■一番コンパクトなCE
パームサイズPC。その名が示すとおり手のひらに乗るPC。現在市販されているCEマシンの中で最もコンパクトなマシンだ。ハンドヘルドPCはハーフVGAからSVGAまでの液晶とキーボードを搭載したCEマシンで、パソコン色が強いが、ハンドヘルドPCは液晶も小さく、キーボードもないためどちらかというとPDAとしての性格が強いものとなっている。ユーザインターフェイスは、付属のスタイラスを使った画面タップによるポイントと、本体に装備されているいくつかのボタンを利用。文字の入力はソフトウェアキーボードや手書き文字認識を使う。
ただ、パームサイズPCは、ハンドヘルドPCほどバリエーションに富んでいるわけではない。現在市販されているのは液晶がモノクロのモデルとカラーのモデル。機種によって若干機能が違うこともあるが、基本は240×320ドットのタッチスクリーン液晶を搭載し、コンパクトフラッシュやIrDAのインターフェースを搭載といった感じだ。ちなみに、モノクロ液晶を搭載したパームサイズPCの代表的な機種はカシオの「カシオペアE-55」、カラー液晶を搭載したパームサイズPCには同じくカシオの「カシオペアE-500」などがある。
■ハンドヘルドPCとの違い
現行のパームサイズPCに搭載されているOSは、Windows CE 2.11がベースの「Windows CE for Palm-size PC 1.2」。小さい画面サイズで使い勝手がよくなるようにリファインされたWindows CEだ。
ちなみに、付属するアプリケーションは「Pocket Outlook」や、スタイラスを使ってメモを取るための「手書きメモ」、内蔵マイクで録音できる「音声メモ」、「ソリティア」といったゲームなど。ハンドヘルドPCには「Pocket Excel」、「Pocket PowerPoint」、「Pocket Word」、「Pocket Internet Explorer」が含まれているが、こうしたアプリケーションはパームサイズPCには含まれていない。つまり、はじめから提供されているアプリケーションはPIMが中心。PDAとしての性格が強いわけだ。
なお、Pocket Outlookで提供されるコンポーネントは「予定表」「連絡先」「仕事」「受信トレイ」の4つ。機能的にはハンドヘルドPCに搭載されているPocket Outlookとそれほど違いはないが、より小さい液晶画面で快適に利用できるようにウィンドウのデザインなどが変更されているのが特徴だ。
■パソコンとの連携は楽
ハンドヘルドPCならば、インターフェースも豊富でキーボードもあるためWindows CEマシンを使いたいという理由でパソコンを持たないユーザが購入することもあるようだ。しかし、パームサイズPCはこうしたことを考えてはいけない。もちろん、ソフトキーボードや手書き文字認識を利用してパームサイズPCを使うことができる。だが、付属CD-ROMからのソフトのインストールはパソコン経由でしかできないようになっているのだ。
逆に言うと、パソコンとの連携は非常に楽。パソコン側にWindows CEサービスをあらかじめインストールしておけば、パームサイズPCをクレイドルに差しただけで、パソコン本体側とパームサイズPCとの間でデータの連携を行なってくれるのだ。データ連携はOutlookなどに対応しているため、自宅ではOutlookを使ってスケジュールの管理、出先ではパームサイズPCでスケジュールの管理、クレイドルに差してお互いのデータを連携といった使い方ができるのだ。
■携帯メール端末としての実力は?
小型の端末でインターネットに接続し、メールを送受信したりWebページを見る――これは現在のトレンド。ハンドヘルドPCの多くはモデムを搭載したり、携帯電話用のケーブルを利用するなどして、インターネットに接続できるが、パームサイズPCはどうだろうか。
もちろん、パームサイズPCもさまざまな方法でインターネットへの接続が可能だ。たとえば、CFカードのモデムを利用したり、機種によっては携帯電話やPHS用のケーブルを使ってアクセスできる。だが、実際の使い勝手はというと、ハンドヘルドPCに比べると不満が多い。パームサイズPCに搭載されているメーラはPocket Outlookのみ。たしかに、Pocket Outlookを使って、インターネットメールの送受信をすることはできる。しかし、液晶画面が小さい、メールの選択受信ができないなどの理由で、お世辞にも使いやすいとは言いがたい。出先でちょっとメールの確認をする程度の利用にとどめておいた方が無難だといえる。
Webページのアクセスに関しては、Windows CE for PalmSize PCには、Internet Explorerが含まれていないため、標準の状態ではウェブページのブラウズはできない。ただし、機種によってはブラウザが含まれていることもあるため、こうした機種ではWebブラウズは可能だ。たとえば、カシオの「カシオペアE500」などには「NetFront」と呼ばれるブラウザがCD-ROMで提供されている。
このように、パームサイズPCを使ってインターネットへのアクセスは、さまざまな意味で割り切りが必要。こうした不自由さが我慢できる人、とにかくパームサイズPCでインターネットへアクセスしたい人以外にはオススメはできないだろう。
■えっ、アプリが終了できない?
ところで、パームサイズPCの基本的なユーザインターフェイスはハンドヘルドPCのそれに近いと書いたが、大きな違いが1つだけある。それは「一度起動したアプリケーションを終了できない」ということ。パームサイズPCに標準搭載されているアプリを起動したときに、ユーザが一番戸惑うのは、終了メニューもクローズボックスもないこと。ハンドヘルドPCやWindows 95/98のアプリは必ずファイルメニューには終了があり、クローズボックスをクリックすることでアプリを終了できるが、なんとパームサイズPCではこうしたユーザインターフェースは奨励されていない。つまり、アプリを起動すると起動しっぱなし、複数起動すると結果的にメモリを圧迫することになってしまうわけだ。ちなみに、システムのプロパティのタスクマネージャで一度起動したアプリケーションを終了することができるが、非常に面倒。このあたりは、ぜひ次のバージョンで改善して欲しいところだ。
◎関連URL
■カシオ
http://www.casio.co.jp/ppc/
(広野 忠敏)
1999/10/20
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