~Windows Media Playerを使ってみました(その2)~
「Windows Media Player for Palm-size PC Version 1.1」(以下WMP)は、前回紹介したように、MP3形式の音楽ファイルを再生することができる。WMPのもう一つの大きな特徴は、Windows Media Audio(WMA)形式の音楽ファイルをも再生できること。今回は、WMPで再生できるWMAファイルについて解説しよう。
■Windows Media Audioって?
WMAは、Microsoft独自の音声ファイルフォーマット。1999年にリリースされたWindows Media Technology(WMT)に含まれる音楽圧縮方式のことだ。高圧縮・高音質が特徴で、サンプリング周波数44.1KHz、64kbpsのビットレートで、CDに近い音質の音声が再生できるとされている。
ちなみに、WMTには音声フォーマットだけではなく、ビデオフォーマットなども含まれている。WMAは元々はオーディオ・コーデックの名前で、実際のファイル形式としてはWMTに含まれているASF(Advanced Streaming Format/ストリーム配信用のファイルフォーマット)が採用されている。だが、最近ではWMAという名前は、ASF形式のファイルに含まれている音声データのオーディオ・コーデックを指すのではなく、拡張子がWMAのファイル、つまり、WMAで圧縮された音声だけが含まれているASF形式のファイルを指す場合が多い。
コーデック自身もWMAと呼ばれ、なんだか、ちょっと複雑でわけが分からなくなりがちだが、Microsoftが開発したテクノロジーは、Windows CE(H/PCとか、H/PC Proとか、Ps/PCあたりの話も複雑)にしても、ActiveX(OCXからActiveXへ)にしてもそうなんだけど、名前が変わったり、名前が同じでも中身が変わったりということはすごくありがちのことなので、「そういうものだ」と思って欲しい。でも、「原稿書きにくいから、できれば変えないで欲しいんだけどね」と思っているのは決して筆者だけではないハズだ。
なお、WMAでは、MP3やATRAC3などと同様、可聴範囲以外の音を削除したり、心理的に聴こえなくなってしまう音などを圧縮して、圧縮効率を高めている。
■WMAを作ってみよう
CDexのメインウィンドウ。音楽CDのリッピング(CD-DAからWAVファイルの抽出)、音楽CDからのダイレクトエンコード、WAVファイルからのエンコード、MP3ファイルからWAVファイルへの変換など、さまざまな機能をサポートしている優れた定番ツールだ。 |
エンコード設定。MP3エンコードの他にも、WMAエンコードなどさまざまなエンコード方式に対応。外部のエンコーダを呼び出すこともできる。 |
さて、WMAの概要が分かったところで、WMPでWMAファイルを再生してみることにしよう。と、思ったが手元にWMAファイルがないことに気づいた。そこで、インターネットから入手できるツールを使って、音楽CDをWMAに変換してみることにしよう。
今回利用するのは「CDex」と呼ばれるオンラインソフト。音楽CDに含まれる音楽データのリッピング(抽出)だけではなく、MP3やWMAへのエンコード機能も含まれているため、これだけで音楽CDからMP3ファイルやWMAファイルを作成することができるという優れものだ。CDexのホームページで入手することができるので、ダウンロードしてインストールしてみて欲しい。
なお、「英語ソフトを日本語にすべし」というサイトで、CDexの日本語パッチを入手することもできる。英語は苦手っていう人は日本語化パッチも合わせて入手しておこう。
■MP3と比べてみよう
CDexの使い方の詳細はヘルプファイルを見てもらうとして、今回はせっかくだからMP3とWMAとで比較してみよう。ちなみに、プレイヤーはE-500でWMPを動作させ、アンプはYAMAHAのAVアンプ(DSP-R795)、スピーカーはBOSEのAM-10 IIを使って比べてみた。音楽ソースはTELARCレーベルの「モーツアルト、アイネ・クライネ・ナハトムジーク」のCDを使ってAllegro(8分6秒)をエンコードしてみた。
