■ カラー液晶ケータイの先駆者
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NTTドコモ F502i
発表されているF502iシリーズでカラー液晶モデルはこのF502iとD502iの2機種のみ。502iシリーズではいちばん早く、12月3日に発売された。125×40×19mm(高×幅×厚)、約71g
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12月3日、NTTドコモからiモード対応携帯電話「F502i」が発売された。早速、機種変更で端末を購入したので、使用感などを踏まえながら、レポートをお伝えしよう。
F502iはそのネーミングからもわかるように、富士通の製造によるものだ。同社はiモード端末で初代モデルに続いて、二世代目モデルも先陣を切ることになった。今年11月に開催されたCOM JAPAN 1999で、三菱電機製D502iと同時に参考出品され、会場でも非常に高い注目を集めていた。
F502iの最大の特長は、何と言ってもカラー液晶ディスプレイを搭載したという点だ。PHSなどでは京セラのビジュアルホンをはじめ、いくつかカラー液晶ディスプレイを搭載したものが発売されているが、携帯電話で本格的にカラー液晶ディスプレイを採用したのはF502iがはじめてということになる。F502iに採用されているカラー液晶ディスプレイは最大256色まで表示でき、バックライトも備える。視認性については、ノートPCなどでTFTカラー液晶を見慣れているユーザーにしてみれば、「なんか暗いなぁ」と感じられるかもしれないが、十分カラーであることを判別できるレベルにある。
F502iはカラー液晶を搭載したことにより、いくつか新しいカスタマイズが可能になっている。待受画面にカラー画像が貼り付けられるのはもちろんだが、特定の電話番号から掛かってきたときにあらかじめ設定しておいた画像を表示する『メモリ指定画像表示』、メニュー画面などの配色が変更できる『カラー配色設定』などの機能も搭載されている。画像も静止画だけでなく、アニメーション画像などを利用することも可能だ。ただ、登録できる画像は最大5つまでなので、メモリ指定画像表示は最大5人までということになる。カラー配色設定はWindows95/98の画面のプロパティのデザインと似たものと考えれば、わかりやすいだろう。
また、液晶ディスプレイのカラー化に伴い、iモードのコンテンツにもカラー対応のものが増えてきている。バンダイの「キャラっぱ!」をカラー化した「カラフルキャラっぱ!」、フォトネットジャパンの「フォトネット」「ネコマンガ」、インデックスの「さくま式スゴロク東海道五十三次」など、10種類近くのメニューが登場している。今後、ユーザー独自のコンテンツでもカラーのものが登場し、コンテンツのカラー化も一層進むことになるだろう。
カラー化とはあまり関係ないが、F502iは表示フォントに丸文字を選べるのも面白いところだ。PCやPDAなどでは過去にも丸文字を表示できるものが存在したが、F502iの丸文字はそれほど崩れていないので、視認性は比較的良好だ。
■ 208シリーズと共通の機能も
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F502iは、初めてのカラー液晶搭載携帯電話。写真はやや青みが強くなっているが、カラー画像もまあ見られるレベルの液晶だ
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F502iは先日、NTTドコモから発表された208シリーズと、いくつか共通の機能も搭載されている。たとえば、着信メロディのハーモニーメロディ、音声通話のハイパートークなどだ。
着信メロディのハーモニーメロディ、通称「ハモメロ」は、3種類の旋律(主旋律と副旋律2つ)を組み合わせたもので、自分で入力したり、iモードのコンテンツからダウンロードすることが可能だ。ただし、出荷時に入力されている5つの曲のいずれかを消去しなければ、新たに登録することはできない。できることなら、これらを消さなくても登録できるエリアを1つか2つ程度は用意しておいて欲しかった。
ちなみに、和音を利用した着信メロディは他の通信事業者の端末でも提供されているが、筆者の手元にあるアステルのAJ-32と同じ曲(ハンガリア舞曲5番)が用意されていたので、聞き比べてみたが、派手さという点ではAJ-32の方が上回っているように感じられた。もちろん、曲によって違いがあり、入力する副旋律などによっても印象に違いが出てくるため、一概にどちらが優れているとは言えないが、もっと和音らしさを強調したメロディも登録しておいた方が良かったような気もする(ただし、主観なので、人によって印象に差があることを付け加えておく)。
一方、注目のハイパートークだが、これはコーデック(音声の符号化/復元する技術)を改良することにより、従来製品よりも通話時の音質を向上させようとしたものだ。NTTドコモによれば、ハイパートーク対応機種同士、もしくはハイパートークと一般加入電話との通話品質が改良されるとのことだが、筆者が試した範囲ではハイパートーク対応機種側で聞いている限り、従来機よりも確実に改善されているという印象が得られた。ただ、実際に通話している相手側(たとえば、加入電話)は「あんまり変わらないですね」という声もいくつか聞かれ、通話するエリアによってもかなり印象が違った。H"(エッジ)などのPHSやcdmaOneなどに比べれば、まだまだというのが正直な感想だが、確実に良くなっていることは確かだろう。しかし、ハイパートークが採用されているとは言え、NTTドコモの携帯電話が膨大な加入者によって、都市圏のターミナル駅などで通話品質が良くなく、移動中に途切れてしまうなどの状況は変わらない。こうした移動端末としての本質的な部分をどのように改良していくのかもNTTドコモの今後の課題と言えるだろう。iモードのコンテンツは今年最高のヒットと言えるほどの素晴らしさだが、やはり携帯電話は「通話ができてナンボ」のものであることも忘れてはならない。
■iモード機能はどうか?
