My name is Felix Mobile, "Mya-Oo".
そう、オイラは何を隠そうアメリカ育ちの由緒正しいシャム猫だ。オイラのご主人様は、70過ぎのお婆さんでハズバンドと二人は長らくアメリカのシリコンバレーにあるLos Gatosと言う町に住んでいた。Los Gatosは小さな町だが、おしゃれなお店が多い。美味しいレストランもいくつかある。
当然、シリコンバレーであるから、郊外にコンピュータ関係のハイテク企業もある。マムのハズバンドは、ハイテクベンチャーに投資して収入を稼いでいた。投資の中心は、モバイルコンピューティング関連企業だった。その1つが、Ricochetと言うシステムを利用したワイヤレスパケットサービスを提供しているMetricom社で、オイラの自宅の近くにある。
てな訳で、オイラはアメリカのモバイルコンピューティングに精通しているんだ。溢れる程開催されているトレードショーでいいかげんなことを言っている連中よりよっぽど詳しい。
ところが、去年、マムのハズが亡くなったことから、マムは生まれ故郷の日本に帰ってきた。その時にオイラも日本について来たってわけだ。今は、マムの兄弟が多くいる横須賀、それも京浜急行の野比駅の近くに住んでいる。一番下の妹夫婦が住んでいて、小料理屋をやっている。オイラは、お腹が空くとこの店によく行く。ところで、ここ野比の近くにはドコモの研究所があり、そこの連中が夜な夜なお店に来る。どうも研究者というのは、酒を飲みながらも仕事の話をする。話題の中心は次世代のセルラーホンであるIMT-2000だ。アメリカでの知識がものをいって、ある程度のことはわかる。ますます、モバイル評論キャットとしての見識が増してしまう。
小料理屋をやっている妹夫婦には、社会人の息子と高校生の娘、それに犬が一匹いる。最初の頃こそ、マムといっしょに来ておとなしくしていたが、今では我が家同様に出入りしている。オイラは由緒正しい猫で気品があるから、どこそこの猫と違って、家の中をうろついていても追いかけられることはない。暇な時には、犬のグーフィをからかっている。グーフィは、大型のゴールデンリトリーバでいつも寝そべっている。オイラが尻尾や耳をくすぐって起こすと、眠い目をあけ軽く吠えたり尻尾を使ってオイラを追い払おうとする。あまりしつこくすると、突然立上り吠えながら追っかけてくる。
去年、日本に来たにしては日本語がうまいって?それは、マムがいつもおいらに日本語で話しかけていたからだ。でも、マムが以前日本に住んでいた時に無くてアメリカで初めて使い始めた言葉は英語になってしまう。例えば、セルラーホンやビーパ(Beeper)等だ。
マムは70過ぎとはとっても思えないほど元気で、いろいろな所へ出かけていく。アメリカでの生活が長かったから、当然、自動車の運転もする。アメリカにいた時は、自動車に乗りながらセルラーホンを利用するのにハンズフリーを使っていた。日本では自動車を運転しながら携帯電話を利用しないようにと禁止するだけで、安全に利用できる方法を決めない。運転しながらでも電話をかけたいため、結局、片手にハンドル、片手にセルラーホンを持ちながら運転することになる。現実的な解はハンズフリーしかないのは、自明だ。
日本に来て特にビックリしたのが、ほとんどの高校生、それも女子高生がセルラーホン(携帯電話)を持ち、それを使って目にも止まらぬ速さでメールをやり取りしていることだ。アメリカでは、まだ、セルラーホンの主な利用者はビジネスマンだ。セルラーホンは数百ドルもするため、子供たちが持つには高過ぎる。持っていたとしても、ビーパ、日本で言うところのポケベルだ。
また、先日も、ペット用のキャリングケースにおとなしく入ってマムといっしょに山の手線に乗っていた時、隣に座っていたOLがバックからスケルトンのペンシルケースの様な物を取り出し、セルラーホンと接続して何か始めたことだ。後で聞いたのだが、スケルトンのペンシルケースはポケットボードという名前で、電子メールをやっていたようだ。
アメリカにいた時もハイテクエリアに住んでいたのでモバイルコミュニケーションに興味があったが、日本はアメリカ以上に面白いことがいっぱいだ。ますます、モバイルにはまってしまった。
夏目漱石の“我輩は猫である”ではないが、アメリカ生まれのモバイル猫であるオイラの目を通して見た日本のモバイルコミュニケーション事情を紹介していこうと思う。間違ったことや過激なことを言うかもしれないが、オイラは猫なので人間のことにかまっていられない。猫は我がままで移り気なのだ。
◎関連URL
■NTTドコモ ポケットボード製品情報
http://www.nttdocomo.co.jp/mobile/lineup/poke-pure/index.html
(Felix Mobile)
1999/10/14
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