西川善司の Playstation2の魅力を探る
第4回:PS2のインターフェイスを検証する
|
西川善司
中学時代からコンピュータに親しみ、高校時代にはすでにライター業に手を染めていたが、大学院卒業後、日本の大企業に就職。筆者のプロフィールについては、筆者のホームページが非常に面白いので一度ご覧ください!
|
|
今回はPS2のI/O機能や接続端子を見ていくことにしよう。なお、PS2の多くの接続端子は未だ謎を秘めている部分も多いため、推察を多分に含んでいることをあらかじめお断りしておく。
■ I/Oプロセッサ(IOP)の役割
|
テクスチャ補間前
|
|
テクスチャ補間後
|
PS2にはメインプロセッサとなっているEmotionEngine(EE)の他に、周辺機器とのやりとりを司るサブプロセッサとしてI/O Processor(IOP)が搭載されている。IOPはPS2モードで動作しているときはサブプロセッサの役割を果たしているが、PS1のソフトを動かしたときにはこの部分がCPUとして動作する。いわばPS2のPS1互換機能のキーポイントとなる存在だ。
ところで、PS1のソフトを動かしているときでもグラフィックの出力はPS2のグラフィック機能を司るGraphicSynthesizer(GS)が担当する。そのためPS2ではシステム設定を変更することで、PS1のゲームを動かしたときでもGSの機能の1つであるテクスチャのギザギザをなくすフィルタリング処理を施すことができる。見た目が派手に変わるわけではないが、ソフトによってはグラフィックがより自然な感じになるので設定しておいて損はないだろう。
また、CD-ROMの読み込み速度をPS1の2倍速に合わせず、最大速度で読み出すためのオプションも同じメニューで設定できる。やたらCD-ROMアクセスの多い格闘ゲームやアドベンチャー系などではその効果が期待できるはずだ。
■ PS2の接続端子総チェック
PS2はこれまでのゲーム機とは違い、非常に豊富な拡張手段が設けられている。まだ、現時点では具体的な活用方法が提示されていないものもあるが、各端子を推測も交えて紹介していこう。
■ メモリカードスロット~メモリカード
|
上、文字の書かれた蓋のあるほうがメモリカードスロットで、その下がコントローラ端子。メモリカードスロットの上に「MAGIC GATE」のロゴが描かれている。
|
その名の通りメモリカードを差し込む端子。PS1と端子形状は同一で、実際にPS1のメモリカードを使うことができる。ただし、PS1のメモリカードはPS1のゲームで、PS2のメモリカードはPS2のゲームでしか使えないという制約がある。
PS2では8MBのメモリカードが標準仕様となり、これはPS1(128KB)の64倍の容量を持つことになる。PS1では1枚のカードの容量を15ブロックという単位で表現していたが、PS2ではそうした抽象的な単位は用いず、パソコンの記録メディアと同様に「バイト単位のファイルサイズ」という概念を導入している。
また、PS2のメモリカードにはソニー独自の著作権保護機能である「MagicGate」が導入されている。MagicGateでピンと来た人も多いかと思うが、これはソニーのメモリースティックウォークマンで導入されている規格だ。なんの根拠もない予想だが、メモリースティックをPS2のメモリとして使えるようなアダプタなども出てくる可能性もあるし、メモリースティックウォークマン用の曲(=ATRAC3ファイル)やMP3などをPS2で再生することも可能になるかもしれない。
また、ソニーはOpenMGという著作権保護技術をソニーのパソコンVAIOシリーズで展開しているが、これがPS2に波及する可能性も否定できない。OpenMGとは、簡単に言えば、著作権管理をしつつCDなどのデジタル音楽コンテンツをATRAC3に変換して、個人レベルで楽しめるようにする仕組みだ。今はCDをレンタルしてきてMDへダビングして楽しむ、というスタイルが確立されてきているが、そのうち借りてきたCDをPS2でメモリースティック(あるいはメモリカード)へダビング……なんていう音楽の楽しみ方も実現されるかもしれない。
■ コントローラ端子~コントローラ
メモリカードスロット同様、PS1とまったく同じ端子形状で、実際にPS1用の各種コントローラがほとんど使用できる(筆者が実験したところではPS1用の純正マウス「SCPH-1030」も使えた)。
PS2のコントローラ「デュアルショック2」は形こそPS1の「デュアルショック」そのままだが、アナログスティック部だけでなく○/×/△/□/L1/L2/R1/R2の全ボタンと十字ボタンまでがアナログ入力に対応している。
■ USB(Universal Serial BUS)端子
|
左側に2つ並んでいるのがUSB端子。右側に1つある小さな端子がIEEE-1394(iLINK)端子。
|
PS2にはUSB端子が2基実装されている。USBとは、おもに低中速機器の接続を想定して規格化された1.5Mbps、12Mbpsの転送速度を持つシリアルバスだ。仕様上では市販のUSBハブとよばれるUSB分岐機器と組み合わせることで最大で127機の周辺機器が接続できることになっている。
PS2では何がつながるのかは明らかになっていないが、もし、ソニーがPS2にインターネットセットトップボックス的な活用手段まで提供してくるのであれば、ISDN用のTA/DSU、モデムといった通信機器、キーボード、マウスなどの入力機器などと接続できるようになる可能性は高い。ちなみに、現在のパソコン用のUSB機器を接続してもドライバソフトがないので動作しない(実際にマウスで実験したがダメだった)。
