凄まじい決定打 ~ Apple Cinema Display ~
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■ 俺とMac
先日、AppleのPower Mac G4を買った。
久々に買ったMac。久々に使うMacOS。ん~、イイですな。なんかこう、抽象的な言い方ではあるが、ホッとするような感触がある。
俺の中でのMacintoshコンピュータは、どっちかと言うと贅沢なマシンだ。贅沢と言っても高価とか高級ってわけでもなく、ある種コンピュータユーザーとして贅沢な状態に浸れるモノという感じ。きっとこれは、これまでのMacintoshの買い方・使い方から自然と刷り込まれたイメージなのだと思う。
ところで俺がこれまで買ったコンピュータは現在80台以上になるが、そのうちメーカー別に買った台数の多い順に並べてみたら、第1位がNECで15台。第2位がAppleとソニーで各9台。第3位がIBMで7台、第4位が東芝で6台と続く。各メーカーの各マシン、どれも思い出深いものばかりだが、ことAppleのマシンに限って言えば、個々のMacについて実に強く印象に残っている。
もの凄いテンションで使い込んだIIci、意味もなくずっと電源を入れっぱなしにしていたClassic、実にスマートでカッコ良かったCentris 610、鬼っ子と呼ばれたQuadra 840AVは気合に気合を重ねてチューンして安定させたものだ。PowerBookも買った。5300Csでヘビーなモバイルを試みた。1400cは現在でもMIDI楽器と繋いで使っている。そして去年あたりまでビシビシ使っていたのがPowerMacの8500/150だ。しかし、考えてみると、俺はこれらのMacで仕事をしたという印象が薄い。グラフィックをいじったり、あるいはMac OSだけにしかない新しいテクノロジーで遊んだりしたという、そんなふうな“Macで楽しんだ”という記憶ばかりが蘇る。
いや、Macを使って仕事もたくさんやったのだ。QuarkEXPress(定番DTPソフトですな)で単行本を編集したり、Directorドキュメントに関わるデータ類を作ったり、雑誌やCD-ROMに入れるためのグラフィックを作ったり、それから原稿もMac上でかなり書いた。が、それらの仕事にMacを使うよりも多くの時間を、Macで遊ぶために費やした感じだ。ResEdit等でのリソースいじり、サウンド遊び、OSのカスタマイズ、チューン、それからゲーム。非常に愉快だった。
俺にとってMacは、純粋に楽しむための環境だったような気がする。だからきっと、Mac=贅沢、なんてイメージがあるのだろう。まあ、遊ぶことが贅沢なコトってのもなーんか世知辛いというか寂しい気もするが、とにかく、Macを起動してアレコレやるのは俺にとって余裕で遊べる贅沢な時間なのであった。
しかしその後、Macをあまり使わなくなってしまった。ライター稼業に専念する方向になったので、DTPとかグラフィックの仕事が激減し、それからWindowsがどんどん普及したこともあって、仕事絡みのコトはWindowsマシンでこなした方が効率的な状況になってきたのだ。
それでもMacで遊べばいいだけのことなのだが、しかし純粋な遊びのためだけにMacを買うということが、どーもできづらい。コンピュータ絡みの仕事をしているから、仕事絡みでコンピュータを買ったついでに遊びもやっちゃおう、というちゃっかりした気持ちっていうか一石二鳥な心意気っていうか、そんな腹づもりがどうしてもわいてしまう。まあ、純粋に遊ぶというコトだけで行動できなくなっている自分も情けないのだが、とにかく、ぶっちゃけた話、「Mac買えば遊べるけどモト取れないんだよな~」と考えていたわけだ。
でもやっぱり、最近ではG3よりもスゴいG4登場しまくりだし、最新のMacOS絡みのテクノロジーにも触れてみたいし、速いMacでゴージャスに遊ぶと楽しいだろーなー、と感じていた。しかしながら前述のように、一石二鳥派の俺には、Macを買うための“体裁の良い理由”が見つからなかった。「Mac買えば愉快なうえに、ホラ、△△をやれば仕事につながりますよ」の“△△”の部分が、どーも見あたらない。G4に向けて俺を後押しする決定打がなかったのだ。
■ 凄まじい決定打、Cinema Display
G4欲しいな~、でもG4買う強力な理由がないな~、などと中途半端この上ない気持ちでいた俺の目の前に、前代未聞超弩級の魅力を引っ提げた凄まじいハードウェアが登場した。Apple Cinema Displayである。
