2001年12月

vol.23『オーシャンズ11』

vol.22『プリティ・プリンセス』

vol.21『ピアニスト』

vol.20『アモーレス・ペロス』

2001年11月

vol.19『ハリー・ポッターと賢者の石』

vol.18『殺し屋1』

vol.17『ムッシュ・カステラの恋』

vol.16『インティマシー』

2001年10月

vol.15『Short6』

vol.14『メメント』

vol.13『GO』

vol.12『赤ずきんの森』

vol.11『ドラキュリア』

2001年9月

vol.10『陰陽師

vol.9『サイアム・サンセット』

vol.8『ブロウ』

vol.7『ブリジットジョーンズの日記』

2001年8月
vol.6『おいしい生活』

vol.4『キス・オブ・ザ・ドラゴン』

2001年7月
vol.3『まぶだち』

vol.2『がんばれ、リアム』

vol.1『眺めのいい部屋』


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  公開直前レビュー!世界中に愛される“ハリー・ポッターの世界”を完全映像化したこの冬一番の話題作!

 

 額に稲妻の形をした傷があるハリー・ポッター(ダニエル・ラドクリフ)は幼い頃に両親を失い、意地悪な叔母の家で物置が寝床、満足に食事も食べられないという虐げられた毎日を送っていた。そんなハリーの11歳の誕生日が近づいたある日、彼の元に1通の手紙が届く。その手紙にはなんと魔法魔術学校の入学許可証が入っていた。驚くべきことに、ハリーは魔法使いだと言うのだ。そしてハリーの11歳の誕生日、ハグリッド(ロビー・コルトレーン)という巨大な男が現れ、ハリーは今まで知らなかった両親の死の理由や魔法界のことを聞く。真実を知ったハリーは両親も学んだというホグワーツ魔法魔術学校へ入学することを決意。未知の世界へと出発するが・・・。



  原作から飛び出てきたかのような映画版ハリー・ポッターは英国的魅力が至るところに満載

 

 マハリクマハリー・ポッタ~♪(アホ) というわけで、いまや世界一有名な魔法使い(の卵)ハリー・ポッターの物語が映画になった。原作は全世界でベストセラーとなり、一大ファンタジー小説ブームを巻き起こしたまさに魔法的作品だが、原作愛読者の皆様ご心配なく、本作は原作に非常に忠実な仕上がりとなっております。なんといっても『ハリー・ポッター』の魅力は、薬草などを煎じて人々の病気を治したりといった、“自称魔女”が現代でも多く存在する土壌がある英国の風土が背景にあるからこそ。

 映画版『ハリー・ポッターと賢者の石』はハリウッド映画だけれど、俳優も英国人だし、撮影も英国で行われている。ちょっと茶色がかったような映画全体の色彩、中世のお城を彷彿とさせるホグワーツ魔法魔術学校や学校に向かうために乗車した紅色の汽車と車窓から見えるスコットランドの風景など、映画版『ハリー・ポッター』からは監督、クリス・コロンバスの原作の持ち味を忠実に再現しようとしている姿勢がどのシーンにもちゃんと伝わってくる。コロンバスは以前、英国に生まれた名探偵シャーロック・ホームズの青春を描いた映画『ヤング・シャーロック/ピラミッドの秘密』の脚本なども手がけたことがあるが、『ヤング・シャーロック』はもちろん、NHKで放送されていたTVドラマ『シャーロック・ホームズ』シリーズファンなど、英国びいきの人には本作は大いに楽しめる作品にだろう。映画化に当たってはスピルバーグやテリー・ギリアムなんかも本作の監督候補に挙がっていたらしいが、彼らだと作品世界に自分の個性を投影し過ぎてしまっただろうから、ここはあくまで原作の映像化に職人的に徹したコロンバスを起用したことは正解だったと思われる。


  こんな学校通ってみたい! 格調高くゴージャスなホグワーツ魔法魔術学校

 