前段の話の延長になるが、メモリースティックウォークマンはUSB端子を装備しているので、もしかしたらそのうち接続できるように……なるかもしれない。現状ではあくまで可能性がある、という程度の話だが。
また、各PS2に2基ずつ実装されていることを考えると、複数台のPS2同士を数珠つなぎで接続して対戦ゲーム……というような活用法も見えてくる。
■ IEEE-1394(iLINK)端子
|
すでにIEEE-1394対応のハードディスクはパソコン向けにメルコの「DPN-ILG(写真の製品)」などが市販されている。
|
DV端子として既にお馴染みの接続端子。転送速度は100Mbps、200Mbps、400Mbpsなどのモードが用意されており、USBよりもだいぶ高速だ。USBとは違い1基しか実装されていないが、数珠つなぎで最大63機もの周辺装置を同時に接続することができる。
PS2での活用方法はUSB同様提示されていないが、もともとIEEE-1394は中高速デバイスを接続するために規格化されたインターフェイスなのでハードディスク(HDD)やDVD-RAMのような大容量外部記憶装置との接続、というのが順当な予想だろうか。実際、ソニーはCATVなどの通信インフラを使ってユーザーにPS2のゲームコンテンツをダウンロードさせる計画を推し進めている。とにかくなんらかの大容量外部記憶装置がPS2に出てくる可能性は高い。
■ PCカードスロット
|
TYPE3ハードディスクカードは現在では1GBの容量を持つものが登場している。SCEIのいう「ゲームコンテンツをユーザーにダウンロードさせる」用としては容量はまだ少ないかもしれないが…(写真はアイ・オー・データ製の「PCHD-1Gc」)
|
PS2はゲーム機としては初めてPCカードスロットを実装した。スロット数は1基だがTYPE2/3両対応だ。パソコンでは32bit高速バスで接続する「CardBus」などの規格が現在では標準となっているが、PS2のスロットはいわゆる“枯れた仕様”の16ビットバスタイプとなっている。
USBやIEEE-1394が標準実装のPS2としては、ここにSCSI I/Fのようなインターフェイス系カードが接続される可能性は低い。最も可能性が高いのはモデム、ネットワーク(Ethernet)といった通信デバイスだろう。1999年のPS2仕様発表当初はPCカードスロットを通信ポートとして区分していたことからもその可能性は高い。
ところで、ノートパソコンなどでは比較的取り出しやすい位置に設けることが多いPCカードスロットを、PS2ではあえて取り出しにくい背面に実装している。これは「あまり頻繁に抜き差しを行なわない装置の接続を想定している」と推測できる。これに加え「TYPE3に対応している」という事実を踏まえると、やはりハードディスクというのも候補から外せないだろう。
最近1枚のカードで複数機能を持ったマルチファンクションカードが流行だが、意外にPS2、PCカード第1段は「ハードディスク・モデム」カードかもしれない(!?)。
■ AVマルチ出力端子
|
本体背面の1番右下(横置き時)にあるのがAVマルチ出力端子。
|
ここはIOPが司っている部分ではないが一応出力端子なので触れておこう。基本的にPS1の映像出力ケーブルはそのまま使うことができる。
PS2の映像出力バリエーションは現時点では以下の5種類が用意されている。
・本体付属AVケーブル(SCPH-10030)…コンポジット出力
・S端子ケーブル(SCPH-10060)…Y/C分離出力
・コンポーネントAVケーブル(SCPH-10100)…色差出力
・マルチAVケーブル(VMC-AVM250)…RGB出力
・21ピンRGBケーブル(SCPH-1050)…RGB出力
表向きは「PS2用」としては21ピンRGBケーブルは発売されていないが、実際には使用できる(筆者も確認)。
以下は本連載第2回でも触れており繰り返しになるが、画質はRGB出力と色差出力が最も高くなる。RGB出力では映像を、その名の通り赤緑青の光の3原色の信号で伝送する。これはパソコンとほぼ同様の方式で、非常に鮮明な映像出力が可能なのが特長だ。一方色差出力では輝度(明るさ)、色相(色合い)、彩度(色の濃さ)の3つの信号で伝送する。コンポジット出力ではこの3つの信号を混合してしまっているため、信号帯域の狭さから画質が悪くなっている。Y/C分離出力(S出力)では、このうち輝度を分離したため、画質は改善されているが色相と彩度は混合されたままなのでやはり色差出力に比べると画質はだいぶ劣る。
ところで、21ピンRGB端子は現行のテレビ製品にはほとんど実装されておらず、現在はソニーKX-29HV3くらいしか対応機種が見つからない。ケーブルは今後入手しづらくなると思われるので対応テレビやモニタのユーザーは今のうちに入手しておいた方がいい。
なお、最近ソニー製のテレビやモニタにはAVマルチ入力端子(俗称プレイステーション端子)が実装されており、これを用いることでRGB接続することが可能になっている。
色差出力はメーカーによってはコンポーネント端子、Y/Pb/Pr端子、Y/Cb/Cr端子という名称で呼ばれている場合もあるが、いずれにせよ最近のミドルレンジクラス以上のテレビの多くに搭載されている。
PS2の解像度の高いゲーム画面を最も美しい状態で楽しみたいならばRGB出力か色差出力ということは覚えておこう。コンポジットとRGB/色差とでは全く別のゲーム機か、と思えるほどその画質の差は激しい。
■ 次回予告
次回最終回は第1回の内容に立ち戻る形になるが、PS2のハードウェア構成をより突っ込んだ形で見ていくことにする。
◎関連URL
Playstation2のホームページ
http://www.scei.co.jp/ps2/index3.html
(西川善司)
(2000/3/21)
|