■ Wordとは
WordはPSIONに標準で内蔵されている文書作成ソフトで、ワープロソフトと言ってさしつかえないだろう。文章の作成はもちろんのこと、表やグラフの挿入、画像の貼り付け(内蔵のグラフィックソフトSketchの形式のものに限る)、手書きの絵の貼り付け、録音したメッセージの貼り付けなどが可能だ。
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Wordの画面
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通常PDA内蔵のワープロソフトは、文字を大きくする、右寄せ、下線程度の表現力しかないことと比較すると、かなりの表現力を持っていると言える。
実際、ヨーロッパなどPSIONが盛んに使用されているところでは、PSIONだけで文章の作成や出力をしてPCを使わずに済ませている人もいるくらいだ。出力はPSIONでの出力をサポートしているプリンタ(シリアル接続可能なプリンタのほとんどと、一部の赤外線プリンタ)であれば、直接接続して出力可能であるし、そうでないプリンタもPCに接続されたプリンタをPsiWin経由で利用することができる。また、作成したWord文章はMicrosoft Wordなどの各種ワープロソフトの形式にPsiWin経由で変換することが可能である。
ただし、非常に残念なことに日本語での出力や、日本語のワープロ形式ファイルへの変換にはまだ対応していない……。
そのため、UniFEP+Wordで見栄えのする文章を作成しても、PSION上で楽しむしかないのが現状である。このあたりはUniFEPの発売元であるエヌフォーの対応に期待したいところだ。
■ テキストファイルの扱い
Wordは上記のように日本語でのプリンタ/ファイル出力には対応していない。そのため、最初のうちはテキスト文章の入力や出力がメインの用途となるだろう。そこで、まずテキストファイルの扱い方からご説明しよう。
UniFEPを経由してPSION上に読み込むことが可能な文字コードは、ShiftJIS、UCS2(Unicode)、Win Roman(CP1252)、UTF-8、Latin-1(ISO-8859-1)、EUC-JP(Unix)、JIS(8bit)、Mac Romanなどと多岐に渡る。実際には、ほとんどの人は日本語版のWindowsやMac OSで標準の文字コード、ShiftJIS(いわゆるS-JIS)を使うことになるのだろうが、多くの文字コードを扱うことができるということは、利点と言ってよいだろう。
【テキストの読み込み】
パソコンで作成したテキストファイルをPSION上で見たり編集するには、PsiWinなどを使ってシリアル経由でPSIONに転送するか、コンパクトフラッシュカードに記録してPSIONで読み込む必要がある。このあたりは前回、UniFEPの導入で解説したのと同様の手続きになるので、詳しくは前回をご参照いただきたい。
この場合、読み込みはテキストファイルごとに行なう(複数ファイルをまとめて読み込むことはできない)。UniFEPの入力用ウィンドウが表示されている状態で、Fn+Wを入力するとメニューウィンドウが出る。その中の「テキストファイル読み込み...」を選択すればファイルを選択するダイアログが表示される。ここで、適切な文字コードを指定して、該当するファイルを選択する。こうすると現在のカーソルの位置を先頭にテキストファイルが読み込まれる。
注意点は、読み込みの時にカーソル位置のフォントをTB Gothicにしておかないといけないと言うことだ。ここで、フォントがArialやCourire newなどの英文フォントだった場合は判別不能な文字の羅列になってしまう。ただ、このような状態になったからと言って、もう一度読み込みなおす必要はなく、判別不能な部分の文字を範囲指定して、フォントをTB Gothicにすればちゃんと日本語で読めるようになる。
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Wordでテキストファイルを読み込む際の画面
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ここで、ちょっとしたTipsを1つ。Wordはエディタソフトなどと比較すると、標準の設定では改行した時の行間が大きいため、メールなど改行の多いテキストを読み込んだ時に行間の空きが広すぎて気になることがある。
こうした場合、Ctrl+Aなどで文章全体を指定して、Menu → Paragraph → Line spacing を選択し(Shift+Ctrl+Nというショートカットもある)、その中のSpace belowの数値を小さくすれば行間が狭くなり、読みやすくなる。標準では5になっているが、0~2くらいに設定すると普通のエディタと同じような感覚で見ることができる。
また、閲覧するときは通常の文字の大きさで見ることもできるが、文字を小さくして見たくなることもあるだろう。文字のサイズを小さくしても良いのだが、PSIONに塔載されるEPOC OSの拡大縮小の機能を使用する方が簡単だろう。
液晶画面の修理の左下に虫メガネの絵があり、その下の方の、-の入った方をタップすれば標準の状態から2段階縮小できる(ショートカットはShift+Ctrl+M)。また、上にある+をタップすれば1段階拡大できる(ショートカットはCtrl+M)。この機能はOS自体がサポートする機能なので、Wordだけでなく内蔵のソフトのほとんどで使用可能だ。また、フリーのソフトウエアでも使用できるものがあるので、活用してほしい。
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文字を拡大したところ
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文字を縮小したところ
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【テキストの書き出し】
さて、次はテキストの書き出しだ。まず、文章の書き出したい部分を範囲指定して、コピー(Ctrl+C)もしくはカット(Ctrl+X)する。この操作により文書データをクリップボードという、一時的にデータを蓄積するメモりに記憶する。そして、Fn+WでUniFEPのメニューを出し、「クリップボード書き出し...」を選択する。
すると、「書き出しファイルを作る」というダイアログが現われるので、ファイルを保存するフォルダとファイル名を指定し、文章のファイル形式を指定すればデータは書き出され、テキストファイルを書き出すことができる。
