2001年12月

vol.23『オーシャンズ11』

vol.22『プリティ・プリンセス』

vol.21『ピアニスト』

vol.20『アモーレス・ペロス』

2001年11月

vol.19『ハリー・ポッターと賢者の石』

vol.18『殺し屋1』

vol.17『ムッシュ・カステラの恋』

vol.16『インティマシー』

2001年10月

vol.15『Short6』

vol.14『メメント』

vol.13『GO』

vol.12『赤ずきんの森』

vol.11『ドラキュリア』

2001年9月

vol.10『陰陽師

vol.9『サイアム・サンセット』

vol.8『ブロウ』

vol.7『ブリジットジョーンズの日記』

2001年8月
vol.6『おいしい生活』

vol.4『キス・オブ・ザ・ドラゴン』

2001年7月
vol.3『まぶだち』

vol.2『がんばれ、リアム』

vol.1『眺めのいい部屋』


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  地下金庫に眠る1億6000万ドルを盗み出せ! 史上最強の犯罪チームがラスベガスにやってきた

 

  ダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)はその道ではカリスマ的な存在の窃盗犯。4年間の刑期を終えて仮釈放されたが、頭の中ではすでに次の犯罪計画を練っていた。その計画とは地下200フィートの金庫に保管されるラスベガスの三大カジノの売上金1億6000万ドルの現金を盗み出すというもの。オーシャンはさっそく旧友でいかさまトランプ師のラスティ(ブラッド・ピッド)、爆破の達人バシャー(ドン・チードル)など、計画に必要な各分野の達人に声をかけ、着々と計画を遂行し始めるが・・・。



  突然ですが、今回で最終回のこのコーナー。ラストを飾るのは豪華キャストと奇抜なアイディアで贈る痛快犯罪ムービー『オーシャンズ11』

 

  早いもので今年もあとわずか・・・・。そしてこのコーナーも連載開始から半年が経ちました。毎回ちょっと気になる新作映画をお届けしてきたシネマレビュー、突然ですが今回で最終回となります。半年の間、筆者の駄文におつきあい頂いた読者のみなさま、本当にありがとうございました。みなさまの映画選びにちょっとでもお役に立てることが出来ていれば幸いです。

 さてさて、今回ご紹介する作品は最終回にふさわしい、キャストもストーリーもとってもゴージャズな犯罪アクション映画『オーシャンズ11』。本作は1960年に製作されたフランク・シナトラ主演『オーシャンと十一人の仲間』のリメイク版。といっても、11人の仲間が協力してカジノの売上金を盗むというプロットが同じなだけで、後はまったくのオリジナル作品。保釈中だというのに、大掛かりな犯罪にチャレンジする懲りない窃盗犯ダニー・オーシャンの今回の標的はラスベガスの帝王テリー・ベネディクト(アンディ・ガルシア)。野心家で手段を選ばず現在の地位を築いたベネディクトは従業員の名前をすべて暗記し、毎日決まった時刻にホテルを見回るなど、行動に抜け目がない。また、自分を裏切った人間に対してはその人間の家族・親族に至るまでを徹底的に報復するという冷酷無比な男で、敵としては申し分のない存在だ。オーシャンはベネディクトに恨みを持つ元ラスベガスの帝王ルーベン(エリオット・グールド)をまんまとまるめこみ、資金援助者として協力させることに成功する。こうしてルパン三世も真っ青の大胆な犯罪計画がスリリングに幕を切ったのだが、実はこの犯罪計画は二重構造になっていた。ベネディクトの恋人のテス(ジュリア・ロバーツ)はオーシャンの元妻であり、オーシャンはベネディクトから金を奪うだけでなく、元妻のハートをも盗もうと一石二鳥を企んでいたのである・・・!


