史上最強のメール端末「ポケットポストペット」到来!
|
■ いつでもどこでもポストペット
すでに、モバイルセントラルでもお伝えしたように、4月4日、NTTドコモからソニーコミュニケーションネットワークの愛玩電子メールソフト「ポストペット」を搭載したメール端末「ポケットポストペット」が発表された。2000年3月現在、65万本を売り上げる記録的なヒット商品となった「ポストペット」とメール端末ブームの火付け役的な存在でもある「ポケットボード」が手を結んで生まれた製品だ。昨年来、各社から新しいメール端末が相次いで登場しているが、それらの製品とは一線を画した強力なメール端末が登場したことになる。製品の出荷は4月12日からだが、今回はニュースでは伝えられていない部分について紹介しよう。
|
|
(c) 1996-2000 Sony Communication Network Corporation.
All rights reserved. |
NTTドコモ ポケットポストペット
標準価格3万5800円。送信メール・受信メールとも最大200通。153×94×35mm(幅×奥行×高)、約315g(電池含)
|
■ ポケットボードとポストペットの出会い
|
10円メールのわかりやすさや手軽さでヒットしたポケットボードの後継機、ポケットボードピュア。ハローキティバージョンンなどキャラクターを使用したモデルも用意されている
|
今や国内で携帯電話のサービスを提供するすべての通信事業者が販売するようになったメール端末だが、その元祖とも言えるのが1997年12月に発売されたNTTドコモの初代ポケットボードだ。ポケットボードはNTTドコモの女性スタッフが開発を担当し、デザインや価格、機能の絞り込みによる使いやすさの確立など、従来のモバイル端末機器とは異なる視点で製品が開発されている。
発表当時の注目度はそれほど高くなかったが、着実に市場で人気を獲得し、その後、品切れを起こすほどの大ヒット商品へと成長している。そして、昨年には後継モデルの「ポケットボード ピュア」が発売され、NTTドコモのモバイル機器のラインアップにも「ポケットボードプラス」や「ブラウザボード」、「ポケットモペラ」といったメール端末が名を連ねるようになり、気がつけば、メール端末はNTTドコモの得意分野と言われるようになっている。
一方、ポストペットは生みの親である八谷和彦氏(ペットワークス)らとSo-netによって生み出された愛玩電子メールソフトで、1997年にSo-netから「PostPet DX」が発売されている。1998年12月に後継バージョンの「PostPet 2001」が発売され、昨年は「PostPet for Windows CE」「PostPet ViaVoice対応版」などもラインアップに加わっている。「ペットがメールを運ぶ」という斬新なアイデアを具現化させたポストペットは、ビジネス色が強かったインターネットやメールの世界をより身近にさせてくれた商品でもある。現在では、大半のメーカーの個人ユーザー向けPCにプリインストールされるようになり、ポストペット2001は2000年3月現在、65万本を超える販売を記録している。
メールと初心者向けという共通点を持つ2つの製品だが、雑誌のインタビューに掲載された前述のポケットボードを担当した女性スタッフの机に、モモのぬいぐるみなどが置いてあるのを八谷氏が見つけ、それをきっかけに双方が会うことになったという。もともと、八谷氏が「ポストペットをいろんな人に楽しんでもらいたいけど、パソコンは設定などがたいへん。もっと手軽に楽しんでもらう方法はないか」と考えていたこともあり、今回の企画がスタートしたそうだ。ちなみに、ポケットポストペットはポストペットの専用端末ということから、ポストペットの頭文字の「P」と専用端末の「タン」を取り、「ピータン」という開発コードで呼ばれていたそうだ。
4日に行なわれた発表会では、八谷氏自らステージに立ち、ポケットポストペットの楽しさをアピールする一方、NTTドコモの増田さんもビデオレターを寄せ、ポケットポストペットに対する思い入れを語っていた。ポケットボードとポストペットの出会いによって生まれたポケットポストペットが、今後、どのように市場で受け入れられていくのかを注目したい。
■ ポケットポストペットでメール端末の流れが変わる!?
|
(c) 1996-2000 Sony Communication Network Corporation.
