西川善司の Playstation2の魅力を探る
第2回:PS2のDVD再生機能と画質
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西川善司
中学時代からコンピュータに親しみ、高校時代にはすでにライター業に手を染めていたが、大学院卒業後、日本の大企業に就職。筆者のプロフィールについては、筆者のホームページが非常に面白いので一度ご覧ください!
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今回はPS2のもう一つの目玉機能であるDVDビデオ再生機能とその画質について見ていくことにしよう。
■ PS2のDVDプレーヤーソフトはメモリカードに入っている
~将来的にはバージョンアップも可能!?
PS2のDVD再生機能は本体のROMに入っているものと当初予想されていたが、意外にもメモリカードに収録されていた。PS2のディスクトレイにDVDビデオディスクを入れるとこれを認識し、メモリカードに収録されているDVDプレーヤーソフトをロードし実行、再生が開始される。
DVDプレーヤーソフトがメモリカードに記録されていなかったり、メモリカードを取り外してしまっているとPS2はDVDプレーヤーとして使えないということだ。
なんだか面倒な構造に思えるかもしれないが、これは考えようによっては非常に将来性の高い仕組みだと言える。というのは、家電プレーヤーではありえない、DVDプレーヤー機能のアップグレードが行なえる可能性があるからだ。
現在DVDビデオの標準フォーマットは映像がMPEG2、音声はAC3(オプションとしてDTS)が採用されているが、今後登場するかもしれない新たなフォーマットにPS2は対応できる可能性を秘めているのだ。
最近ではDVDビデオとDVD-ROMとのミックス構造になっているソフトも増えてきており、こうした特殊フォーマットのDVDビデオが一部の家電プレーヤーが再生できない問題が発生したことがあった。記憶に新しいところでは北米で発売された「マトリックス」がそうだった。今後、万が一、PS2でそうした再生できないタイトルが出てきてしまったとしても、プレーヤーソフトのバージョンアップで対応できることになる。
また、今後、サードパーティが独自のDVDプレーヤーソフトをリリースしてくる可能性もある。パソコンで人気のWinDVDやPowerDVDなどがPS2に登場……なんてこともあるかもしれない。
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本体付属のメモリに入っているDVDプレーヤーソフトも、付属のディスクからダウンロードしたDVDプレーヤーも、バージョンはともに1.00 |
本体に付属するメモリ(8MB)とPS2の裏側が青いディスク |
■ コンポーネントAVケーブルで最高画質を得る
PS2の画質は高く、文句ないレベルだ。EE内蔵のIPUの効果もあってコマ落ちなどは一切ない。廉価版のDVDプレーヤーよりはだいぶいい画を出していると言える。解像度と発色についても上級機と渡り合える実力を感じさせる。
ただ、この高画質も、本体標準付属のコンポジットケーブルやS端子ケーブルでテレビやモニタに繋いで見ていたのでは体感できないのだ。
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別売のコンポーネントAVケーブル。標準価格2500円 |
コンポーネントAVケーブル(SCPH-10100)は、PS2になってはじめて可能になった色差映像出力機能を活用するためのケーブルだ。
映像信号と言えばパソコンユーザーにはRGBが馴染み深いが、色差信号では映像をRGBではなく「輝度」「色合い」「色の濃さ」の3つの信号で表現する。本体付属のコンポジット出力(黄色いビデオケーブル)ではこの3つの信号を混ぜて(コンポジットして)伝送してしまっているため、各信号の帯域が狭く画質が悪くなってしまっている。S端子(Sケーブル)の場合は輝度は分離しているものの「色合い」と「色の濃さ」をやはりミックスしてしまっているためコンポジットよりはマシだが、やはり画質が今一歩なのだ。
ちなみに、DVDビデオの圧縮フォーマットであるMPEG2は映像信号を色差信号レベルで圧縮している。DVDビデオの映像をピュアにテレビやモニタに伝送するためにはこの色差信号出力は最適なのだ。
実際、PS2で再生したDVDビデオの映像をこのケーブルで映したときの画質は素晴らしい。コンポジットやSではつぶれてしまうような映像の細かい部分もしっかり確認でき、DVDビデオの720x480と言う解像度をフルに実感できる。
ちなみに、このケーブルは手持ちのテレビやモニタに「コンポーネント端子」がなければ使うことはできない。コンポーネント端子ではなく「Y/Pb/Pr」あるいは「Y/Cb/Cr」という端子名になっている場合もあるがこれでもOKだ。「Y/Pb/Pr」と「Y/Cb/Cr」は信号自体は別物なのだがどちらかの記載があれば大抵は対応している。
