すでに米国で販売が始まっているHandspring社の「Visor」は、Palm OSをライセンスして作られたハンドヘルドデバイスである。このHandSpring社は、かつてのPalm Computingの創業メンバーが作った会社で、ある意味、Palmの基本思想を受け継いだ会社ともいえる。
■ サイズは、Palm III/WorkPadとほぼ同じ
今回入手したのは、USBクレイドル付きのVisor Deluxで、色はオレンジである(Visor Deluxには、Graphite、Ice、Blue、Green、Orangeの5色ある。色を見たい方はこのページ参照)。全体は、透明なプラスチックでできており、正面には色が付いているが、背面は、白みがかった透明色(ICEと呼ばれる)のプラスチックでできている。また、本体には、取り外し可能なICE色のカバーが付属しており、これを装着することで、液晶保護や移動中に誤ってボタンが押されることなどを防ぐようになっている。また、このカバーは、Visor使用中には裏側に装着できるようになっている。カバー自体は、押されてへこまないように円筒を切り取ったように全体がカーブしている。このためか、背面に付けたときに、テーブルの上に置いてもぐらぐらしないように四隅に足(ちいさな出っ張り)が付いている。なお、本体には、このカバーを付けた状態で装着できるソフトケースが付属している。
背面には、Visor独自のSpringboardと呼ばれる拡張スロットと電池ケース(単4電池2本)がある。このため、IrDAインターフェイスは、本体左側面に設置されている。
液晶ディスプレイ部は、Graffitiエリアを含めて、Palm IIIなどとほぼ同じ大きさになっているが、液晶自体は、Palm VやWorkPad c3などに使われているものとほぼ同じ視認性の高いもののようである。
ペンは、本体右側に装着されているが、感じとしては、Pilot~Palm Pilotの頃のプラスチックモールドのペンに似ている。また、これらと同じく、リセット用ピンも内蔵されていないため、クリップなどを持ち歩く必要がある。このリセットだが、Palm IIIなどより深い所にあるため、Palm IIIのペンに内蔵されているリセットピンでは、リセットボタンまで届かなかった。
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左からWorkPad 30J、Visor、WorkPad c3 |
Visorの背面。背面色はice。上部にSpringboardスロットがある |
Visorの側面。スタイラスペンは側面に装着 |
■ クレイドルはUSB接続
最近のPCはほとんどのものがUSBインターフェイスを装備しているため、Visorの標準のクレイドルはUSB接続になっている。なお、オプションにて、シリアルクレイドルも販売されており、USBが利用できない環境(たとえばWindows NTやUnix系での利用など)にも対応可能だ。
クレイドルは、やはりICE色で、ケーブルも透明なもの。クレイドル自体は、上から見ると楕円を短径方向で切断したような形で、後ろ側に大きく張り出す形状。ケースが透明なので中が丸見えだが、コネクタ付近に部品があるだけで、ほとんど中身は空のようである。
なお、本体とクレイドルの接続部分は、やはりVisor独自の形状で、カバーがなく、本体側は端子が露出している構造である。ただし、前述のカバーは、ここを完全にではないが覆うようになっているので、多少は保護されるだろう。
この端子の両側には穴があり、クレイドル側の出っ張りを使って、位置を固定するようだ。また、電池ボックスとSpringboardスロットの間に小さな穴があり、ここにクレイドルにある出っ張りを引っかけ、Visor全体を固定するようである。
USBでの接続であるが、Windows 98 Second Editonで見たところ、固定的にシリアルインターフェイスとして見えるものではなく、Visorを載せてホットシンクさせたときにデバイスとして認識されるもののようである。このため、普段は、デバイスマネージャにクレイドルに対応するデバイスは表示されていない。
PC側のソフトウェアは、Palm Desktopが使われており、ホットシンクマネージャが、USBデバイスを認識する以外は、現行のPalm Desktopとほぼ同等のようである。
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Visorの赤外線インターフェイス部 |
Visor本体のクレイドル接続端子部 |
Visorのクレイドル。色は本体背面と同じice |
■ 内蔵ソフトは若干強化
標準内蔵のアプリケーションは、Palm IIIxなどと同等なものに加え、独自のものがいくつか追加されている。たとえば、標準のDateBookに加え、ToDo表示なとが可能なDateBook+もROMに入っているほか、世界時計とローカル時間の切り替えを行なうCityTimeというアプリケーションが付属している。また、標準付属のCalc(電卓)は、関数電卓モードが追加されており、数学、金融、統計計算や、コンピュータ用の2進、16進計算、単位変換などが可能だ。
このほかの主要なアプリケーションについては、ほぼ、Palm IIIあたりと同等なようである。Palm OSとしてはVer.3.1相当であるようだ。本体メモリは8MB内蔵されている。
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標準アプリのCALCは関数計算電卓機能も備える |
世界時計とローカル時間表示を切りかえるCityTime |
■ Springboard