ファイル形式は大きく分けて3通りが選択できる。Windows、Mac OS、カスタムだ。WindowsやMac OSの場合はそれぞれのOSに適した保存をしてくれるので特に注意する点はない。カスタムの場合、文章のエンコードと改行について選択しなくてはならない。ここでも、読み込みの時と同様に多種の文字コードから選択できる。また、改行のコードも選択できるので、両者の設定をきちんと入力すれば間違いは起こらないだろう。読み込みの場合と同様に、実際にはWindowsとMac OSを選ぶ場合がほとんどだろうが、それ以外の選択肢が用意されているのは良い点だ。
注意点として、改行についてご説明しておきたい。Wordでは改行に相当するものが2つある。EnterとLine break(Shift+Enter)だ。Enterは段落の区切りなどに使用し、次行との行間に空きをとるもの。breakはただの改行、という違いがある。その他にも、似たようなものとしてPage breakがあるが、これは印刷時に使用する改ページなので、ここでは詳しく触れないでおく。
海外製ワープロソフトの例にもれず、Wordも段落ごとに修飾や文字の右寄せなどの操作を行なう。その段落を区切るのがEnterであり、段落を区切らずに行だけ変えるのがLine breakなのである。
このように、それぞれ用途の違うEnterとLine Breakであるわけだが、書き出しの時には同じ改行として扱われる。まあ、書き出す先がテキストファイルなので、当然といえば当然なのだが。
■ Wordの活用
このようにテキストを扱うツールとしても十分な実力をもったWordであるが、実は筆者が一番気に入っている使い方は、打合せの議事録を作成するツールとしてだ。
議事録というからには文章を入力するのがメインなのであるが、ちょっとした手書きの図などを簡単に貼りこんだりできるのは便利だ。基本的には文章を入力し、文章ではちょっと表現しにくかったり、長々と書かなくては説明できないようなものは、画面右にあるInsert Sketchをタップして、さらさらと画面に書いてしまえば良いのだ。文章も簡単な絵も扱えるので楽に議事録作成ができる。Sketchで書いた図は書き込んだ部分のみ貼りこまれ、何も書いていないエリアは貼りこまれないので、小さな図だけを貼りたいときにも、余分なスペースをくうこともない。
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Sketchで作成した図を貼り込んだところ(この図は作成後75%に縮小してから貼り付けた)
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さらに、文章や図だけではニュアンスが伝わらないというときは、Recordを使用して声を録音してしまえば良い(文章を書くのも図を入れるのも面倒というときにも便利である)。音質はさほど良くないが、スピーカーもマイクも本体に内蔵されているので、他に何も用意しなくても録音できる。RecordはMenu → Insert → other object → Recordと選択することによって使用できる。Shift+Ctrl+Oでother objectのダイアログを出して R を入力してからEnterでもOKだ。
むろん、テキストを入力できるキーボード付き端末とメモ用紙(後はVoice Recorderもあるとほぼ同じ条件だ)を持っていれば、それで済む話ではあるが、小さなメモ用紙というのはとかく見失いがちだし、大きなメモ用紙は持ち歩くのがおっくうだ。PSIONのWordを使えば、メモを持ち歩く必要もなければなくしてしまうこともないし、文章のすぐ近くに図を書いておけば、どのメモがどの文章に対応しているものかわからなくなることもない。また、図は紙に書いたものと違い、Undoもできるので入力もしやすい。Undoは5回までで、無制限にできるわけではないが、実用的には5回もできれば十分だ。
こうやって作成した議事録の内容を、ToDoに添付する形でコピーしておけば、「この仕事は納期が近づいてきたが何をしなくてはいけなかったんだっけ」というようなことを忘れることもないだろう。
ちなみに、Sheet(表計算シート)も貼り込むことはできるのだが、筆者の場合は資料作成などの時には使用するものの、議事録などには使っていない。なお、SheetやSketchの使い方については次回でご紹介する。
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作成した議事録のサンプル。このような議事録を作成しながら、Recordで録音することも可能だ
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さて、Wordで作成した文章の保存であるが、普通に上書き保存する場合はCtrl+Sで、別名で保存する場合はShift+Ctrl+Sで行なう。また、ファイルを閉じる時にも自動的に保存される。
PSIONでは、ファイルは閉じるときに自動的に保存される。Undoもきかないくらい前の部分からの失敗を見付けた場合に修正に困るのではないかと思うかもしれないが、そうした時のためにCtrl+Rを押して直前に保存した内容まで戻ると言うコマンドも用意されている。
最後になるが、Wordファイルは複数開くことが可能だ。普通はファイルをダブルタップするかカーソルを合せてEnterを押すことで、単体のファイルを開くのだが、この時にFn+Enterで開くことにより、複数のファイルを開くことができるようになる。複数開いたファイルの切り替えだか、画面左下2番目のWordの絵をタップすれば切り替わる。
Wordはこのように非常に便利なソフトである。テキストの作成以外にも、資料作成やその他色々な文書作成に活用してほしい。
■ 次回予告
第4回では、内蔵ソフトのSheet、Record、Sketchについてご紹介する。Sheetは表計算ソフト、Recordはボイスレコーダー、Sketchはいわゆるお絵かきソフトだ。
(明日につづく)
◎関連URL
■PSIONの国内販売元、エヌフォーのホームページ
http://www.enfour.co.jp/inc.html
■PSIONのホームページ(英文)
http://www.psion.com/
■EPOC OSのベンダー、Symbianのホームページ(英文)
http://www.symbian.com/
(彩音五郎)
2000/03/30
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