All rights reserved. |
ポケットポストペットの画面。液晶はタッチペン対応で、4096色表示可能なSTNカラー液晶を採用している
|
いつでもどこでもポストペットが楽しめるのがポケットポストペットの最大の魅力だが、違った角度から見てみると、興味深い側面が見えてくる。
まず、メール端末として見てみよう。最初に述べたように、現在、国内ではすべての携帯電話事業者が自社ブランドのメール端末を販売しており、PHSでも「コミュニケーションパル」(シャープ)や「Pocket・E Cam」(九州松下電器)などが利用できる環境が整っている。機能的には初代ポケットボードの登場から2年も経過したこともあり、単にメールができるだけでなく、プラスαの楽しみを追加した製品が増えてきている。
たとえば、ブラウザボードやコミュニケーションパルのようなWebブラウザ搭載モデル、Pocket・E Camや「フォトパレット」(DDI-セルラー/IDO)のようなカメラ付きモデル、「Sky e pad」(J-フォン)のようなメロディ機能をサポートしたメール端末、「エクシーレ」(NTTドコモ)のような無線機一体型メール端末などが挙げられる。つまり、メール端末はすでにメールができるだけのものではなくなり、インターネットやメールをこれから始めようとする人たちのエントリーモデルとして認知されてきているということだ。
今回発表されたポケットポストペットは、ポストペットというプラスαの楽しさを搭載することにより、これらの既存のメール端末とは一線を画したレベルの商品として仕上げられている。よくゲーム機の世界などではソフトがハードの売れ行きを左右すると言われているが、メール端末の市場にこの論理を持ち込んだとき、ポストペットほど強力なアプリケーションは他にない。かわいいポストペットには似つかわしくない言葉だが、まさしく「キラーアプリケーション」とはこのことを言うのだろう。しかし、考えてみれば、こうした商品をこの時期に発売できてしまうあたりは、さすがNTTドコモというところだろうか。
また、ポケットポストペットは価格的にも非常に戦略的な商品と言えそうだ。NTTドコモの関東・甲信越地区での販売価格は3万5800円となっており、おそらく量販店などでは3万円前後の価格で販売されることになりそうだ。実際に量販店の店頭などを眺めてみるとわかるが、この価格帯の商品でカラー液晶を搭載しているキーボード付きメール端末やPDAは存在しない。キーボードがついていないタッチペン型PDAを見てもカラー液晶を搭載して実売価格3万円という商品はない。
携帯電話本体のカラー化が進んでいる現状を考えれば、当然のことながら、メール端末やPDAもカラーが主流になるはずだ。カラー液晶を搭載したポケットポストペットが登場したことにより、この傾向はより一層ハッキリとしてくるだろう。ちなみに、昨年来、「PostPet for Windows CE」を搭載した「PERSONA」(日立)や「JORNADA680」(Hewlette Packard)が好調な売れ行きを示しているが、ユーザーの主な目的がポストペットということになれば、当然、ポケットポストペットに一気に流れることも予想できる。
ところで、実際にメール端末を利用するユーザーにはあまり関係ないことだが、ここで紹介した多くのメール端末はベースになっているハードウェアやOSが存在する。たとえば、コミュニケーションパルやブラウザボードは「ザウルスシリーズ」(シャープ)がベースであり、ポケットモペラやエクシーレはNECのワープロ専用機「文豪アルデータ」が祖先と言われている。
今回発表されたポケットポストペットは、ニュースリリースでOSが明記されていないが、実はWindows CEを採用している。会場で展示されていたデモ機を触るとわかるのだが、ポケットポストペットの画面はポストペット for Windows CEによく似ており、操作性も非常に近い。ただ、Windows CEを採用していると言っても、Windows CEマシンでおなじみの「Windows CE ハンドヘルドPC」や「Windows CE for パームサイズPC」ではなく、「Windows CE Embedded」が採用されている。
Windows CE Embeddedはマイクロソフトが組み込み用に提供しているOSで、Pocket Internet ExplorerやPocket OfficeといったWindows CE用アプリケーションが動作するわけではないが、他のWindowsアプリケーションと同じように開発でき、環境も整っているという(筆者はプログラマーではないので、詳しいコメントは避ける)。
Windows CE Embeddedは、先日のCeBIT2000のレポートでもお伝えした通り、海外ではWeb端末のOSとしても採用される例が多い。ポケットポストペットでWindows CE Embeddedが採用されたことにより、今後、Windows CE Embeddedベースのモバイル機器や情報端末などが登場することも十分に考えられる。ユーザーにとっては「どんなアプリケーションが使えるか」が最も重要であり、この際、OSなどは何でもいいのだが(笑)、開発者にとっては開発環境が重要であり、そういった意味では今回のポケットポストペットでWindows CE Embeddedが採用されたことは、エポックメイクなことと言えるのかもしれない。
この他にもいろいろな意味でポケットポストペットには注目できる要素がある。そのあたりの話は、来週、実機を購入してからレポートをお送りしたい。
■ ちょっと宣伝
さて、最後に宣伝を少しだけ。筆者も執筆に参加した「できるポケットポストペット」がインプレスから4月下旬に発売される予定となっている。ポケットポストペットを購入される初心者の方がいらっしゃれば、ぜひともご覧になっていただきたい。
◎関連URL
■ ニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/00/whatnew0404.html
■ 製品情報(ソニーコミュニケーションネットワーク)
http://www.so-net.ne.jp/p-tan/
■ 製品情報(カシオ計算機)
http://www.casio.co.jp/productnews/pocket_postpet.html
(法林岳之)
2000/04/06
|