既にご存知っていうよりもむしろ存知尽くしている人の方が多いと思うが、Apple Cinema Displayは、Mac用の22インチのTFTカラー液晶ディスプレイである。Macとはデジタル接続されるので、その鮮明さは超抜群。そのフルカラー表示を一度見てしまったら最後、その後最低1カ月はCinema Displayの夢を見てしまうというほどのシロモノ!! さあ買った買った!! そこのイキなお兄さん!! これ買っときゃ家内安全商売繁盛孫の代まで一家繁栄間違いナシ!! と言われても、なかなか買えるモンじゃない。
というのはその価格。ディスプレイ単体で49万8000円もするのである。しかも現在のところは単体では買えない。Cinema Displayがつながる特定のG4とセットでないと買えない。ていうかそのG4と一緒に買わないと使えないってわけだ。さらに、G4とCinema Displayのセットは、Web上のApple Storeでしか売られていない。
Apple Cinema Displayの詳細はココ、最新のG4の詳細はココで見てもらうとして、ハァ、実に悩ましいディスプレイが登場してしまった。
あーもーどーしよー。困った!! 実に困った!! 最強に困った!! と悩んでいたら、イラストレーターの寺田克也さんから「押忍!! アラブサラダ!! マックアラブ!! 島根アラブ!! 島根ですよ島根!! シネマですか? もちろん島根振興委員会の我々としては島根なんですよ島根!!」というようなメールが。要約すると、「Cinema Display(通称“島根”)は超超超ステキだからボク(寺田)は買いますけどキミも買え」、というようなことである。そしてその後、寺田さんと何度も何度も何度もメールのやり取りをし、島根の良い点を新たに1024箇所発見し、悪い点を新たに0個発見し、最終的に、我々はAppleStoreにてG4と島根を注文したのであった。
結局のところ、Mac欲しいな~でもどーしよーかな~とだらしなく迷っている俺の腐れ根性に、Cinema Displayが強烈な喝を入れたのだ。あそこまで怒濤の性能と魅力を見せつけられたら、もうどうしようもない。G4を買うことの決定打がCinema Displayだ、というよりもむしろ、Cinema Displayを買わせていただけるのならG4でも何でもとにかく買わせていただきます!! という感じだ。それほどCinema Displayは俺を強力に洗脳してしまったのだ。
■ おー凄い!! わー凄い!! あー凄い!!
注文から約1ヶ月半(遅いよ>AppleStore)、待望のCinema Displayが到着。超激速攻でセットアップするやいなやG4起動でCinema Display上にデスクトップを表示させた俺の足は既に床の感触を失っていた。凄い!! ただただ凄い!! ひたすら凄い!! 圧倒的に凄い!! 実に凄い!! 改めて凄い!! 凄く凄い!! こんなモノを買った俺ってわりと凄い!! ぜひ大紹介していきたい!! みなさ~ん!! 島根は凄いんですよ~!!
どこがどう凄いかって、まずその迫力が凄い。対角22インチのTFT液晶ディスプレイって、そのサイズを想像すると「凄い!!」ってほどのイメージではないのだが、実際コレが目の前にあるとAppleの常識を疑ってしまう。液晶ディスプレイとしても単なるディスプレイとしても、まさに排他的な存在だ。と同時に、こんなにデケぇディスプレイでMacを使えると考えると、電源なんか入れなくても十分満足できる。
でも電源を入れないと高価な板なので、電源を入れて使用するわけだが、このディスプレイ、一度使うとマジで本気でもう他のディスプレイに戻れなくなる。他の液晶ディスプレイにも戻れなくなる感じだ。表示は1600×1024ドットで、数値上ではそーんなにだだっ広くないようなイメージなのだが、ディスプレイ画素を非常に有効に使えるMac OSと相まり、さらに液晶のコントラスト・発色の良さと相まり、加えてその非常に美しいデザインと相まって、ヤケに広大で深遠なデスクトップの広がりが感じられる。画像を表示しても同様で、十分な表示スペースに加え、汚物でさえも美しく表現してしまう鮮やかさは絶品だ。
ちなみに、俺が手に入れたCinema Displayには、ドット欠けがなかった。完全無欠のTFT液晶。あー良かったぁ約50万円のディスプレイに常時点灯ドットがあったりしたらもうアータ大変ですよ。ていうかなんか、このディスプレイ、単体での価格が49万8000円で、俺はこれを最初「すげぇ高価だ」と感じていた。が、正直なところ、今現在、「このディスプレイは決して高くない」と感じている。
冷静に考えてみると、このサイズの液晶ディスプレイなら、こーゆー価格になって当然。最近流行り始めた(比較的大型の)液晶テレビの価格なんかを考えたら、Cinema Displayみたいに色やコントラストがしっかりチューンされていてしかも大面積でこの価格に“抑えた”製品はちょっとないと思う。使ってみて、また液晶ディスプレイの状況を見て、Cinema Displayについては「Appleさんがんばってるなぁ」とさえ思えるのだ。
