西川善司の Playstation2の魅力を探る
第3回:PS2で立体音響環境を構築する
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西川善司
中学時代からコンピュータに親しみ、高校時代にはすでにライター業に手を染めていたが、大学院卒業後、日本の大企業に就職。筆者のプロフィールについては、筆者のホームページが非常に面白いので一度ご覧ください!
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今回は、ゲーム機としては世界で初めて実装された光出力端子に着目し、PS2を立体音響で楽しむための情報をご紹介する。
■ PS2の光出力端子はなんのため?
PS2の背面には光デジタル出力端子が備わっている。これは何をデジタル出力するかといえば、ずばり「音声」だ。
音声出力はお馴染みのボールペンの先のようなステレオミニプラグや、赤白のRCAピンプラグなどがお馴染みだが、これらは音声波形をアナログの電気信号で伝送する。よってケーブル自身が持つ抵抗。端子の酸化状態からくる接触問題、外界からの影響でノイズが混入しやすい。
一方、光デジタル出力端子は、音声を光の明滅によるデジタル信号で伝送するために、原理上ノイズの影響を受けないのだ。
「PS2でサウンドを録音する分けじゃないし、音質がいいだけならばそれほど魅力ないな。普通のアナログ接続でも十分だな」と思った人もいるかもしれない。ところが、PS2の光デジタル出力端子の魅力は音質がいいだけではないのだ。なんとゲーム機としてはこれまた世界初、立体音響出力に対応しているのだ。
■ PS2がサポートする立体音響とは?
「立体音響」というキーワードは非常に広い意味があるのだが、PS2が現時点で対応している立体音響は「サラウンドサウンド」という種類のものだ。サラウンド、すなわち音に「取り囲まれる」ような音響空間を表現するもので、聴者を中心とした水平方向の二次元平面上の任意の位置に音を定位することができるシステムだ。
具体的には、戦闘機が後ろから飛んできたら、聴者の後ろから音がして、自分を追い越していくと音が前へと移動していく……といった表現ができるということだ。おそらくだれでも映画館や各種テーマパークのアトラクションでそういった音響体験をしたことがあると思うが、PS2はああいったことができるというわけだ。
現在、PS2が対応しているサラウンドサウンドシステムは2つ。DolbyDigital(AC3)とDTS(Digital Theater System)がそれで、どちらも劇場用に開発されたものだ。DolbyDigitalはDVDビデオの標準フォーマットとしても採用されており、過半数の洋画タイトルがこのサウンドシステムを採用している。DTSはスピルバーグ監督の映画「ジュラシックパーク」で採用されてから、北米を中心に採用劇場が急増したシステムだ。
どちらのシステムも5.1CH方式を採用しており、以下のような構成になっている。
・前方左右(2CH)
・セリフ用中央(1CH)
・後方左右(2CH)
・重低音専用(0.1CH)
旧式のドルビーサラウンド(PRO LOGIC)のように2CHステレオにエンコードする方式ではなく、それぞれのチャンネルが1個のスピーカーを独立に駆動する方式なので、極めてはっきりした定位感と臨場感が表現できるようになっている。なお、5.1CHの音声は図のように再生されることを想定して録音されている。
DolbyDigitalとDTSの違いは、聴感上大きな違いはあまりない。強いていうならばDolbiDigitalでは5.1チャンネルの音声情報を人間の聴覚モデルを考慮した圧縮手法により本来の情報量の約1/12にまで圧縮しているが、DTSでは約1/4程度の圧縮率に控えており、より高音質ということができる(ただし実際には、そうしたスペック的な部分よりも、もともとDTSで作られている映像作品が、少ないコンバージョンでDVDビデオソフト化され、製作側の意図するサウンドがそのまま楽しめる……という「こだわり」の部分がハイエンドAVユーザの人気を呼んでいる)。
さて、上でも少し触れたが、今、手っ取り早くこのPS2の5.1CHサラウンド機能を楽しむためにはDVDビデオを再生するといい。DVDビデオソフトのパッケージの裏面に「DolbyDigital」か「DTS」のロゴが記載されていれば、そのタイトルは対応していることを意味している。
なお、勘違いしやすいのが「DolbySurround」または「DolbyProLogic」のロゴで、これらは5.1CH方式ではなく旧式を意味する。5.1CH式に対応したシステムならばこちらにも対応している場合がほとんどなので再生できなくはないが、5.1CH方式ほどのティスクリート感はない。
■ PS2で5.1CHサラウンドを楽しむために
現時点ではPS2でこの5.1CHサラウンドを楽しむには、DVDビデオの再生しか手段がないが、いずれはゲームの方でも対応してくる見込みだ。3Dシューティングやアクションアドベンチャーがこのサウンドシステムを採用したとしたら、相当リアリティ溢れる臨場感を楽しめることだろう。
さて、PS2でこのサラウンドサウンドを楽しむためにはPS2とテレビを接続しただけではだめで、サラウンドシステムに対応したサウンドシステムを用意する必要がある。
