欲しい!! けど…… ~ソニー MusicClip~
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■ ちょいと気になるVAIO GEAR
今回もVAIO GEAR。ソニーのVAIO専用の少々ソソられがちな一連のデジタル周辺機器だ。
現在あるVAIO GEARは、4種類で、ミュージッククリップ(MC-P10)、CCDカメラユニット(PCGA-VC1)、インフォキャリー(VNW-V10)、動画ジョグコントローラ(PCDA-J1)。このうち、俺が注目していたのはひとつだけで、前に紹介したインフォキャリーだ。それ以外については、別に~って感じだった。ミュージッククリップは一連のMP3プレイヤーのソニー版(ていうかATRAC3版)って感じで機器としての目新しさはそれほどなかったし、CCDカメラユニットはVAIOに合わせたデザインで外付けなんですね~って感じで特にどうとも思わなかったし、動画ジョグコントローラについてはよく考えた結果「GUIにおけるマウスコントロールの方がラク」との結論が出ていた。
が、実際にVAIO GEARの実機をいじったところ、インフォキャリー以外の、「別に~」って感じていた製品のひとつが、どーもこれはイイぜという印象だったので、これについて書きたい。モノは、ミュージッククリップ(MC-P10)である。
■ すげー凝縮度かも!!
ミュージッククリップは、以前紹介したソニーのメモリスティックウォークマンと同様のシリコンオーディオで、著作権保護技術としてOpen MGが使われている。また、ミュージッククリップ内に保存されるサウンドデータ(曲)の形式は暗号化されたOpen MG ATRAC3である点も、メモリスティックウォークマンと同様。ただ、メモリスティックウォークマンではOpen MG ATRAC3のデータしか再生できなかったが、ミュージッククリップでは(Open MGで暗号化された)MP3ファイルも再生できる。まあ、簡単に言えば、ATRAC3もMP3も再生できる、わりと汎用性の高いシリコンオーディオ機器なのだ。なお、ミュージッククリップのスペック面の詳細等についてはココを参照していただきたい。
さて、ミュージッククリップを触ってまず感じるのは、ソレがスッゲー小さいということ。いや、小さく感じられるというか、とにかく一連のシリコンオーディオ機器とはサイズ的印象が全然違う。ていうか、シリコンオーディオはこーでなくちゃという実感が得られる、非常に説得力のあるサイズになっている。
具体的には、長さが119.8mmで本体の直径が17mm。重さは単3形のアルカリ電池(1本)を含んで48g。やや細身の短いマーカーというか、太めのサインペンというか、ロマンスグレーのおとーさんが好みそうな高級万年筆というか、そんなサイズ。一連のMP3プレイヤー等シリコンオーディオも、まあ体積や重量で言えばそれほどミュージッククリップには負けていない。が、ミュージッククリップは本体が棒状なので、そのコンパクトさ軽さが強調されている感じだ。
それにしても、この小ささ細さでありながら、最大約120分の音楽が再生でき、ウィンドウズマシンとUSB接続でき、バックライト付き液晶が入っていて、プレイヤーとして必要な機能及びちょっとした便利機能が入っていて、さらに単3形乾電池を内蔵するってのは驚く。どこにどーやって回路を入れてるのか不思議だ。大した凝縮度である。
ところでミュージッククリップのこのカタチは、首から下げたり胸ポケット等に刺したりして使うためのカタチのようなので、実際そうして使ってみたら、前述の“説得力”を感じた。というのは、ケータイよりもピッチよりも違和感なく装着していられるからだ。また、例えば電車のつり革を掴みながらも(その同じ手で)持っていられる。あるいはペンケースにも入れられる。ちなみに、パッケージには本体を首から下げるためのストラップが同梱されており、また、本体にもシャツの襟やポケットに止めるためのクリップが付いている。非常に携帯しやすく作ってあるのだ。
この場所を問わない携帯性が非常にイイ感じなのである。「これならスキーに持っていける」とか「スポーツしながら使える」と思うのは他のシリコンオーディオも同様なのだが、ミュージッククリップの場合は「これはスキーに持っていきたい」とか「これをスポーツしながら使いたい」と思わせる、携帯面での実用性の高さを備えている。
■ 再生機能は平凡
携帯性以外、実際に使ってみた感触としては、わりと平凡。再生専用のMDよりも機能が少ない感じだ。備わっている機能は、ボリューム調整、曲の頭出し(前方・後方)、再生と停止、曲の再生方法選択(曲順再生・1曲の繰り返し再生・シャッフルランダム再生)、イコライザー選択(イコライザーなし・ジャズ向け・ポップス向け・ロック向け)、AVLS(シャカシャカ音軽減)のオンオフ、それからHOLD(誤動作防止)。本体には合計8個しかボタンがないので、操作は非常にわかりやすく、「音楽が再生できればいいよ」というユーザーなら、機能の単純さは問題ないと言えるし、マニュアル要らずの楽勝さだ。
でも俺はちょっと不満というか残念感あり。いちばん残念なのは、曲を再生しながらの早送りや早戻しができないこと。まあそんなに多用する機能ではないのだが、フツーのオーディオならフツーにできる処理だけに、これらの操作ができず、曲の頭からの再生だけってのはちょっと物足りないし、不便なことがたまにある。
