2001年12月

vol.23『オーシャンズ11』

vol.22『プリティ・プリンセス』

vol.21『ピアニスト』

vol.20『アモーレス・ペロス』

2001年11月

vol.19『ハリー・ポッターと賢者の石』

vol.18『殺し屋1』

vol.17『ムッシュ・カステラの恋』

vol.16『インティマシー』

2001年10月

vol.15『Short6』

vol.14『メメント』

vol.13『GO』

vol.12『赤ずきんの森』

vol.11『ドラキュリア』

2001年9月

vol.10『陰陽師

vol.9『サイアム・サンセット』

vol.8『ブロウ』

vol.7『ブリジットジョーンズの日記』

2001年8月
vol.6『おいしい生活』

vol.4『キス・オブ・ザ・ドラゴン』

2001年7月
vol.3『まぶだち』

vol.2『がんばれ、リアム』

vol.1『眺めのいい部屋』


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  人生の哀しみと可笑しさをとびきりカラフル&愛情たっぷりに描いたロードムービー

   イギリス人のペリー(ライナス・ローチ)は色を作り出す仕事をしている。仕事はやりがいがあり、美しい妻と温かい家庭を持つペリーの人生は充実していた。しかし、妻が空から降ってきた冷蔵庫の下敷きとなって死んでしまうというショッキングな事件が起きてからというもの、ペリーの人生はつまづきの連続となってしまう。仕事にも身が入らず、妻の面影ばかりを追ってしまうペリー。心配したペリーの父親は彼をビンゴ大会へと誘う。ペリーはそこでオーストラリア縦断バスツアーを当て、気分転換のために参加することになる。しかし、ペリーを待っていたのは超オンボロバスに一癖も二癖もある乗客たち。そしてハプニングが連続の史上最悪の旅は始まった・・・。


  人生は思い通りになんて全然ならない。珍道中のオンボロバスツアーでペリーが掴んだものは?

 

 この世の中では「信じられない!どうしてこんなことに」といった悲劇が起きてしまう事はどうしようもない現実である。『サイアム・サンセット』の主人公ペリーも、愛しい妻を“空から降ってきた冷蔵庫”に殺されてしまうという、とんでもない悲劇に遭遇する。彼は自分のまわりには不幸な事故がつきまとうという強迫観念にかられた人間になってしまい、仕事にも多大な影響を及ぼしてしまう。しかし、気乗りしないまま参加したビンゴ大会の賞品であるオーストラリア縦断ツアーで遭遇した出来事や、風変わりな人々、新しいロマンスによって、彼は再び生きる勇気を取り戻すことになる。。。  

  人生とは自分の思い通りにならないことの連続であるばかりか、予想もしないアクシデントや不幸に見舞われてしまうものだ。だからといって家の中で閉じこもって不幸を怖がっていたってしょうがない。前向きな行動を起こせば、何かを掴むことができることもあるし、一時の幸福に酔いしれることだってある。こんな風に文字にしてしまうと、説教臭くて陳腐な感じだが、『サイアム・サンセット』では毒蛇がベッドの下にいる状況でのヒロインとのラブシーンなど、一見笑ってしまうシーンの中に、私達が生きていく上で必要な前向きに生きることの大切さ、未来を怖がらない勇気をユーモアたっぷりに教えてくれるのだ。 



  映画を印象付けさせる、さまざまな“色”にも注目

 

 この映画のもう一つのテーマは「色」である。映画の随所には色を小道具として上手く使ったシーンが散りばめられ、一風変わった画面が印象に残る。タイトルにある「サイアム・サンセット」とは、ペリーが亡くなった妻と行った旅行先のタイで、彼女の髪に映った夕陽の色のこと。ペリーはずっとこの理想の色を作りだそうとやっきになっていた。それは彼が狭い視点で追いかけている理想の人生と重なるものだ。しかしさまざまな出来事を経て、ひとまわりもふたまわりも成長したペリーは、これまた偶然によって作り出された「サイアム・サンセット」カラーが塗られた壁の上に、新しい色を重ねていく。思い出に縛られた人生から、一歩踏み出すために。。。

 脇を固めるオンボロバスツアー参加者のキャラクターがいい。自称シンガーソングライターで、ペリーに下手クソでセンスのない歌を聞かせる太っちょな男や、同じコースを走る豪華バスツアーの運転手に敵意満々の口うるさい運転手など、どこかおとぼけで、イイ味を出している連中が映画全体を楽しく盛り上げている。

 普段は無意識に過ごしているが、私たちは毒蛇や空から降ってくる冷蔵庫に囲まれて生きているようなものだ。しかし、それらを恐れていては負けになる。どんな状況でも幸せを追求する姿勢が大切なのである。ペリーが脅迫観念から立ち直り、再び人生に真正面から向き合おうとするシーンはとても感動的だ。落ち込んだ友達にさりげなく薦めてあげたい、そんな作品である。


(谷本 桐子)

監督:ジョン・ポルソン
製作:アル・クラーク
脚本:マックス・ダン、アンドリュー・ナイト
製作総指揮:アンドリュー・ナイト、ピーター・ベイルビー
撮影監督:ブライアン・ブレーニー
美術監督:リチャード・ホッブス
音楽:ポール・グラボウスキー
編集:ニコラス・ビューマン
録音:ジョン・シーフェルベイン
衣装デザイナー:ルイーズ・ウェイクフィールド
出演:ライナス・ローチ、ダニエル・コーマック、イアン・ブリス、ロイ・ビリング、アラン・ブロー他

1999年/オーストラリア映画/カラー/シネマスコープサイズ/ドルビーステレオ/1時間32分

配給:エスパース・サロウ

10月13日より東京銀座シネパトス他ロードショー

□OFFICIAL SITE (配給)
http://www.espace-sarou.co.jp/




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