■ はじめに
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IBM WorkPad c3
厚み11.35mm、重量119g。ワイシャツのポケットに入るサイズと重量、アプリケーションの軽快な動作がPalmシリーズの特長だ
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今週から、このMobile Centralの週刊Palm通信を担当させていただくことになった。Palmシリーズは、Professionalからのユーザーで、いまではWorkPad日本語版を日常的に利用している。もともと、こういう小さい機械は嫌いではなく、ザウルス以前の電子手帳や、ソニーのPalmTop、HP 95/100LXなどを経て、現在は、WorkPadを日常的に利用するに至っている。このほか、Windows CEのPalm-Size PCなども持っているので、機会があれば、それらとの比較などにも触れたいと考えている。
さて、本ページの読者の方は、すでにPalm/PilotやWorkPadのユーザーである方も少なくないと思うのだが、まだ購入をためらっている(あるいは興味もない?)方も多いことと思う。そこで、第1回目となる今回は、このPalm OSを搭載した『Palmシリーズ』と総称されるPDAの概略をご紹介していきたい。
■ どこがいいの?
最初から、ハードやソフトを解説するより、雰囲気的なところをお伝えしておきたいと思う(カタログ的な紹介については、記事末のリンクを参照)。Palmシリーズのいいところは、まず、小さく軽いこと、そして、その割には能力が高く、しかも、PCと簡単に連携できることだ。
処理速度は、標準のアプリケーションに関していえば、イライラ待たされるようなことはない。従来の電子手帳的な製品では、電池が半年以上もつ代わりに、反応が悪く、大量のデータを入れると、ちょっとイライラすることがあった。Palmシリーズでは、こうしたことはほとんどないため、情報を見るのはもちろん、手軽に入力できる。
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Graffitiは、認識率を上げるために、通常のアルファベットを一筆書きにしたもの
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この「手軽に入力できる」というのが、PDAでは大きな違いを生む。というのは、ちょっとしたメモに使えるかどうかで、使い方が全く変わってくるからだ。そして、手軽に入力できるためには、それなりの反応速度が必要だ。もちろん日本語を使うのだから、かな漢字変換も行なっての上での話である。
Palmシリーズでは、Graffiti(グラフィティ)と呼ばれる、特殊な書法でアルファベットを入力する。特殊といっても、普通のアルファベットの書き方とあまり変わらない。もっともGraffitiは簡単に覚えられるし、別の方法で入力することもできるので、それほど心配される必要はないと思う。
もう1つの利点であるPCとの接続だが、これは製品パッケージに、PC上で動かすソフトウェアPalm Desktopと、接続用のクレードル(Cradle、ゆりかご。ここでは置き台のこと)が同梱されていて、基本的にはPCと連携して使うようになっている(Macintoshとの接続ソフトはオプション)。Palm Desktopは、Palmシリーズ本体内蔵の住所録や予定表などと同じ機能に加えて、Palmシリーズと接続して「HotSync(ホットシンク)」する機能を持つ。HotSyncすることにより、PC上のデータとPalmシリーズ内のデータの同期を取り、同じ状態にできる。またこのとき、メモリのバックアップも行なわれる。
これはどういうことかというと、住所録や予定表は、PCの上で編集しても、Palmシリーズの上で編集しても、HotSyncするだけで、それぞれの変更を反映してくれるため、同じ状態に両者が保たれる。このためユーザーは、どちらでどう変更したのか、何を追加したのかを覚えておく必要はなく、単に、HotSyncするだけで良い。これも、従来のPDAとはちょっと違うポイントだ。
従来のPDAは独立した存在で、PCと通信して、ファイル交換やデータの転送は可能だったが、たとえば、PC側とPDA側の両方を操作しなけれはならないなど、あくまでも「特別な」作業だった。しかし、HotSyncはPC側でソフトが動いていれば、単にCradleのボタンを押すだけで、自動的に開始、終了する。
最後に、Palmシリーズの大きさについて。簡単にいえば、ワイシャツのポケットにも入る大きさと重量だ。このため、上着のポケットなどに入れても気にならない。PDAの場合、大きさ、重さは、重要な要素となる。ポケットに入らないようなサイズのものは、どんなに高性能でもやはり持ち歩きが不便に感じる。その点、Palmシリーズなら四六時中持っていることが可能だ。筆者の場合は仕事がら、家でのんびりしている時間にも携帯電話などで、いきなり仕事の依頼が入ってくることもある。そんな時のためにWorkpadを常に身につけるようにしている。
そんなに小さいのなら、大したことはできないだろうと思われるかもしれない。しかし、Palmシリーズには多くのアプリケーションがあり、これらを利用することで、メールの送受信やWebブラウズなどもできるようになる。また、ちょっとしたゲームもあり、電車の待ち時間などに遊ぶこともできる。大量の文章を打ち込む用途には向いていないが(もっとも周辺機器にはブラインドタッチが十分できる大きさのキーボードもあるが、これは持ち歩きには向かない)、ちょっとしたことなら、すべてこのPalmシリーズで行なうことが可能だ。
また、周辺装置やケースといったアクセサリが非常に多く発売されているというメリットもある。これは、世界でNo.1シェアのPDAならではのメリットといえるだろう。国内でも、携帯電話やPHSと接続するためのアダプタや増設メモリなど、国産の周辺機器も増えてきている。
■ Palmシリーズとは?
