~指紋認証って、やっぱりカッコ良かった~
秘密基地のドアのカギを開けるため、ドアの横のコントロールボックスに親指の指紋を置き、それを照合。本人と確認されればコンピュータの音声で「キャプテン広野様と確認されました。どうぞお入りください」というアナウンスと共にドアが開く(再生されるコンピュータ音声は女性の声でなければならない)。
ひと昔前のSF映画やテレビドラマでは極めてありふれた風景だ。だが、今となっては、それも現実になりつつある。指紋認証システムを搭載した、そんなSFチックでサイバーなCEマシンがあるのだ。
MC/R730F |
そんなわけで、指紋認証システムを搭載した「モバイルギアII MC/R730F」をお借りできたので、今週はこれについてレポートしよう。やっぱり、指紋認証ってサイバーでSFチックでカッコ良かったのだ。
ちなみに筆者は今回紹介するMC/R730Fを発売後になんとかゲットしようと東奔西走してみたのだが、なかなか在庫がないっ。という事態に出くわしてしまった。指紋認証システムを搭載していない「MC/R730」は大抵の販売店に行っても潤沢にあるのだが、MC/R730Fだけがない。ない。全然ない。どこにもないのだ。どうも、当初はこのマシン企業向けという位置付けで、民生用としてリリースされたものではないらしいのだ。最近やっと大手の販売店でも見かけるようになってきているのだが、やっぱりこういう面白いギミックを搭載しているモノを簡単に入手できるようになってほしいなあ。それに、後述するけど指紋認証ってさ、なにも企業向けじゃなく家庭用としても十二分に利用価値があると思うんですけどね。
余談だが、指紋でドアを開けるシステムって既にNECが「FingerThrough」って商品名でリリースしていたりする。
■すごく気に入りました、これ
電源をオンにしたときの認証画面。指紋による認証をパスしなければWindows CEを起動することができない。つまり、登録した本人しか利用できないわけだ。 |
MC/R730Fの細かいスペックはNECのモバイルギアIIのWebページを見てもらうとして、さっそく本題に入ろう。
筆者が最も気になったのは、Windows CEとNEC独自の指紋認証システムである「SecureFinger」の融合性だ。当然のことながら「SecureFinger」のハードウェアはなんらかのドライバ経由でOS(Windows CE)に利用されることになるハズだ。OSと密接に関連する部分にあるのならば(OSに内蔵が最も望ましいんだけどね)、セキュリティ的に気持ち良いのだが、OSの下で動くとなるとちょっとした知識があれば、小細工を弄して「SecureFinger」を使わずに、あたかも「SecureFinger」の認証をパスさせたように見せかけるなんてことも可能だからだ。で、「Windows CEとの融合はいったいどうなってるの?」ってのが、ブツを見る前に最も気になったところだったりする。
SecureFingerで認証可能なのは、本体リセット時、電源投入時(サスペンドからの復帰)、ActiveSyncでのシンクロ時など。SecureFingerの機能が有効になっているときは、これらのケースのときに、ダイアログが表示され、指紋が認証されない限りは他の一切の操作をすることはできない。
指紋を登録するには、Windows CEを起動してSecureFingerマネージャを使う。SecureFingerマネージャでは、まず、管理者の指紋を登録しなければならない。管理者の指紋を登録すると、その指紋で認証されなければ、他の人の指紋も登録できないようになっている。つまり、他の人の指紋を登録するには、管理者本人がいなければならないのだ。
なお、登録できる指紋は1人ぶんというわけではなく、たくさんの人の指紋を登録することも可能だ。たくさんの人を登録した場合、それぞれ登録した人が、MC/730Fを利用できるようになるというわけだ。
さらに、指紋登録時には合わせてパスワードの登録ができるようになっていて、指にケガをした場合など、指紋による認証が困難なときは、登録したパスワードを入力することで認証をパスすることもできる。
指紋の登録や認証は本体のキーボード右下に付属しているセンサを利用する。登録は自動的に3回指紋パターンがスキャンされ、最適なパターンを登録してくれる。認証にかかる時間もごくわずか。センサに1秒から2秒程度指を乗せるだけで認証が完了する。パスワードなどの認証に比べると、非常に短い時間で認証ができるのは素晴らしい。また、パスワードのように第三者が使えてしまうということもないので、非常に気持ちよく使えうことができるというわけだ。
