1人1端末1契約!? ~俺にもっと端末を買わせろ!!~
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■ 多様性と欲望
商品と物欲の関係において、非常に大切なのは“多様性”ということだと思う。いや、モノゴトと欲望の間では、何においても、多様性っつーコトはすげえ大切であり、多くの場合は超重要なキーワードになる。
例えば、コンピュータと物欲。くぅ~ッ、新しいマシン欲しいゼー!! ソコに1機種しか新マシンがなかったら、沸いた物欲なんざぁ速攻でしぼむのである。「あ、コレしかないんだ、ふぅん」とか言って、一気に興ざめなのである。が、ソコに3機種あったりすると、「むぅ、3機種あるなぁ、ど・れ・に・し・よ・う・か・なっ」などと大人げなくはしゃいでしまい、もちろん物欲は維持されるか増幅されるのである。しかもソコに、3機種の新型を発売するメーカーが10社もあったりすると、これはもはやボーナス直後のパソコン大好き人間のようなギラギラした目になってしまうわけだ。
多様性があれば、比較の喜びがあり、選択の喜びがあり、迷う喜びがある。これらの喜びが、得た時の喜びをより増幅させると同時に納得や満足を生みだし、ユーザーの個性をも豊かにする。
冬になると最強に頭が冴えてくるが夏になるとビールばっかり飲んでることで(俺に)良く知られている船田戦闘機氏は、著書『100台のコンピュータ』(アスキー刊)で、“マシンの多様性はトキメキの原点”というコトを熱く語っているが、まさにその通りだ。いろんなマシンがあって、それぞれスタンス、スタイル、コンセプト、性能、機能が違うから、欲しくなるのである。触ってみたい使ってみたい試してみたいやってみたい、という欲望は、やはりこの多様性に向かう好奇心からどんどん増幅されるのだ、と思う。
こーゆーコトは、コンピュータだけじゃなくて他のデジタルハードウェア、ソフトウェア、さらにはフツーの家電から電気と関係ないモノ、そして行為においてまで、言えるんじゃないだろうかと思う。食い物にしたって、料理が1種類しかなければ、グルメだ味だなんてこだわらないのである。それどころか、特に魅力さえ感じない行為になる。爪を切るとサッパリする、みたいな非常に単純でたいしたコトない行為に成り下がるのだ。
■ 電話と多様性
で、最近の俺の内部においてどんどん物欲がしぼんでいく対象がある。それは、ケータイ類、つまり携帯電話やPHSだ。
以前は月に何台もケータイ類を買っていた俺だが、最近はあんまり買っていない。なぜかと言うと、それは、ケータイ類の多様性が失われてしまったからだ。いや、他のハードウェアと同様にモノとしての多様性はたっぷりあるのだが、俺にとってのケータイ類の状況は、そのモノに多様性がないのと等しくなっていやがりケツかってるのである。
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三菱製J-フォン端末J-D01
筐体色は、写真のブリリアントシルバーとオーシャンブラックの2種。フリップを開けるだけで未読メールなどがチェックできるのがウリ。しかしすでに持ってる端末を解約しないと買えない! |
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俺の中で、そのことは、J-フォンから始まった。