Palmシリーズと呼ばれるPDAの最初の製品は、モデムメーカーとして有名だったUS Robotics社のPilotという機種に始まる。このUS Robotics社は、その後ネットワーク製品の会社である3Comに買収され、現在では、3Com社の製品となっている(なお現在、3Com社のPalm関連部門PalmComputingは、3Comから分社する予定であることが発表されている)。
最初の機種がPilot 1000/5000、次の機種がPalmPilot Personalと同Professional。それ以降は、Palm III、Palm V、Palm VIIと、単に“Palm”と番号の組み合わせとなっている。このように、いままでの機種名がPalmとPilotの組み合わせの名称になっていたので、これらを総称する場合に「Palm/Pilot」と表記することも多いようだ。
また、現在この製品は、IBMにOEMされており、IBMではこれを「WorkPad」と呼んでいる。IBM版では、筐体色は黒に変更されており、IBMロゴが入っているが、基本的には、Palm Computing版のPalmシリーズと同等なものだ。国内では、日本IBM扱いのWorkPad(8602-30J。本連載では単にWorkPadと略すが、日本語版であることを区別する場合にはWorkPad Jとする)とWorkPad c3(8602-40J。こちらも日本語版を区別する場合にはWorkPad c3Jとする)が販売されている。
英語版のPalmシリーズも個人輸入やPDAに強いショップなどで入手可能ではあるが、WorkPad/WorkPad c3はパソコンショップだけでなく、家電量販店など多くの店舗で販売されている。またWorkPad/WorkPad c3では日本語版Palm OSが搭載されており、ユーザー側でソフトの追加などをしなくても日本語が使えるため、本連載では、基本的にWorkPad日本語版をベースにご紹介していくことにする。
なお、Palm Computing創業者メンバーが設立したHandSpringという会社が、Palm OSを搭載した「Visor」というPDAを近く米国向けに出荷開始する(日本語国内での発売は2000年春頃が予定されている)。こちらも入手でき次第、本連載で扱っていきたいと思っている。
■ Palmシリーズのハードウェア
Palmシリーズは、モトローラ製の「Dragon Ball」と呼ばれる68000系のワンチップCPUをベースにしている(Palm III以降は、改良版のEZ Dragon Ballが使われている)。160×160ドットの感圧式タッチタブレット付き液晶と4つのアプリケーションボタン、上下スクロールボタンを持ち、PalmPilot以降の機種では、バックライトも装備されている。電源はこれまでずっと単4乾電池2本だったが、Palm V/WorkPad c3など最新の機種では本体が薄いために付属のクレードルで充電する充電池が採用されている。パソコンとの接続には、本体下部にあるシリアルコネクタを使い、また、Palm III以降の機種では赤外線インターフェイスが装備されている。
メモリ容量は、WorkPadで4MB、WorkPad c3で2MBなど、機種によって違いがある。メモリ増設のできるスロットを搭載している機種では、サードパーティの拡張メモリを装着して、メモリ容量を8MBまで増やすことも簡単にできる。ちなみにスロットのない機種でも、一部のショップでメモリ換装のサービスやメモリ換装後の製品を販売したりしているのでメモリ増設が不可能というわけではない。
Palmシリーズは小さい機械ながら、ハードウェアのアップグレードも行なわれてきている。旧機種であるPalmPilotシリーズでも、Upgrade Memory Cardを装備すると、赤外線インターフェイスも追加され、ソフトウェア的にPalm IIIと同等のハードウェアになる。
■Palmシリーズのソフトウェア
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標準で組み込まれているアプリケーション。アイコンの上をタップすると素早く立ちあがる
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Palmシリーズには、Palm OSと呼ばれるOSが搭載されており、その上で、住所録やスケジュール管理ソフトが動作している。PDAとして利用している範囲では、このPalm OS自体を見たりすることはできない。ただし、Palm用のソフト開発ツール(SDK―Software Development Kit)が無償で配布されており、これを使うことで誰でもアプリケーション(Palmwareと呼ばれます)を作ることができる。
Palmシリーズの基本コンセプトは「Connected Organizer」で、つまり、PCと接続して連動することを前提にしたPDAだ。接続には、付属のPalm DesktopとHotSyncマネージャを使うが、この接続機能についても、仕様が公開されており、他のソフトウェアと同期させることも不可能ではない。PCのOutlookやLotus Organaizerなどとデータを同期するためのソフトパッケージも市販されている。
