vol.23『オーシャンズ11』 vol.22『プリティ・プリンセス』 vol.21『ピアニスト』 vol.20『アモーレス・ペロス』
vol.19『ハリー・ポッターと賢者の石』
vol.18『殺し屋1』
vol.17『ムッシュ・カステラの恋』
vol.16『インティマシー』
vol.15『Short6』
vol.14『メメント』
vol.13『GO』
vol.12『赤ずきんの森』
vol.11『ドラキュリア』
vol.10『陰陽師』
vol.9『サイアム・サンセット』
う~ん、久しぶりに男に惚れた!といってもこの映画の主人公でまだ中学生のサダトモ君のことである。ことわっておくが私は決してショタコンではない。がしかし、とにかくこのサダトモ君ったら中学生とは思えない渋い格好よさを醸し出しているのだ。サダトモのクラスの担任の小林はスパルタ教師。小林はクラスの生徒たちを「クズ」「優等生」「不良」の3種類に分け、グラフ化までしている。また、毎日の生活記録を提出させることで、生徒たちの心の中まで管理しようとする。クラスメイトたちは厳格な小林を恐れ、彼に認められる生徒になろうと必死だ。そんな中でサダトモだけは徹底的に小林を拒絶する。万引きをしたりもするけれど、サダトモは不良というほどワルではなく、盗んだバイクをぶっ飛ばし、校舎の窓ガラスを破壊するような尾○な野郎でもない(笑)。彼は別に大人や教師に甘えたり期待しているのではなくて、ただ自分の自我を守るために小林を静かに拒絶し、本音を明かさないだけなのだ。そんなサダトモに心の奥で憧れを抱きながらも、疎ましくも思うテツヤとサダトモに頼りっきりの周二。彼らの関係はタイトルにあるような「まぶだち」関係ではなく、ただつるんでいるだけの希薄なものだったが、ある事件をきっかけに変わっていく。。。 本作品は弱冠32歳の古厩監督の実体験を元に描かれたものだという。監督自身は「この映画にノスタルジーはない」と言っているが、監督と同年代の私からすると、この作品には今はもう見ることの出来ない80年代の風景が随所にちりばめられている。校内暴力が全盛だった80年代の教室には、小林みたいな独裁的な教師も数多く存在していたし、教師も学校も選択する余地のない理不尽な環境の中で、やりきれない思いもたくさんあった。しかし多くの生徒は自分の無力さにため息をつきながらも、卒業するまでの辛抱と自分を殺してしまっていたのではないだろうか?監督自身が「こうありたかった」という姿を体言するサダトモは最後の最後まで小林=理不尽な大人社会の抑圧に屈しない。その静かだけれど、凛とした姿に多くの観客は共感と憧れを持たずにはいられないだろう。
とにかく少年たちの演技が絶品。主人公を演じた沖津和(おきつやまと)はこれといって美少年でもなければ、人目を引く個性があるわけでもない。だからこそ、どこにでもいそうで、実はどこにもいない中学生サダトモをリアリティを持って見事に演じている。テツヤや周二を始めとするその他の生徒たちは、実際に長野県で生活する地元の中学生から選抜したというが、素人同然の中学生とは思えない、味わい深い印象的な演技を残している。また、スパルタ教師の小林を演じる文学座のベテラン俳優、清水幹生の隙のない演技が本作品全体にほどよい緊張感をもたらしている。 本作品は私たちが生きていく上での処世術として記憶の彼方に追いやってしまった「自分を偽らない心」、「友達に誠実であろうとする心」といったものを素直に思い出させてくれる。ともすると単なる赤面映画で終わってしまう物語や少年の心の機微をキメ細やかに映像化し、訴えかける手腕はお見事!仕事や人間関係のストレスで毒ばかり吐いていた私の心は一瞬、見事に浄化されてしまいました。古厩監督、恐るべし!であります。
2001年第30回ロッテルダム国際映画祭タイガーアワード(グランプリ)&国際批評家賞連盟賞受賞作品。 2001年晩秋、渋谷シネ・アミューズ他にて全国ロードショー 監督:古厩智之 製作:仙頭武則 脚本:古厩智之 撮影:猪本雅三 音楽:茂野雅道 美術:須坂文昭 出演:沖津和、高橋涼輔、中島裕太、清水幹生、光石研、八代朝子他 2000年/日本/カラー/ヨーロピアンビスタ/99分 製作:WOWOW+バンダイビジュアル 制作協力+配給:サンセントシネマワークス