フルレートで頑張ってるJ-フォン!! SkywalkerもナイスなJ-フォン!! パイオニアのデカ液晶端末サイコー!! とか思っていた俺は、でも三菱の端末も使いたいなぁ~そしてノキアの端末も使いたいなぁ~、と思ってJ-フォンであと2台の端末を買おうとしたら、J-フォンはお1人様1台限りというコトになっていた。つまり、ひとりが同時に契約できる端末は、1台までということ。
俺の場合はソレじゃあダメなのである。わりとフツーの人なら、ケータイ買うぜ~J-フォン買うぜ~とカタログ見たりモックアップ触ったりしてコーフンし、どれか買う。そこまでで、多様性と物欲の火花を十分堪能し、満足して、1台のJ-フォン端末を使うのだ。が、俺の場合、多様性と物欲の火花はもっともっとディープな所でも散る。3台のJ-フォンを同時に使ったらどれが端末として一番安定しているか実験したい、機能の違いをいちいち交互に試してみたい、仕事用と遊び用と実験用とか使い分けたいなどなど、複数台の端末を持つことから生まれる“多様性”をじっくり楽しみたいのであるって書くとマトモっぽいが、俺はfanaticでaddictでmaniacでnerdでgeekな、ケータイオタクなので、いっぱいケータイを使いたいのである。
だがJ-フォンではソレがダメであった。そして物欲をくすぶらせたまま使い続けていたら、なーんかフルレートとハーフレートの間を行き来したり、どーもiModeでのメールの方がイイかもとか思えてきたり、まあいろいろあったため、結局J-フォンは解約してしまった。
でもちょうどその頃、IDOがcdmaOneを始めたのであった。もちろんすげえ速攻でcdmaOne端末予約。発売当時唯一のEZアクセス対応端末であった、日立のC201Hである。そして発売当日購入し、その音の良さに改めて驚いたけどEZアクセスは……と思ったけどでもやっぱりこれからはcdmaOneだゼとか思ってコーフンして使い続けたのであった。
そしてしばらくして、ソニーのcdmaOne端末はより音がイイらしいなんて話を聞くようになり、話題のC101Sを使ってみたくなった。その後もっと良くなるであろうEZアクセスはC201Hでやり、その他イロイロ実験したり遊んだりする端末をC101Sにしようという考えもあった。
そこでC101Sを買いに、身分証明書とハンコと金持って販売店に行って、さあ申し込むゾってコトで、申込書を作成。その時の俺はもうスゲぇcdmaOneに惚れ込んでいたので、実はC101Sを色違いで2台注文したのだ(後に1台は機種変更の予定だった)。ところが30分くらい待った後!! IDO側から注文(というか端末契約)拒否の返答が!! 理由は、IDOではお1人様1台限りというコトなのであった。
なので、現在もC201Hを使用中。一時、途切れがちになったり音が悪くなったりしたので解約しようかと思ったが、最近はまたモトに戻ってナイスになったので、やっぱ使い続けているのであった。ちなみに、最近では三洋電機製の二つ折りcdmaOne端末ことC106STが最強に欲しくなったが、残念ながらEZアクセス非対応。いや非対応でもいいから欲しいのだが、cdmaOneはひとり1台まで。くーっ、やるせない。
■ ケータイ類なんかもーダメだ!?
つーか!! 俺に端末買わせろってぇの!! 俺の気持ちを良く知っているNTTドコモさん、いやNTTドコモ様は、何台でも好きなだけ俺に端末を買わせてくれるゼ!! ドコモは電話業界において俺の最も良き理解者と言えよう。なのにどーしてJ-フォンとかIDOとかは1コしか売らねえんだよ頼むよ売ってくれよ買わせてくれよ!!