何故かっていうと、クラシックってパソコンの音声圧縮に向いてないような気がするから。まずは、それぞれのフォーマットでエンコードしてファイルサイズを比較してみよう。
オリジナル | | | 82.37MB |
WMA | 44.1KHz | 128kbps | 7.53MB |
MP3 | 44.1KHz | 128kbps | 7.46MB |
WMA | 44.1KHz | 64kbps | 3.79MB |
MP3 | 44.1KHz | 64kbps | 3.73MB |
この表からもわかるように、同じビットレートで圧縮したWMAとMP3を比較しても、それほど目立った差はない。まあ、同じビットレートだから当たり前なんだけど。ビットレート128kbpsでエンコードしたWMAでは、オリジナルの1/10、ビットレート64kbpsでエンコードしたWMAでは、1/21になっていることが分かる。
ファイルサイズは予想通りの結果だとして、問題は音質だ。Microsoftでは、44.1KHz、64kbpsでエンコードしたWMAファイルは、44.1KHz、128kbpsでエンコードしたMP3ファイルとほぼ同等の音質で再生できるとアナウンスしているのだが、実際はどうなのだろうか。
まずは、128kbpsと64kbpsでエンコードしたWMAファイルを聴き比べてみた。たしかに、128kbpsでエンコードしたWMAファイルは、限りなくCDの音質に近い感じがする。一方、64kbpsでエンコードしたWMAファイルの方も、それほど違いはない。よーく聴いてみると、「ちょっと音悪いかな?」って感じもするが、気のせいと言われれば納得できる。そういうレベルだ。
次に、128kbpsと64kbpsでエンコードしたMP3ファイルを聴き比べてみた。こちらも、それほど音質の違いはないように感じられるが、よく聴いて見ると64kbpsでエンコードしたMP3ファイルの方は、高音のバランスが悪いように感じられた。
最後は、128kbpsでエンコードしたMP3ファイルと、64kbpsでエンコードしたWMAファイルを聴き比べてみた。たしかに、じっくりと聴いてみると64kbpsエンコードのWMAファイルの方が若干音質が悪いような気もする。だが、こちらもじっくりと聴いてみないと分からないレベル。気のせいと言われれば納得できる、ぼーっと聴いている分にはぜんぜん問題ナシ。言うなればプラシーボ効果か? そんな感じだ。
まあ、今回はあまり良い再生環境ではなかったからか、それぞれのエンコード方式の違いは明確に感じることができなかったのだが、きちんとした環境で、もっと良いオーディオ装置を使えば、それなりには違いを感じることができるのではないだろうか。そもそも、WMPの性能やWMPを動作させるのに利用したE-500そのもののおかげで明確な違いが解らないという可能性もあるし、筆者の耳の性能が悪いってこともあるわけだ。
■で、結局のところどうなの?
Ps/PCを携帯用の音楽プレーヤーとして見た場合、WMPの存在価値は大きい。
なぜならば、音楽データを44.1KHz、64kbpsでWMAエンコードしたとしても、WMPでヘッドフォンを使って再生するには、十分な音質を確保できているからだ。
それに、圧縮されているとはいえ、音声ファイルはかなり大きい。そのため、ただでさえ大容量のメディアが必要なのだが、Ps/PCのように限られたメモリの中で、音声を再生するには、比較的低容量でそこそこの音質を確保しているWMAを使う価値は十二分にあるだろう。
ちなみに、64MBのメモリカードを使った場合、44.1KHz、128kbpsのMP3ファイルなら約70分程度、44.1KHz、64kbpsのWMAファイルならば約130分程度の音声を保存することができるのだ。
◎関連URL
■CDexのホームページ
http://www.cdex.n3.net/
■英語ソフトを日本語にすべし
http://www.bekkoame.ne.jp/ha/ii26639/
■参考「最新版:インターネット音楽配信用語集」
http://www.watch.impress.co.jp/internet/www/article/1999/0614/music.htm
(広野 忠敏)
2000/03/15
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