ともあれ、買って使ってみた俺の私見としては、Cinema Displayは買うに値しまくるディスプレイである。見やすさ使いやすさ、それから前述の迫力や気持ちよさも当然あるが、それ以上にG4の魅力を非常に大きく高める周辺機器だ。G4の中にはこんなに鮮やかで精細なグラフィックが存在していたのか!! コンピュータ映像というのはこれほどまでに鮮明なのか!! そんな感動を直感的に味わえる力強さを持つ、ホントに驚異的なディスプレイだと思う。
■ Appleの魅力
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スタパ氏デスク上に設置済みの“島根”。ディスプレイの高さはG4本体よりも5センチほど高い。堂々とした巨大ディスプレイだが、これほどの大きさになると設置場所を選ぶようだ。写真ではわかりにくいが、液晶ディスプレイとしては非常に高精細でコントラスト・輝度も高い
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Cinema Displayを通して、俺は改めてAppleのモノ作りの姿勢を見せつけられた気がする。それまでもAppleの製品には、独特の魅力を感じていた。OS、デザイン、コンセプト、いろいろな魅力があるが、共通して感じるのは“強く貫徹していること”だ。
Cinema Displayを見ると、「ここまでやるのはAppleだけ」というところが各所にある。例えば、液晶は大きく見やすい方がいい、というのは誰もが思うところだが、それを対角22インチというところまでやっちまうのが凄い。そんなにデカくしたら高くなっちゃうでしょ~というありがちでネガティブな考え方なんかビシッと排除しているように見える。フツーはきっと高くなっちゃうからもうチョイ小さいくて安くて売れるようなのを……という考えに至ると思うのだが、そーゆーふーには妥協しないのだ、Appleは。また、汎用性を持たせて(売れるように)アナログ接続にする、なんてコトもしていない。これはやはり、“デカい方が理想に近い使い方ができる”とか“液晶の性能を生かすにはデジタル接続”というように、製品作りにおける方向性を貫いているからこそだと思う。
Cinema Displayのデザイン面もそうだ。詳細なコンセプトは知らないが、筐体を眺めているとやはり「どーせ作るなら美しい製品にしよう」という姿勢が見える。これはG4の筐体なんかもそうなのだが、カッコイイとかクールとかカワイイとか、そういった、わりと浅い感じのテイストではなく、“美”を強く意識した、本気でマジなデザインが施されていると感じる。製品を美しいと思うか思わないかはユーザーによるわけだが、しかし確かにCinema Displayには、“美しく作ろうとしている集中力”のようなものが見える。液晶ディスプレイの裏っ側にここまで入念な曲面を取り入れたり、LEDの光さえ演出のひとつとして利用したり、こういう意匠にはこだわりというよりもむしろ哲学のような気合が感じられる。
そう言えば、PowerBook G3の液晶パネルの裏側なんかもそうだ。そこには白いAppleのロゴが入っているのだが、アレ、液晶ディスプレイを使っている時に光る。何で光らせるわけ? 光ったからってどーかなるわけ? と、疑問視する人もいるだろう。でも、そうなんですよソコが光るとスゲぇイイと思ってたんですよ!! という人にとっては、まさに魅力的なギミックでありデザインなのだ。そして、どうもAppleの一連の製品は、誰にでもわかる至極論理的な合理性でアピールすることよりもむしろ、賛同されようがされまいがとにかく俺たちゃこういう方向で行くゼ!! という、エゴイズムとも言える強い方向性を持って作られているように見える。
そんなふうに、俺は何となくAppleのことを、作家性のある孤高のメーカーって感じで見ているのだが、Cinema Displayを見たらそんなイメージがもっと強くなった。Apple製品のカリスマ的イメージは、そんなところから来ているのかもしれない。
蛇足だが、インダストリアルデザイン以外の部分にも、やはりApple独自の“作り方”が感じられる。例えば、Appleのspeechだったか、英語を喋るプログラム。昔はMacintalkなんて名で親しまれたアレ。単に英語を喋るだけではなく、笑いながら喋るとか水中で喋るとか、そーゆーのって必要ですかぁ!? みたいなコトまでやってのける。超マジメなユーザーにとっては無用かもしれない機能だが、音声合成マニアの俺としては超激大賛成なプログラムだったりする。