Visorの目玉であるSpringboardは、PCカードの上1/3ぐらいを切り取ったサイズのカードで、厚さは、7.5mm(Type1カードの2倍弱)程度のもの。全体がプラスチックで覆われており、カード側のコネクタはPCカード同様、直接端子が露出しないようになっている。現在のところ、8MBのフラッシュカードやバックアップカードなどが販売されており、モデムカードなどが来年出荷予定である。
このSpringboard用のカードには、あらかじめ、環境設定やアプリケーションが組み込まれており、装着するとそれらがアプリケーションとして組み込まれ、自動的にスタートする。たとえば、Backupカードの場合、装着するとメモリ内容をバックアップ、レストアする“Backup”というアプリケーションが自動的に立ち上がり、カードを外すと、このアプリケーションが削除される。こういった仕組みがあるため、基本的にはユーザーがドライバを組み込むなどの作業は不要である。ただし、Visor独自の仕様であり、その分、汎用的なCFやPCカードに比べるとデバイスが高価になる(たとえば、8MBのフラッシュカードで79.95ドル。1ドル=110円として換算しても8,800円弱。32MBの汎用CFフラッシュカードが買えそうな金額である)。
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Springboard用カードとPCカード |
Springboard用カードとPCカード |
Springboard用カード。左がBackUpカード、右が8MBフラッシュカード |
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Visor本体のSpringboardスロットにカードを装着したところ |
Springboard用カードの端子部 |
Visor本体のSpringboardスロット端子部 |
◎関連URL
Handspringのホームページ
http://www.handspring.com/
■お詫びと訂正
前回の週刊Palm通信「Palmシリーズは、どのように電力を消費しているのか?」で、大チョンボしてしまいました。簡単にいうと、1.2V、600mAhのNi-MH電池を直列につなぐと2.4V 600mAhになります。つまり、計算式を間違っちゃったのです。いくつかのご指摘をいただきました。皆様、ご指摘どうもありがとうございます。考えてみれば、小学生のような問題(電池の直列と並列)を間違っちゃって、大変ハズカシイ思いをしております。それで、前回の記事を以下のように訂正させていただきます。
【原文】
■ 動作パターンから電池寿命を推定する
話をわかりやすくするために、600mAhのNi-MH電池を使っているとしよう。電池2本で、2.4V、1200mAhの容量になる。電源オフの状態では、以下の通りで、210日程度――7カ月以上持つ計算になる。
1200mAh×2.4V÷(190μA×3V)≒5053h≒211日
【訂正】
■ 動作パターンから電池寿命を推定する
話をわかりやすくするために、600mAhのNi-MH電池を使っているとしよう。電池2本で、2.4V、600mAhの容量になる。電源オフの状態では、以下の通りで、105日程度――3カ月以上持つ計算になる。
600mAh×2.4V÷(190μA×3V)≒2526h≒105日
【原文】
1200mAh×2.4V÷((40mA×15min/day+62mA×3min/day+36mA×3min/day)÷60min/h×3V)
≒63day≒2.1month
なお、単4型アルカリ乾電池では、1本あたり1000mAh程度に相当する(Ni-CdやNi-MHは、電圧降下が小さく、寿命直前で急に落ちるのに対して、アルカリ乾電池は、電力消費に応じて電圧が下がるという特性の違いから、こうした表記はしないのだが、無理矢理に換算するとこの程度という意味である)ので、もう少し持つはずである。計算上では、105日、約3.5カ月となる。
【訂正】
600mAh×2.4V÷((40mA×15min/day+62mA×3min/day+36mA×3min/day)÷60min/h×3V)
≒31day≒1month
なお、単4型アルカリ乾電池では、1本あたり1000mAh程度に相当する(Ni-CdやNi-MHは、電圧降下が小さく、寿命直前で急に落ちるのに対して、アルカリ乾電池は、電力消費に応じて電圧が下がるという特性の違いから、こうした表記はしないのだが、無理矢理に換算するとこの程度という意味である)ので、もう少し持つはずである。計算上では、52日、約1.7カ月となる。
【原文】
電池の状態や個々のばらつきなどを勘案し、確実な線として前記数値の半分ぐらいを妥当なものとすると、アルカリ乾電池で約1.7カ月、600mAhのNi-MH電池で1カ月程度となる。IBMのカタログなどでも、アルカリ乾電池で「約2カ月」となっているので、ほぼこれにあった値だと思う。
【訂正】
電池の状態や個々のばらつきなどを勘案し、確実な線として前記数値の半分ぐらいを妥当なものとすると、アルカリ乾電池で約26日、600mAhのNi-MH電池で15日程度となる。IBMのカタログなどでは、アルカリ乾電池で「約2カ月」となっているが、これは条件が違うためだと思われる。
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WorkPad製品情報(日本IBM)
http://www.ibm.co.jp/pc/workpad/index.html
Palm Computingのホームページ
http://www.palm-japan.com/home.html
(塩田紳ニ)
1999/12/16
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