それから、これはイイのか悪いのか、ちょっとまだ結論が出ていない感じなのだが、本体頭部(?)にあるスタート・ストップボタンがデジタル機器っぽい動作をする点。一度押すと曲を再生し始め、もう一度押すと曲が止まる。まあこれはフツーなのだが、曲の途中で押すと再生が止まると同時に、次にまた押した時に曲が“前に止めた位置”から再生される。まあ、動作としてはポーズボタンだ。要するにこのボタンは、スタートとポーズしかできないわけで、ミュージッククリップには“停止”の概念がない。なので、例えば10曲を入れたミュージッククリップを使っていて、その最初の曲を聴きたくなったら、最初の曲番号が出るまで頭出しボタンを押す(前方への曲の頭出しを繰り返す)ことになる。
フツーのオーディオにモーターが使われていると同時にレジュームとかいう概念が希薄だということで“ポーズボタンやストップボタンがある”と考えればいいのだが、このモータがなくなったシリコンオーディオだしデジタルの利便追求だということで、いきなり“停止ボタン削除でレジューム機能搭載”だと少々戸惑う。
まあ、単に戸惑っただけで、特に不便に感じたりしないし、逆にすげー便利とも感じない。なので、善し悪しの結論が出ないのだ。
もうひとつ、ボリュームの最大値がやや小さい感じがした。室内や電車内で聴くならば十分大きな音が出るのだが、もうちょっとだけデカい音で聴きたいかな~と思ったりもした。まあ些細なコトなのだが。
■ 欲しい!! けど……
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MusicClipと付属のストラップ、ヘッドフォン
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細かいイマイチ点がちょっとだけあったが、でもこの携帯性と実用性は大したモンというか、シリコンオーディオとしてわりと理想的なカタチではないだろうかと思う。あ、シリコンオーディオって書いてましたが、ホントはソリッドオーディオの方がいいのかしら。
ともあれこの製品、いじくればいじくるほど、夢が広がる。このサイズなら出かける時に持っていきたいし、スノボとかスキーをするときにはこういう小さいオーディオがやっぱり便利だと思う。単3形アルカリ電池1本で約5時間の連続再生ができるってのもイイ。欲を言えばメモリ部分が交換できたほうが、まあ長く出かける時に(曲を替えられるので)飽きなくていいとは思うが、最大約120分(ビットレート66kbpsの場合:ビットレート105kbpsだと約80分でビットレート132kbpsだと約60分になる)入るならまあ日常での使用には十分って感じもする。
ちなみに、ATRAC3ってのはどーもやっぱりビットレートを変えても劇的に音質が変わることがなく、132kbpsでも66kbpsでもじっくり聴き比べなければ音質の違いがわからない。また、66kbpsでもかなりイイ音で聞こえるので、屋外での使用ということならまったく問題なく“高音質な感じ”がすると言えよう。
というわけで、一連のシリコンオーディオ改めソリッドオーディオを見ると、サイズにしろ携帯性にしろ、ミュージッククリップはダントツに見えてきて、ヒジョーに欲しくなる。が、俺はやっぱり買わないのであった。じゃあ他の、例えばMP3プレイヤーを買うのか、と問われても、やぱり買わないのであった。
なぜなら、やっぱり結局のトコロ、ソリッドオーディオを楽しむのは、現在のトコロけっこう面倒だから。最大の面倒は曲をエンコードしなきゃなんないしエンコード後にファイルをソリッドオーディオ本体転送しなきゃなんないという点だ。
例えばCDから気に入った曲を4~5曲をエンコードして楽しむなら別に面倒ではないし、非常に便利で快適に使える。で、わぁ便利だ楽しいナと思ってちょっとソノ気になり、だったらみんなソリッドオーディオで楽しもうとか思いつつCDが収められた棚なんかを見た次の瞬間「ゲッこんなにエンコードすべきソースがあるのかぁ」と感じると、俺のソリッドオーディオ本腰化計画は速攻で頓挫するのであった。
てなわけで、現在では、かつて俺が熱く紹介してきたMP3プレイヤーを含むほとんどのソリッドオーディオをあんまり使っていない。ボイスレコーダだけは使っているが。音楽用のはあんまり使っていない。
俺がソリッドオーディオを積極的に使うようになるのは、もうちょっとエンコードが速攻でできるようになってからか、ネットでの音楽データ配信が活発になりかつネットへの接続環境が高速化されてからか、すげー手軽にソリッドオーディオ向けコンテンツが手にはいるようになってからだと思う。
あ、あと、ちょっと話が逸れるが、今回紹介したミュージッククリップも、以前紹介したインフォキャリーも、VAIO GEARということで、ソニーの紹介ページなどでは“VAIOシリーズ専用周辺機器”とかいうことになっているようだが、俺の手持ちのVAIO以外のマシンで試したところ、特に問題なく動いた。まあ、VAIOをよりいっそう盛り上げるための周辺機器ということでソニーはVAIO GEARと言っている感じだと言えよう。ともかく、ミュージッククリップもインフォキャリーも、俺のIBM製ThinkPad770X等の“非VAIO”マシンでも使えた。でもメーカー側は保証しないと言えよう。あと俺も保証しないと言えよう。でもきっとだいじょーぶじゃんじゃないのーと無責任なコトを言っちゃえよーな気がすると言えよう。
◎関連URL
MusicClip製品情報
http://www.sony.co.jp/sd/ProductsPark/Consumer/PCOM/VAIOGEAR/vmc1.html
VAIO GEAR製品情報
http://www.sony.co.jp/sd/ProductsPark/Consumer/PCOM/VAIOGEAR/
(スタパ齋藤)
2000/02/14
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