さて、肝心のiモード関連の機能はどうだろうか。501世代のiモード端末は、合計4機種が発売されたが、それぞれの製品が独自の工夫を凝らし、異なる使い勝手を実現していた。筆者もひと通りの機種を使ってみたが、個人的にはF501iとP501iが気に入っていた。理由は待受画面のカスタマイズと文字入力にある。
待受画面については前述の通りだが、文字入力についてはF501iの良さを受け継いでいる。「.co.jp」「.ne.jp」などのドメイン名入力でよく利用する文字列があらかじめ登録されており、ユーザーが自由にカスタマイズすることが可能だ。かな漢字変換も学習機能が搭載され、最大20個までの単語を登録することが可能だ。特に、筆者のように変わった名前の人間とやり取りがある人(本人もそうだが)にとって、単語登録は便利な機能のひとつと言えるだろう。
また、メモリダイヤル操作やメール作成中などに、電話が掛かってきたときの対応も編集内容を保護するようになっており、通話終了後に編集画面に復帰することができる。iモードコンテンツを参照しているときの対応も「応答」「通知だけ」「転送」などから選択でき、応答時は同様にiモード画面に復帰できる。
ところで、iモードの数あるサービスの中で、ごく普通のユーザーが最も利用すると言われるiモードメールだが、端末でメールを送信するにはメールアドレスの入力が必要になる。もちろん、一文字ずつ入力しても構わないのだが、できれば、アドレス帳に登録しておきたいところだ。しかし、多くの携帯電話メモリソフトは、さまざまな機種への対応を謳いながら、実は登録できるのは電話番号や読みだけで、メールアドレス部分にはほとんどのものが対応していない。そのため、他の機種を利用しているときと同じ感覚で、アドレス帳からメモリをPCに読み出し、上書き登録してしまうと、設定しておいたメールアドレスが消えてしまう。
そこで便利なのがNTTドコモが純正品として提供している「データリンクソフト」だ。F502iにも「データリンクソフト for NTT DoCoMo F003」というソフトが提供されているのだが、残念ながら、まだ出荷が開始されていない。そこで、今回は従来のF501i用のもので読み書きをしてみたが、名前、読み、電話番号、メールアドレスについては問題なく、使うことができた。F502i対応の「データリンクソフト for NTT DoCoMo F003」なら、おそらく前述の画像なども読み書きできるようになるだろう。F502iのユーザーがメモリダイヤルの編集をしたいのであれば、「データリンクソフト for NTT DoCoMo F003」の購入を強くおすすめしたい。
■全体的に女性向けの印象が強い?
iモード初のカラー液晶搭載モデル、502世代のファーストモデルという肩書きを得ることになったF502iだが、全体的に見てもなかなかいい仕上りだ。ここで紹介した文字入力や待受画面のカスタマイズだけでなく、中央のファンクションキーの操作性も良好でなかなか使いやすい。底面のコネクタが相変わらずキャップ式なのはいただけないが、その他の外装部分は及第点が付けられる。
ただ、個人的な感想を言わせてもらえれば、やや女性向けの印象が強すぎる。特に、今回はNTTドコモ中央(NTT移動通信網)での契約だったため、ボディカラーがシルキーホワイトに限られていることも関係している。NTTドコモ北海道、北陸、四国などではプライムシルバーも併売されているそうだが、他の地域でもこちらのボディカラーの端末を販売して欲しいところだ。ダイヤルボタンなども小さすぎ、筆者のように大きな手のユーザーは少々慣れを必要とするだろう。
カラー液晶ディスプレイについては、人によって印象が異なるものの、とりあえず満足できるレベルにあると言える。しかし、画面サイズが決して大きいとは言えないため、N501iやP501iのような大画面の液晶ディスプレイで、階調表示が増えたモノクロ液晶のものが登場するとなると、かなり迷ってしまいそうだ。カラー液晶ディスプレイの採用により、コンテンツがカラー化されれば、結果的に転送するデータ量が増え、パケット通信料が増えてしまうというリスクもある。カラーであることの良さが十分に理解できれば『買い』、迷うときはとりあえず『待ち』というのが現時点での見解だ。
◎関連URL
■F502iニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/99/whatnew1130.html
■F502i製品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/i/lineup/f502i/f502i.html
■F502i製品情報(富士通)
http://www.fujitsu.co.jp/hypertext/Products/....
■[COM JAPAN 1999]この冬注目のケータイ
http://www.watch.impress.co.jp/mobile/news/1999/11/02/phone.htm
(法林岳之)
1999/12/9
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