何より、指紋の登録や認証をしているときに気分、これがなんともサイバーでSFっぽくてイイのだ。どうせなら指紋登録時や認証をパスしたときに、コンピュータ音声(もち、女性の声ね)も再生してくれればいいのにな、って思ってしまった。指紋によって個人の特定ができるわけだから、認証した人ごとに違うサウンドを再生するってこともできるんだしね。ああ、これってすごくカッコいいぞ。
指紋センサ。ここに指を乗せて指紋を読み取る。 |
指紋認証中。認証は1~2秒程度で終了する。 |
指紋を登録しているところ。3回指紋がスキャンされ最適なパターンが登録されるようになっている。 |
SecureFingerマネージャも指紋認証をパスしないと利用できない。つまり誰でも指紋を登録できるというわけではなく、既に指紋登録を行った本人がいなければ、他の人の指紋は登録できないのだ。 |
■ハーフVGAサイズなら絶対に買うのに
さて、予想していた以上に指紋認証ってカッコイイ。カッコいいだけじゃなく、かなり「使える」なって思ったのが正直な感想だ。ま、予想通りの感想なんだけどね。
起動時に指紋を要求され、登録した本人じゃなければ使えないわけだから、本人以外はCEを起動することすらできない。つまり、本体に内蔵されたデータは、完全に他人が利用することができないということになる。たとえば、MC/R730Fをどこかに置き忘れたとしても、内部のデータは他人の目にさらされることはないので安心だ。
また、個人用のメール端末として使うことを考えてみても、指紋認証は気持ちイイ。指紋認証をパスしなければWindows CEは起動しない。つまり、本人じゃなければメールの受信、送信もできないし、さらに既に受信してあるメールを第三者が見ることも絶対にできないというわけだ。
たとえば、ダンナ様に隠れてメールフレンドとメール交換をしている奥様。逆に奥様の目を盗みつつ女性のメールフレンドとメール交換をしているダンナ様。家族の目を盗みつつ日夜あやしげなWebページを徘徊している人。こういった人は指紋認証が搭載されたMC/R730Fってすごく利用価値があるように思えるのだが、いかがなもんだろう。
それともう一つ。これ飲み屋で女の子をナンパするのにも使えるかも。女の子の指紋を登録して、「ほら、キミ専用」なんてこともできるかもしれないね。
たしかに、値段はかなり高価(実売で14万程度)。デスクトップパソコンを買える値段だし、もう少しお金を足せば、そこそこ使えるサブノートパソコンだって買えてしまうのだが、やっぱりセキュリティ的に気持ちいいのは◎。もしかしたらとか、万が一の保険のためにお金を払うのもイイんじゃないかなと思う。
ただ、ラインナップがSVGAモデルだけというのは少々不満ではある。軽いとはいえ気軽に持ち運びができるというわけでもないからだ。軽くて、小さくて、気軽に持ち運びができるからこそ、指紋認証のような認証システムは重要なキーポイントになるのではないだろうか。たしかに、企業ユースを考えるとSVGAのサイズはアリなのかなと思う。だが、個人で使うとなるとハーフVGAサイズの方が気軽に持ち運びができてウレシイと思う人がほとんどのハズだ。
そんなわけで、ぜひともNECさんには、ハーフVGAサイズのモバイルギアIIに指紋認証システムを搭載して欲しいな。発売を検討していだだけませんかね? ハーフVGAサイズで指紋認証システム付きならば、値段が少々高くても絶対に買うのにな。
でも、すっごく気に入ったから、とりあえずサイズは無視してMC/R730Fを買ってしまおうかな。いずれは網膜による認証システムを搭載したマシンなんかも出ちゃうんでしょうね。出たら間違いなく買うだろうな。なぜって? そりゃカッコいいからに決まってるでしょ。
◎関連URL
■MC/R730シリーズの製品情報
http://www.pc98.nec.co.jp/Product/mg/730_ol.htm
■SecureFinger
http://www.sw.nec.co.jp/pid/
(広野 忠敏)
2000/03/01
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