具体的には、5.1CH、すなわち6個のスピーカーを駆動するので、スピーカーが6個必要になる。また、光デジタル出力端子から出力されるデジタル音声信号をスピーカー駆動用の音声信号に変換するAVアンプも必要になってくる。
「なんだか、べらぼうに金がかかりそうな話だぞ」「6個ものスピーカーを置くスペースはうちにはないぞ」と眉間にしわを寄せはじめた人、そう結論を急がないように。最近ではPS2の発売やパソコンのDVDビデオ再生ブームに後押しされて、非常に安価なシステムや、コンパクトなシステムが数多く発売されているのだ。そのいくつかを紹介しよう。
●格安ながら本格的な5.1CHサラウンドが楽しめる
オールインワンセット
Creative Cambridge「DeskTop Theater PlayWorks 2500」 標準価格4万2800円
SoundBlasterシリーズでお馴染みのクリエイティヴ製の格安5.1CHシステム。セットにはDolbyDigitalデコーダーアンプ(DTSには未対応)、6個のスピーカー(内一個はサブウーファ)が含まれており、値段は安いが本格志向。アンプ部には光デジタル入力端子を装備しており、PS2とは光ケーブルで直接接続が可能だ。
Canon Tech AUDIO STORM 5.1 Theater 標準価格3万9800円
6個のスピーカーとAVアンプが1つになったオールインワンセット。アンプは光デジタル入力端子を装備しており、DolbyDigitalデコーダー機能を持つ(DTSには未対応)。
●省スペース型バーチャル5.1CHサラウンドシステム
SONY MDR-DS5100 標準価格5万円
ワイヤレスヘッドホンとAVアンプのセット。ヘッドホンながら、6個のスピーカーを聴者の周囲に仮想的に作り出すことで、音に取り囲まれた音響空間を作り出す。
ヘッドホンはワイヤレス仕様。ヘッドホンは単体で別売もしており(1万5000円)、これを追加すれば家族みんなで楽しむことができる。AVアンプ部は光デジタル入力端子を装備し、DolbyDigitalとDTSの両方に対応する。
I・O DATA P2DiPOLE 標準価格1万9800円(ソフトなしのSTDモデル)
東京電機大学と英国サザンブトン大学の共同研究によって開発された仮想音源技術「StereoDipole(ステレオダイポール)」テクノロジーを採用したスピーカー。このStereoDipole技術を用い、P2DiPOLEは2個のスピーカー(とサブウーファー)で5.1CHをエミュレートする。実際に音を聞いてみたがその効果はなかなかのもの。ただし、スピーカーを聴者にダイレクトに向けなければならず、スイートスポットから少しでもずれるとその効果は半減してしまう。よって大勢で楽しむことはできないが、テレビやモニタの上にちょこんと載せるだけでサラウンドが楽しめるのはうれしい。
スピーカー部にはDolbyDigitalデコーダーを内蔵(DTSには未対応)、光デジタル入力端子装備でPS2と直結が可能だ。現在、サブウーファ付きのモデルとなしのモデルが発売中だ。
YAMAHA RP-U100 標準価格6万円
パソコンとUSB接続を前提に開発されたAVアンプだが、光デジタル入力端子を装備しているためPS2とも接続が可能だ。パソコンにもPS2にもつなぎたいという欲張り派にお勧め。再生方式としては2スピーカー(+サブウーファー)でDolbyDigitalの5.1CHを再現するバーチャル方式(DTSには未対応)。なお、スピーカー、サブウーファーは別売りだ。
●本格的なサラウンドサウンドシステムを構築するならば
SONY STR-V626 標準価格5万円
DolbyDigitalとDTSの両方に対応したデジタルAVアンプ。5.1CH式をソニー独自の方式でエンハンスするDigitalCinemaSound技術を採用したハイコストパフォーマンスモデル。入力端子も豊富なので、PS2だけでなく、AVシステムの中核的な存在になり得るポテンシャルを持つ。
ヤマハ NS-P300 標準価格3万9800円
サテライト4個、センター1個、サブウーファ1個の計6個のスピーカーセット。はっきりした定位感はヤマハスピーカーのお家芸。映画だけでなく音楽を楽しむのにも適している。
■ おまけ(番外編)
「既にAVアンプは持っているんだけど光デジタル入力端子がない。うちにあるAVアンプにPS2はつながるの?」こんな疑問を持っているユーザーも多いはず。
手持ちのAVアンプに「同軸デジタル入力端子」とか「デジタル(COAXIAL)」といった端子があれば、PS2の光デジタル出力端子とは変換アダプタを介することで接続が可能だ。この変換アダプタは「光同軸変換アダプタ」という感じの名称でオーディオショップで販売されている。最近のもので比較的安価なものとしてはAudio-technicaの「AT-DSL1」がある。
なお、かりに接続できたとしても、5.1CH出力するためにはAVアンプにDolbyDigitalやDTSデコーダー機能が内蔵されていなければならない。この点は要チェックだ。
■ 次回予告
次回はPS2のインターフェイス周りについてご紹介する予定だ。
◎関連URL
Playstation2のホームページ
http://www.scei.co.jp/ps2/index3.html
(西川善司)
(2000/3/17)
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