第4回:IMT-2000夢紀行 Part4: 2010年移動通信業界動向
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■ アシスタントパッド販売店で
ショッピングセンター内を歩いていたら、アシスタントパッドを販売しているお店があった。いろいろな会社の製品が置いてある。2010年になっても依然としてPanasonicやNECの製品の売場面積が広く、相変わらず小型・軽量化競争をしているらしい。注意して見ると、端末のどこにもドコモやIDO、J-Phoneの文字がない。
売り場にはアシスタントパッドだけでなく、電車の中で見かけたスポーツタイプのサングラスも売っている。商品説明を読むと、ヘッドマウントディスプレイのようなものだが『左右別々に投影でき立体映像を見ることが可能』となっている。電車内でこのサングラスをかけていた人たちは、ビデオを見ていたようだ。
店内の一隅に設けられたコーナーに、ドコモやJ-Phoneのロゴを見つけた。ほかに、見たことも聞いたこともない会社名もある。各社ともアシスタントパッドの宣伝も料金値下げの宣伝もない。その一方で、バスや電車の料金を始めとして、アシスタントパッドを利用して料金支払できるレストランン/施設/サービス等のリストが掲示してある。アミューズメントパークをみるとディズニーランドだけでなくユニバーサルスタジオもある。ユニバーサルスタジオが日本にできるとは聞いていたが、2010年にはすでにできているらしい。
さて、それぞれのメニューには割引率/割引額が書いてあって、他事業者と競っている。ほとんどクレジットカードのコマーシャルと同じノリだ。クレジットカード会社が移動通信事業者に吸収されたのではないかという気がしてきた。クレジットカード会社が存続しているか疑問だ。
また、自社のネットワークを利用したサービスも競っている。iモードサービスと似ているが、単なるテキストでなく音楽やビデオ、写真などのマルチメディアコンテンツが中心だ。とはいえ、テキスト主体のニュースや小説もある。先程のカップルが話していた青川二郎の話はこの事だろう。
展示のアシスタントパッドを見ると、エージェントのダウンロードサービスがある。先程のお年寄りのアシスタントパッドに写っていた人間のことらしい。個人秘書的なエージェントで今日のスケージュールの読み上げや着信メールの読み上げやリプライ、チケットの購入、はては病院の予約までしてくれるとある。エージェントのリストは、聞いたことのない名前ばかりだが、その多くがアイドルのようだ。中にはオードリー・ヘップバーンのように往年の名女優の顔もある。同じ話し相手なら、自分の好きなアイドルや俳優をということらしい。着メロのようにAPにダウンロードして利用するようだ。
アシスタントパッドのエージェントがニュースを読み上げ始めた。BTドコモがクレジットカード会社のIBCを買収したと言っている。先程の直観が本当になってしまった。でもニュースの内容がちょっと変だ。ドコモはNTTドコモだったはずだ。BTドコモって何だ。また、クレジットカード会社のことをJCBでなくIBCといっていた。なんか変だ。確かにドコモのロゴをみると「NTT」の文字がなくて、代わりに「BT」の文字がある。ドコモはBTと手を握ったのだろうか……。
ひょっとすると、オイラが生活していた世界の2010年でなく、似ているが別の世界の2010年に来てしまったのかもしれない。そうだとすると、JCBでなくIBCであってもおかしくない。おそるおそる店内を見回すと、 “J-Phone”ではなく“I-Phone”だし、“Panasonic”と思ったのは“Panasanic”だ。でも“NEC”は“NEC”だ。駅名はほとんどオイラの記憶といっしょだ。すべてがオイラの生まれた世界と無関係というわけではなさそうだ。
■ 肉逃げて、気がつけば1999 年
「とんでもない世界に来てしまった」とボーゼンとしながら隣を見たら、グーフィが空腹のあまり座り込んでいる。その様子を見たらオイラも強烈な空腹感と睡魔に襲われた。オイラはたまらずグーフィに持たれかかるように倒れ込んでしまった。同時に意識もスーっと彼方に飛んでい……。
気がついたらステーキハウスの前にいる。なぜか、オイラもアシスタントパッドを持っている。これがあれば猫のオイラでも注文できるということで、グーフィと中に入ることにした。邪魔する人はおらず、ヒューマノイドのウェイトレスが席に案内してくれた。メニューを見ながら、どうやって注文するんだろうと悩んでいたら、アシスタントパッドがピッとなりメニューが表示されているではないか。
あとは好きなメニューを選ぶだけだ。オイラ達はぶ厚いステーキをオーダした。生肉がないので、焼き具合はレアだ。
いまかいまかと待っていたら、肉汁をジュージューさせながら出てきた。先ほどのウェイトレスヒューマノイドがステーキを席に置くやいなや、自分が猫舌だということを忘れてかぶりついた。「アウチっ」と言って肉を離したら、突然ステーキに足がはえて逃げ出した。グーフィのステーキも同じように駆け出している。
「待てぇー!」と追いかけようとして、ガバっと目が覚めた。隣をみるとグーフィも起きている。日が暮れかけ、寒くなってきた。なにより、腹の虫がグーグー鳴いておさまらないので、帰ることにした。
「何か夢をみたか? どうせ、晩飯の夢でも見ていたんだろう。ステーキが逃げ出して、目が覚めたんじゃないのか?」と聞くと、
「2010年に行ってたんだ。2010年までの間に東海大地震があってYRP野比駅も建て直されていた。今はほとんどの人が携帯電話を持っているけど、2010年はアシスタントパッドという端末を持ち歩きながらマルチメディアを楽しんでいたよ」と言うではないか。オイラの見た夢といっしょだ。二匹して同じ夢を見るなんて不思議だ。
それにしても、やけにリアリティーのある夢だった。寝込む前に、ドコモの研究所で2010年のイメージビデオを見たせいだろう。でもドコモのビデオとオイラの夢は似ているようで違っていた。ドコモのビデオではテレビ電話がサービスの中心だったが、一度もテレビ電話している人を見かけなかった。電話としての使い方は今と同じだ。プロモーションビデオではさりげなく登場していたビデオを見たり、音楽を聴くのがほとんどでたまにエージェントに何か頼み事をするというのが中心だった。セルラーホンが完全にクレジットカードとして使われていたのにはビックリした。
オイラ達だけではバスに乗れない。「アシスタントパッドがあったらなー」と思いつつ、とぼとぼ歩いて帰った。途中 、なにか変わっている所がないか気になったが、すべては元のままだ。野比駅でグーフィと別れた。
家に着くとマムが抱き上げてくれて「どこにいってたの、心配したのよ」と言ったので、「ゴロ、ニャン」と鳴いて、マムのほっぺたをひとなめした。
「お腹空いたでしょう。晩ごはん、出来ているわよ」と言って、ご馳走を出してくれた。我家は良いもんだ。人間だったら、ここでひと風呂あびて、その後ビールをグイーッとやるところだ。
オイラは猫なので、おいしい夕食を食べて寝ることにした。また、2010年にワープするんじゃないかと不安だったが、マムの膝の上でまどろんでいるような気がしながら、意識が遠のいていった。
◎関連URL
■横須賀リサーチパーク(YRP)のホームページ
http://www.yrp.co.jp/
(Felix Mobile)
2000/01/14
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