「朝と昼と夜で別々のプログラムを組んでいますよね。これはとても面白い試みです」 山下さん 「ウチ独自の特色ですね。午前中は日本の名作を中心にテーマを決めてプログラムを組んでいるんです。昼はS.C.Sセレクションの新作です。夜には特集企画をやります。朝の名画の時間は、溝口健二、成瀬巳喜男は必ず入りますね。新しいファンが毎年開拓されていくような感じで。今、他の劇場さんが特集して大ヒットしている増村保造や川島雄三、鈴木清順、俳優では市川雷蔵なんかも、くりかえし観られていくと思いますが、リアルタイムに観たころには、こんな風になるとは思わなかったですねえ。市川雷蔵や増村保造の最後の年ぐらいにぎりぎり間に合ったぐらいなんですが。あの頃の大映映画だったら本当に傑作が山ほどありそうですけどね。増村や雷蔵の映画だけじゃなくて」 「なるほど。監督を決めてからテーマを設定するわけですか」 山下さん 「基本的にはそうです。たとえば小津安二郎の場合、カラー作品だけを特集した“小津の色彩映画特集”や“女優で見る溝口健二”とか」 「次にはどういう企画を考えているんですか」 山下さん 「11月には“個性派女優は、今村昌平で観ろ!”をやります。今後は“昭和のダンディズム”と題して、森雅之や池部良の出演作品も特集したいと思っています。また11月の夜の特集の部では“もっと、オペラ映画が観たい!!”として、『カストラート』と『王は踊る』、『ディーバ』を上映しますよ」
(谷古宇浩司)
【劇場データ】 1999年4月9日、道玄坂裏手(渋谷マークシティ並び)にオープン。総座席数104席。朝、昼、夜の時間帯別に上映作品が異なる極めてミニシアターらしい姿勢がイイ。朝は「名画の時間」、昼は「新作の時間」、夜は「特集の時間」だ。“お客様と一緒に創っていく映画館”がS.C.Sのコンセプトで、毎回アンケート・リクエストを実施、観客の意見がそのまま上映作品・劇場運営に反映されるフレキシブルな体制もミニシアター的な魅力である。初上映作品は「追悼・木下恵介監督特集」の『カルメン故郷に帰る』というシブさ。 □シブヤ・シネマ・ソサエティOFFICIAL SITE http://www.scs-voice.com/top.html