■ 1999年春モデルは粒ぞろい
1999年のデジカメを振り返ってみると、200万画素モデルが花開くと同時に、130~150万画素モデルも正常進化した年だったように思う。
当初、CCDの画素数アップで画素サイズが小さくなることにより、感度やS/N、レスポンスが低下することが懸念されたが、蓋を開けてみると1998年の130~150万画素モデルよりも軽快で、感度やS/Nの低下もほとんど問題ない範囲に収まっていた。
しかも、OLYMPUS C-2000ZOOMやNikon COOLPIX950に代表されるように、絞り優先AEやシャッター優先AEといった写真表現のための機能を搭載したデジカメが早くから発売され、お手軽簡単フルオートのコンパクトカメラにモノ足りなさを感じていたユーザーは、待ってましたとばかりに飛びついた。
また、SONY Cyber-shot DSC-F55KやFUJI FinePix2700といったコンパクトでスタイリッシュな200万画素単焦点も人気を集めた。消去法の選択肢しかなかった1998年秋冬モデルに比べると、1999年春モデルは粒ぞろいが多く、夏のボーナス商戦を待たずして200万画素モデルは好調なスタートを切った。
ところが、夏のボーナス商戦に突入しても、好調なのは先陣を切って発売されたモデルばかり。それ以外の200万画素モデルは泣かず飛ばずで、特に、Cyber-shot DSC-F55Kを除く200万画素単焦点モデルは、急激に実売価格を落としていったのが印象的だった。むしろ、FUJI FinePix1500やSANYO DSC-SX150といった、お手ごろ価格でコンパクト、そして色がキレイな130~150万画素モデルに人気が集まり、200万画素未満のデジカメでも作り方によってはしっかり売れることが証明された。
■ 空前の新製品ラッシュ
夏休みが終わると、空前の新製品ラッシュが巻き起こった。FUJI FinePix1700Z、OLYMPUS C-2500L、SONY Cyber-shot DSC-F505K、CASIO QV-8000SX/QV-2000UX、Kodak DC290ZOOM、Nikon COOLPIX800、Canon PowerShot S10、OLYMPUS C-2020ZOOM/C-920ZOOM、FUJI Princam PR21など、わずか1カ月余の間に10機種を超える新製品が発表されたのだ。
これほどの短期間にこれだけの新製品が発表されたのはおそらく初めてではないだろうか? しかも、SONY Cyber-shot DSC-F505KやCASIO QV-8000SXのようにこれまでになかった斬新なスタイルとスペックのデジカメをはじめ、150万画素ズームの決定版のFUJI FinePix1700Z、大ベストセラーの後継機C-2020ZOOM、世界初プリンター内蔵デジカメFUJI Princamなど、話題性・注目度の高いモデルが多く、筆者のカバンにはサンプル画像を撮影するためのデジカメが常時8~10台入っているという状況だった(おまけにNikon D1という超ド級デジカメも含まれていたのでもう地獄 ^^; )。
こうして1年を振り返ってみると、1999年のデジカメはずいぶんカメラとしてまともになってきたと思う。35mm一眼レフカメラと比べるのはまだまだ無理があるとしても、少なくともお手軽コンパクトカメラ以上の表現力を備えつつあることだけは確かで、サービスサイズないしキャビネサイズプリントなら、十分銀塩フィルムの代わりに使えるレベルになってきたと言っても過言ではないだろう。
■ 1999年のデジカメ・マイベスト5
ちなみに、1999年に発売されたデジカメ・マイベスト5は以下の通りだ。
なんと1位と2位は150万画素モデルになってしまったが、これは発色の美しさと華やかさに魅力を感じたのが大きな理由。見た目以上に鮮やかな発色をする銀塩に比べると、デジカメからのプリントは彩度が低めで華やかさに欠ける傾向があるが、この2機種は銀塩に匹敵する鮮やかなプリントが得られるのだ。
銀塩とまったく同じ特性をデジカメに求める必要があるかどうか、人によって意見はさまざまだが、筆者は「見た目に忠実」よりも「きれいで華やか」な描写をするデジカメが好きだ。少なくとも「撮ってポン」のお手軽コンパクトはレタッチを施さずともきれいに写るのが必須条件だと思う。
3位のOLYMPUS C-2020ZOOMと4位のCOOLPIX950を選んだのは、絞りやシャッタースピードをコントロールできる自由を備えているからで、さまざまな作画を楽しめるからだ。色再現に関してはまだまだ改良の余地はあるが、200万画素ならではの細微描写力はさすがだ。
5位のKodak DC290ZOOMは、艶やかな発色と長時間露出が魅力。ただし、レスポンスが遅く、価格も高く、ボディも大きいので、決して万人に勧められるモデルではないが、このカメラでないと撮れない何かがあるのも事実だ。
このほか選には漏れたが、SONY Cyber-shot DSC-F505KやCASIO QV-8000SXも高倍率ズームを利用して、他のデジカメでは撮れない絵を撮れるので気に入っているし、FUJI Princamも撮ったその場でプリントを渡せるので、宴会やパーティには欠かせないデジカメだ(できればカメラ機能を取り外して汎用のPCMCIA TypeIIスロット内蔵プリンタを出して欲しいぞ。チェキのフィルムで貢ぎ返すことになるんだからできるだけ価格を抑えてネ)。
■2000年のデジカメはどう進化していくか?
それでは2000年のデジカメはどう進化していくのだろうか? これまでの各社の新製品発表のタイミングを振り返ってみると、ほぼ毎年同じ時期に新製品を発表していることがわかる。したがって、2000年も1月下旬から2月にかけて、主力メーカーから新製品が発表されることだろう。
問題はどんなデジカメが発表されるかだ。噂では300万画素とも400万画素(相当)になるとも言われているが、失うモノがなければ画素数アップは大歓迎だ。感度やS/N、レスポンスが低下せず、価格も大幅アップしないのであればなにも文句はない。
200万画素モデルが予想以上の仕上がりを見せたように、300万画素、400万画素になっても実用的な画質やレスポンスが保てるかもしれないからだ。300万画素にもなればA4サイズに伸ばしてもシャキッとシャープなプリントが得られるし、そんなに巨大な画像は稀にしか必要としない場合には、解像度を落として記録するモードを選べばいい。
画素に余裕が出てくれば、デジタルズームでも実用的な画質になるので、明るい単焦点レンズ+デジタルズームというコンパクトモデルも考えられる。
もちろん、原理的に言えば、CCDのサイズを変えずに画素数をアップすれば、感度やS/Nは悪くなるし、カメラの処理速度を向上させなければ画素数が増えた分だけレスポンスも低下するわけで、そのギャップをどれだけ埋めてくるかが、メーカーの腕の見せ所だ。
今までもそうだが、CCDの画素数だけに目を奪われずに、実際の写りを自分の目で見て画質を判断することが大切だ。これから21世紀にかけてどれだけデジカメが進歩するのか、しっかり見極めていきたいものだ。
(伊達淳一)
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1999/12/27
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