他にも、スティッキーズ(デスクトップ用のメモ)みたいに、ちょっとステキな感じのユーティリティがあるなど、こ洒落たコトをやっている。こーゆーのやるのってAppleだけだよなぁ、と感じるわけだ。
凄いと思うのは、単に思い付いたから付けたヨ、という安易なレベルで終わっていないところだ。アイデアを中途半端なカタチで盛り込んだだけだと、なんつーか見た目的に単なるオタクな感じのモノとして残ってしまう。が、Appleがやるコト(洒落を含めて)は、機能にせよイメージにせよ使用感にせよ、中途半端な妥協をしていない気がする。最初は思いつきだったかもしれないアイデアでも、キレイにまとまったカタチになるまで作り込んでいるのだ。使い勝手の善し悪し、好き嫌い、必要不要は別として、何かを作るときには必ず独特の方向性を貫徹して作り込むというその姿勢に、俺はAppleの魅力を感じるのである。
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スタパ氏の机上。中央にCinema Display、その置くにG4本体、Cinema Display前方に見えるのがThinkPad770X。ThinkPad770Xはかなり大きなノートパソコンだが、それがサブノートのような大きさに見えてしまう
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右がCinema Display。左のディスプレイはソニーの17インチディスプレイのCPD-17MS。22インチというCinema Displayの画面サイズの大きさがわかる
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■ あ、G4も買ったんだった
Cinema Displayは最強に良過ぎって感じで大満足なのだが、新しいG4もかなり良い感じだ。
俺の場合、PowerMac8500/150やPowerBook 1400c以降、ちょこっとiMacをいじっただけで、G3やG4にはほぼ触れなかった。つまりG4のコトなんかほとんど知らなかったのだが、ともかくG4を得た。
で、まず使った感じは、やっぱりパワフル。速い。PainterもPhotoShopも非常に快適に使える。ってまだグラフィック関連ソフトしかいじってないから、「速いなぁ」程度しか感じてないんですけどね。あと、Mac OS 9だが、System 7.5くらいの時代から比べると、細かな機能が洗練されてわかりやすくなっている感じ。表面的にはMac OSのイージーさがより高まった印象だ。まあ、やはりまだ使い始めたばかりなので、安定性云々はよくわからないのだが。
ハードウェア的な面では、G3やG4のこの新しい筐体は、非常に扱いやすい。デスクトップに設置する時に、あの取っ手部分がすげぇ役立つ。ホントは重いG4だけど、あの取っ手を使うと設置時にマシンの重さに苦しめられることがほとんどなくて便利だ。また、本体右側のラッチを起こすだけでカバーが開けられるあのギミックも非常に良い。俺はHDDとメモリの増設をやったのだが、こーんなに手っ取り早く増設作業ができたのは初めてだ。ケース内部の基板やケーブルのレイアウトも非常にスッキリまとまっている。エレガントな感じ。それから、G4本体にもCinema Displayにもキーボードにもという感じで、そこら中にUSBポートが付いているのも便利だ。
それと、G4を使い始めてからいきなりAppleのサポートを受けた(SCSIポートに関する質問)のだが、以前に比べて電話のつながりやすさやサポートの綿密さがかなり高まった感じ。細かいコトをアレコレ聞いたのだが、そしたらその場で答えてくれたと同時に、後々さらなる詳細情報を(折り返し電話をかけて)伝えてくれた。数年前とは全然違って好印象。ついでに、Appleとは関係ないけど、オリンパスのMOのサポートセンターにも電話をかけたのだが、こちらもすげぇしっかりしたサポートをしてくれた。ん~最近のサポートはナイスなところが多いなぁ。
てなわけで、G4本体についてはまだまだ使い始めで表面的なレビューしかできなかったが、とにかくCinema Displayは最高っス最高!! こーゆースバラシ過ぎなディスプレイあるとやる気出まくりって感じであり、これはやはりいろんなモンを質入れしてでも買う価値ありだと言えよう。
◎関連URL
Cinema Display製品情報
http://www.apple.co.jp/displays/acd22/index.html
G4 PowerMacintosh製品情報
http://www.apple.co.jp/powermac/index.html
(スタパ齋藤)
2000/04/03
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