標準で組み込まれているアプリケーションには、予定、アドレス、メモ、To Do、支払いメモ、電卓、メールおよび環境設定などがある。また、付属のCD-ROMには、英和、和英辞典(日本IBM版Workpadに付属)やゲームなどがあり、PC経由でインストールすることができる。
このほか、アプリケーション全体を通しての検索機能もあり、メモでも予定でもどこかに書いた単語を探すことが可能だ。
なお、Palmシリーズでは、日本語版Palm OSを搭載している日本IBMのWorkPadとWorkPad c3の2機種以外は、すべて英語版となる。ただしこれらの英語版の機種でも、山田氏の開発したJ-OSにより、英語版のPalmシリーズでも日本語を使うことができる。
次回は、付属アプリケーションやPalm DeskTopなどについて解説していくことにしたい。
Palm ちょっといいもの 「LandWare社 GoVox」 |
このコーナーでは、Palmシリーズ用の周辺装置やアクセサリなどについて毎回簡単にご紹介していく。
Go Voxは、Palm IIIシリーズ/WorkPad対応(WorkPad c3には非対応)の、液晶保護用のフリップ部と交換して使うデジタルレコーダーだ。国内の実売価格は6800円ていど。合計で8分もしくは99件の録音が可能で、両手が使えない(ペンで書き込みもできない)ときに、録音ボタンを押すだけで、簡単に音声メモが録音できる。残念ながら、音質は「良い」と言えるほどではない。ハーフレートのデジタル携帯電話よりはマシだが、デジタル特有のノイズが乗り、受信状態の良いAMラジオに劣るという程度。ただ、マイクの感度は悪くない。静かなところならば、2~3m離れていても話し声を拾うことができる。
Windows CEやPSIONなどは、標準でこうした音声メモ機能を持っているが、Palmシリーズは録音機能を持たないため、いままで音声メモがとれないのが個人的にはちょっと残念だった。これを入手して以来、カバーを付け替えて常に持っている。ただ残念なことに、持ち歩き始めてから、メモしないと忘れてしまうようないいアイディアが何も浮かばない。しかたがないので、時々「ダイアン」と呼びかけてTwinPeeksごっこをして遊ぶぐらいしか使っていない……。
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■参考資料:これまでに発売されたPalmシリーズ
今後、さまざまなPalmシリーズ製品について触れることになるため、表記と簡単な違いを以下にまとめておく。
Palm IIIとPalm VIIは本体下部の構造が似ている。また、Palm IIIとPilot型は似ているが、若干Pilot型が大きく、Palm III用のものを装着すると取り外しにくくなる。また、Palm V型は、シリアルコネクタ形状が異なる。
筐体形状 | 機種名 | PalmOS | 備考 |
pilot型 |
Pilot 1000 | 1.0 | メモリ128KB |
Pilot 5000 | 1.0 | メモリ512KB |
PalmPilot Personal | 2.0 | バックライト |
PalmPilot Professional | 2.0Pro | バックライト、TCP/IP |
WorkPad 8602-10U | 2.0Pro | PalmPilot ProfessionalのIBM版 |
PalmIII型 |
PalmIII | 3.0 | メモリ2MB |
WorkPad 8602-20X | 3.0 | PalmIIIのIBM版 |
PalmIIIx | 3.1 | メモリ4MB、CPU変更 |
PalmIIIe | 3.1 | PalmIIIx低価格版。メモリ2MB |
WorkPad 8602-30X | 3.1 | PalmIIIxのIBM版 |
WorkPad 8602-30J | 3.1J | 8602-30Xの日本語版 |
PalmV型 |
PalmV | 3.1 | IIIx匡体のコンパクト化 |
WorkPad c3 8602-40U | 3.1 | PalmVのIBM版 |
WorkPad c3 8602-40J | 3.1J | 8602-40Uの日本語版 |
PalmVx | 3.3 | PalmVの強化版。メモリ8MB |
PalmVII型 | Palm VII | 3.2 | 無線通信機能付き |
◎関連URL
■WorkPad製品情報(日本IBM)
http://www.ibm.co.jp/pc/workpad/index.html
■PalmComputingのホームページ
http://www.palm-japan.com/home.html
(塩田紳ニ)
1999/10/07
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