~パームサイズPCで実現!どこでもMP3環境(その1)~
今回のお題はMP3。パームサイズPCを活用して、どこでもMP3を聞ける環境を作ってしまおうという試みだ。まずは、MP3ってなんだろうって所から話を始めることにしよう。
■MP3ってなんだ?
モバイルセントラルの読者なら、MP3という名前に聞き覚えがあるハズ。MP3とは「MPEG-1 Layer 3」(MPEG:Moving Picture Experts Group)の略称。MPEGとはもともと動画を圧縮するためのファイルフォーマットだが、MP3はMPEG 1のオーディオデータを圧縮するための方式のひとつ。MP3を利用するとCD並みの音質を保ちつつ、ファイルサイズを1/10から1/12に圧縮することができる。たとえば、CDクオリティの4分程度の楽曲ならば、3~4MBのファイルに圧縮することができるのだ。
MP3データの作成は、パソコンを利用して音楽CDなどからコンバートするのが一般的。データのコンバートにはCDリッパーと呼ばれるCD内の音楽データを抜き出すツールと、抜き出した音楽データをMP3に変換するMP3デコーダーと呼ばれるツールが必要。また、MP3データを再生するためには、MP3プレイヤーと呼ばれる再生ツールが必要となる。最近ではポータブルMP3プレイヤーも出揃っているが、デスクトップやノートパソコンを使って再生している人も多いハズ。
ただ、パソコンで再生する場合、非常に多くのCPUパワーが必要なため、再生中にパソコンで他の仕事をすると音が途切れたりということも多い。また、携帯用MP3プレイヤーのように持ち運んで手軽に再生するということも、パソコンでは難しい。
■カシオペアE-500でMP3を再生
筆者の持ち歩き用セット。カシオペアE-500、ステレオヘッドフォン、64Mバイトのフラッシュメモリ。お出かけするときは、忘れずに携帯している。ただ、付属のケースに入れてバッグに入れておくと、振動でボタンが押されてしまうこともある。ハードケースがあればいいんだけどね。 |
ここにMP3と非常に相性の良いパームサイズPCがある。カシオの「カシオペア E-500」だ。今回は、カシオペアE-500を使って、いかに快適なMP3環境を実現するかということについて話を進めていくことにしよう。
カシオペアE-500には、さまざまな追加ソフトが付属している。付属ソフトに含まれる「モバイルオーディオプレイヤー」がMP3を再生するためのプレイヤーだ。ちなみに、カシオペアE-500には、ステレオヘッドフォン端子が装備されていて、ヘッドフォンをつなぐだけですぐに携帯MP3プレイヤーとして利用することができるようになっている。
実際に使って見ると、予想以上に快適。ちなみに、カシオペアE-500にはスピーカが内蔵されているため、ヘッドフォンがなくてもモノラルでMP3を再生できるが、やはりヘッドフォンを接続してステレオで再生したほうが気持ち良い。
モバイルオーディオプレイヤーはシャッフルやプログラム再生などはできないが、連続再生、リピート再生など基本的な機能をサポート。さらに、いちいち液晶をタップしなくても本体のボタンで曲のスキップやボリュームの調整もできるためなかなか使いやすい。
また、モバイルオーディオプレイヤーはMP3再生時にバックライトを含め、液晶画面を完全にOFFにすることができる。そのため、バッテリがフル充電の状態で連続3時間程度の再生が可能だ。ほかのポータブルオーディオに比べると、連続再生時間は短いが、たとえば通勤の往復で音楽を楽しむには十分な時間だといえるだろう。
これがモバイルオーディオプレイヤー。複数のMP3ファイル連続再生、リピートなどプレイヤーとしての基本的機能は装備されている。再生時に液晶をOFFにする機能を使えば連続再生時間を延ばすことができる。 |
しかし、ここで問題が発覚。カシオペアE-500には32MBのRAMが搭載されている。うちデータ保存用として利用できるのは16MBだ。普通にCE用のソフトをインストールしたり、Pocket OutlookでPIM代わりに使うには必要十分な領域だが、MP3を保存するにはあまりにも小さすぎる。128kbps/44KHzでサンプリングされたCDクオリティのMP3ファイルは5分程度のもので約5MB。本体のデータ領域をまるまる使っても15分程度しか保存できないことになる。もちろん、ビットレートやサンプリング周波数を低くすれば、MP3のファイルサイズは小さくなるが、やはりCDクオリティで再生したい。
いくら携帯できるといってもこれじゃあメモリが少なすぎだ。また、カシオペアE-500本体のメモリにファイルを転送するには、Windows CEサービスを利用してシリアルまたは赤外線経由で行なうことになる。だが、シリアル転送では最高でも115Kbps程度。小さ目のファイルを転送したり、CEツールのインストール作業では百歩譲って我慢できるとしても比較的ファイルサイズが大きくなってしまうMP3データの転送には向いていない。つまり、転送速度が遅すぎなのだ。実際にシリアル経由でWindows CEサービスを使ってMP3ファイルを何本か転送してみたが、あまりの遅さにイヤになってしまった。やっぱり、思い立ったときに手軽にMP3ファイルを比較的短時間で転送できなければ、快適な環境とはいえないのだ。
■大容量コンパクトフラッシュは必須
そこで、考えたのが(考えるまでもないことだけど)、コンパクトフラッシュのメモリカードを利用すること。もちろん、大容量であればあるほどいい。ここでは、64MBのメモリカードを使ってみた。64MBのメモリカードを使えば、本体のデータ領域とあわせて64+16=80MBをMP3のデータ領域として使うことができる。128kbps/44KHzでサンプリングされたMP3ファイルならば、80分程度のファイルを格納することができるのだ。
これだけあれば、CD1枚をまるごとメモリカードに入れることができるので、十二分に実用に耐えるハズだ。ちなみに、クオリティダウンしたサンプリング周波数が22KHzのMP3ファイルならば、実に3時間程度のファイルを格納することができる。音質はかなり落ちるけど、とにかくたくさんのファイルを詰め込みたいということなら、クオリティダウンしたMP3データを入れてしまってもいいだろう。
また、メモリカードならばPCカードスロットが搭載されたデスクトップあるいはノートパソコンがあれば、直接ファイルを高速に転送できるので、Windows CEサービスのシリアル転送と違って転送時間の遅さにイラつくことはない。
パソコンのハードディスクにMP3データを用意しておき、必要なもの、聞きたいものをその都度メモリカードにコピー。コピーしたメモリカードをカシオペアE-500に挿してお出かけ…、という快適な携帯MP3環境を簡単に実現することができた。また、メモリカードをいくつか用意しておいて、聞き飽きたら差し替えて再生するといった使い方も可能だ。
こうして、カシオペアE-500を快適な携帯MP3再生環境とすることができたわけだが、これで満足しちゃあいけない。たとえば、出先では携帯MP3プレイヤー、家に帰ってきてクレイドルにポンと入れたらミニコンポ…、みたいな使い方ができたら完璧だ。そんなわけで、次回はさらなる応用編をお届けすることにしよう。
◎関連URL
■カシオ
http://www.casio.co.jp/ppc/
(広野 忠敏)
1999/10/27
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