  無駄な贅肉が一切ないスマートな作りに脱帽。これぞ大人のためのエンターテインメント作品

 

 いや~、お見事お見事。これだけの壮大なストーリーをこれほど無駄な贅肉のない、美しい作品に仕上げるとは、(脚本も秀逸なんだろうけど)さすがはソダーバーグ! だってこの作品、上映時間は1時間57分。単純に考えて、オーシャンら11人の仲間達の見せ場を一人5、6分づつ取っただけでも1時間は経っちゃうわけだし、それに宿敵のホテル王アンディ・ガルシアの見せ場、紅一点であるテス(ジュリア・ロバーツ)とオーシャンの絡みのシーンなどを入れたらもうキツキツなわけで・・・。ほんと、男の友情あり、スリルあり、笑いあり、ロマンスありと盛りだくさんの内容なのに、よくこの上映時間内でうま~くまとめたなと、それだけでも感心してしまう。まあ、時間はもっと長くても構わないから、もうちょっとハラハラするシーンがあっても良かったなとか、ベネディクトの非道ぶりをもっと強調しないと憎たらしくないじゃんとか思う部分もあるんだけど、とにかくこの作品、観ていて生理的に快適なのだ。きっとこの作品を観るほとんどの人は、あっという間に時が経ち、「あ~楽しかった~」っと、気分爽快で劇場を後に出来るだろう。これはひとえに観客を楽しませることに知恵を絞った脚本、カメラワーク、編集の高度なテクニックの賜物。

 それからこの映画の全体的なトーンが古き良き時代のアメリカ的匂いを漂わせている所もいい。ソダーバーグの前作『トラフィック』はドキュメンタリータッチの作風だったが、今回は凝った照明で撮影されたシーンが多く、元ラスベガス帝王ルーベンが住むプール付の大邸宅のシーン等では『華麗なるギャツビー』なんかを彷彿とさせるものがあった。ヒロインのテスも、ハリウッド黄金期の映画に出てきそうな優雅で上品なキャラクター。でもジュリア・ロバーツのこの配役にはちょっと?という感じ。筆者が『オーシャンズ11』にジュリア・ロバーツが出演していると最初に聞いた時、てっきりジュリア・ロバーツはオーシャンズ11の一員だとばかり思っていた。ここはやっぱりジュリアには強盗メンバーになってもらい、峰不二子張りにお色気作戦などで大いに活躍して欲しかった気がする。その方がキャラクターとしては合ってる気がするんだけど、どうかしらん?(女を入れるとチームワークが乱れちゃって良くないのかもしれないけど)。

 まあとにかくこの映画、別にお金に困って切羽詰まって強盗をするわけでもなく、それぞれのメンバーが自分のプライドを賭けて“でかいことやったるぜ~”という心持で犯罪に挑むところといい、やったら煌びやかに撮影されたギャンブルの街ラスベガスといい、ジョージ・クルーニーの笑顔からこぼれる白い歯といい(?)、すべてがお祭り的な感じなのだ。こういう映画を実写で撮れちゃうってとこが、さすがハリウッド。出演している役者の顔ぶれもほんと豪華だし。きっと映画の中の強盗仲間と同様に、ギャラとか関係なく“おもしろい映画作ったるぜ~”という心持で出演者も集まったんだろうなーって考えると、なんだかとても嬉しくなります。めんどくさいことは考えたくない、とにかく楽しい作品が観たいという人には断然オススメの一本!


(谷本 桐子)

2002年2月9日より丸の内ルーブルほか全国松竹・東急系にて公開

監督:スティーブン・ソダーバーグ
脚本:テッド・グリフィン
製作総指揮:ジョン・ハーディー、スーザン・イーキンズ、ブルース・バーマン
製作:ジェリー・ワイントローブ
衣装:ジェフリー・クアランド
編集:スティーブン・ミリオン
美術:フィリップ・メシーナ
音楽:デイビッド・ホームズ
出演:ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、アンディ・ガルシア、ブラッド・ピット、ジュリア・ロバーツ、ケイシー・アフレック、スコット・カーン、ドン・チードル、エリオット・グールド、バーニー・マック、カール・ライナー他

2001年/アメリカ映画/1時間57分/シネマスコープ・サイズ/SRD・DTS・SDDS

配給:ワーナー・ブラザーズ映画

□OFFICIAL SITE
http://www.oceans11.jp/

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