とかいつも思っていたのだが、まだまだ電話に対する俺的な多様性はあった。前述のドコモもそうだし、PHSもあるし、まだまだ楽しめるだろうと思っていたのであった。
が!! こないだ最強に欲しまりまくった最新PHS端末こと、H"(エッジ)を買いに行った時、初めて「俺にとってケータイ類の多様性は見かけ上の多様性に過ぎない」とマジで思うようになった。
DDIポケットが発売した、PIAFS2.1準拠で64kbpsのデータ通信が可能の、話題の新サービスのエッジ(H")だが、俺はその端末にかなりの魅力を感じた。PHS同様に通話時の音声はかなりイイこと、クルマで移動中でもそのイイ音で通話できること、エッジ向けのアプリケーションが配布されているのでパソコン上の電話帳をPHS端末に移せることなど、いろいろ魅力があった。
注目したエッジ端末は、三洋電機製のPHS-J80と、パナソニック製のKX-PH23Fだ。三洋電機製の方は、文字サイズ変えられるストロークベースフォントとかゆーのが採用されていて、かなりキレイで多量の文字をディスプレイに映せる点がよさげ。パナソニック製の方は、フリップタイプである点が好きな感じ。
てなわけで、どーせなら2台買っちゃえ~とか思ってショップに出向いたら、比較的速攻で「お1人様1台だけです」と言われた。10円の端末売ってるショップにしては親切なお姉様で、「だって2台買いたいんだもーん」とか言ってると「ご家族のご名義でお求めいただくこともできますが」とか対策を練ってくれたが、ご家族っつっても、俺って独身で、肉親って弟だけでしかも結婚してて……。「では現在ご使用中の端末を一度解約なさってから」とも言ってくれたが、だってロカティオのPHSモデルがPHSとして使えなくなったらこれこそ全然意味がないのである。最大のウリのマップ機能が最強にヘボまってしまう(ロカティオのPHSモデルはPHS経由ネットからマップデータを読み込む&デジタル携帯電話(PDC)等はつながならい)のである。悲しそうな俺を見て何となく悲しそうになっている優しい店員さんに「じゃあアンタ俺と結婚して名義貸してくれよ」とかサムいオヤジギャグを言う気力もなく、あーそーかーDDIポケットも1台限りになっちゃったのかーと本格的にサムくなっていった俺なのであった。
ちなみに、電話マニアの友人から聞いたコトだが、DDIポケットの“ひとり1台”は、ホントは、通話できる端末(フツーの電話スタイルのPHS)が1台、文字電話の端末が1台、データ通信カードが1台、ということ“らしい”。詳しいことは知らないが、ともあれ、エッジが買えなかった俺なのであった。
■ こんなに買いたい客は他にいねえゼ!!
J-フォンもIDOもDDIポケットも、どーして1端末しか契約させてくんないんだろーか!? 飛ばし端末作る奴らに手を焼いてるから? 基地局足りないから? それとも電話マニア撲滅運動? 実につまらねえ状況である。
ていうか、俺は電話を触って試していじくりまくって、そのコトを楽しみたいだけなのである。悪いことをしようなどとはさらさら思ってないし、ある意味フツーのユーザーより電波帯域を圧迫しない(端末いじってるだけであんまり電話してないとも言う)から、電波事情的には良心的なユーザーと言えよう。
電話料金の滞納もしません。もちろん飛ばし端末なんか作りもしないし買いもしません。回線が空いてる夜中だけに通話しまくります。サポート電話にもなるべく電話しないようにします。だからお願いだから、このかわいそうな電話野郎にもう数端末の契約をお許しくださいってんだよ頼むよアニキわかってくれよブラザー!!
つーか!! 住民票だろうが戸籍謄本だろうが印鑑証明が拇印だろうが何でも用意する!! だから頼むからもっといっぱい端末買わせてくれ!! キャーッ!! ギャーッ!! 電話欲しいよーん!! って心境なのだ、俺は。
俺はこーゆー業界でこーゆー仕事をやってる人なので、記事書くからその新機種貸してちょんまげというコトをメーカーさんなりキャリアさんなりに言えば、たぶんお借りでき、使わせていただくことができるだろう。が!! それじゃイヤなのであり、端末なんざぁ所持して好きなだけ長時間使ってこそ愉快なのだ。借り物なんか使う気がしない。ていうか結局返さなきゃなんないなんて、店頭でモックアップいじってるのとおんなじなのだ。つまらん。自分のモノとして好き勝手に自由に有無を言わさず好きな台数だけ好きな時間だけ好きな時に好きな場所で誰にも文句も言われず使い倒したいのである。
ともあれ、マジな話、ひとりの人間が複数台の端末を契約できるようなサービスを、ぜひ考えていただきたい。前述のようにユーザーに各種証明書を提示させるとか、複数台所有者リストで管理するとか、詳細に事情聴取して取り調べた上で売るとか、なんかやり方考えていただきたい。そう思っているマジメな電話マニアも多いはずだ。そうしないとドコモのばっかり買っちゃうヨ。
(スタパ齋藤)
1999/11/08
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