■まずはWindows CEの歴史をひもといてみよう
カシオペア A-10 |
マイクロソフトがWindows CEを始めて発表したのは、今を遡ること3年前、1996年9月だった。初めて実機がお目見えしたのは、その年の11月に米国ラスベガスにて開催された世界最大のコンピュータショー「COMDEX Fall '96」のときだ。このときのOSはWindows CE Version 1.0。もちろんまだ日本語版の存在はなく、発表されたハードウェアも最もベーシックなH/PC(ハンドヘルドPC)のみ。ハードウェアも480×240ドット、モノクロ4諧調液晶搭載で駆動時間も単3乾電池で20時間程度と、今から考えると割とチープなスペックでの登場だった。しかし、初めてのWindows CE搭載機の発売ということもあり、わざわざ米国まで英語版のWindows CE 1.0搭載H/PCを購入しにいったコアなユーザもいるほどの盛況ぶりだった。
■日本語版Windows CE登場
カシオペア A-50 |
さて、初めて日本語版のWindows CEを搭載した実機が登場したのは、英語版Windows CEが発表されてから約1年後、1997年7月のことだ。7月にカシオが「カシオペアA-50、A-51」を発売、搭載OSは日本語版Windows CE 1.01だ。Windows CE 1.01は手書き対応のIMEを搭載し、Windows CEそのものや、CEに含まれているアプリケーションも日本語化され、やっとまともなWindows CE機を使えるという実感を持ったのを記憶している。
■第二世代のH/PC、そして新しいPs/PC
モバイルギアII MC-R500 |
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カシオペア E55 |
1997年10月になると、第二世代のWindows CEであるWindows CE 2.0の出荷が米国で始まる。Windows CE 2.0の登場こそが現在のWindows CEの環境の基礎を作ったものだといえる。当初Windows CE搭載機はH/PCのみだったが、Windows CE 2.0ではH/PCに加え、手の平サイズでキーボードを持たないPs/PC(パームサイズPC)や車載用のA/PC(Auto PC)もラインナップに加わっている。Ps/PCにはWindows CE 2.0をベースにした「Windows CE for Palm-size PC 1.0」が搭載されている。第二世代のCEマシン、H/PCはNECの「モバイルギアII」、Ps/PCはカシオの「カシオペア E-10/E-11」などが代表的な製品だ。Windows CE 2.0では、液晶の解像度は480×240ドットから640×240ドットまでをサポート、色数もモノクロ、16色から256色カラーまでをサポートし、システムや搭載アプリケーションもWindows CE 1.0よりもより使いやすくなったのが特徴だ。
■そしてH/PC Proへ
ジョルナダ 680 |
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ペルソナ HPW-600JC |
第三世代(現在)のWindows CEのラインナップはH/PC Pro、Ps/PCの2つ。それぞれ、H/PCには「Windows CE Handheld PC Professional Edition 3.0」、Ps/PCには「Windows CE for Palm-size PC 1.2」が搭載されている。ここで新たに登場したのが、H/PC Pro 3.0と呼ばれるハンドヘルドPC用のOS。H/PC Pro 3.0は開発コード"Jupiter"と呼ばれていたもので、Windows CE 2.11をベースにハードウェアの機能が強化されたもの。H/PC ProではVGA(640×480)やSVGA(800×600)サイズの64K色液晶がサポートされ、マウスやパッドなどのポインティングデバイス、USBなどインターフェースが拡張、よりパソコンに近いスペックになっているのが特徴だ。H/PC Pro搭載の製品には、VGA以下の解像度を持つ液晶を搭載し、タッチパネルを採用したコンパクトな従来型のH/PCと、VGAまたはSVGAの解像度を持つ液晶を搭載し、スペックがよりパソコンに近い製品の2種類がある。前者は日本HPの「ジョルナダ 680」など、後者は日立製作所の「ペルソナ HPW-600JC」などがそうだ。
なお、H/PC Pro 3.0と来年にリリースが予定されているWindows CE 3.0はまったく別物。決してH/PC Pro 3.0がWindows CE 3.0なのではないのだ。しかし、ホントわかり難い。来年はH/PC Pro 4.0がWindows CE 3.0をベースにしたものになるのだろうか? ますます、わかり難くなってしまうではないか。想像するだけで頭がこんがらがってしまう。それとも意表をついてH/PC Pro 2000はWindows CE 2000ベースになるのだろうか? いずれにしろ、想像すると悩みの種は尽きない。
カシオペア E-500 |
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ペルソナ HPW-30PA |
ちなみに、Ps/PCのほうはというと、OSのバージョンは「Windows CE for Palm-size PC 1.2」、H/PC Pro 3.0と同じくWindows CE 2.11がベースになっている。ハードウェアはモノクロ4階調液晶から65,536色のカラー液晶に進化している。代表的な製品はカシオの「カシオペア E-500」などだ。
ところで、Windows CEの現行のラインナップはH/PC Pro、Ps/PCの2つと書いたが、「では、H/PC一体どこに?」と疑問に思った方々も多いハズ。最新のOSはWindows CE H/PC Pro 3.0とWindows CE Ps/PC 1.2の2つ。ただし、現行の機種でもWindows CE 2.0を搭載しているH/PCもある(日立製作所「ペルソナ HPW-30PA」など)。最新のOS搭載のマシンでは、Windows CE H/PC Pro 3.0搭載のCEマシンのうち、VGA以下の解像度のCEマシンをH/PC、VGA/SVGAの解像度を持つCEマシンをH/PC Pro、Windows CE Ps/PC 1.2が搭載されているCEマシンをPs/PCと呼称するのが一般的だ。そういう意味では、Windows CEマシンのラインナップは3種類ということもできる。
以上、とりあえず駆け足でWindows CEの歴史を紹介してみた。次週以降は、それぞれのCEマシンの特徴について、もっと突っ込んで解説してゆくことにしよう。
◎関連URL
■カシオ(Ps/PC)
http://www.casio.co.jp/ppc/
■カシオ(H/PC)
http://www.casio.co.jp/hpc/
■NEC
http://www.pc98.nec.co.jp/Product/mg/
■日本HP
http://ext8.jpn.hp.com/grp1/handheld/index.html
■日立製作所
http://www.hitachi.co.jp/Prod/persona/persona.htm
(広野 忠敏)
1999/10/06