 映画では原作に出てくる細かいエピソードをほぼ完璧に再現しているので上映は2時間32分と長いが、今の時代に生きていることが嬉しくなっちゃう最新CGをたっぷり使って作り上げたファンタジックな映像世界に浸っているうちに、あっという間に終わってしまう。不思議なものがなんでも売ってるダイアゴン横丁、グリンゴッツで働く子鬼たち、巨体のトロール、三つの頭を持つ化け物犬フラッフィーなどなど、小さい頃絵本で読んだ童話の挿絵の怪物や魔物たちのイメージをつなぎあわせて想像していた原作のキャラクター達が見事なCGとなってスクリーンに蘇るところは本当に楽しい。惜しむらくはハリーの精神的な成長などのドラマがもう少し描かれていてもいいと思うし、悪の魔術師と戦うシーンはもっと盛り上げるべきだと思われるが、この映画の全体的な世界観の完成度とキャストの素晴らしさでそのあたりは補われているといった感じだ。俳優陣は原作と少々キャラクターが違う役柄も多いが、皆いい味を出していた。特に優等生のハーマイオニー役のエマ・ワトソンがキュートだ。原作はただのイヤな奴だけど、やたらとハリーにつっかかる意地悪少年マルフォイ役のトム・フェルトンの美少年ぶりもgood!

 さてさて、ここまでいろいろ書いてきたけど、筆者が一番心を惹かれたのは本作に登場する様々な小道具だ。蛙チョコレートや百味ビーンズといったお菓子などは本当にこの世のどこかにあればいいのになーと思わせる逸品だが、映画ではそういった細々としたアイテムすべてを原作ファンの夢を壊さないように本当によく創ってマス。また、主人公のハリーが観客と同様に、魔法界のことを何にも知らないで育ってしまったという設定なため、私たちはハリーと一緒になって魔法界の常識である様々な事柄をドキドキしながら体験していける。こんなワクワク感はマグルの私たちには滅多に味わえるもんじゃありません。このお正月はハリーと一緒に魔法の世界へ旅するしかないでしょう!


  あったらいいなと思わせる胸躍る小道具が魅力。ハリーと一緒に魔法界を初体験しちゃおう!

 

 ストーリーに関してはご存知の方も多いだろうが、孤児だったハリーが実は魔法界では有名なプリンス的存在だったという、(ちょっと違うけど)「小公女セーラ」的展開。わかり易い善と悪の戦い、魔術を扱っているけど変にカルト的なところがなく、空飛ぶほうきやユニコーンなどある種スタンダードな道具や生物の登場など、誰でもが楽しめるライトファンタジーであり、旧文部省推薦的作品とも言える。主人公のハリーは呪いの刻印なんか額に刻まれちゃってるけど、とっても明るい良い子だし、いじめも登場するけど変にジメジメしてないところがいい。また、なんといってもこの物語は魔法魔術学校を舞台にした“学園モノ”なところが楽しいのだ。

 マグル(普通の人間)の通う学校の中で、自分だけ人と違う能力を持っていることで主人公が悩み苦しむといった学園モノならこれまでたくさん観てきたけど、ハリー・ポッターの場合は、生徒全員が魔法使い(の卵)って設定が新鮮だ。しかも魔法魔術学校と言っても、生徒たちは魔法が使えるという以外は普通の子供たちと見た目も中身も全く同じなため、普通の学校生活となんら変わらない展開が私たちの共感を呼ぶ。そしてなんと言ってもホグワーツ魔法魔術学校の建物の素晴らしいこと! ため息が出ちゃうほど立派な大広間(ごちそうが並んだハロウィーンのシーンは必見!)、仕掛けがたくさんある階段、壁にかかっている絵画は絵の中の人物が動いたり、時には額縁から飛び出たりと、さながらディズニーランドのホーンテッドマンション豪華版のようだ(例えが間違ってる??)。映画を観終わった後に「ホグワーツ魔法魔術学校に通いた~い!!」と思うのは私だけではないはず・・・。

(C) 2001 Warner Bros. All Rights Reserved

(谷本 桐子)

12月1日より丸の内ピカデリー1ほか全国松竹・東急系にて公開

監督/製作総指揮:クリス・コロンバス
製作:デイビッド・ヘイマン
脚本:スティーブ・クローブス
撮影:ジョン・シール
美術:スチュアート・クレイグ
音楽:ジョン・ウィリアムズ
衣装:ジュディアーナ・マコーフスキー
出演:ダニエル・ラドクリフ、エマ・ワトソン、ルパート・グリント、ジョン・クリーズ、マギー・スミス、リチャード・ハリス 他

2001年/アメリカ/2時間23分/シネマスコープ・サイズ/SRD・DTS・SDDS

配給:ワーナー・ブラザーズ映画

□OFFICIAL SITE
http://harrypotter.warnerbros.co.jp/




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