アップリンクを退職後、「しばらくの間はふらふらしてました。旅行したりとか。あんまり深刻に考えてなかったですね。ああっ、仕事しなくちゃ、とか思わない性格なんです(笑)」。そうこうしているうちに、スローラーナーの越川道夫氏に声をかけられる。ライターも兼業していた越川氏と遠藤さんは、アップリンク時代からの知り合いだったという。「人手が足りないので、手伝ってくれないか」と言われたんです。そこで、『夢翔ける人 色情男女』の宣伝を手伝った後、しばらくスローラーナーを離れていたんですが、再度声をかけられまして、その後はずっとここにいるんです」。不思議な経緯の持ち主である。
スローラーナーでも「はじめてスローラーナーが買い付けをした洋画をこの冬にいよいよ公開することになりました。ここでも全ての作業に全員で関わっています。もちろん宣伝の部分を依頼して頂く作品もありますし、日本映画の場合は特にそうですが、いくつかの会社の方やスタッフの方々と分担しながら携わる作品もあります」と言う遠藤さん。彼女が最も好きな『仕事』は「自分の意見がダイレクトに反映されるものですね。例えば、チラシに刷り込む文章を考えたり、デザインをデザイナーさんと打ち合わせしたりとか。小さい規模の会社の利点は1人が色々な経験をできることと同時にみんなで相談しながら進行できる、という点ですよ。悩みながら独り言をブツブツ言っていると、周りの人は聞くとはなしに聞いているので、なんらかの反応が返ってくるんです」。 現在彼女が主に担当する作品は行定勲監督、永瀬正敏、麻生久美子、つぐみ出演の『贅沢な骨』。8月下旬の公開に向け、宣伝活動は今がピークだ。宣伝の戦略としては「作品の持つメッセージをできるだけ具体的に提示するよう心掛けています。この作品は1人の男性と2人の女の子がメインなんですが、通常のドラマのような三角関係のイメージを湧かせたくなかったので、予告編では、『女の子同士2人だけで十分幸せだった』みたいな感じを出すように心掛けました。ふらっと風のように現れた男性の存在が、女の子2人にとって最も大切なもの、つまりお互いの大切さを再認識させる、というような作品なんです」。
のんびりした口調で話すかと思えば、時々キラリと目が輝いて鋭いことを言ったりする。そんな人である。基本的にゆったりとした空気の中で生きているような印象を受ける。それゆえかどうかはわからないが「仕事上の失敗は数えきれないです。ほとんど毎日が失敗の連続かも」と笑いながら話す。試写会当日になっても会場にはプリントが届いておらず、なぜかオフィスにあったりする、チラシに文字のまちがいなどがあったり、などなど。 そんな彼女に将来の夢を聞いてみた。「え、そんな大それたことは考えたこともないです。のんびりとできればそれでいいかな~みたいな」。 つまり遠藤さんとは、こういう人なのであった。
(谷古宇浩司)