PS2のコンポーネントAVケーブルには音声線の白(L)/赤(R)の端子も付いているが、音声をデジタルで出力している場合にはこれを接続する必要はない。
言うまでもないことかもしれないが、コンポーネントAVケーブルはDVDビデオだけでなくゲームの方も高画質になる。対応テレビを持っているひとはもはや迷う必要はなくこのケーブルを使った方がいいのだ。
ところで、PS2では標準では映像出力がRGBに設定されてしまっているので、このケーブルを接続する前に事前に、「システム設定」で映像出力方式を変更しなければならない。
■ RGBケーブル/マルチAVケーブル
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ソニー プロフィール・プロ「KX-29HV3」
標準価格28万5000円。29型スーパートリニトロン管を採用。Bi-CMOS映像プロセッサー、三次元Y/C分離回路を搭載。高画質を追求した機種で、お値段は高い。画面は4:3。12月のBSデジタル放送開始を控えたこの時期に高い4:3モニタを買うのは、ちと考えものだが…
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これは映像をRGB出力するケーブルで、なんとPS2ではPS1用のRGBケーブル(SCPH-1050)がそのまま使えてしまう。パソコンの映像は一切色のにじみがなくきめ細かいが、PS2の映像をあの画質で楽しませてくれるのがこのケーブルなのだ。
ただし、パソコンのモニタのD-Sub15ピン端子ではなく21ピン端子なので直接パソコンのモニタに接続することはできない。端子形状を変換することで、接続できなくもないが、PS2のRGB出力映像の水平同期周波数は15kHzなので多くのパソコンのモニタではこれを映し出すことはできない。
数年前までのハイエンド機のテレビにはこの21ピンRGB端子を装備されている事が多かったのだが、現在市販されているテレビでこの端子を搭載したものは非常に少ない。現在ではソニーのプロフィール・プロ・シリーズ(KX-29HV3)ぐらいだろうか。
現在ではこの21ピンRGB出力に代わるRGB出力スタイルとして、ソニーは独自に「AVマルチ入力端子」という端子を自社テレビ製品に実装しており、この端子を活用することでもRGB映像が楽しめる。ちなみに、この端子は最近のミッドレンジクラス以上のソニー製テレビには高確率で実装されているので確認してみよう。なお、AVマルチ入力端子とPS2とはソニー「マルチAVケーブル」(VMC-AVM250)を使用することになる。
さてさて、RGBで繋いだときのPS2のDVDビデオの画質だが、コンポーネントAVケーブルに優るとも劣らぬ美しさだといえる(※注)。インターレース表示になっている事を度外視すれば、最も高画質といわれているパソコン上でのDVDビデオ再生に肉薄する綺麗さだ(ソニーKX-29HV3に接続して視聴)。
PS2のGS自体はノンインターレース表示も可能なので、もし、次回のDVDプレーヤーソフトのバージョンアップがあるならば、ノンインターレース表示&プログレッシブ再生に対応して欲しいと思う。
(注)余談だが、PS2をDVDプレーヤーとしてみると、PS2は世界初のRGB出力対応のDVDプレーヤーということになる。
■ パソコンのモニタにPS2を接続するには
PS2のRGB出力は水平同期周波数が15kHzなのでそのままでは多くのパソコンのモニタに映らない。これは、パソコンのモニタの多くは、水平同期周波数は24kHz、あるいは31kHzくらいからの対応となるためだ(NEC製の一部のモニタやシャープX680x0用のディスプレイは例外的に15kHzから対応している)。また、プラズマTVや液晶プロジェクターなどの大画面システムもPC入力を持つものは多いが、その多くはやはり15kHzには対応していない。
そこで、どうしてもパソコンのモニタや大画面システムでPS2のゲームやDVDビデオを楽しみたいという人のためにお勧めしたいのが「アップスキャンコンバータ」という装置。この装置を使うと水平同期周波数15kHzのRGB映像信号を一般的なパソコンの31kHz以上のRGB映像信号に変換することができるのだ。
現在入手可能なものとしてはマイコンソフト「XRGB-2」やワカ製作所の「チョーきれいだね!」(SLPH-00016)などがある。
筆者の自宅には色差入力にもRGB入力にも対応した、ビクターの反射型液晶プロジェクタ「DLA-G10」があり、今回、これでPS2のDVDビデオ映像をXRGB-2でアップスキャンコンバートして出した場合と、コンポーネントAVケーブルで色差出力して出した場合とを見比べてみたのだが、どちらも甲乙付けがたい高画質だった(強いていえばアップスキャンした映像の方が粒状感がきつい気がしたが)。
■ 次回予告
次回はPS2の音響について見ていく予定だ。
◎関連URL
Playstation2のホームページ
http://www.scei.co.jp/ps2/index3.html
(西川善司)
(2000/3/15)
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