーマンと共演。もちろん過去にも、多くの美女たちと絡んでいる。そして極めつけがこれ。現在のパートナーは何とフランスの知的美女、キャロル・ブーケというから驚く。ユマ・サーマンに「ジェラールと共演できるというのがこの映画への出演を決めた理由のひとつ。夢のような経験よ」と言わせるものはいったい何か。実はこの作品には彼の俳優としての魅力がいっぱい詰まっているのである。その豊かな表現力、存在感。俳優としてどれだけの才能に恵まれているかが手に取るようにわかるはずだ。だが、万が一、それでもよくわからないというなら、彼が役への取り組みについて語るインタビュー映像を試してみていただきたい。気さくに、だが熱心に演技論を展開する彼の姿を見れば、彼の人間性に惹かれることだろう。女優たちが絶賛するドパルデューの魅力をきっと感じられるに違いない。



■片面2層
■画面サイズ:
シネマスコープ(16:9)
■収録時間:
本編約117分
■音声仕様:
1,オリジナル(英語)5.1chサラウンド、
2,オリジナル(英語)ドルビーサウンド
3,日本語吹き替え ドルビーサウンド
 
■ オリジナル予告編
■スタッフ&キャスト
■インタビュー


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